ボッチのハンドレッド使い   作:リコルト

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百武装、展開。(ハンドレッド・オン。)

 

 

サクラと再開を果たすと、スフレさんにすぐ出発すると言われてサクラの隣の席に座った。やはりお忍びと言えどサクラが世界的アイドルのために俺と一緒にいる所を見られると危ないらしい。

 

 

今はちょうど離陸中であり、離陸している間は俺の学校生活の話題をサクラとスフレさんとで話していた。アイドルの仕事で忙しく、普通の学校に行けないサクラから見たら学校生活は未知の体験らしく、非常に興味を持っていた。

 

 

 

 

「へぇ、ハチマンが学校を中退しちゃったのはその葉山という男と雪ノ下と由比ヶ浜という女のせいなんだ」

 

 

サクラは不機嫌そうにしながら俺が学校を中退した経緯についての話を聞いていた。

 

 

「あくまで中退を決意したのは俺の判断だ。ただ、あそこに居続けても意味がないからな。残り一年もあんな地獄で過ごすなら辞めた方がまだマシだ」

 

 

俺は空港で買ったマッ缶を飲みながらサクラに話した。この学校生活の成果はこのマッ缶だけだろう。

 

 

「まぁ、そんな事はどうでも良いわ。大事なのは私の所に帰って来たという事は私の例の約束を果たしにきたのよね?」

 

 

サクラは俺に訊ねた。サクラは俺に会ってからその話しかしない。そんなに嬉しいのか。

 

 

「ああ、学校生活を終えたらずっとサクラの専属のボディーガードをするって約束だろう。俺もそのつもりで電話したんだ」

 

 

サクラはそれを聞いて、表情がとても明るくなった。うわ、めっちゃ可愛いんだが。

 

 

実はサクラとは俺が総武高校に通う前にある約束したのだ。「サクラとは高校生活中の三年間は一緒に過ごせないが、学校生活を終えたらサクラの専属のボディーガードをするという約束」だ。中退とはいえ、サクラとの約束だ。叶えないわけがない。

 

 

「けど……ちょっとな」

 

 

「ハチマン、歯切れが悪いわね?どうしたの、まさか私の約束……」

 

 

「いや、破るわけじゃないぞ。ただちょっとある所から先約の勧誘が有ってな」

 

 

俺は不安そうに目をウルウルとしているサクラをどうにかしてなだめようとする。すると、スフレさんが助け船を出す。

 

 

「そう、八幡君にはある所からずっと勧誘が有ったのよ。八幡君は決してサクラの約束を破ろうとしてないわ。これから約束を破らない為にそこに交渉に行くのよ」

 

 

「勧誘?どこからの?」

 

 

「リトルガーデンだ」

 

 

「リトルガーデン?」

 

 

それを聞いてサクラは首を傾げる。まぁ、普通の人は知らないだろう。そんなサクラを見て俺は荷物からリトルガーデンのパンフレットを取りだそうとする。

 

 

だが、俺の荷物からはそれが見つからない。あれ、どこにやったんだ?そんな様子を見てスフレさんは俺の代わりにサクラにリトルガーデンについて説明する。

 

 

「昨年にワルスラーン社によって作られた対サベージ用の拠点であり、ハンドレッドの研究開発とそれを用いて戦う唯一の武芸者の育成および開発製造も兼ねている機関よ。簡単に説明すると学校ね」

 

 

「へぇー、そんな物が出来てたんだ」

 

 

「ああ、まだここ最近建てられた施設だからサクラが知らないのは無理はない。俺は設立当初から誘われていたんだが、俺の要望を優先したからそっちには行かなかったんだ」

 

 

「でも学校って言うからにはどこかにあるのよね?そのリトルガーデンって何処にあるの?リベリア合衆国?」

 

 

「海の上だ」

 

 

「えっ?……」

 

 

サクラは俺の答えを聞いて目を丸くした。

 

 

「海って………島?」

 

 

それを聞いてスフレさんが答えようとする。

 

 

「いえ、違うわ。リトルガーデンは海を航海する空母型の学校よ」

 

 

「要は船の中に学校があるんだ。そのため、何処にいるか詳しい場所は分からない。日々移動しているからな。今回は俺がリトルガーデンに向かうとワルスラーン社に電話したら、太平洋上のある島にしばらく停まってくれるらしい」

 

 

そう、今はリトルガーデンに行くため、飛行機でその島に向かっているのだ。もちろん、スフレさんはその事情を知っている。だから飛行機を出してくれたんだ。サクラにだけは話すの忘れてたなぁ。

 

 

「それにしても、わざわざ俺だけの為に船を停めるって凄いよな。入学費や授業料も免除と言っていたし」

 

 

「当然よ、ハチマンはなんたって………」

 

 

サクラが言いかけると、俺のポケットからバイブ音がした。これはリトルガーデンと連絡をする時にしか使わない通信機であるPDAからだ。

 

 

『……もしもし……もしもし……』

 

 

PDAからは幼い少年を連想させるような声が聞こえる。しかも確認してみたらこの通信は俺だけにでなく、リトルガーデン近く全域に連絡をしている。ただ事ではなさそうだ。俺はその通信に答えようとする。

 

 

「もしもし、比企谷です」

 

 

『比企谷……?もしかして比企谷様ですか?』

 

 

「その声……もしかしてクリスか?久しぶりだな。約二年振りか?」

 

 

『ええ、そうです。お久しぶりです』

 

 

電話の主である少年ークリス・シュタインベルトが電話の向こうで嬉しそうなのが想像できる。

 

 

クリス・シュタインベルト

幼いながらもワルスラーン社に所属する大人顔負けの天才解析官だ。今はリトルガーデンを拠点に中等部一年ながらも主力解析官としての職務を果たしているはずだ。

 

 

「俺が乗っている飛行機がそろそろ来るはずだと連絡をしてきた……訳じゃなさそうだな」

 

 

『はい……。実はこの近辺で突如サベージが出現しまして。突如発生したものですから住民の避難誘導も含めて増援を近くに頼もうと………』

 

 

「増援?確かリトルガーデンには小隊規模の武芸者達が居たはずだろ?そいつらはどうした?」

 

 

『実は申しにくい話ですが、先日の赤道近くの出撃でまともに動けるのが、会長を含めて3人程なんです』

 

 

おいおい、マジか。俺が知る限りだと30人は居たぞ。あいつが動けるのは分かるが、ほぼ全滅じゃないか。

 

 

「成る程な……ちなみに場所と数は?」

 

 

『ヤマトの南に位置する島、オガサワラです。敵情報は数は5体、いずれも通常型です』

 

 

場所は俺達からかなり近いな。そこならちょうど俺が今から飛行機で降りても向かえる。

 

 

「リトルガーデン側の到着は?」

 

 

『今から15分後です。ヤマトにあるワルスラーン社の支部からの増援は30分後です』

 

 

駄目だ、間に合わない。確かオガサワラにはワルスラーン社の武芸者による支部はまだなかったはずだ。5体もいると、島ぐらいなんてあっという間に侵略される。それに住民の避難もまだ終わってない。リトルガーデン側の武芸君が来ても、被害は大きいはずだ。

 

 

被害を最小限に抑えるには俺が行くしかない。

 

 

「分かった、俺が行く」

 

 

『1人でですか!?相手は5体もいるんですよ』

 

 

「そうでもしないと、間に合わないだろ。それに俺の強さは知っているだろ。それでも不安か?」

 

 

俺はクリスに訊ねると、しばしの静寂が辺りを包むが、クリスは俺の問いに答える。

 

 

『……いえ。比企谷様の強さは私だけでなく、クレア様も存じ上げています』

 

 

「なら問題はないな。じゃあ、俺は今から出撃するから。リトルガーデンは約束した場所に停まっているんだろ。そっちに俺が乗っている飛行機を向かわせるから、俺が乗っていなくても迎え入れてくれ」

 

 

『かしこまりました』

 

 

「あと、クレアも来るんだろ?なら伝言を頼むわ」

 

 

俺はクリスにある伝言を頼んだ。伝言を頼み終えると、俺は通信機の電源を切った。

 

 

「……話は聞いていたわ。行くのね」

 

 

そう言ってサクラは俺に訊ねる。

 

 

「ああ、すまないな。折角予定を空けてまで俺を迎えに来てくれたのに」

 

 

「別に心配することないわ。ハチマンのためにここ数日は予定を空けているのだから」

 

 

おいおい、俺と会う準備万端じゃないか。俺はそれを聞いてクスリと笑いかける。

 

 

「怪我をしないでね、ハチマン」

 

 

 

ちゅっ………

 

 

 

サクラはそう言って俺の近くに寄ると、そのままサクラは俺の顔に手を寄せて、おでこにキスをする。

 

 

昔から俺が出撃する時はこうしていたが、高校生になると恥ずかしいな。それにサクラのファンから見たら殺されそうだ。

 

 

「ああ、すぐ戻る」

 

 

俺はサクラに言葉を交わすと、飛行機のハッチの前に立つ。降下の準備は万端だ。

 

 

俺は腰に付いたホルスターからハンドガンのような物を取り出す。その弾倉部分には黒を基調とし、紫色に輝く石が組み込まれている。

 

 

そう、この銃そのものが俺のハンドレッドだ。俺は銃の引き金に指をかける。

 

 

百武装、展開(ハンドレッド・オン)

 

 

すると俺の体は私服から武芸者が着る基本装備、ヴァリアブルスーツに変化する。その姿は黒を基調とし、紺色が入り混じったタイツスーツである。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

俺はハッチの扉を開けて、サベージの被害に遭っているオガサワラに向けて急降下する。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その頃、リトルガーデンでは………

 

 

「クレア様!!」

 

 

比企谷の通信を終えたクリスがリトルガーデンが所有する輸送機に乗ろうとしている女性武芸者3人に聞こえるような大きな声を出す。

 

 

「何ですの、クリス?」

 

 

その1人の金髪とグラマーな体型が目立ち、赤いヴァリアブルスーツに身を包んでいる女性、クレア・ハーヴェイがクリスに訊ねる。

 

 

彼女はリトルガーデンの生徒会長でありながら、総責任者でもあるため生徒会直属武芸者の部隊であるセレクションズの総指揮もしている。サベージが発生した今、一刻も早く急行したいと思っているはずだ。

 

 

「増援の件ですが、たった今向かっていると」

 

 

「っ!!。どこの部隊ですの?」

 

 

「比企谷様……影の働き人(シャドウ・ワーカー)です」

 

 

「「「なっ!?」」」

 

 

その知らせを聞いて、クレアだけでなく、クレアの後ろに控えていた眼鏡がトレードマークの女武芸者、エリカ・キャンドルと同じく控えていた褐色の肌とポニーテールが目立つ女武芸者、リディ・スタインバーグが驚きの声を上げる。

 

 

「影の働き人だと…………!?」

 

 

「サベージをたった一人で倒すためにどこにも所属していないと言われている武芸者で、その実力はクレア様にも劣らないと言われている天才……確か、ここ最近はヤマトを中心に活動をしていたはず」

 

 

エリカとリディは影の働き人という名前を聞いて、驚いた様子であるが、クレアは一人静かに落ち着いていた。

 

 

クレア(私達3人でサベージ5体は正直キツイと思っていましたわ。でもハチマンが来るならいけますわ)

 

 

「それとクレア様……」

 

 

クリスがクレアに言いづらそうに話しかける。

 

 

「……はい?何ですの?」

 

 

「彼から伝言も御座いまして………」

 

 

クレアはクリスの伝言を聞こうとする。そして、クリスは覚悟したかのように息を呑み、それを言う。

 

 

「俺が全て片付けるから、クレアはゆっくり紅茶を飲みながら来い……と」

 

 

「はあぁっ!?」

 

 

伝言を聞いてクレアの驚きと怒気を込めたような声がリトルガーデンに響いた。

 

 

 

 

 

 

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