八幡side
「じゃあ、俺はこれからクライアントをリベリア合衆国に届けに行く。一応、明日の朝にはリトルガーデンに戻って来れる予定だからさ」
「了解ですわ。それではまた」
クレアにこれからの簡単な予定を説明すると、クレアは俺の事情を踏まえた上で納得してくれた。
ツヴァイ諸島に発生したサベージを掃討後、ワルスラーン社からも支援の武芸者や医療スタッフが駆け付け、何事もなく事態は収束していった。実際、俺が早めの避難誘導をしたおかげで怪我人はいたが、死人は出て無かった。意識を失ったリディも休養を取れば大丈夫そうだし。
しばらくすると、ツヴァイ諸島の交通網も回復し、空港が使えるようになった。俺は報告も兼ねてリトルガーデンに行かなきゃならないが、サクラのボディガードは彼女の家があるリベリア合衆国に送り届けまでが仕事である。それに今回の件もあり、個人的にもサクラをひとまず、家に送り届けたい。
それにクレア達も別にツヴァイ諸島には観光に来たわけではない。事態が収束次第、すぐにでもリトルガーデンに帰らなきゃならなかった。
というわけで、俺とクレア達はここ、空港で一旦別れなきゃいけない。滑走路にはすでにリトルガーデンの専用機とサクラの自家用飛行機が停まっていた。
「ハチマン先生!」
俺がサクラの自家用飛行機が停まっているゲートに向かおうとすると、エミール、いやエミリアと如月がこっちに向かって走ってくる。
「もう行くんですか?」
「ああ。まぁ、明日にはリトルガーデンに帰って来れるけどな。あと、お前らの事情はある程度クレア達には伝えてある。だが、エミー……エミリアは退学は無いかもしれないが、ある程度の罰はあるかもしれない。性別を偽って入学したからな。一応、フォローはしたから後は頑張れ」
「はーい。後、僕のことはエミールで構わないよ。生徒会の皆にはバレちゃったけど、他の皆にはまだ秘密にしておきたいからさ」
「分かった。じゃあ、エミール、如月、またな。何かあったらお前らのPDAに連絡するから」
そう言って俺はゲートに入っていく。それにしても期待の新人に早くも会えるとはな。如月ハヤト……なかなか見応えのある奴だったな。同じハヤトでもあの金髪と大違いだ。礼儀もしっかりしているし。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて、私達も行きますわよ。それと貴方達の事はしっかりと中で事情を聞きますから」
「は、はぁ了解です」
「……ハチマン先生が話していた通り、大目には見てくれるんだよね?」
「……さぁ、どうでしょう。貴方達の対応次第ですわね。それと貴方には個人的にハチマンとの関係も聞かなければなりません。ハチマン先生って呼ぶ理由に興味がありますし」
そう話しながら、彼女らも八幡とは反対側のゲートに向かって歩いて行った。帰る場所のために。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「帰ったぞー」
俺は飛行機にゆっくりと乗りこむと……
「ハチマン!お帰りなさい!」
飛行機の中で待っていたサクラが俺に抱きついてきた。それをスフレさんがその様子を微笑みながら見ていた。二人とも怪我が無さそうで良かった。
…………………………………
……………………………………………
………………………………………………………
「そう言えば、まだ途中だったライブってどうなるんだ?中止になるのか?」
ガタガタと揺れる飛行機の中で俺はサクラに訊ねた。
「いえ、やるわよ。そんな事したらファンの皆が可哀想じゃない。そうね………ツヴァイ諸島の復興ライブってモチーフでやろうかしら?」
「でも、すぐには厳しいぞ。瓦礫の撤去とかに時間がかかるし、それにサベージがまた出ないとは限らない。少なくとも様子見で1ヶ月は必要だな」
「1ヶ月?それなら十分よ。それにハチマンがまたボディガードをしたら大丈夫じゃない。早くリベリアに帰ったらライブに向けて調整しなきゃ」
それを聞いて、サクラの後ろに座っているスフレさんと俺はやれやれといったような表情をする。
「そうだ!ハチマン。今日、ハチマンが話していた如月ハヤト君に会ったんだよね?」
「あ、ああ。そうだが」
「実は彼がサベージを倒した動画が挙がっていてね。私、彼に興味が湧いたの。ハチマン、彼について何か知っている事は無いかしら?」
「そうだな……ヤマト出身で……確か武芸者になったきっかけはグーデンベルグで第二次遭遇の被害に会った事だと聞いている。そう言えばサクラもその時……サクラ?」
ある程度の内容をはぐらかしながらサクラに説明すると、サクラがなんだか深く思い詰めた様子だった。
「……え?ああ、ごめんなさい。何だが昔の事を思い出しちゃって」
「それってあれか?サクラのアイドルをするきっかけをくれたヤマト出身の兄妹の話か?でも、如月から妹が居るなんて話を聞いてないな」
「……ハチマン、明日にはリトルガーデンに帰るんだよね?少しお願いをしても良いかしら?」
「あ、ああ。出来る事なら構わないぞ」
「ツヴァイ諸島での復興ライブが始まるまでに如月ハヤト君について調べてくれないかしら?家柄、家族図、如月ハヤト君について分かる事を何でもよ」
サクラはリベリアに帰ったら小規模なイベントが沢山有って忙しいと思うから別に構わないが、俺っていつから諜報部になったのだろうか。
まぁ、俺も興味があるし、引き受けてみよう。
これで原作一巻分はおしまいです。次回からは閑話を挟みながら原作第二巻に突入しようと思います。