八幡side
まさか、葉山達だけでなくお前も居るとはな……だが、なぜあいつはリトルガーデンの開発班の白衣を着ている?リトルガーデンに来る理由は無い筈だが………
「シャロ、なぜこいつがシャロのラボに居るんだ?リトルガーデンに来ているなんて初耳なんだが?」
俺は思わずシャロに訊ねてしまう。
「ああ、そう言えば君達は一緒の学校だったね。だったら知っている筈なんだけど……」
「え……何を?」
「彼がワルスラーン社が注目するハンドレッド開発の天才大型新人だという事だよ」
「……嘘だろ」
はあぁっ!?あいつがハンドレッド開発の天才!?クソ程面白くない小説を書く厨二病のあいつが!?てか、どうやってワルスラーン社とのツテを手に入れたんだよ!?昨日まで普通の高校生みたいな奴だったんだぞ!?どういう事情だよ!?
「……材木座、どうやってワルスラーン社と繋がりを持ったんだ?ワルスラーン社と繋がっているような雰囲気はまったく感じなかったんだが」
「それは我が輩のセリフだ。まさか、貴様が『影の働き手』だとはな。記者会見の時はびっくりしたぞ。それに貴様が総武を去った理由もな。あの時は貴様の力になれなくて本当にすまなかったのである」
そう言って材木座は俺に対して頭を下げる。そうか、川崎や戸塚だけでなく材木座にも心配させてしまったな。
「別に謝る必要はない。今となっては事件を引きずっていないからな。で、なぜここに?」
「うむ、実は我が輩達が修学旅行に行く前に、我が輩はワルスラーン社が主催するハンドレッドのアイデア開発の大きなコンクールに応募したのだ」
あぁー、それジュダルから聞いた事があるな。確かコンクールの優秀者には色々な特典がもらえると……
「…まさか、お前コンクールで……」
「うむ。最優秀賞を獲得したのである」
マジかよ。もう小説なんて書くのをやめて、ハンドレッド開発に才能を費やせよ。その才能が可哀想だわ。
「たしか、優秀者にはワルスラーン社から色々な特典が貰えると聞いてるが、それはどうした?」
「実はそのコンクールの結果が来たのが、貴様が総武を去った後でな。その時にワルスラーン社から我が輩のワルスラーン社への就職安泰とリトルガーデンに居るシャロ殿によるハンドレッド開発のインターンシップという特典を貰ったのだ」
いや、その特典十分凄くね?ワルスラーン社への就職安泰ってなかなかだぞ。世界に名が響く大きな会社だし。普通の人でも喉から手が出るわ。前者だけでも学生が貰って良い特典の規模を越えているんだが。
「で、ここに居ると」
「その通りである。我が輩は貴様に会えると思ってここに編入したのだが、入学式シーズンに貴様が不在でな」
「それは悪い事をしたな。俺も仕事が有ったんだわ。そうだ、雪ノ下達には会ったか?」
雪ノ下達とは違い、高等部3年としてリトルガーデンに編入した材木座に試しに聞いてみた。一応、入ってきた時期としては同じだからな。
「会ってはいないが、彼らがリトルガーデンに来ているのは知っておる。まぁ、我が輩は開発班だから彼らとは接点が少ないから会う機会はほぼ無いがな。だが、貴様は違うだろ?十分注意した方が良いぞ」
「当たり前だ。じゃあ、俺のハンドレッドの調整を頼むぞ」
「うむ。まだシャロ殿から教わっている身だが、明日には終わらせておこう」
そう言って材木座は俺のハンドレッドを持って、再びついたての向こうに行ってしまった。
「彼はああ言っているけど、初心者にしてはハンドレッドの調整は素晴らしいセンスだ。近い内には私と同じくらいの天才に育つと思うよ。彼の作る小説は壊滅的に面白くないけど」
どうやらあいつの小説の評価は万国共通らしい。これでワルスラーン社の就職を蹴って、作家に転職したら誰かしらに殴られるな。多分、最初は俺だと思う。
「あ、あとこれも頼むわ」
俺は懐から赤色のガジェットを取り出して渡す。
「……ハチマン、急にどうしたんだい?これを僕に調整させるなんて。まさか、使う気じゃないよね?」
俺からそれを受け取り、シャロは珍しく険しい表情をして俺に訊ねる。
「当たり前だ。俺も出来たら使いたくはない。だが、ここ最近のサベージの強さは昔よりも上がってきている。万が一の時を考えて調整を頼むだけだ。で、調整にはどのくらいかかる?」
「………これを調整するのは5年ぶりだからね。今の君の体力などのデータを組み込んだら、夏ぐらいかな」
夏か。今は春になったばかりだから、終わるのは早くても3ヶ月後ぐらいだな。
「別に構わない。じゃあ、頼むわ」
俺はシャロにまかせて、ラボを後にする。さて、陽乃さんにお土産を渡したら家で報告書でも書くか。
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「シャロ殿?先程、聞いた限りだと八幡から何かを調整するように貰っていたが、それも我が輩が調整をした方がよろしいか?」
「いや、こればかりは僕にしか調整が不可能でね。君は彼のハンドレッドに専念してくれ」
「うむ、心得た。それにしても八幡から貰ったそれは何であるか?ハンドレッドではなさそうだが」
「確かに君の言う通りこれはハンドレッドじゃない。だけど、詳しい内容はあまり他人には話せないんだ。そうだね……」
そう言ってシャロは八幡から貰った赤色のガジェットを椅子に座りながら静かに見つめる。
「これはハザードトリガー。僕が特別に製作した八幡専用のガジェットさ」