八幡side
『えぇー!?私がずっと探していたあの兄妹が見つかったですって!?』
俺が今日の晩飯であるカレーを食っている片手間に、サクラがテレビ電話を通して大きな声を出した。
「ああ、本当だ」
『でも、私がハチマンに頼んでいたのは如月ハヤト君の調査よ。どうして……まさか……』
「ああ、そのまさかだ。サクラが話していた兄妹は如月兄妹の事だったんだ」
俺は片手でテレビ電話の画面を弄り、サクラにリトルガーデンが所有する如月のパーソナルデータを転送した。
「妹の名前が如月カレンと言うんだが、この名前にサクラは聞き覚えがないか?」
『そうよ……カレン……間違いないわ』
やはりか。サクラからの確認も取れた以上、サクラが探していた兄妹は如月兄妹で確定だな。
『でも、どうしてハチマンはカレンちゃんの名前も知らないのに正体が分かったの?』
「実はカレンちゃんがサクラの母親から教わった歌を歌っていてな。あの歌はサクラが世間でも公開していない歌だ。だから、聞いた事がある俺はピンと来てな。少なくともサクラと会った事がある人物ではないかって」
『なるほどね。さすが、ハチマンだわ』
そう言って画面の向こうで嬉しそうにサクラが褒める。そう言われると苦労した甲斐があったな。
「で、サクラの事だから今すぐにでも会いたいと言うと思っていたが、行きたくないのか?」
『ええ、ハチマンの言う通りハヤト君達には会いたいわ。でも、ハヤト君達は知らないようだからそこはアイドルとしてサプライズで会いたいわね。それに…』
「それに?」
『今すぐに私がハヤト君に会ったらハチマンが妬いちゃうでしょ?ハチマンったらハヤト君達の話が始まってからそんな顔をしていたわよ』
えっ!?マジかよ。顔に出てたのか!?
『確かにハヤト君はハチマンや私と同じヴァリアントだし、幼馴染みでもある、まさしく運命の人よ。アイドルに導いてくれたきっかけも彼らだからね。でも、ハチマンはそれ以上に運命の人よ。私のアイドル活動をずっと支えてくれたし、ヴァリアントとして孤独だった私に生きる喜びをくれたわ。私が好きな人はハチマン一人よ。それは変わらないわ』
「……へぇ。そう言って貰えると嬉しいな。俺も気持ちは同じだ。俺もヴァリアントだからずっと孤独だったが、サクラと生活してきてサクラがが心の支えになってくれたんだ。だから…その…俺もサクラの事が好きなのかもな」
それを聞いてサクラは画面越しで目を丸くした。
『それって…つまり…告白?』
「まぁ……世間からしたらそうだろうな。本当はこんな画面越しでやる事ではないと思うが…」
『いえ、十分よ。ああ…今日は最高の日ね。私の願いが2つも叶ったんだから』
そうか……サクラはずっと俺からの告白を待っていたのか。サクラが世界的なアイドルだから、こんな自分でも良いのかとサクラからのアプローチはあやふやにしていたが、なんだかサクラには悪い事をしたな。
「ああ、そうだな。ところで、如月達の事はどうするんだ?サプライズと話していたが」
『そうね……そこは私が考えておくわ。彼らが驚くようなサプライズをね。それよりも!』
「は、はい?何でしょう?」
いきなりズームアップで画面から出てきそうなサクラに俺は驚きながら訊ねた。
『結婚はいつにしようかしら?』
「いやいや、待て待て!?さすがにアイドルが急に結婚なんかしたらまずいだろ!?」
『あら、別に結婚してもファンは少し減るけど、アイドル活動は続けられるわ。それにハチマンとは長い付き合いだから、今すぐにでも結婚してもおかしくないわよ。世界的アイドルと最強の男性武芸者のカップル…素敵じゃない』
スフレさ~ん!サクラを止めてくれ!画面越しで赤飯の準備なんかしなくて良いから!
その後、スフレさんと俺の説得でどうにかサクラを鎮める事に成功した。やはり、サクラの知名度から電撃結婚はヤバイらしい。だが、どうやらツヴァイ諸島の一件でサクラが俺の下の名前を呼んだ事から一部のファンがサクラと俺の関係を察しているのに俺達が気付くのはまた別の話である。