比企谷side
非常に呆気ない試合が終わったので、俺は観客席に戻ろうとすると、ハンドレッドをしたままの葉山と意識を失った由比ヶ浜を肩に背負う雪ノ下が立ち塞がる。
「……何だよ。勝負は俺の勝ちだ」
「いえ、あの勝負は卑怯谷君がズルをしたから無効よ。もう一度、私達と勝負しなさい」
はぁ?こいつら何を言っているんだ。そんな惨めに負けて素直に負けすらも認められないのかよ。
「なら、何がズルなのかを言ってみろよ」
「貴方のハンドレッドは由比ヶ浜さんと同じシューター型の筈よ。なのに、貴方は銃から色々な武器に武装を変えている……これはズル以外の何物でもない証拠よ。貴方はワルスラーン社を脅してその不正の塊であるハンドレッドを作らせたに違いないわ」
はぁ……雪ノ下は何を言っているんだか。無知なのによくベラベラと話せるな。クレアや新入生達も話を聞いて呆れた顔をしているし。
「あのなぁ、そもそも俺のハンドレッドの型はシューター型じゃない。そこから間違っている。そこまで俺のハンドレッドに不正があると言うなら由比ヶ浜の使ってたやつで不正じゃないかを証明してやるよ」
「なら、やってみなさい」
俺は雪ノ下から由比ヶ浜が使っていたハンドレッドを受取り、ハンドレッドを起動する。そして、俺は雪ノ下に見せつけるように影から剣やら銃やらを取り出す。
「そ、そんな……ありえないわ」
「ハンドレッドは自分を移す鏡のような物だ。だから、普段使わないハンドレッドを起動してもハンドレッドの型の本質は変わらない。授業で習わなかったのか?」
「ぐっ……」
おいおい、そんなに睨むなよ。お前の無知が露呈したのは自分のせいだろ。
「話は済んだな、じゃあ」
俺は雪ノ下達の横をすれ違い、クレア達の方に向かうと後ろで葉山が俺を呼び止める。
「……比企谷、話は終わってないぞ」
「あ?」
「お前は最初、銃を装備していた筈だ。なら、最後までそれを貫くのが正々堂々じゃないのか!それに雪乃ちゃんや由衣にここまでやる必要はないじゃないか!女の子なんだぞ!」
はぁ……呆れた。聞いてて嫌になる。雪ノ下の言い訳よりも質が悪いんじゃないか?
「お前、バカか?俺達武芸者はサベージを倒すのが目的だ。サベージの倒し方にルールがあるのか?俺達は命をかけて真面目にやっているんだ。クレアや他の女子生徒もな。そんなに正々堂々と言うならリトルガーデンをやめて、ヤマトでチャンバラごっこでもしていたらどうだ?ルールがあって楽しいぞ」
まったく…こいつらはリトルガーデンを何と勘違いしているんだか。スポーツ選手の育成をしているんじゃねぇぞ。
「ぐぅ!!ヒキガヤァ!!!!」
おいおい、逆ギレかよ!?クソっ、葉山のハンドレッドを解除するぐらいに攻撃をすればよかった。
葉山が俺の後ろから剣を振り回して俺に接近してきたため、ツインブレイカーで対応しようとすると……
チュドーンッッ!!!!
突然葉山達に光弾が飛んできて葉山達を吹き飛ばす。その時に葉山のハンドレッドは解除され、一緒に飛ばされた雪ノ下と葉山のハンドレッドが俺の近くに転がっていたので、俺はそれらを回収する。
さっきの光弾の犯人はあいつしか居ないな。
「貴方達、勝負は決したのに逆上して後ろから不意打ちをするなんて品が無いにも程がありますわよ」
先程の犯人…クレアを見ると、証拠としてハンドレッドが起動しており、ハンドレッドを起動したまま観客席から俺の近くにやって来る。
本当だよ。ルールとかほざいていた奴が不意打ちとか支離滅裂してるだろ。頭イカれてんじゃないか?
「先程の行動を含めて、貴方達の行動は上官への謀反活動に値します。今日から貴方達のハンドレッドは没収及び使用を半年間禁止にしますわ」
「そんな!それでは……」
雪ノ下が必死だな。きっとハンドレッドがあれば俺にまた復讐出来ると思っていたんだろ。
「それでは……何ですの?これでも貴方達が更正するのも期待して刑を軽くしていますの。なんなら退学をしても私達は構いませんわ。ハチマンの言う通り母国でチャンバラごっこでもしたらどうです?」
「くっ……分かりました」
流石にこれ以上立場が悪くなるのは不味いと思ったのか、葉山が雪ノ下の代わりにハンドレッドの没収を許した。
「あと、賭けは俺の勝ちだから命令するが、二度と俺に関わるな。関わったら容赦はしない」
俺は追い打ちに彼らに命令する。いや、睨むなよ。お前らが先に賭けを提案したじゃねぇか。
「さて、今日の実習演習はバタバタしたため、明日から取り直しをしてハチマンに指導をして貰いますわ。新入生の皆さんはハチマンの実力を見たと思いますから、明日に備えて対策を考えてください。それでは解散してください」
クレアがそう言うと、如月やエミール達は闘技場をぞろぞろと出ていく。誰も倒れている葉山達の心配をしないとか彼らの人望は終わったな。まぁ、ハンドレッドを没収した以上はこの授業にも参加出来ないから明日からは俺も楽で良いな。
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「クレア、さっきの葉山達の処遇だが、お前らしくないな。入学式みたいに即刻退学させるものだと思っていたんだが」
俺は廊下で回収した葉山達のハンドレッドをクレアに渡しながら訊ねた。
「……実はお兄様の方から彼ら…特に雪ノ下雪乃と葉山隼人は問題を起こしても退学にはしないようにと命令されたのですわ」
「ジュダルが?どうして?」
「私にも詳しく理由は教えてくれませんでしたわ。ですが、ハチマンに『搾取』と伝えたらハチマンなら分かるだろうと話していましたわ」
「搾取……ああ、察したわ」
ジュダルとは男同士で会食をする仲だが、あいつが搾取と話す時は大抵お金の話だ。きっと敢えて退学させないで、問題の口止め料等で雪ノ下建設と弁護士である葉山の父から多額のお金を徴収する気なんだろう。確かに金だけはあるからな。顔はイケメンなのに、考えは冷酷な人だ。お金をあるだけ徴収したら切り捨てるに違いない。
「どう言う事ですの?」
「いや、ビジネスの話だ。気にするな」
それにしても最近、ジュダルはあちこちからお金を集めているようだが、何をする気なんだ?