雪ノ下母side
『お金は振り込んで頂けましたか?』
「……ええ、しっかりと8億円そちらが指定した口座に振り込みましたわ」
『………はい!入金の確認が取れました。それでは失礼します』
そう言って電話の相手……ワルスラーン社社長のジュダル様は電話をお切りになった。
どうして私がこんな目に……
事の始まりは私の娘が学校で問題を起こした事だったわね。頼まれた依頼を人任せにして、挙げ句の果てには責任までを押し付けた。そのおかげで、雪乃によるその被害者は学校で噂が立ち、虐められる結果となった。
後にそれは冤罪で隼人が首謀者だと分かり、私はすぐに葉山さんを雪ノ下家の顧問弁護士から外し、なるべく大きな噂にならないように工作をしたわ。
でも、今回はそれだけでは治まらなかった。なにせ、雪乃や隼人の依頼の被害者の正体はワルスラーン社のお抱えの武芸者……影の働き手だったのだから。
影の働き手である比企谷君が正体を明かしてから総武高校は話題になってしまった。優秀な才能の持ち主を冤罪で追い詰めた高校として。
ただ、そのマスコミの集まりは異常だった。比企谷君の知名度のせいで済ますのも簡単だけど、情報統制をしたのに、あの記者の数は異常だったわ。
それに隼人や雪乃や雪乃と同じ部活の由比ヶ浜さんをピンポイントに記者達は狙っていた。まるで、記者達は最初から全てを知っているような様子だった。記者の数も含めて裏で大きな力が働いているようだったわ。
私はその裏で動いたものの正体を知る事が出来ないまま、時間を過ごした。でも、あの事件が公になったおかげで雪ノ下建設の信用はガタ落ちで仕事どころではなかったわ。
ただ、そんな時に救いの手が舞い降りたわ。あのワルスラーン社があるプロジェクトに資金援助をするだけで、今後雪ノ下建設と取引をしてくれる提案が舞い込んで来たの。出資の額はかなり高かったけども、私はそのチャンスを逃さなかったわ。ワルスラーン社と取引を続けていれば、いずれ信用は戻るに違いないもの。
その結果、雪ノ下建設は何とか倒産することなく、息を吹き返したわ。ただ、それも束の間だった。
雪乃が突然、ワルスラーン社が経営するリトルガーデンに入学したいと私に頼んできたの。最初は何かを企んでいるのではないかと思ったけど、陽乃もリトルガーデンにスカウトされて働いているから安心だし、ワルスラーン社との仲の改善を見越して私はそれを許してしまった。本当は実家で雪乃を再教育するはずだったのだけれど。
雪乃は無事に合格したわ。武芸科を受験したおかげで実践の面から高等部1年からやり直しだけれど、ワルスラーン社と深い関わりが持てる以上、私は問題にしなかった。
けど、先日雪乃が一緒に入学した隼人と由比ヶ浜さんと問題を起こしたらしい。内容は比企谷君を罵り、上官に対する謀反行為をしたとか。私はそれを聞いて驚き呆れたわ。まさか、まったく懲りていなかったとは。
私はそれを聞いて、これ以上汚点を増やさないように雪乃を勝手ながら中退させようとしたわ。
けど、ジュダル様が雪乃を退学にするなら、雪ノ下建設とワルスラーン社との取引を打ち切ると私に申したの。本当なら理由を聞き出したかったけど、それでジュダル様の反感を買ったらマズイと思ったから聞けなかったわ。
私はそれだけはマズイと思ったわ。すると、ジュダル様がある提案を私にしてきたの。問題の口止め料としてお金を払ったら、退学も無しにして、問題を口外せず、雪ノ下建設との取引を続けると。
その額は8億円。問題を起こしただけで、8億円はぼったくりだと思ったわ。でも交渉は無理そうだし、ワルスラーン社を敵に回さず、雪ノ下建設を潰させないためにも8億円を払うしか方法はなかった。
聞いたところ、葉山さんや由比ヶ浜さんの家も8億円程ではないけど、家計を圧迫させる額を払わされたらしい。生活が苦しいのは私だけじゃなかったらしいわ。
これ以上、このような額の口止め料を払わされると、雪ノ下建設は潰れないかもしれないが、先に雪ノ下家が崩壊してしまう。
私はリトルガーデンに居る筈の陽乃に相談しようと思ったわ。彼女なら雪乃と違って、私を助けてくれるに違いないと。でも、何回も連絡しても彼女には繋がらなかったわ。
今更、過去の事を言うのも難ですが、私が救いの手だと思っていたものは悪魔の手だったかも知れなかったかもしれません。雪乃を実家に戻すのも不可能ですから、あとは二度とこのような事が起きないように祈るだけだわ。
そろそろ閑話も終わりですかね。