―武芸科学生寮の食堂にて―
「エミール、比企谷先輩の弱点って無いのか?3ヵ月ぐらい模擬戦の相手をして貰ったんだろ?」
「それはそうだけど~。相手をしてもらってもハチマン先生に勝った事なんて一回もないよ。ハチマン先生に一撃でも食らわせたら良い方だよ」
「ハヤトならどうなのだ?クレア会長とは良い勝負をしていたから実力なら比企谷先輩とも良い勝負が出来るのではないかと思うんだが?」
「あの三人の試合を見て対策をしろって会長は話していたけど、ハチマン先生まったく本気じゃなかったからあまり参考にならないんだよね~」
「ああ……会長が話していた周囲の影を操るフィールド型の能力か。確かに厄介だよな」
授業や部活のような課外活動が終わり、リトルガーデンの生徒達は風呂に入ったり、夕飯を食べたりと個人的な時間を堪能していた。
そんな中、武芸科の学生寮の食堂には武芸科のハヤト、エミール、フリッツ、レイティアが夕飯を食べながら頭を抱えていた。食堂を見渡すと、如月達以外にも武芸科の一年生が如月達のように集まりながら会話をしていた。
「う~ん、何か無いかな~?」
「何を悩んでいるんだ?」
「わっ!?は、ハチマン先生!?」
エミールは後ろから話題に出ていた八幡に声をかけられて、面食らってしまう。エミール以外の面子も予想外だと思わせるような様子だった。
「隣、良いか?」
「ど、どうぞ」
フリッツから了解を得ると、八幡はフリッツの隣の席のテーブルに夕飯だと思われる麻婆豆腐定食を置いて、フリッツの隣に座る。
「あの……どうしてここに?」
そう言ってハヤトが八幡に皆の気持ちを代弁するかのように訊ねた。
「言い方は悪いが、葉山達が今日の決闘のおかげで俺に対して余計な干渉をしてこないからな。元々はあいつらとの接触を避けるためにここから引っ越したわけだから、あいつらが居なければ俺もここに来やすいからな」
「ああ……なるほど」
それを聞いて八幡のお家事情を知っているハヤトは頷いて納得する。
「別に興味はないが、あいつらはどうしてる?ここには姿が無いようだが」
八幡がそう言ってハヤト達に葉山達がどうしているかを訊ねると、フリッツとエミールがそれに答える。
「葉山さんは自室に籠っていますよ」
「残りの二人もね」
「ほぉ。まぁ、別に引きこもっても俺のせいじゃないな。そっとしておけ」
「そうですね。自業自得ですし」
フリッツの言葉に八幡達はうんうんと頷く。
「で、何について話してたんだ?」
………………………………
………………………………………………
………………………………………………………………
「俺のハンドレッドの弱点ねぇ……」
八幡は麻婆豆腐定食を食べながら如月達が何について悩んでいたかを聞いていた。
(意欲は良いが、そこまで頭を悩ませるか?まるで殺〇生を暗殺するような雰囲気だったぞ)
「別に教えても構わないぞ」
「え!?良いの!?」
エミールと同様にハヤト達も八幡の話を聞いて驚き、他の武芸科の生徒達も興味を持ち、耳を傾ける。
「別に俺を倒すのは課題であって、武芸者の目的じゃないからな。それに俺の弱点を知れば、それを補うようにサベージの討伐がチームとしてやり易くなる。遅かれ、早かれ、いつかは話す事だからな。それに……」
「それに?」
エミールが食い付くように八幡に聞き返す。
「いくら弱点が分かった所で俺はお前達に負ける気が全然しないからな」
それを聞いてハヤトやエミールなど話を聞いていた他の生徒はガクッと転けるような動きをする。
「ははは、まぁ、そんな冗談はさておきだ。俺の弱点を教えてやるよ。俺の弱点は……影だ」
『『『『えっ?』』』』
八幡が水を飲み、一息ついて軽く話した意外な弱点にその場に居た生徒達は疑問を覚える。
「えっ……それって比企谷先輩が扱う能力ですよね?弱点ではないような……」
「確かに如月がそう言うのも無理はないな。だが、影が俺の弱点なのは事実だ」
八幡は水を飲み干し、新たにコップに水を汲みながらハヤト達に話を続ける。
「俺の戦いは影に7割ぐらい依存していてな。センスエナジーを使った基本的な銃撃や剣術は可能だが、影が無ければ相手を影で拘束したり、影から武器を新たに顕現するのもなかなか厳しいんだ」
「そう言えば、クレア会長や他の武芸者が夜に活動するのは見たことがあるが、比企谷先輩が夜に活動するのは見たことが無いな」
「フリッツ・グランツ……と言ったな。なかなかの観察眼だ。彼の言う通り、俺は夜の武芸者の活動は能力が激減するため控えていてな。夜の街ならイオンの光とかで活動は多少可能だが、森とかだと厳しいな」
「あ、ありがとうございます」
八幡のファンであるフリッツは八幡に褒められて照れた様子で、それをレイティアが茶化すようにしていた。
「まぁ……俺も自分自身の弱点を他人に教わった身だから、あまり偉そうには言えないけどな」
「え?ハチマン先生、そうなの?」
「ああ、俺のハンドレッドの弱点に気付いたのはクレアでな。確か……一度きりだが、非公認の試合でクレアと三本勝負した時だな」
『『『『何それ、すごい知りたい』』』』
八幡やクレアのファンである生徒達はその話題に弱点の話以上に興味を抱いていたが、八幡はそんな生徒達の視線をまったく気にしていなかった。
「へぇー、会長とねぇ。ちなみに勝負はハチマン先生と会長どっちが勝ったの?」
「一勝二敗で俺の負けだ。最初は俺が一本取ったんだが、二試合目で俺のハンドレッドの弱点をクレアに気付かれて負けて、最後はクレアの完全武装による攻撃で勢い負けした感じだな」
それを聞いて生徒達が納得する中、ハヤトは八幡の話を聞いて疑問がある表情をしていた。
「あの……少し気になったんですけど、比企谷先輩って完全武装が使えるんじゃないんですか?さっきの話を聞くと、比企谷先輩は完全武装が使えないから負けたように聞こえるんですが」
「……っ!!」
ハヤトの指摘に八幡は少し動揺した表情を見せる。
「そう言えば……単にハチマン先生が強いからというのはあるけど、会長みたいに頻繁に完全武装の姿を見たことが無いよね」
ハヤトの指摘にエミール達他の生徒が反応する中、八幡は頭を抱えながら皆に話す。
「ああー……ざわついている所悪いんだが、実は俺は完全武装が使えなくてな。皆の強い比企谷八幡というイメージを壊したか?」
「いえ……その……なんかすいません」
「聞いた如月は何も悪くはない。単に俺の実力不足だからな」
「でも!ハチマン先生が頑張ればきっと完全武装か使えるようになるよ!」
「エミールの言う通りです。比企谷先輩が完全武装を使えるようになれば心強いですよ」
そう言ってエミールに続くようにフリッツやレイティアが八幡を励まそうとする。
「……ああ、ありがとな。さて、俺も自分の家に帰るとしよう。また来るかもな」
「はい。ありがとうございました」
そう言って学生寮の食堂を出ていく八幡をハヤト達は最後まで見送った。
……………………
……………………………………
……………………………………………………
八幡side
如月達に俺の弱点の講義をした次の日の朝、生徒達もまだ登校していない時間だが、俺はクレアに生徒会長室に招集された。一体何の用だろうか。
「クレア、来たぞ」
そう言って俺は生徒会長室に入ると、クレアが普段から座っている席で紅茶を飲んでいた。さすがにこの時間だから副生徒会長の二人も来ていないか。
「ハチマン、おはようございます」
「ああ。こんな時間に何の用だ?状況から副生徒会長にも聞かれてはいけない話だと思われるが?」
一体何の話だろうか。ここ最近、クレアが如月に対して好意を抱いているのは俺や副会長の二人から見てもバレバレだから恋愛相談とかだったら困るんだが。
「ええ、その通りです。さて、本題に入りますが、なぜ如月ハヤト達に
「……なぜ知っている?」
「昨日の夜に貴方が武芸科の一年に弱点を教えていると、遠くから偶然聞いていたエリカが私に教えてくれましてね。その時に貴方が完全武装が
「……俺の完全武装は使えないと同義だ。で、話を聞いたエリカに真実を話したのか?」
「話していませんわ。
「……だろうな」
「……ハチマン、貴方がシャーロットにハザートトリガーの調整を頼んでいるのも知っていますわ。貴方、使う気はありませんよね?」
「……ああ、今のところはな。シャロにも話したが、ここ最近のサベージは強くなって来ている。万が一のためだ」
「ですが!」
「それに如月達に弱点をああ話したが、最悪
「そうですが……」
「安心しろ、俺も万が一にしか使わない。それに今の如月達とクレアなら止められるさ。だから、この話はもう無しだ。さぁ、俺の今日の仕事をくれよ」
「……了解しましたわ」
そう言ってクレアは俺に今日の事務作業の書類の束を渡す。
ああ、
閑話は次回の葉山達のその後を書いて一区切りつけようとする予定です。次は原作の第二巻に入ろうと思いますよ!