第二章です。
序章 地下坑道にて
ツヴァイ諸島がサベージによって襲撃されてから二週間、サベージによって破壊された建物は少しずつ建て直され、町には活気が戻りつつあった。
そこより遠く離れた荒野にポツンとある廃棄された採掘場、その地下坑道は三人の褐色肌のヴァリアブルスーツを着た少年少女が身を潜めるアジトと化していた。
「それにしても二週間前のサベージの襲来は幸運だったな。おかげで霧島サクラとかいうアイドルのライブに使われるヴァリアブルストーンだけでなく、サベージの核というお土産も出来そうだ」
「でも、ライブで使われるヴァリアブルストーンは盗めたけど、サベージの方はリトルガーデンに死体ごと持っていかれたじゃない?」
褐色肌の少年が嬉しそうに話しているのを同じく褐色肌の活発そうな少女が少年の発言に疑問を抱いていた。
それを三人組の中でも年上で大人びている眼帯をした少女が補足説明をするように話す。
「………ヴィタリーが言うにはツヴァイ諸島にはサベージが七体来た筈。三体はリトルガーデンに倒され、一体はフランソワ軍に撃墜。でも、残りの三体は見つからない。つまり、まだツヴァイ諸島の何処かにその三体は居る……」
「ああ、ねーちゃんの言う通りだ。俺達はその三体を狙うわけだ。それに懲りずにそのアイドルが近い内にまたツヴァイ諸島でライブをやるらしい。そこのヴァリアブルストーンも一緒にもう一度奪うまでだ」
坑道のチカチカと光ったり消えたりする僅かな光の中で三人組はお互いに顔を見合わせて談笑している。
そんな中、坑道の入り口側の方の影から三人組に近付くように誰かの足音が大きくなる。
「……!!誰だ!?」
「よぉ、楽しそうなお話だな」
少年が気配に気付き、大きな声で訊ねると、影からハンドレッドを起動させた状態で、三人組に武器にもなる銃型のハンドレッドを構えた比企谷八幡が現れた。
「影の働き手……リトルガーデンか!?」
「…………………………」
活発そうな少女は八幡の出現に動揺を隠さないのに対して、眼帯の少女は観察するように静かに八幡の方を見ていた。
「いや、違うな。これは俺が個人的にやっている事だ。さて、ライブで奪ったヴァリアブルストーンを返して投降してもらおうか、
八幡がそう言うと、三人組もハンドレッドを起動させて構えて対峙するように向かい合う。
「……投降する気は無しか」
「当たり前だ!ついでにお前のハンドレッドも俺達が一緒に頂くからな!」
「……やってみろ。数でなら勝っていると思っているようだが、俺も甘くは無いぞ」
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「くっ……強ぇ……」
「これが男性最強……武芸者の力なの?」
「………………強い」
三人組はそう言ってほぼ無傷である八幡の前で地面に膝をつく。
「なかなか見事なチームワークだ。俺が最近戦ったバカ三人組よりもかなり完成度が高い。それにお前らのハンドレッド……かなり変わってるな。やはりヴァリアントだからか?」
「くっ……どうしてアタシ達がヴァリアントだと?普通の武芸者は存在すらも知らないのに」
活発そうな少女が痛みで苦しみながらも彼女の前に立っている八幡に訊ねる。
「何でだろうな?それに少し話を聞いたが、サベージの核を集めるとはサベージの核について世間に明かされていないあの秘密を知っているようだ。さて、詳しい話は後で話そう。ヴィタリーについてもな」
そう言って八幡は銃型のハンドレッドにシャドウフルボトルをくぼみに装填し、三人組に構える。
「チッ……!!」
「フルチャージ。
「クソがぁぁぁ!!!」
「何!?」
八幡がシャドウフルボトルを込めて光線を撃つ瞬間、少年は右手に握られたブレードを振り回した。それにより坑道の僅かな光は消え、三人組と八幡の間に上から瓦礫が落ちてきて両者を分断する。
「ぐっ!」
「どうやら運は俺達にあるようだ!また会おうぜ、影の働き手!」
八幡の居る逆側から三人組の少年の声が聞こえるが、その声は八幡から徐々に遠ざかっていく。話し方から何処かに別ルートがあり、生き埋めというわけでは無いらしい。
「……逃がしたか。だが、こんなに暗いと俺も能力が使えないな。まずはここを出よう」
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八幡が時間をかけて地下坑道を抜けると、外はすっかり日が暮れそうだった。
「……かなり時間をかけてしまったようだ。少しだけ外出すると言ってクレア達には心配させないようにしようと思っていたのだが」
八幡がハンドレッドを解除しながらそう思っていると、八幡の通信機にバイブ音と共に着信が入った。
「はい、もしもし」
『八幡くん?無事で良かったわ。盗難者らしい奴等のアジトを見つけたという連絡を受けてからまったく連絡をしてこなかったから心配したのよ』
今回の依頼者である八幡の育ての親、スフレさんは安心した様子で八幡に話す。
「すいません、少々時間がかかりまして。それとサクラのライブで使われるヴァリアブルストーンを奪った奴等を見つけたのですが、最後で取り逃がしちゃいました」
『別にそんな残念そうにしなくても良いわ。ライブで使う新しいヴァリアブルストーンはこちらが手配するから。盗難者の情報だけでも得られたなら十分よ。対策が可能だからね。八幡くんは帰ってきなさい』
「ですが……」
『もうこの時間ではハンドレッドの能力は厳しいでしょ?また盗難者達と戦って勝てるかは分からないわ。八幡くんが怪我したらサクラが心配してライブどころじゃないでしょ?』
「……分かりました」
『よろしい。なら、今日はツヴァイ諸島のホテルに泊まってから、明日リトルガーデンに帰りなさい。私達がリベリアにいる身で八幡君にわざわざ依頼を頼んだのだから、ホテル代ぐらいは払わせて貰うわ。もちろん一流ホテルよ』
「それじゃ、お言葉に甘えて。あと、盗難者達についてですが、ホテルに着いてから話しても構いませんか?」
『構わないわ。それじゃ後でね』
そう言ってスフレさんは八幡との通信を切った。
「さて、帰りますか」
八幡はそう言って採掘場を後にする。
(ヴァリアントで構成された密猟者のグループか。戦ってみたが、かなりの手練れだったな。騒がしい少年少女二人も十分に強かったが、あの無口な眼帯の少女のハンドレッドは特にヤバイな。それに奴等は引き下がったものの、ヴァリアントだから実力もまだ未知数だ。如月とかでも厳しいかもな。今回、個人的にスフレさんから事件の詳細を聞いて依頼を受けたが、リトルガーデンにも報告した方が良さそうだ)
八幡が公道に出るまで考え込みながら荒野を歩き続けていると、八幡はふと立ち止まる。
(悪魔の科学者ヴィタリー、ヴァリアント……まさか、あの三人組の正体って……おいおい、ヴィタリーはまだあの実験をしているのかよ!?だとしたら……)