ボッチのハンドレッド使い   作:リコルト

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生徒会長室にて

 

 

今、俺は俺の前を歩いているリディ・スタインバーグと共にリトルガーデン内にある生徒会長室に向かっていた。そこにはこのリトルガーデンの総責任者である彼女がいるはずだ。

 

 

「こちらでクレア様がお待ちです」

 

 

そう言って俺の前を歩いていたリディが扉の前に立ち止まった。俺はリディに促されるように生徒会長室の中に入ろうとする。

 

 

「失礼します」

 

 

俺が生徒会長室の扉を開けると………

 

 

「ハチマーン!!」

 

 

サクラが俺に抱き付いて来た。

 

 

「怪我はしていない?大丈夫?」

 

 

「ああ、大丈夫だ。サクラ達もどうやらリトルガーデンと合流出来たようだな」

 

 

俺はサクラを安心させながら、周りを見渡す。サクラがいた所にはスフレさんともう一人、眼鏡をした子供のような体型の女性がいた。

 

 

だが、この子供体型の人物は俺の大恩人でもある。現に俺よりは年上だし、頭脳は大学を飛び級する天才の域である。

 

 

「やぁ、しばらく見ない内に大きくなったねぇ。ハチマン」

 

 

「そういうシャロは相変わらずだな」

 

 

シャーロット・ディマンディウス

俺を地獄から助けてくれたスフレさんと同じく俺の大恩人だ。俺のハンドレッドを作ってくれたのも彼女である。今はリトルガーデンの技術顧問をしていたはずだ。

 

 

「そうかい?まぁ、私としても久しぶりに君とは話したいのだが、先客がいるようでねぇ」

 

 

シャロはそう言って俺の正面にある大きな机の方を見る。そこには完全に空気と化していた金髪の女性が椅子に座っていた。

 

 

「よぉ、クレア………今は会長か?」

 

 

「まったくまた貴方は勝手な事を………別に昔のようにクレアで構いませんわ」

 

 

クレアはゲンナリとしながら俺に話す。あれ?俺からしたらクレア達が疲れないようにと一人で倒したのだが、普段より疲れているような。

 

 

「まぁ、良いですわ。取り敢えずそこの空いている席で話しましょう。エリカ、彼に紅茶を」

 

 

「かしこまりました」

 

 

俺はクレアにそう言われて、空いていたソファに腰掛ける。もちろん、隣にはサクラがくっついているが。

 

 

 

………………………………………

 

 

 

……………………………………………………

 

 

 

「事情は聞いていますわ。貴方が学校を辞めた経緯、そしてリトルガーデンに入学する事まで」

 

 

「ああ、ジュダル………クレアの兄からはしっかりと連絡が来ていたようだな」

 

 

「え!?ハチマン、また入学するの?」

 

 

サクラは俺とクレアの話を聞いて驚いた様子である。まぁ、サクラとは約束をしたのに、すぐに学校に入るのもおかしな話か。

 

 

「ああ、これはサクラと約束をする前………俺が普通の高校に行く前にワルスラーン社の社長であるクレアの兄とある賭けをしてだな」

 

 

 

 

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回想

 

 

 

「やぁ、比企谷君。例の件については考えてくれたかな?」

 

 

金髪の男性が俺に話しかける。今、この部屋には俺とこの金髪の男性しかいない。

 

 

ジュダル・ハーヴェイ

ワルスラーン社の社長をしているクレア・ハーヴェイの兄。この人とはワルスラーン社に所属するシャロを通して会っていたが、未だにこの人の本質が掴めない。不思議であり、不気味な人でもある。だが、彼とは親しい仲を築いていると思う。ワルスラーン社には男性が少ないからな。

 

 

「悪いな。クレアと一緒に俺はリトルガーデンの入学はしない。俺にもしたいことがあるからな」

 

 

「そうか……設立時の第一期生に君とクレアがいればこれほど安心できるものはないのに。それにクレアも君を気に入ってはいるようだし、学校に通う事が目的ならリトルガーデンでも良いんじゃないのかい?」

 

 

「それは違う。ジュダルも知っているように俺は不慮の事故で俺は武芸者の才能が開花して、ヴァリアントになった。あの事故がなければ、俺は武芸者に関わらず普通の生活をしていたんだ。普通の生活に憧れるのは悪いのか?」

 

 

「まぁ、そういう意味でなら君は被害者でもある。分かった、無理な強要はやめよう。君には今までサベージを倒してもらったこともあるし、君の要望はある程度通すつもりだ。」

 

 

「一応サベージが俺に支障が出る範囲内に来たなら討伐するから別に良いだろ。」

 

 

「まぁ……そうなんだけど。やはり、君の事は諦めきれなくてね…………そうだ、賭けをしないか?」

 

 

「諦めが悪いですね、賭けですか?」

 

 

「そう、もし君が学校を通い続けているなら、そのまま君の普通の高校生活をしても良い。けど、もし君が途中で学校を辞めたなら、即時リトルガーデンに入学。もちろん、特待生として迎え入れるよ」

 

 

「なら、その賭けは俺の勝ちです。成績が悪くなければ、俺の意志以外での中退はありえませんよ。それじゃ話が終わったので、俺は帰りますよ」

 

 

俺は部屋から出ようとする。すると、ジュダルは俺を止めるように声をかける。

 

 

「それはどうかな。君は普通の人とは明らかに違う。私としては君の考えは優れていても周りと協調できず、後に自滅するのが見えているよ」

 

 

「……どうぞ、ご勝手に思ってください」

 

 

 

回想終了

 

 

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今となっては少々腹立たしい事だ。まさか、ジュダルの思い通りになってしまうとはな。

 

 

「それで、一応賭けによって俺はリトルガーデンに入学するんだが、ジュダルは何か言っていたか?」

 

 

「賭けは私の勝ちだね。それに〈影の働き人〉として有名になった比企谷君をリトルガーデンに編入させたら、戦力だけでなく、宣伝的な意味で入学者が増えるから好都合だ、と勝ち誇ったように話していましたわ」

 

 

あの野郎、人を広告のように使いやがって。社長じゃなかったら確実に一発は殴っている。

 

 

「はぁ……分かった。それで俺はリトルガーデンに編入するんだが、学年はどうなる?」

 

 

「そうですわね。高等部武芸科3年次からの編入は前例がなく、武芸者として初心者なら高等部1年から編入することになりますが、ハチマンなら実践経験がありますから高等部3年からでも大丈夫でしょう。来年度からは私と同じ学年です」

 

 

「ほぁ、その言い方だと俺の編入はクレアが全て決めているのか?」

 

 

「大体そうですわ、リトルガーデンの総責任者としてリトルガーデンのカリキュラムや授業まで全て私が決めていますの」

 

 

「なら、クレアに提案がある。武芸科3年次からほとんどの生徒がインターンシップによる授業がメインだろ。そのインターンシップの場所を自分で決められるか?」

 

 

「別に可能ですわ。本来はワルスラーン社の各国の支部にインターンをするのですが、何処を所望していますの?」

 

 

「隣にいる霧島サクラのボディガードをしたい。実はサクラとは約束をしていてな」

 

 

それを聞いて隣に座るサクラは嬉しそうにする。俺がサクラの約束を破るものか。

 

 

「別に構いませんわ。ただ、私の兄からは時間があれば、なるべくリトルガーデンには居て欲しいそうです。宣伝的な意味でも、戦力の意味でも」

 

 

「……了解した。俺が聞きたかったのはそれだけだ。さぁ、編入の手続きをしよう」

 

 

その後、俺はクレアから編入についての要項を聞いた。編入には試験がいるのだが、俺の場合は必要はないそうだ。

 

 

 

……………………

 

 

 

………………………………………

 

 

 

…………………………………………………

 

 

「これで編入手続きは終わりましたわ。これで貴方もリトルガーデンの生徒です」

 

 

「ああ、それで俺の編入を在学中の生徒にも話すからここ数日はリトルガーデンに滞在だろ?」

 

 

「ええ、そうですわ。貴方の部屋は用意してありますから、今日からはそこを使用してください」

 

 

「ねぇ、私の部屋は無いのかしら?」

 

 

そう言ってサクラがクレアに訊ねた。

 

 

「貴方、ハチマンの付き添いだからってここをホテルか何かと勘違いしていません?生徒以外のは無いに決まっています。」

 

 

「ええー、ハチマンと過ごすために数日は予定を入れていなかったのにー。じゃあ、ハチマンの部屋と同室というのはどう?良い提案じゃない?」

 

 

サクラがそう言って俺の腕に体を寄せる。おいおい、世界的なアイドルと同室はいけないだろ。

 

 

「駄目に決まっていますわ!!」

 

 

まぁ、もちろんクレアが許すわけがない。サクラとクレアのお互いに引けを取らないにらみ合いが続いた。

 

 

 

その後、サクラがリトルガーデンに入学しようとして、俺やスフレさんに止められる事態に発展したりしたが、クレアが妥協して俺の隣の部屋を使わせてくれるそうだ。

 

 

今日はもう遅いので、俺やサクラはその部屋に行って休もうとする。クレア達は俺が倒したサベージの件があり、忙しいそうだ。話すのは落ち着いてからにしよう。

 

 

それにしても、リトルガーデンか。ムカつくがジュダルさんが言っていたのはこういう事だったのか。俺のやり方に雪ノ下達はあーだこーだ言っていたが、クレアやリディ、それと眼鏡が目立つエリカは総武高校での事情を知った上で俺のやり方に共感してくれて、責める事はなかった。

 

 

彼女達となら新しい学校生活を過ごせるかもしれない。

 

 

 

 

 


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