八幡side
ホテルで俺のちょっとした誤解が生んだトラブルがあったものの、あの後は何事もなく会談に向けた準備を済ませる事が出来た。シャワーを浴び終えたサクラも不機嫌ではなかったので、俺としてもほっとした。
準備を済ませた後、俺達はホテルの正面玄関前にあるロータリーからハイヤーに乗り、会談が行われるツヴァイ諸島総督の公邸に向かっていた。
「比企谷先輩、どうやらこの辺はサベージに襲われていなかったようですね」
ハイヤーから総督府の旧市街を眺めていた如月がそう言って俺に話しかけてきた。
「ああ、サベージが現れたのは主にサクラのライブ会場の近く中心街だったからな。中心街から離れていたここは被害が少なくて当然だ」
小さな島にサベージが三体も現れた事件によりツヴァイ諸島は大きな被害を受けたが、別に全地区が破壊されたわけではない。ツヴァイ諸島の心臓とも言える総督府がある地域は不幸中の幸いか、無事だったのだ。そのため、被害を受けた地域は未だ瓦礫の撤去などの復旧作業に取りかかっているものの、短い時間での復旧が望めると俺は思う。
しばらくすると、俺達は総督府の近くにある総督の公邸に辿り着く。到着すると、玄関前で待機していたスーツ姿の男達が俺達を公邸の応接室に案内してくれた。
そこには古くからツヴァイ諸島に伝わる民族衣装を着た総督と先に到着したスフレさんの姿があった。
「おお、これはサクラ殿にハチマン殿」
そう言って総督は俺達の近くに寄ってきた。
「どうも、ツヴァイ諸島総督のカレキニ・カラニオプです。この度は誠にありがとうございました」
総督はサクラと俺の手を取って力強く握手をしながら何度も俺達に頭を下げた。
別にそこまで頭を下げなくても良いのにと俺は思うんだが。武芸者の仕事を全うしただけだしな。
「それで……そちらの方は?」
「ああ、彼はリトルガーデン
「おお、彼が噂の如月ハヤト殿ですか!」
如月に興味が湧いた総督に如月の説明をすると、総督は興奮した様子で如月に握手をした。
如月は総督の様子に恥ずかしそうにしていたが、その顔はとても嬉しそうだった。
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総督と話をした後、俺達は総督やその他のお偉い方と昼食をとることになった。如月は初めての出来事に困惑していたが、社交辞令だしな。いつかは慣れるさ。
俺?俺はもう慣れましたよ。影の働き手だという事を公表してから何十回やったことか。
昼食会が行われる迎賓館のパーティホールに入ると、そこには多くの人達が正装で溢れていた。数からしてツヴァイ諸島の高官や有力者、その家族達が含まれているだろう。
昼食はバイキング形式で料理が置かれている壁際には常にシェフが待機していた。さすが、政府が主催する昼食会だ。規模がすごい。
見るからに美味しそうな料理が並べられている。食えると思うだろ?それがなぁ………
「ハチマン様!サインをお願い出来ないでしょうか?実は家の息子が大ファンでして!」
「ハチマン殿!久し振りですな。どうです?向こうでお話でも……」
昼食会が始まると、高官や有力者達は俺やサクラの元に我先にと寄ってくる。理由は単純に有名だからだ。
サインを求める者、顔見知りの仲の者、中にはビジネスとして俺達に近寄る者、数十人近くがやってきて俺は忙殺されていた。
如月……他人事のように見てるが、お前もいつかこうなる運命だぞ。覚悟した方が良い。
おかげで昼食を落ち着いて食べれたのは食事会が始まって一時間後だった。
ああ~、疲れた。
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食事会が終わり、俺達も迎賓館を後にしようとすると、総督が俺達の元にやって来た。
「皆様方、この後のご予定は?」
「特に無い筈ですけど……。ですよね、スフレさん?」
俺はスフレさんに一応、予定を確認してみた。
「そうね。私は今夜にライブのサポートメンバーとして打ち合わせがあるけど、サクラ達は明日の夕方のリハーサルまで予定は無いわよ」
「でしたら、これから私達がツヴァイ諸島の観光地を案内致しましょうか?」
おお、総督自ら……これはすごい。
「うーん、そうですね……。前回のライブの際に大抵の所は行ってしまったし……」
だが、サクラはあまり乗り気ではないようだ。まぁ、総督には悪いが俺も同じ所を行くのは乗り気じゃない。
すると、サクラがある提案をする。
「そうだ。ライブ会場を見せてくれないかしら。どうなっているのか、下見したいんです」
ライブ会場の下見か。確かに歌うサクラにとっては気になるよな。総督も問題ないと話してるし、俺としても行った所を何回も行くよりは全然良いと思う。
それにサクラのライブを見たことがない如月には良い予習になるんじゃないか。