ボッチのハンドレッド使い   作:リコルト

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夜に蠢く者達

 

八幡side

 

 

「ふぃー……今日は大変だったな。特にあの総督達との昼食会がな……」

 

 

呟くように今日の出来事を思い出しながら、俺は街灯に照らされた歩道を自分の家があるリトルガーデンに向けてゆっくりと歩いていた。

 

 

如月が帰った後、俺は何をしていたか?サクラがしっかり作曲の仕事をしているかを見張っていたんだよ。実は来月のアルバムに載せる新曲の作曲が終わっていなくてな。しかも、一週間近くもその予定が遅れていてな。スフレさんから聞いた時、八幡びっくりだよ。

 

 

ただ、スフレさんもライブの打ち合わせがあってな。その間はサクラがしっかりやっているかを確認できない。そこで、俺の出番が来たわけだ。如月を先に帰らせたのは、朝から予定外の事ばかりだったからな。初日に朝から夜まで働かせるのもどうかなと思っただけだ。

 

 

まぁ、スフレさんも打ち合わせを早く終わらせてくれたから、午後の七時ぐらいには解放されたし、夕食やお風呂も彼女の計らいでホテルで済ませる事が出来た。後はこうしてリトルガーデンに帰って寝るだけである。

 

 

けど、疲れたからと言ってすぐに家で寝るわけにはいかない。実は密猟者の目撃情報が全く無いのが、気になってな。少し調べてみようと思うんだ。

 

 

だって、俺が前に見た犯人の顔を基に手配書などで注意を呼びかけているのに、目撃情報が全く無いんだぞ。一般の警備の人達は諦めたのかもしれないと話しているぐらいだ。

 

 

だけど、それは無いと俺は思う。戦ってみて分かったが、かなりの強さだったし、警備が強化されても奴等の性格から確実に来ていると推測する。今も廃坑のような人目につかない場所で様子を伺っているに違いない。

 

 

それに気を付けるのは密猟者だけではない。ツヴァイ諸島の何処かに潜伏している残りのサベージにも注意しなければならない。地震みたいに何時やって来るか分からないからな。

 

 

 

 

 

 

___________________

 

 

 

 

八幡がホテルを出て、リトルガーデンに帰る最中、そこからニキロ離れた山中では黒いヴァリアブルスーツを着た例の少年少女三人が立っていた。

 

 

「……今回は警備が厳しいな」

 

 

「そうね、それに影の働き手に顔を見られているせいで、町には手配書みたいのが何枚もあったわ。おかげで街も歩けないじゃない」

 

 

溜め息をつきながら、武装だと思われる円輪を持つ少女は少年の言葉に賛同する。だが、そんな彼女の足下にはあってはならない物が有ったのだ。

 

 

それはサベージの骸。身体は彼らにやられたのだろうか、あちこちが切り刻まれ無残な状態だった。

 

 

「……どうする?諦める?」

 

 

サベージの体液にまみれたサベージの核を左手に持つ眼帯の少女が物静かに少年に訊ねる。

 

 

「何言ってんだよ、ねーちゃん。今はまだ決行する時じゃない。それだけだよ」

 

 

「チッ、アタシは別に今でも良いと思うけど。あんな警備に手こずるアタシ達じゃないし。強いて言うなら影の働き手とリトルガーデンの会長さんだけ気を付ければ良いだけっしょ」

 

 

そう言って円輪の少女はニヤリと笑う。

 

 

「駄目だ、それだとライブが中止になって、ライブを楽しみにしている島民が悲しむだろう。俺達は()()()の味方なんだ。ライブのヴァリアブルストーンを盗むのは終わってからでも大丈夫だ。臨時収入もあるしな」

 

 

円輪の少女のやり方に対して抗議しながらも、少年は眼帯の少女の左手にある核を見つめる。

 

 

「はいはい。ひとまずはそれで満足しろという事だろ」

 

 

「ああ、残りのサベージは二体だ。見つけ次第、リトルガーデンよりも早く始末するぞ」

 

 

少年がそう言うと、二人の少女はそれに頷き、サベージの骸から離れるように姿を消したのだった……

 

 

 

 


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