如月side
「ハァ……ハァ……」
「ほら如月、もう少しだ」
そう言って大きな岩などで荒れた山道を何とかして歩く俺を、先に歩いている比企谷先輩が励ます。どうして、比企谷先輩は疲れてないんだ?
俺がどうしてここにいるか、それは自分でも分からない。だって、比企谷先輩に警護の仕事があると言われて指定された場所に向かったら、いきなりタクシーに連れ込まれたのだからさ。比企谷先輩や同じタクシーにいたサクラに聞いても詳しい事は教えてくれないし、一体何の用があってここにやって来たのだろうか?
一時間ぐらいかけて、山道を登ると俺の前で立ち止まる比企谷先輩とサクラに追い付いた。
「ひ、比企谷先輩……着いたんですか?」
「ああ、着いたぞ。ここが目的地だ」
比企谷先輩から水の入ったペットボトルを受け取り、俺は目的地である展望台からその景色を眺めた。そこには今までの疲れを吹き飛ばすような美しい景色が広がっていた。
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八幡side
「どうだ?頑張って歩いた価値があっただろ?」
「ええ、そうですね」
隣で水を飲みながら、展望台からの景色を眺めている如月が俺に笑顔で返答した。
「ここはツヴァイ大峡谷。ツヴァイ諸島の隠れた観光スポットで、サクラの思い出の場所だ」
「サクラの……?」
「そうよ。ここは昔、私のママが生きていた頃に連れてこられた場所なの」
「確か……サクラの母親って……」
「ああ、そうだ。如月には前話したが、サクラの母親は第二次遭遇に巻き込まれて亡くなっている。サクラを庇ってな」
そう、サクラの母親は幼かったサクラと共にグーデンブルグに旅行に行っていた際に、第二次遭遇に巻き込まれたのだ。サクラの母親は夫とは離婚しており、サクラの母親にとって娘のサクラはかけがえの無い存在だったのだろう。もし生きていれば、一度はお会いしたかったものだ。
「どうして俺をそんな場所に?」
未だにここに連れてこられた理由が分からない如月はそう言ってサクラに訊ねた。
「………ここはね、昔から大事な話をする時に来ている場所なの。ハチマンとも何か大事な話をする時はここに来ていてね。今日はハヤト君に大事な話があって、ここに連れてきたの」
「……俺に?」
「そうだ。俺達に関わる話をな」
如月は首を傾げながら、俺とサクラをキョロキョロ見て、様子をうかがっていた。
「まぁ、立ちっぱなしで話すのもあれだ。そこの椅子に座りながら話そう」
俺は誰もいないため、空席である展望台のベンチに如月とサクラを座らせる。すると、サクラは続けるように如月に話しかけた。
「さて……話をする前に、ハヤト君に問題です」
「問題?」
「私達の共通点は何でしょうか?」
サクラから問題を出題されると、如月はそれに対して真剣に頭を悩ませる。
「うーん……武芸者って所か?」
「ブッブー。五十点の答えね」
そうだな。だが、普段から頭の回転が鈍い如月にしては目の付け所は悪くない。
「なら、正解は何なんだ?」
納得のいかない如月がそう言ってサクラに訊ねた。
「正解?正解はね………
私達がヴァリアントだという事よ」
「………はぁっ!?」
サクラの意外な解答に如月は目を丸くする。
そう、如月に話したかった事……それは俺達がヴァリアントだという事、そして俺達の過去である。