「ハチマーン、早く早く!」
「おいおい、そんな急ぐなって」
俺のリトルガーデンへの編入が決まった次の日の朝から俺とサクラはリトルガーデンの見学をしていた。
全長4000m、全幅1000mの船に武芸者を育成する学校や生徒達の宿泊施設、それに加えてラボといった主要施設や生徒達が船での生活に飽きないように娯楽施設が多く入っている。どんだけデカイ船なんだよ。今はもう昼なんだが、普通に見学するだけで2日ぐらいはかかりそうな勢いなんだが。
サクラに呼ばれて俺は急ぐように彼女に付いていく。周りのリトルガーデン関係者達にその様子を見られているが、ピンク髪の少女が世界のアイドル霧島サクラだということには気付かれていないだろう。簡単にだが変装としてサングラスはしているし、目立つピンク色の髪は帽子で隠している。
俺はサクラに連れていかれるがままに、すぐそこにあるお洒落な喫茶店に入る。何でもリベリアに最近出来た人気の店でサクラが行きたかった場所だそうだ。
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「ふぅー、美味しかったわね」
そう言ってサクラは一息をついて昼飯にセットで付いてきたオレンジジュースを飲む。サクラが言うように確かに美味しい店だったな。サクラもご満悦だし。
「ねぇ、ハチマン」
「ん、どうしたサクラ?」
「昨日からずっと思ってたんだけど、あの会長さんとは結構仲が良いみたいだけど、どういう関係なの?」
そう言ってサクラは俺を睨みながらオレンジジュースを机に置いた。俺が女性関係に絡むとサクラは本当に怖い。
「別にサクラが思っている関係じゃないぞ。俺とクレアは昔、武芸者として一緒に戦った仲だ。それだけだ」
「そう、なら良かった」
それを聞いてサクラは普段の様子に戻った。いや、本当にクレアとはただの仲間としての関係だから。八幡ウソつかない。
「ところで、ハチマンはこれからどうするの?見た感じ暫く忙しくなりそうだけど」
「そうだな。クレアからもしばらくはリトルガーデンに滞在して欲しいと言われていたし、それに俺のハンドレッドは総武に居た間は調整もしていなかったから、今はシャロに調整して貰っている感じだ。それにシャロからある武芸者にハンドレッドの使い方を教えてあげて欲しいと言われてな。次のリトルガーデンの入学式近くまではここを出れないだろう。ごめんな、あまりサクラの側に居てあげられなくて」
ちなみにサクラは俺のリトルガーデン編入……『影の働き手』の編入の公式発表が終わるのを見届けて彼女の家があるリベリア合衆国に帰ってしまう。
「別に大丈夫よ。私もその時期までは大きなライブや仕事も入ってないからボディーガードが必要な仕事はないし。その代わり次のツヴァイ諸島での大型ライブには絶対に来てよね。私との約束だから」
確かサクラのツヴァイ諸島での大型ライブは入学式の次の日ぐらいからだったよな。ボディーガードとして行くなら3日前ぐらいから現地入りしなきゃならない。仕方ない、クレアには後で入学式には欠席する旨を伝えておこう。
「分かった、絶対に行くからな」
そう言って俺とサクラは指切りげんまんをした。まるで娘の授業参観に行く父親の気分だ。
「そう言えばさっきシャロからハチマンにハンドレッドの使い方を教えて貰いたい人がいるって話をしていたけれど、その人って誰なの?」
「確かエミール・クロスフォードっていう次のリトルガーデンで入学する男子と聞いている。それ以外の事は会ったこともないし、良く分からないな」
シャロからはイノセンス型のハンドレッドを使うから教えて上げて欲しいとか言われておらず、俺が詳しい素性を聞くとはぐらかされてしまう。まぁ。シャロの所には俺やサクラを含めて特殊な事情を持つ人が多いから無理には聞かないがな。
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サクラに連れ回された夜、俺はシャロに呼ばれたため彼女のラボに向かっていた。何でも俺のハンドレッドの調整が終わったらしく引き取りに来て欲しいそうだ。
「失礼します」
「おお、待ってたよ」
そう言ってラボの中に入ると、椅子の上でパソコンをにらめっこをしていたシャロと……
「お待ちしておりましたです。ハチマン様」
シャロの助手をしているというアンドロイドであるメイメイともう一人予想外の人物が居た。
「うそ……比企谷君。どうして……ここに」
雪ノ下の姉である雪ノ下陽乃がそこに居たのだ。