ボッチのハンドレッド使い   作:リコルト

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すいません、休稿が続いてしまって。その間もこの作品を見てくれた方、コメントをくれた方、お待たせしました。


帰路とサベージの襲撃

 

 

八幡side

 

 

ツヴァイ大峡谷の展望台から下山するようにふもとまで戻って来ると、日はすっかり暮れ、予定のライブのリハーサルまで残り一時間となっていた。

 

 

ここから車で会場まで約三十分。この調子なら間に合うが、夜に近い時間にこんな僻地に車などが通っているわけもなく、俺達は途方にくれていた。予めハイヤーを停めておけば良かったかもな。これは俺の誤算だった。

 

 

まぁ、クヨクヨしても仕方がない。今はただライブ会場に戻ることに専念しよう。

 

 

という訳で、今はだな…………

 

 

「あの……比企谷先輩、本当に大丈夫なんですか?島民が使うバスなんか利用して。バレたらどうするんですか」

 

 

「仕方がないだろ。ちょうどライブ会場近くに向かうバスがバス停に止まっていたわけだし。ハイヤーが来るのも時間は厳しいし、歩くのは論外だろ。それにサクラも変装はしているし、バスの中にいる人はそんなに居ないから多分大丈夫だろ」

 

 

島民が利用する民間のバスを利用して、ツヴァイ大峡谷のあった山から絶賛下山中である。今はちょうどライブ会場のある所とツヴァイ大峡谷の真ん中あたりだ。この調子で行けば、ライブ会場に五分くらいの余裕をもって到着ができそうだ。

 

 

だがまぁ、如月の懸念も分かる。サクラがいると知られれば、パニックで慌ただしくなるのは確実で、サクラもリハーサル前で心が休まらないだろう。けどな……

 

 

「すー……すー……」

 

 

サクラは俺の肩に寄りかかりながら、寝息を立てて寝ており、こうしていれば他人からは霧島サクラとはバレないだろう。最悪、バレたとしても今の彼女に話しかける人なんてそうそういないだろう。サクラが寝ている以上俺や如月も名前を呼ぶことはないし。

 

 

さて、サクラも寝ているようだし、俺も少し休むとするか。

 

 

そう思った次の瞬間……

 

 

「くっ!?何だ!?」

 

 

突如、激しい爆音と共にバスが激しく上下に揺れ動いたのだ。これには俺だけでなく、如月やサクラや他の乗車客も驚きを隠せない様子だった。

 

 

「ハチマン、一体何が起きたの?」

 

 

先ほどの爆音と振動で目が覚めたサクラが深刻そうに俺に訊ねた。

 

 

「分からん。だが……」

 

 

俺はすぐにバスの窓を開けて窓から身を乗りだし、周りの状況を確認した。

 

 

周りの乗客達は地震ではないかと話しているが、俺はこの揺れの原因に心当たりがあった。まさかとは思いたかったが、その原因は俺の斜め前方に道を塞ぐように立っていた。

 

 

「比企谷先輩!あれって……」

 

 

「ああ……サベージだ」

 

 

そう、俺達が乗るバスの前に蛍光色の光を放つバスほどの大きさの生物、サベージが立ち塞がっていたのだ。先程の揺れもあのサベージが原因だ。

 

 

おそらく、あの個体はクレアが数日前に話していた未発見のサベージの残党の一体だろう。まさか、こんなところで遭遇するとはな。

 

 

そう考えているの束の間、サベージは頭部を開けて口の部分にセンスエナジーを溜めていた。あのサベージ、まさかっ!

 

 

「皆さん、衝撃に備えて頭を伏せてください!サベージの砲撃が来ます!」

 

 

俺が周りの乗客に注意を呼び掛けた瞬間、サベージの頭部から光線がバスに向かって放たれた。

 

 

「ぐっ!!エナジーバリア全開!!!」

 

 

サベージの光線に対抗するように、俺は窓からバスを覆うようにエナジーバリアでそれをガードした。激しい衝撃には襲われたものの、バスや乗客にはサベージによる外傷はなかった。

 

 

「如月!出るぞ!!」

 

 

「は、はい!」

 

 

俺は如月を連れて、バスの乗車口から外に出た。その際、乗車口は先程の爆発による衝撃で開かなかったため、強引に銃で開けさせて貰ったが、今は弁償とか言っている場合ではないだろう。

 

 

「如月、お前はサクラと他の乗客をあの崖の近くに避難させろ。あそこなら砲撃が来ても大丈夫だ」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

如月やサクラが率先的にバスに乗っていた乗客を避難させている間、俺はクレアに連絡をかけた。

 

 

『ハチマン、どうしましたの?確か貴方は霧島サクラとライブ会場に向かっている筈では?』

 

 

「ああ、その通りだが、緊急事態だ。ライブ会場に向かうバスに乗車していたら、サベージに遭遇して攻撃を受けた。怪我人は今のところ居ないけどな」

 

 

『何ですって!?』

 

 

「おそらく、この前の戦闘で見つからなかったサベージの一体だろう」

 

 

俺はサベージの詳しい形態の情報や現在地の詳しい座標を冷静にクレアに説明していく。電話の向こうではクリスやエリカが突然のサベージの出現に慌ただしく対処していた。

 

 

『なるほど……分かりましたわ。ハチマン、貴方は如月ハヤトと協力してサベージの討伐、もしくは時間稼ぎを頼みますわ。今、そちらに近くの武芸者を応援に向かわせていますから』

 

 

「了解だ。じゃあ、後でな」

 

 

そう言って俺はクレアとの連絡を切断する。さて、クレアは時間稼ぎとか言っていたが、如月と俺なら討伐だろうな。応援に来た武芸者には申し訳ないかも。

 

 

「比企谷先輩、避難は無事終わりました」

 

 

「よし。如月、ハンドレッドの使用許可が下りた。クレアの話だと、応援の武芸者が来るらしいが、ここで俺達が討伐するぞ。準備は良いな?」

 

 

丁度良いタイミングで如月が報告をしにやって来たので、クレアからの連絡を伝え、俺は如月に戦闘の意思を確かめた。

 

 

「は、はい。ですが……」

 

 

「ん?……そうか、そうだったわ」

 

 

如月は何やら困った様子で俺の問いに返事したので、如月の方を向いたが、俺は如月の今の状態を思い出した。そうだ、如月はヴァリアブルスーツ無しでのハンドレッドの使用は初めてだったな。

 

 

本来、ヴァリアブルスーツ無しでのハンドレッドの使用はリトルガーデンの一年生では習わない実習だ。一年生はハンドレッドに適応するのが最優先で、戦闘訓練は二の次だからな。そのため普通の一年生だとハンドレッドはヴァリアブルスーツを着ないと使用できないと考えてしまう。

 

 

「如月、本来ならもっと後で教える内容だったが、事態が事態だから先に教えておくわ。ハンドレッドはヴァリアブルスーツ無しでも使用は可能だ」

 

 

「え、そうなんですか?」

 

 

「ああ。武装は普段通りに顕現は可能だが、ヴァリアブルスーツが無いから防御力はほぼ皆無だ。エナジーバリアを張らずにサベージの攻撃なんか受けたら即死だ。それでも戦うか?」

 

 

「は、はい!やります!」

 

 

そう言って如月はハッキリと返事をした。

 

 

「よし、行くぞ……ハンドレッド・オン!」

 

 

「ハンドレッド・オン!」

 

 

そう言うと、俺達のハンドレッドは輝き、俺の黒服はヴァリアブルスーツへと変わり、その上から黒い装甲が顕現していく。如月の方もハンドレッドの赤い光から、彼の武装である一本の刀、飛燕が右手に出現した。ヴァリアブルスーツを着ていないため、服は制服の状態だが。

 

 

「如月、あいつが攻撃をした瞬間に一気にコアに全力の攻撃を叩きこむぞ」

 

 

「はい!」

 

 

俺は影から如月の飛燕に近い黒い刀を取り出し、如月は飛燕を改めて握りしめる。すると、サベージが頭部にセンスエナジーを溜め、砲撃の準備をする。

 

 

「今だ!!左右から叩きこむぞ!」

 

 

サベージが砲撃の準備を終え、濃密な光線を俺達の方に放った瞬間、俺と如月はお互い左右にジャンプして回避し、サベージのコアに近付いた。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「影斬・絶影羅刹(ぜつえいらせつ)!!!」

 

 

如月の飛燕による赤い斬撃と俺の黒い刀による奥義がコアを守るシェルターと共にコアを木っ端微塵に切り刻み、サベージの活動はやがて静止した。

 

 

「やりましたね。比企谷先輩」

 

 

「ああ……そうだ…な……!!?」

 

 

サベージを倒したことで如月やサクラ達避難した皆も安堵していたが、俺はある気配を感じて警戒体制を再び整える。

 

 

「比企谷先輩?」

 

 

影の縛り(シャドウ・スパイダー)!」

 

 

俺は咄嗟に影の縛りを発動させて、気配のあった方に細く黒い糸のような影を延ばしていく。

 

 

「如月、どうやらまだのようだ」

 

 

「えっ?……これって!?」

 

 

如月の視線の先にあったもの、それは先程とは別のサベージが俺の影に拘束されて苦しそうに暴れている姿だった。

 

 

「まさかこのサベージも?」

 

 

「ああ、おそらく前回の戦いで姿を現さなかった未確認のサベージの一体だろうな」

 

 

如月に説明しながらサベージを拘束しているが、これも時間の問題である。

 

 

「比企谷先輩!サベージが砲撃を!」

 

 

「ちっ!しかもあっちはライブ会場の方じゃないか。やらせるわけにいくかよ!」

 

 

影の糸を手繰り寄せて、何とかライブ会場への砲撃を回避しようとするが、サベージが抵抗してなかなか思うようにいかない。

 

 

くそっ!ここまでか…そう思った瞬間、

 

 

 

ドンッ!!!

 

 

 

大きな砲撃音と共にサベージの頭部が爆発したのだ。これには俺や如月も驚いた。

 

 

俺と如月はその砲撃が発せられた方を見ると、そこには三人の見慣れた姿があった。

 

 

「お二方、大丈夫か?」

 

 

「フリッツ!それにレイティアとエミールまで!」

 

 

如月が嬉しそうに彼らの名前を叫ぶと、三人は俺達の所まで素早くやって来た。

 

 

「三人共、どうして?」

 

 

「おそらく、クレアが話していた応援とはこいつらのことだろう。そうだろ?」

 

 

如月の疑問に答えながら三人に確認すると、首を縦に振って頷いた。

 

 

「比企谷先輩、そろそろ厳しいんですよね?」

 

 

そう言いながら、フリッツは俺に訊ねた。そうか、気付いていたのか。

 

 

「ああ、日が暮れた上にこの荒野だ。影がなかなか無くてなかなか厳しかったんだ」

 

 

だからこそ、最初のサベージを倒した時は短期決戦で勝負を決めようとしたわけだが。

 

 

「でしたら、俺達4人にやらせてくれませんか?」

 

 

「それはつまり、4人だけであのサベージを倒すというのか?」

 

 

ふむ、確かに実践経験は大事だし、サベージとの戦闘が初めてのフリッツとレイティアの能力を見極める事が出来る。だが、この4人はヴァリアブルスーツを着ていない状態だ。万が一、死なれたら最悪だ。

 

 

「分かった。如月やエミールもいるし、あのサベージは4人で試しに倒してみろ。俺はバスの乗客を守りながら、お前らの援護をする」

 

 

「「「「はい、分かりました」」」」

 

 

そう言って四人は改めて武装を握りしめてサベージの方を向き、俺は武装を銃に変えてサクラ達の方に向かって走っていく。

 

 

さて、この一ヶ月近くで武芸者としてどこまで成長したか、俺に見せてもらおうか。

 

 

 

 

 

 




ゴールデンウィーク中は休みなので、なるべく多くの作品を書きたいですね。
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