ボッチのハンドレッド使い   作:リコルト

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敗北の報告

 

 

八幡side

 

 

密猟者との戦いの後、俺達は増援にやってきたリトルガーデンの関係者と合流し、リトルガーデンまで大型の治療バスで帰ることになった。俺はヴァリアブルスーツを着ていたからそこまでの怪我はしていなかったが、如月達四人はほぼ生身の姿で戦っていたので、医療班に念入りに治療されていた。

 

 

サクラはというと、俺達と別れて一足先にライブ会場に戻って行った。今回の件を受けて、リハーサルは先延ばしになったものの、スフレさんやライブ会場のスタッフさんに心配させないように、早く帰ろうとしたのだろう。俺としてはライブ会場までも身内として護衛したい気持ちはあったが、クレアに監督としての報告義務があった。そこで、俺が信頼する武芸者数人に声をかけて彼女の護衛をしてもらった。万が一、サクラに手を出したら半殺しにすると言いながらツインブレイカーを振り回す姿を見せると、顔を青くして頷いていたので大丈夫だろう。

 

 

 

 

そんな経緯もあり、俺達は現在リトルガーデンの生徒会室に集まっていた。その他のメンバーとしてはクレア達生徒会のメンバーとクリス、それにシャロやその助手のメイメイが揃っていた。

 

 

「さて、全員が集まったことですし、本題に移りましょう。ハチマン、報告をお願いしますわ」

 

 

「ああ、分かった」

 

 

クレアにそう言われ、俺はツヴァイ大峡谷で起こった出来事を生徒会長室にいる全員に伝えた。未確認だったサベージに遭遇したこと、密猟者の三人組に遭遇したこと、そして彼らに敗北したことだ。

 

 

「まさか、ハチマンを含めた五人が負けますとはね……彼らの実力を少し舐めていましたわ」

 

 

「けど、今回の戦いはハチマンにとってかなり不利な状況だったじゃないか。それに如月君達もハンドレッドに触れて一ヶ月ぐらいだ。戦い慣れしたヴァリアントを相手にするなんてかなり無理があったとボクは思うよ」

 

 

報告を聞いて、生徒会長室にある大きな机で深刻そうな顔でクレアが話すのを、シャロが淡々と説得するかのようにクレアに話していた。

 

 

「すまない、俺がしっかりしていれば……」

 

 

「別にハチマンが謝ることではありませんわ。サベージと密猟者に襲われたにも関わらず、一年生の四人や民間人に何の被害もなく切り抜けただけでも十分ですわよ。個人的な反省は後にして、今は今回起こった出来事を整理しましょう」

 

 

謝る俺に一言をかけたクレアは引き出しから資料を取り出し、話を続ける。

 

 

「実は如月ハヤトとハチマンには話したのですが、実は先日のツヴァイ諸島での戦闘の際に行方不明のサベージが三体いましたの。その内の二体は貴方達が戦った個体ですが、先程最後の一体が死骸として荒野で発見されたとツヴァイ諸島の総督なら連絡を頂きました。その死体のコアもやはり同じ手口でくり抜かれていたようです」

 

 

引き出しから取り出した資料をクレアから受け取ると、そこにはコアが人為的にくり抜かれていた一体のサベージの写真が載っていた。

 

 

犯行は刃物などによるもの……か。十中八九、あのクロヴァンという少年か、あのネサットと呼ばれていた眼帯の少女によるものだろう。まさか、未確認だったサベージを横取りされた形だとはいえ、あいつらに全て倒されるとはな。

 

 

「そう言えば、ハチマン。彼ら密猟者と二回戦った貴方から見て、彼らの戦力についてどう思ったか私達に教えてくれませんか?詳しいハンドレッドについても」

 

 

クレアにそう訊ねられて、俺は静かに頷く。またいつ彼らと遭遇するか分からない。詳しいハンドレッドの能力などを聞いてクレアとしては急いで対策を練りたいのだろう。

 

 

「まず、あいつらのハンドレッドについてだ。リーダー格のクロヴァンとかいう少年はツインブレードのような武装を扱うハンドレッドだ。力の強さでいったら、彼らの中で一番だな」

 

 

如月とも互角に戦っていたし、身体能力もかなり高い方だ。真っ正面から戦ったら、大抵の奴は力負けしてしまうに違いない。

 

 

「次のナクリーという少女のハンドレッドだ。彼女のハンドレッドは二つのリングを使い、チャクラムのように投擲攻撃をしたり、そのまま至近距離に近付いて攻撃することも可能だ」

 

 

バランスの良い中距離での戦いにおいてでは、彼女が彼らの中で分があるだろう。かなり扱いにくそうな武器ではあるが、彼女にはそれを使いこなす技能があり、彼女も油断してはいけないだろう。

 

 

「最後にネサットという眼帯の少女のハンドレッドなんだが………」

 

 

彼女のハンドレッドについてなんだが、今回の戦いである程度その能力に予想がついた。もしその予想が合っていれば、俺のハンドレッドと同じくらい厄介なものだ。

 

 

「どうしましたの?歯切れが悪いですわね」

 

 

「ああ~…実は彼女のハンドレッドの能力なんだが、大方予想がついているが、まだ二回目の戦闘で確証が無くてな。……俺の予想だが、彼女のハンドレッドは敵味方のハンドレッドをコピーする能力だ」

 

 

「コピーする能力ですって!?」

 

 

それを聞いてクレアは驚きを隠せないような顔をした。もちろん、リディ達他の生徒会のメンバーや如月達も同じような顔である。

 

 

そんな状況の中、シャロが俺に訊ねてきた。

 

 

「成る程、コピーするハンドレッドか。ボクも聞いた事が無いから驚いたが、どうしてハチマンはそうに違いないと思ったんだい?」

 

 

「一回目の戦闘では武装を交替させながら戦っていたからエミールと同じイノセンス型だと思っていたが、今回の戦いで彼女が如月の飛燕とそっくりのものを顕現させたから、この推測に至ったわけだ」

 

 

もしそうだとしたら、あの廃坑の戦闘で武装を交替しているように見えたのは俺が影から武装を取り出していたのを、彼女が単に俺の武装を瞬時にコピーしていたことになるんだよなぁ。なんだか複雑な気分だ。

 

 

「で、彼らと戦ってみた俺の個人的な感想だが、あれを簡単に倒すのは厳しいだろうな。一人一人のハンドレッドの能力が優れている上に、チームワークは一流のものだから」

 

 

まぁ、俺は一度彼らを一人でボコボコにした経験はあるが、今日みたいな状況だとな。

 

 

「……成る程、分かりましたわ。そちらについては改めて私も整理した上で、対策を練りましょう。他に誰か意見がある者はいますか?」

 

 

クレアが周りを見渡しながら訊ねると、エミールが見えるように手を挙げた。

 

 

「そう言えば、彼らはどうしてサベージのコアを狙ってなんかいるのさ?彼らの仲間が言うにはハチマン先輩が何か知っていると話していたけど、一体何の話なの?」

 

 

 

 

 




そろそろこの章も終わりですね。

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