戸塚side
八幡が総武を去ってからもう数日か……。この数日は色々な事が有ったなぁ。まさか八幡が『影の働き手』だったとはねぇ。
とか思いつつ僕は授業に参加していた。だけどその授業の様子は異様で僕や川崎さんなどかつてのクラスの半分しかいない。理由は簡単。今、ここに居ない人は例の件で停学を言い渡されたり、転校をしたりしたからだ。
誰も話す様子が無さそうだから僕が代表して八幡が退学をした日からの話を知る限り順番にしようかな。
八幡が退学をして、その事は八幡のクラスでもあった僕のクラスで退学したその日の内に発表された。それを聞いて僕と川崎さんは当時は驚いたよ。でも他の人達はそれを喜んだり、自業自得だと罵るばかりだった。正直言って彼らとは一緒の空間に居たくはなかったよ。だけど、真実を知らなかった彼らにとってその行動は後で地獄となるのは僕や川崎さんも当時は知る由もなかったんだ。
八幡が居なくなり、退学が全校に知れ渡った数日後、僕達はいきなり体育館に集められ、校長先生から八幡の今までの行動の真実を知らされた。それは文化祭の件、修学旅行の件などが書かれた八幡のノートがきっかけだった。
そのノートは聞いた話だと平塚先生が奉仕部の教室で偶然発見したらしい。そこには事件の真実の詳細や文化祭実行委員の出席表といったその真実を裏付ける証拠、そして八幡の心からの叫びが文章として書かれていたそうだ。それを平塚先生はすぐさま校長先生に提出したことでああなったとか。何でも平塚先生と校長先生は八幡が退学届けを出した時に居合わせていて、八幡をずっと心配していたらしい。
そこからの展開は早かった。発表後、僕達は流れるように先生達からそれぞれ個別に事実確認をさせられた。そして、それは城廻会長の文化祭の証言などによってさらに裏付けされる事になった。
それを受けて八幡を身体的にいじめていた生徒の数名は停学処分、その他いじめに関与した生徒達や文化祭実行委員をサボった生徒の多くは反省文を書かされる処分となった。もちろん、無関係な僕や川崎さん、材木座くん、城廻会長などには何もなかったよ。
一通り生徒達への処分が終わったと思ったら大間違い。やはり、そう簡単に治まるわけもない。僕のクラスでは日常茶飯事ギスギスした環境になっていた。まず、相模さんはデマを流した張本人として八幡をいじめていた皆から責め立てられていた。皆も皆で責任転嫁で甚だしいが、彼女は当事者でありながらああいう事をしたから仕方がないと思う。それを機に相模さんは今も登校拒否中であれから音沙汰が無い。
だけど相模さんと同じ、いやそれ以上責め立てられていた人物がいる。葉山くんだ。なぜなら葉山くんは文化祭、修学旅行の件両方に絡んでいながら相模さんと一緒にデマを言いふらしたからだ。修学旅行の真実を聞いて三浦さんは激怒、戸部くんからも裏で工作をしていた事に反感を抱き、事実上葉山くんのグループは解散した。本来は無茶な依頼をした戸部くんや海老名さんにもヘイトが来るかもしれなかったが、葉山くんへのヘイトがすごくて、海老名さん達は葉山くんに利用された被害者として扱われていた。今は海老名さん達はもう反省した雰囲気を見せており、三浦さんを中心に再び新しいグループが出来ていた。その時に八幡を通して仲が良かった僕や川崎さんも三浦さんからグループに誘われ、今は良好な関係である。一方で葉山くんは学校には登校しているものの彼の居場所はどこにもないだろう。
そして最後に奉仕部の雪ノ下さんと由比ヶ浜さん、彼女らのヘイトもかなりのものだった。なぜなら八幡を精神的に退学にまで追い詰めた人物として葉山くんと同等の罪があると思われていたからだ。彼女達も葉山くんに嵌められたと皆に話したが、それは逆効果でさらに彼女達を苦しめる事になってしまった。彼女達は一応学校には登校しているらしいが、少なくとも教室にはいない。だから僕にも彼女達が何をしているか良く分からないんだ。
ここまでが八幡が退学してからの総武の状況だよ。次はニュースで話題になっていた八幡がリトルガーデンで会見した後の話をしようか。
八幡がリトルガーデンで会見をした後日、総武高校は有名になってしまった。悪い意味でね。どうやら最初は千葉県内の軽い事件で治まっていたが、八幡のリトルガーデンの会見でそれは世界規模にも知られてしまった。あれから連日、総武高校にはマスコミが駆けつけている。だけど、僕や川崎さんなどには影響はない。マスコミのターゲットは八幡に大きく関わった葉山くんや雪ノ下さん達だからね。
これを受けて総武高校の評判は地に落ちてしまったものが、通り越して無になってしまった。城廻さん達三学年や僕や川崎さんや三浦さんといったいじめに無関係な人は内申書や推薦入学には支障は出ないようにと、校長先生が手を打ってくれたが、葉山くん達はもう救えないだろう。これにより僕達のクラスでも八幡のいじめに加担しながらも推薦入学を考えていた生徒やマスコミに耐えられない生徒達などが続々と総武高校を去って行った。そして今に至るわけだ。ちなみに葉山くんや雪ノ下さんはこれだけ大事になっても未だに残っている。
さて、話はここで終わりかな。実は授業が終わってから三浦さん達から昼飯を一緒に食べないかと誘われていてね。行かなきゃいけないんだ。じゃあ、またどこかで!
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雪ノ下side
くっ、何故私がこんな目に会うのかしら。あれから私の生活はもう滅茶苦茶よ。あの事件が公になって私と由比ヶ浜さんは学校から罪人のような目で見られているわ。そもそもあの修学旅行に関しては依頼を持って来た葉山くん、そして私達に何も言わず勝手に依頼をあんな方法で解決した比企谷君が悪いじゃない。それにわざわざあんなノートを置いていくなんて嫌がらせかしら。少なくとも、私には罪がないと思うのに。
そう思いながら、私は奉仕部だった教室のドアを開く。そこで待っていたのは………
「やぁ、雪乃ちゃん」
「やっはろー、ゆきのん」
現在総武高校で腫れ物のように扱われてしまっている、葉山くんと由比ヶ浜さんだった。私としては本当は葉山くんとは居たくもないが、彼にはある共通の目的の為に集まってもらっていた。
「早いわね。じゃあ、話を始めましょう。
比企谷君に復讐をする会議を」
私がそう言うと二人はうんうんと頷いた。そう私達の共通点はあのクズに生活を狂わされたという点である。お陰で私は母親からこれでもかと怒られて、学校でも悪者扱いされて内申書からろくな大学にしか行けない。これも全てあのクズの仕業である。
だが、今は彼はリトルガーデンと呼ばれる施設で武芸者をやっている。そう簡単には復讐できない。
そこで私はある考えを思い付いた。
「二人とも、リトルガーデンに編入する件だけど、両親とは相談したかしら?」
「もちろん、OKしてもらったよ!」
「俺も大丈夫だったよ」
そう言って二人は鞄からリトルガーデンの編入願書を持って頷く。この願書は比企谷君がノートと一緒に残したリトルガーデンのパンフレットから切り取ったものである。もちろん、私もリトルガーデンの編入は何とか親に許してもらった。
「なら、第一段階は無事に終わったようだね。次は編入試験だけど、どうやら今年はあのクズのせいで倍率は入学も含めて過去最高だ。そこはどうするんだい?」
「そうね。まずは姉さんに相談して何とか入れてくれないか交渉するわ。雪ノ下建設はワルスラーン社にも多額の出資をしてるから多分どうにかなるわ」
「さっすが!ゆきのん。それにしてもヒッキーまじ最低だし。何も言わずに出ていって挙げ句の果てにはこんな目にあわせるなんて。会ったら謝罪してもらうし」
私の気持ちは由比ヶ浜さんと同じである。もし、リトルガーデンで会ったなら土下座して謝罪してもらうわ。それに彼が武芸者なのもきっとズルをしたからに違いないわ。私が彼の悪事の全てを暴いて見せるわ。それにしてもあのいじめの件は雪ノ下家の力で情報統制したはず…それに比企谷君は記者会見で総武高校について何も話していない。一体誰が再び話を持ち上げたのかしら?
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葉山side
比企谷……お前がただ黙っていればこんな事にはならなかったのに。あんなノートを置いていきやがって……。それにお前が世界から注目される武芸者だと?笑わせるな。俺の方がふさわしいに決まっている。どうせ、クズらしくズルをしたんだろう。お前は俺が始末してやる。そうすれば雪乃ちゃんからも認められるし、ワルスラーン社からも賞賛されるに決まっている。せいぜい俺達が来るまで楽しんでいるんだな。
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彼らが話している頃、ワルスラーンの一室ではある男が総武高校のニュースを見ていた。
「やれやれ、まさか雪ノ下建設が情報統制をしていたとわね………僕の大事な友人に手を出したんだ。まさかうやむやにしようとするなんて腹が立って仕方がない。雪ノ下建設は今頃慌てているだろうな。もみ消した筈の事実が世界中に知られてしまったからね。自業自得さ」
そう、比企谷八幡が総武高校出身である事といじめの出来事を週刊記者やマスコミにこっそりと流したのはワルスラーン社の社長であるジュダル・ハーヴェイだったのだ。その事を知るのは彼自身だけであった。
かなり詰め込み過ぎちゃいましたね。そろそろ本編に入れると嬉しいです。