八幡side
あの会見から二日が経過した。俺の学校生活も昨日から始まり、今さっきまで俺も授業があったばかりだ。俺は授業を終えると、すぐに生徒会長室に向かっていた。
「失礼します」
そう言って俺が生徒会長室に入ると、中ではクレアとリディとエリカが待っていた。
「比企谷先輩、お待ちしておりました」
「すまない、待たせたか?道中で他の生徒達に話しかけられな。収拾に時間がかかった」
「すっかり人気者ですわね。大丈夫ですわ、集合時間にはしっかり間に合っています。それでは始めましょうか」
クレアにそう言われながら俺は生徒会長室に新たに設置された自分の席に座る。その間、エリカがコーヒーを汲み、俺の席に置いてくれた。優秀な後輩だ。
「ああ、今日集まったのは次年度の編入学試験の内容を決めるからだっけか?」
俺はクレアに今日の会議の題を訊ねた。
「その通りですわ。毎年リトルガーデンの編入学試験の内容は私達生徒会に一任されていますが、今回はハチマンがリトルガーデンに来た宣伝効果で編入学合わせて例年の三倍以上です。試験の内容もしっかりと考えなければなりません」
今更ながら思うが、自分の影響力に驚いてしまう。まさかリトルガーデンに入っただけで編入学の希望者が三倍以上になるとは思わなかった。今頃、ジュダルがワルスラーン社の一室でウハウハとしているのが目に浮かぶ。
「確か、エリカやリディの時のリトルガーデン設立時の試験は三段階分けたんだっけか?」
「そうです。リディはもう武芸者の教育係としてリトルガーデンに特待生として来ることが決まっていたので、私しか試験は受けていませんが、最初はハンドレッドの適性検査、これが基準値を満たした者しか次の試験に行けず、続いて身体能力と知力測定の検査、そして最後に面接試験でした。しかも私の面接官はクレア様だったのです!」
俺は後輩であるエリカに訊ねると、エリカは試験の内容を興奮しながら俺に話した。
お、おう、分かったから落ち着いてくれ。実は最初、エリカは優秀な後輩だと思っていたが、クレアに対しては崇拝のような感情を持ち合わせており、クレアの話になると興奮して普段の冷静さが失われる一面がある。しかも、それはエリカだけかと思っていたが、向かいに座るリディにも同じ一面があるのだ。二人ともまるで、女王に忠実な騎士みたいだな。
「で、今年も方針としてはそれで行こうと思っていたのですが、実はワルスラーン本社から面接の試験を無くして二段階による試験方法にしろと通達を受けましたわ」
「ほう、どうしてだ?」
「今年はあくまで質よりも量に重きをおこうとしたからですわ。今、生徒会直属の武芸者部隊であるセレクションズを含めてリトルガーデンにはサベージと戦える武芸者の数は非常に少ないです。そのため面接試験で志望動機や性格で落とすのはどうかという意見がワルスラーン本社で有ったらしいですの。」
「じゃあ、もしチームワークがとれなかったり、ゴロツキみたいな性格でも武芸者としての能力が高ければ入学させるっていうことか」
「まぁ……そうなりますわね。私としてはあまり納得出来ませんが、私達には試験の内容を決める権利しかありません。方針には逆らえませんわ」
そう言いながらクレアは悔しそうに話す。クレアは規律を乱す人が嫌いなためその気持ちは分かる。そしてそれは単に生理的なものではなく、彼女なりの心配ということもな。
「じゃあ、一次試験のハンドレッド適性検査は昨年度と同じで変えなくても良さそうだな。下手に基準を上げると、数が減るしな。大事なのは二次試験の内容だな」
「そうですわね。面接が無い分、そこが重要ですわ。実はハチマンがリトルガーデンに来る前に知力測定のテストを草案ですが、作っておりましたの。ハチマンも目を通してくれませんか?」
そう言ってクレアから極秘資料と書かれた少し大きめな封筒を貰う。俺はそこからクレアが話していた知力測定のテストの草案を取り出す。
ほう、テスト科目は数学、国語、外国語と案外普通の学校と変わりがない。中等部、高等部共に難易度も普通だな。普通と言っても難関私立ぐらい。それに加えて社会……高等部だと政治・経済か。うわ、サベージの事件とか結構マニアックだな。この4教科でテストをするなら社会が一番難しいだろう。
「悪くはない、大丈夫だ」
俺は草案を封筒に戻してクレアに返した。
「なら、これで次年度の知力測定のテストはこれで行いますわ。この中には居ないと思いますが、くれぐれも極秘事項なので、内容を漏らさないように。では、次は身体能力テストの話をしましょう。こちらはまだ決まっていないので」
「そこはやはり、軍人を目指していた経緯があるリディに聞くのが一番じゃないか?」
「そうですわね。リディ、何か意見があれば」
そう言って俺とクレアはリディの方を向いた。
「そうですね……私としては走らせ続けて体力測定をするのが一番ですね。……最低60㎞は」
「待て。それ普通に死ぬやつだろ」
いきなり60㎞とか編入学者もびっくりだよ。何?ハンター試験でもやる気なのか?私についてきてくださいとか言うなよ?
「ですが、軍人を目指していた時期はこれぐらい当たり前でしたが」
「普通の人が最初から軍人を希望する人なんて余程の事が無い限りありえねーよ」
「ハチマンの言う通りですわ。今回は確かに身体能力のテストも方針が方針なので、少しは厳しくしても良いですが、流石にやり過ぎですわ。あくまでリトルガーデンは育成施設なのですのよ」
「ク、クレア様がそう申し上げるなら………20kmぐらいが妥当でしょうか?」
「まぁ、それぐらいなら……」
「ええ、それで構いませんわ。なら身体能力テストもひとまずそれで行きましょう。なら会議はこれで解散ということにしましょう。お疲れ様でした」
こうして次年度の編入学試験の内容は草案として決まった。後はワルスラーン社がこれを見て何もなければこれで試験の内容は決定である。どんな生徒が来るんだろうな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
陽乃side
比企谷君ったらもうすっかり人気者だな~。まぁ、リトルガーデンの男性の数が少ないのもあるけど、やはりクレア・ハーヴェイと並ぶ人が現れたら人気になるのも当たり前か~。実際、隠れてファンクラブが出来ているし。
そう思っていると、私の携帯電話が音を出して震えた。普段はリトルガーデンでしか使えない通信機であるPDAからしか鳴らないからこっちの普通の携帯電話から鳴ったということは……
「もしもし、雪乃ちゃん?」
『姉さん、久しぶりね』
やはり雪乃ちゃんか。それにしても私の読みが当たったわね。どうせ比企谷君のことかな?試しに聞いてみよう。
「それにしても珍しいね。雪乃ちゃんから電話をかけてくるなんて何の用かな?」
『姉さんは比企谷君に会ったのでしょ?』
「うん、会ったよ。まさか比企谷君が世界から注目される武芸者だったとはねー」
『姉さん、姉さんはあのクズに騙されているのよ!今すぐにでも彼から離れた方が良いわ。彼は私や由比ヶ浜さんの生活を無茶苦茶にしたのよ!』
あはは、雪乃ちゃん?
何を言っているのかな?
比企谷君が雪乃ちゃん達の生活を無茶苦茶にした?笑わせないでくれるかな?彼は雪乃ちゃんの依頼に精一杯応えたのよ。それを私が悪く無いって?比企谷君が総武高校にいる間、貴女は何事もなく生活を送れていたでしょ?それは彼のお陰なんだよ。それを雪乃ちゃんは………
「話はそれだけ?電話を切っても良『待って姉さん、話はもう一つあるの』
へぇ、本当はこれ以上雪乃ちゃんの話なんか聞きたくはないけど、仕方ないわね。これ以上怒らせないでくれるなら。
『私、次年度のリトルガーデンの編入学試験を受けることにしたの。でも、今年の編入学者は多いと聞いてるわ。そこを姉さんの力でどうにか私と由比ヶ浜さん、それと葉山君をリトルガーデンの武芸科に入れてくれないか交渉してくれないかしら?』
はぁっ?
その時私の携帯電話を持つ手が怒りに近い何かで震えていた。どういうことかな?