世界の崩壊とリセット   作:金剛時雨

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第16話 囮

高城家の屋敷を出て

 

俺達はいま国道にいる

 

先に言っておくと前話からそうだが

 

床主市はEMP=電磁パルス攻撃を受け

 

ほとんどの電子機器が死んでいる

 

何が言いたいかというと……………

 

国道に入って目の前に広がるのは

 

ゾンビ、ゾンビ、ゾンビである

 

しかもこちらに来ている

 

()()()()()()()()()()()()

 

まぁ……………

 

 

「当然だよなぁ」

 

沙耶「そうね、あの電磁パルスの後だもの!私達だけよ()()()()()()()()()()()()()()()

 

静香「これからどうするの?」

 

「孝、何か提案はあるか?」

 

孝「悪いけど僕と麗の親探しに付き合ってもらう!俺達の家、東署、新床第3小学校の順に行く、ここからなら2時間もかからない!」

 

「だけど国道がこれじゃあ無理だな」

 

明音「じゃあどうするの?」

 

「二手に分かれる、メアリーエンジン切って」

 

メアリー「はい」

 

「荷物をこっちに、終わったらみんなもこっちに乗り換えて」

 

沙耶「何するつもりよ?」

 

「俺が囮になる」

 

沙耶「はぁ!?」

 

メアリー「無茶です!」

 

明音「そうよ!」

 

「何も死にに行くわけじゃない、近くにショッピングモールがあるだろ?あそこで合流だ、そこでもう1人来てほしい…………………………冴子、頼めるか?」

 

冴子「ッ!?心得た」

 

「よし、孝、麗、お前達でモールまでみんなを案内しろ」

 

孝「わかった」

 

麗「・・・・・・」

 

「絶対帰ってくるから、それまでみんなを守ってくれ」

 

麗「…………………………はぁ、わかったわよ」

 

「すまん、俺達が《奴ら》を引き付けるから、落ち着いたら移動してくれ孝、みんなを頼む」

 

孝「ああ……………」

 

 

俺は冴子を後ろに乗せる

 

ハンドルを握り感触を確かめる

 

元はバイクと似ているとの事だったので問題ない

 

 

「じゃあ行ってくる」

 

メアリー「先輩、ご武運を」

 

明音「必ず戻ってきてよ!」

 

「わかってるって」

 

 

俺は盛大にエンジン音を出す

 

一方ハンヴィの方はエンジンは切っているので

 

《奴ら》は俺達の方に来る

 

 

「行くぞ!」

 

冴子「承知!」

 

 

速度を《奴ら》より少し早めで走り出す

 

分かれ道から出てくる《奴ら》に気を付けながら進む

 

冴子も周りを警戒してくれるから助かる

 

そして川の近くまで来て改めて周りを見てみる

 

・・・・・・・・・

 

あれ?思ったより多いな

 

 

冴子「思ったより多いとか思ってないだろうね?」

 

「確かに多いとは思いましたが引き付けれたと思えば作戦は成功です」

 

冴子「君ならそう言うと思ったよ」

 

「そうですか、では行きますか!しっかり捕まっててくださいよ!」

 

冴子「心得た!」

 

 

俺は坂を駆け降りる

 

当然《奴ら》も来るが……………

 

盛大に転がっていく

 

一部は頭から落ちたためか

 

首が変な方向に向いてそのまま動かなくなったり

 

足が折れてまともに歩けなくなったりした奴もいる

 

まぁこれは作戦の副産物の成果かな?

 

だけどこのままじゃ……………

 

 

「無理だよなぁ」

 

冴子「そう都合よくはいかんさ」

 

「じゃあ次やりますか」

 

冴子「何をするのだね?」

 

「こいつは水陸両用、ならやることは1つ!」

 

 

俺は前へ進み川へ飛び込む

 

ただここで誤算が起きた

 

思ったより水飛沫が来たこと

 

顔面に思いっきりかかり

 

慌てて冴子の安否を確認する

 

 

「冴子!大丈夫、カッ!」

 

 

さっきも言ったが俺は水飛沫を受けた

 

それは後ろの冴子も例外ではない

 

何が言いたいかというと……………

 

濡れた冴子の制服は透けており

 

色々見えている

 

何がとは言わない

 

俺は理性を抑え水上を動く

 

この川の真ん中辺りには中州がある

 

そこに上がりエンジンを切る

 

《奴ら》は俺達を探して辺りを見渡して(視覚はないけど)いたが

 

音がないためまたその辺りを彷徨いだした

 

 

「何とかなったな」

 

冴子「中州を使うとは考えたな」

 

「これなら流されないからな、とりあえずの様子見だけどな、それと冴子これを……………」

 

冴子「?これは?」

 

「そのままだと風邪ひくぞ」

 

冴子「……………ありがとう拓真君」

 

「俺は後ろを向く、できれば早く着替えてくれ」

 

 

俺は後ろを向き今後を考える

 

みんなには1日中には合流するとは伝えているからいいが

 

流石にここで夜を明かすのはまずい

 

後、後ろで冴子が着替えてるので理性との勝負だ

 

 

冴子「もういいよ」

 

「そうですか、それで今後……………なの……………」

 

冴子「?どこか変だろうか?」

 

「いえ、似合ってますよ、ええ、これ以上ないくらいに」

 

冴子「?どうかしたのか?」

 

「何でもありません!」

 

 

あれ、ブラ着けてるか?

 

着けてるって言ってくれ!

 

人選間違えた?

 

いやあってる

 

冴子の天然のせいか?

 

いや人のせいにするのはよくないな

 

だとする俺自身か?

 

・・・・・・

 

……………ありえるか

 

少なくとも俺は冴子の事は好きだしな

 

惚れた弱みか?

 

意味違うかな?

 

まぁいいか

 

うん、頑張れ!俺の理性!

 

 

冴子「拓真はいつも私を女と見てくれるのだな」

 

「逆にあなたを男と見てる男性がいたらそいつはきっと同性愛者(ホモ)だと思うよ」

 

冴子「そのようなものなのか?」

 

「ええ、少なくとも俺はそう思う」

 

冴子「・・・・・・・」

 

「……………そういえば昔気になっていたんだけど」

 

冴子「なんだい?」

 

「冴子って好きな人とかいたの?」

 

冴子「唐突だね」

 

「嫌だったか?」

 

冴子「そうではない、ただ君でも恋愛に興味があったのだなと思っただけだ」

 

「失礼な、俺にもあるよ、で?答えは?」

 

冴子「いたよ、私にも好きな男が……………」

 

 

俺達は途中で会話を終え

 

川を渡り始める

 

今度は国道を使わず脇道に入る

 

住宅街に入り俺は目的地に向かう

 

当然だけど《奴ら》は増える一方だ

 

 

冴子「これでは中州の時と変わらないではないか!」

 

「次の角を曲がれば目的地だ!」

 

冴子「あれは……………公園?」

 

「あそこにはアレがあるはず!」

 

 

公園に入ると目の前に噴水があった

 

俺は躊躇わずに噴水に飛び込む

 

残念ながら()()水飛沫が上がる

 

当然冴子にもかかる

 

 

冴子「君は女を濡れ鼠にする趣味でもあるのかね!?」

 

「最近ありかもって思ってきた!」

 

冴子「・・・・・・」

 

「冗談です、バックパックからテープを取ってくれ」

 

 

俺は冴子からもらったテープをハンドルに巻く

 

さしてハンドルから手を放す

 

乗り物はひたすら噴水の周りを回りだす

 

盛大にエンジン音を出して

 

 

冴子「なるほど……………音で引き寄せてその間に」

 

「東側に出口がある、そこまでは刀だけでやりきるぞ」

 

冴子「承知した」

 

 

先に冴子が飛び次に俺が飛ぶ

 

着地と同時に見る光景に美しさを感じた

 

冴子は次々と《奴ら》の首を刎ねていく

 

頭の無くなった《奴ら》は倒れていく

 

一部は飛びすぎて噴水に落ちていった

 

 

「相変らずヤバいな」

 

紅桜『私達も負けてられないわね』

 

「全くだ、行くか」

 

紅桜『ええ、素敵な剣舞を期待するわ』

 

「期待に添えるよう頑張る!」

 

 

俺は駆け出す

 

まず目の前の3体

 

横一閃、首を飛ばし次に向かう

 

しばらく切り続けた

 

本当ならさっさと出口に向かうべきだったが

 

思ったより《奴ら》が多かったこともそうだが

 

俺自身が八つ当たり気味だった事だ

 

今まで何人の犠牲の上でここに立っているのか

 

本当に彼らが死ぬ必要があったのか?

 

今思えばそれが正しかったのかも怪しい

 

だけどもう過ぎたこと

 

終わったことなんだ

 

なら俺はその罪を一生を懸けて償うしかない

 

ふと冴子の方を見ると刀を振り上げたまま固まっていた

 

目の前には小学生の《奴ら》

 

不味い!?

 

このままだと彼女が危ない!

 

俺は慌てて駆け寄る

 

小学生の《奴ら》は小さな口を既に開けている

 

刀じゃ間に合わない!?

 

俺は脇にしまっていた拳銃で小さな《奴ら》の頭を撃つ

 

先ほどのエンジン音とは比べ物にならないくらいの音が響く

 

 

「冴子、走れ!」

 

冴子「ッ!?」

 

 

俺は冴子の手を引きながら走る

 

公園を出てモールに向かおうとするが

 

先ほどの音のせいか

 

《奴ら》の数を多い

 

悩んでいると目の前に神社に続く階段が見えた

 

 

「こっちに!」

 

冴子「拓真君……………」

 

「とりあえずここで今夜は過ごしましょう」

 

 

俺は神社の建物の中に入る

 

施錠をしっかり行い安全を確保する

 

俺は振り返り冴子を見る

 

おそらくあの事だろう

 

俺はろうそくの灯りから見える彼女を見てそう思った

 

 

 

 

 




次回『欲望と告白』

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