世界の崩壊とリセット   作:金剛時雨

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第20話 危険を冒す対価

唐突だが俺は今数名を引き連れてとある病院に向かっていた

 

その場所は川嶋医院

 

確か小児科と内科があったな

 

 

孝「あそこか、小坊の頃診てもらった事がある」

 

??「お前もかよ」

 

孝「あなたもですか?」

 

??「あそこの先代がマンガ好きでさ………」

 

 

先程から孝と話してるのは

 

ショッピングモール側の生存者の田丸(たまる)ヒロって人で

 

他にも婦警の中岡(なかおか)あさみ巡査だ

 

後は俺とコータの計5人だ

 

そもそも何故病院に行かなければならない事になった所から話そう

 

まず俺達が名も知らぬ男に呼ばれて寝具のコーナーに向かった

 

着くと目の前には老婆が苦しそうにベットで寝ていた

 

そばには老婆の夫と看護に徹している静香先生がいる

 

他のメンバーも俺達より先に来ていた

 

 

「コータ、状況説明」

 

コータ「うん、あのお婆さん平時は定期的に輸血していたらしいんだ?」

 

「それは赤血球?それとも血漿?」

 

コータ「血漿の方だよ」

 

「わかった」

 

明音「拓真、流石に部隊はすぐに来れないわよ」

 

「知ってる、でもそれ以前にだ」

 

沙耶「そうよ、問題は………………なんであたし達がしなきゃいけないの?」

 

静香「え!?そ、それは助けるべき人がいるから」

 

沙耶「ええ、先生の発言は間違っていません、今回は良いとしましょう、で?次は誰が行くんですか?」

 

静香「ッ!?」

 

「確かに沙耶の言う事も正しい、それに今回は停電から1日しか経っていない、パックが入っているだろう保管庫もまだ保温である程度持つでしょう、でも次ははたして保冷できていますか?例え余分に持ってきてもここには電気はないから保管はできない」

 

静香「…………そ、それでも私は医者なの、助けれる命は助けたいの!」

 

「では静香先生、あなたはどちらの命を選びますか?」

 

静香「………………え?」

 

「我々の命と患者の命です」

 

静香「な、何を言っているの?」

 

「輸血パックを取りに行ってお婆さんを助ける事は日本人の俺なら賛成です、しかしリーダーとしては反対です、静香先生、死ぬかもしれない危険を冒してまで得た対価は何です?」

 

静香「それは患者の命よ」

 

「確かにそうです、ですがそこの患者1人を毎回助けるために我々は何人犠牲になるでしょうか?」

 

静香「ッ!?」

 

 

俺がここまで静香先生を責めているのは何も悪気があってしてる訳ではない

 

確かに静香先生の考えは平和の日本のそれも医者の意見としては間違っていない

 

むしろ正しいし常識的だ

 

だが今は非常時だ

 

しかも輸血パック自体も今の現状じゃ量産も難しい

 

たとえ今後救助されても

 

貴重なパックを消耗したくないと思う者が出るかもしれない

 

これは非常時に異常者が出せる判断だ

 

 

「静香先生、正直に言います、そこの患者を見捨ててください」

 

静香「そ、そんな!」

 

孝「おい拓真!いくら何でもそれは!」

 

「孝、お前もわかってるだろう?」

 

孝「確かに拓真の言いたい事はわかってるつもりだ、でもそんな切り捨てろなんて」

 

「ならお前は行くのか?病院という事は他にも患者がいただろうぜ?もちろん医者や看護師共々《奴ら》になってるだろうがな、そんな場所に静香先生は逝けって言ってるんだ」

 

 

俺の言葉に皆は沈黙しだした

 

俺が最後に言った”逝け”が”行け”ではない事を悟ったんだろう

 

みんなから見たら俺は異常者に見えるだろうが

 

でもこうでもしないと”あの日”は生き残れなかった

 

だからこの判断は間違ってない

 

これは医者としての意見と

 

軍人としての意見の違い

 

医者はどうしたら対象を助けれるか

 

軍人はどうしたら目標を達成できるか

 

医者は意地でも助けるが

 

軍人は達成の障害になるなら仲間の命も見捨てる

 

もちろん、これは俺個人の意見だ

 

他の軍人や医者はどう思ってるかなんて知らない

 

知った所で変わらないしな

 

 

中岡「ではあさ、じゃなくて………本官が行きます!何を取ってきたらいいか教えてください」

 

沙耶「え!?」

 

静香「!?」

 

「・・・・・」

 

コータ「でも中岡さん、危険が大きすぎですよ!」

 

中岡「危険も承知です!市民の為身の危険を顧みず奉仕する事が警察官の任務です!」

 

「………立派な心掛けだな」

 

孝「拓真!」

 

「お前は黙ってろ」

 

孝「ッ!?」

 

「…………はぁ、コータ、孝」

 

コータ「ん?」

 

孝「何だよ」

 

「武器を取りに行くぞ、お前らも来い」

 

コータ「ッ!?イエス・サー!」

 

孝「いいのか?」

 

「勘違いするな、銃火器で武装している状態なら多少はゴリ押せると思っただけだ、ついでに医薬品が手に入るなら今後のためになる」

 

明音「大丈夫なの?」

 

「正直面倒だ、だが医薬品の確保は必要だ、特に今のご時世だとな」

 

明音「ネイサン准将にもこの事は伝える?」

 

「頼む、在庫次第では次もあるかもしれない、それと医療用の保冷箱の手配もだ」

 

明音「わかった」

 

「静香先生はそのまま患者をお願いします」

 

静香「………わかったわ」

 

「明音は連絡後は屋上で俺達の援護、メアリーは明音のフォロー」

 

明音「わかった」

 

メアリー「はい」

 

「沙耶と智江はここで待機だ、できるなら静香先生を手伝ってやってくれ」

 

沙耶「わかったわ」

 

智江「うん」

 

「冴子と麗も待機だ、だが君達彼女達の護衛を頼む」

 

冴子「承知した」

 

麗「わかったわ」

 

「中岡巡査、我々3人も貴方と共に行く、構いませんね?」

 

中岡「え?え、えぇあさみは大丈夫です」

 

中岡(あれ?私巡査の事言った?)

 

 

そして時間は戻り、今俺達は病院の手前に来た

 

見た所、人も《奴ら》もいなさそうだ

 

中は知らないけど

 

 

田丸「どうよ?」

 

孝「どうかな………………ちょっと聞いていいですか?」

 

田丸「手短に頼む」

 

孝「なんであなたまで来たんです?」

 

田丸「…………そういえばなんでかな?」

 

「わからなくてもこの地獄で外に出れてる時点であなたは立派な方ですよ」

 

田丸「よせよ、柄じゃない、それを言うならお前の方がスゲェよ」

 

「どこがです?先ほどの話を聞いてたらわかるでしょ?俺は異常者ですよ」

 

田丸「確かに普通ならおかしいが今は普通じゃねぇ、それにお前は仲間の命を優先したんだ」

 

「ええ、他人の命まで救える余裕は今はありませんから」

 

田丸「高校生でその決断力は尊敬するぜ」

 

「………………ありがとうございます」

 

コータ「拓真?照れてる?」

 

「ッ!?//さっさと用件を澄ますぞ」

 

 

俺は誤魔化すように中に入る

 

散乱した漫画

 

ところどころある血痕

 

物音しない院内

 

 

全員『・・・・・・』

 

 

俺以外が安堵したした瞬間

 

突然診察室から《奴ら》が出てきた

 

俺はすぐに接近して女性の首を切り落とす

 

横では田丸さんが男性に倒した

 

 

「やりますね」

 

田丸「ありがとよ!」

 

「コータ大丈夫か?」

 

コータ「なんとか」

 

孝「拓真!」

 

「!?チッ耳がいいな」

 

 

受付の看護師はコータが倒して

 

孝は入口から来てる《奴ら》の量に慌てている

 

一瞬で周りを見る

 

見た所一本通路だ

 

表で見た時は二階建てぽかった

 

だが見える範囲に階段はない

 

………………仕方ないか

 

 

「正面は俺と孝で抑える、みんなは血漿を取って来い!」

 

田丸「わかった!」

 

「孝、極力銃は使うな!近接で仕留めろ」

 

孝「わかってるよ!」

 

「行くぞ紅桜」

 

紅桜『ええ、切り落としなさい!』

 

 

俺は近い奴か切り落としにかかる

 

首を斬り、返しで次の《奴ら》に狙いを定める

 

次から次へと斬り続ける

 

もう玄関は血と屍の海だ

 

しかし全然数が減らない

 

しかも徐々に押されてきている

 

 

「これは流石にマズいな」

 

孝「拓真!どうする!?」

 

「コータ!まだか!」

 

コータ「今終わったよ!ッ!?」

 

「孝!先に中に入れ!」

 

孝「わかった!」

 

 

俺は孝が中に入るのを見ると

 

ダッシュで診察室に飛び込む

 

すぐにコータと孝が扉を塞いだ

 

だが窓には既に《奴ら》が集まっている

 

後は上だがいけるか?

 

…………賭けは趣味じゃないんだけどなぁ

 

 

「孝!上に散弾ブチ込め!」

 

孝「ッ!?」

 

 

間髪入れずに撃った弾は

 

天井を粉砕した

 

幸い天井の耐久性が弱く数発で穴が開いた

 

 

「コータ先行しろ!次に中岡巡査、孝、田丸さんの順だ!」

 

コータ「わかった!」

 

「行ったな?中岡巡査!」

 

中岡「はっはい!」

 

 

中岡巡査が上がっていたが

 

何故だか甘い空気を感じる

 

コータ君、君ナニをしているのだね?

 

 

「孝、いけ!」

 

孝「わかった!」

 

 

その間にも頭を出して無理やり入ろうとしてくる

 

そのたび首を斬り落としているが

 

流石に窓と扉の往復はロスがある

 

 

「田丸さん!早く!」

 

田丸「だがお前さんが!」

 

「いいから行け!」

 

田丸「!?………わかった!」

 

 

彼が孝とコータに掴まれ引き上げられる

 

窓から既に入り込まれてきた

 

 

コータ「拓真!早く!」

 

「よし、そこどけ!」

 

コータ「え?おぅ!?」

 

 

俺は扉がブチ破れる直前に

 

ジャンプして二階に飛んだ

 

コータは直前の対応だったため驚き

 

他の皆もそれぞれびっくりしている

 

 

田丸「お前、結構身体能力高いな」

 

「まぁ日頃の特訓のおかげかな?」

 

田丸「そんなもんか?」

 

「それよりここにまだ備蓄があったか」

 

コータ「うん、今詰めるだけ詰め込んでる」

 

「俺のバックも頼む、俺は下の監視をしてるから」

 

コータ「わかったよ」

 

 

俺達は空いたスペースに薬を入れ

 

簡易的に噛まれてないか確認をして

 

屋根から外に出た

 

移動しながら一瞬だけ後ろを向く

 

正直な所、死ぬ気でいた自分がいた

 

刀を自身の首に振る動作をしかけた

 

あの時の紅桜はかなりの血を吸いこんでいた

 

おそらく一瞬で首が落ちるだろう

 

だが同時に残していってしまう彼女達の事も考えてしまう

 

今回は運良く生き残れた

 

だがもし紅桜がなかったら?

 

天井に穴が開かなかったら?

 

例えそれがIFだったとしても

 

その恐ろしさは言うまでもない

 

俺は一旦考えるのを辞めてモールに戻った

 

静香先生は受け取った血漿と医療機器でお婆さんの治療を始めた

 

一方俺達は疲労で倒れていた

 

 

孝「なぁ拓真」

 

「なんだ孝」

 

孝「一緒に来てくれた事、礼を言いたくてさ」

 

「・・・・・・・」

 

孝「切り捨てろとか言いながら来てくれたじゃないか」

 

「ああ、あれか」

 

孝「拓真?」

 

「俺はさ、死ぬほど後悔したよ

 

孝「え?」

 

「病院という危険な場所に何故行ってしまったのか」

 

孝「それはあのお婆さんを救うためじゃ?」

 

「違う、今じゃ手に入りにくい医薬品を確保するためだ、今の世の中じゃ風邪やインフルになっても致命傷だ」

 

孝「だとしても何で後悔なんて………」

 

「俺が死を選びかけたからだよ!」

 

孝「なっ!?」

 

コータ「拓真………」

 

「あの時、天井に皆が行った時点で既に侵入を許していた、もし孝達が登るのが遅かったら俺は迷わず刀で首を斬っていた」

 

孝「だけど結果は皆生き残ったじゃないか!それのどこに問題がある!?」

 

「問題しかないな、これ以上は無駄だ、後はお前の頭で考えてみろ」

 

 

俺は席を立ち孝達から離れる

 

ほんとはわかっていた

 

病院の危険度もリスクも

 

でもどこかで楽観視していた

 

もしくは中岡さんの覚悟にあてられたか

 

俺も平和ボケが来たか?

 

いい加減切り替えろ神崎拓真

 

ここは戦場だ

 

情は捨てろ

 

これ以上は危険だ

 

”あの日”だってそうだったろう

 

ここから先は軍人

 

国連軍対バイオテロ部隊 隊長神崎拓真として逝け

 

そうじゃないと次は死ぬ

 

 

 

 

 




次回『救援と慈悲』
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