世界の崩壊とリセット   作:金剛時雨

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第21話 救援と慈悲

俺は孝達から離れる

 

すると遠くで沙耶達が話していた

 

内容から察するに俺やコータ、孝の事だろう

 

俺は軍人だから、そこの所の精神の抑制はまだ何とか持つ

 

だがコータと孝は一般人だ

 

現状を受け止めきれているのは

 

沙耶・冴子・麗・静香先生・明音・メアリー

 

沙耶はご両親と再会できたから

 

冴子はあの神社で

 

麗はコテージだろう

 

静香先生は”大人”と”医者”かな

 

あのお婆さんの件で少し危険だが今はいいだろう

 

明音とメアリーは軍人としての慣れと

 

今までの俺とのやり取りかな

 

まだ把握できていないのは智江か

 

まぁそこは孝に任せよう

 

できれば孝の精神安定剤になってくれたらいいけど

 

問題はコータと中岡巡査か

 

少なくともお互いに好意があるなら

 

できればここを出る前には解決してほしい

 

さてこちらの問題もだけど

 

もう一個問題がある

 

俺は双眼鏡を空に向けながら覗く

 

そこには何かが光っている

 

というより反射している

 

形状からして無人偵察機だな

 

しかも国連軍のじゃない

 

そうなると自衛隊だが

 

屋上のSOSに気付いてる可能性があるな

 

これは俺達が来る前に出て行った先輩婦警が残したものらしい

 

この場合最悪自衛隊と国連軍がかち合う事になるな

 

 

中岡「行ってしまうんですか、やっぱり」

 

コータ「!」

 

「・・・・・」

 

コータ「小室と宮本さんの家族を捜さないといけないんで」

 

中岡「あ、あの、あのの、コータさんだけでも残っていただけませんか」

 

コータ「え、あの………」

 

中岡「あ、あさみにできることならなんでも、どんなことでもしますから」

 

コータ「ッ!?」

 

「・・・・・・・」

 

コータ「……………ぼくには仲間がいますから」

 

中岡「!」

 

二人以外『・・・・・・・・』

 

コータ「ご、ごめんなさい!」

 

中岡「………いいんです、あさみ的にもダメだろーなーっておもってましたから!!」

 

 

コータの判断は間違っていない

 

けど、これはどうにかしないと

 

2人が不味い事になる

 

そう思っていると聴きなれたローター音が聞こえてきた

 

 

コータ「これはヘリの音?」

 

沙耶「拓真!」

 

「わかってる」

 

明音「拓真、これ」

 

「ありがとう」

 

 

明音から受け取った無線機で

 

今来ている部隊に声をかける

 

 

「こちらグリム・リーパー、現在接近中の部隊、応答しろ」

 

ネイサン『こちらデーモン!ただいま現着!これより護衛機による掃射を開始します!』

 

「待っていたよ副官」

 

ネイサン『ご無事でなによりです!総隊長』

 

「ああ、一回死にかけたがな」

 

イヤァァァァァァ!?

 

「!?」

 

ネイサン『総隊長!今の悲鳴は!』

 

「わからん!コータ!」

 

コータ「あさみさん!」

 

 

俺達が駆け付けると泣き喚きながら立っている中岡巡査がいた

 

窓の外を見ると《奴ら》になった婦警がいた

 

おそらく彼女の先輩婦警なのだろう

 

 

中岡「先輩!松島先輩!!なんで、なんでぇぇ!?本署に行けなかったんだ……出て行ってすぐにやられちゃったんだ!!」

 

コブラ『こちらコブラ1より護衛機各機は駐車場に存在する対象を掃討せよ!』

 

「しまっ!?コブラ隊攻撃中止!」

 

 

俺が慌てて攻撃中止を命令するが間に合わず

 

数機の護衛機から一斉にM230機関砲による30mmの雨が降り注ぐ

 

当然先輩婦警がいる所にも機関砲は向けられた

 

 

「全員窓から離れろ!コータ!早く彼女を連れてこい!」

 

コータ「!あさみさん!そこから離れて!」

 

中岡「ッ!?あぁ、松島先輩!?」

 

ネイサン『!?コブラ隊攻撃中止!中止せよ!』

 

「もう遅い」

 

 

慌てたような声が無線機から聞こえてくるが

 

すでに手遅れだ

 

先輩婦警は30mmの弾丸を食らって原型を留めていない

 

しかもそれを限りなく近い位置で中岡巡査は見てしまった

 

自身の先輩の最後を《奴ら》となりミンチにされるところまで

 

これはかなり不味いかもしれない

 

 

中岡「いや、いやぁ」

 

コータ「あさみさん………」

 

中岡「嫌ぁぁぁ!」

 

コータ「あさみさん!どこに行くつもり………」

 

中岡「いまさらいい人ぶらないでよ!このネガネブタ!

 

コータ「え…………」

 

中岡「あさみは!あさみで!あさみなんだからッ!」

 

 

そう言って彼女は去っていった

 

彼女の精神はほぼ壊れかけている可能性がある

 

だが彼女の精神を繋ぎとめる事ができるのはコータだけだろう

 

幸いなのは救助部隊が来た事ぐらいか

 

 

ネイサン『総隊長、状況は?』

 

「今ここを纏めていた婦警が先ほどの掃射で精神が不安定化している、化け物になった関係者のミンチも見てしまった」

 

ネイサン『それは………申し訳ありません』

 

「貴官が謝る必要はない、彼女には頼れる男がいる、彼に託すよ」

 

ネイサン『使えるので?』

 

「俺が信頼する男だ、文句あるか?」

 

ネイサン『いえ、そこまで言う方ならむしろ会ってみたいです』

 

「きっと気に入るさ、さて仕事の話だ規模は?」

 

ネイサン『はっ!1個小隊50名です』

 

「護衛機には少しだけ掃討を待つよう伝えてくれ、燃料は大丈夫か?」

 

ネイサン『問題ありません、待機させます』

 

「では、第1分隊から順に屋上に降下しろ、俺も今から向かう」

 

ネイサン『了解!デーモンアウト!』

 

「さて、後は」

 

 

俺は後ろを振り返る

 

警察が宛にならないのはここの避難民は理解してしまった

 

ここでネイサン達が来てなかったら大なり小なり騒いでたかもしれないが

 

先程の出来事で呆然としている

 

一方こっちは高城邸で似た事があったからか

 

割と平然としている

 

意外と君達胆が据わってるね?

 

 

「さて俺達も行動に移すか、明音、メアリーついてこい、迎えに行くぞ」

 

明音・メアリー『了解!』

 

「孝、コータ、冴子達を連れて武器や物資を回収しろ、出発の準備だ」

 

孝「わかった」

 

コータ「・・・・・・」

 

「コータ!」

 

コータ「!?な、何?」

 

「装備を整えたら中岡巡査の所へ行け」

 

コータ「え?で、でもメガネブタって言われたし、無理だよ」

 

「その程度で折れるな!彼女の場合は親しかった人が《奴ら》になった事を知っただけじゃない、機関砲で処理される瞬間も見てしまってるんだ、さっきだって精神的に正常じゃなかったはずだ、錯乱して言ったかもしれないだろ?」

 

コータ「………確かにそうかも」

 

「コータが中岡巡査の事が好きなら支えてやれ、漢だろ?わかったか!」

 

コータ「サー!イエス!サー!

 

(とは言ったものの俺もここを出る前には用件を済まさないとな)

 

「これは孝にも言える事だ、漢なら覚悟を決めろ」

 

孝「突然どうしたんだよ」

 

「智江の事だ」

 

孝「ッ!?はぁ、まぁ拓真なら気付いてもおかしくないか、わかったよ」

 

「冴子達も状況は理解できてるか?」

 

冴子「大丈夫だ」

 

麗「私も」

 

沙耶「私も問題ないわ」

 

智江「私も大丈夫」

 

静香「大丈夫よ~」

 

「よし、なら行動開始!」

 

 

俺達は小走りでそれぞれの役目を果たしに行く

 

移動の傍ら1組の老夫婦が別の屋上の入り口に向かうのが見えた

 

確か中岡巡査と同じ場所ではないか?

 

俺はある事に気づき一瞬悩む

 

確か屋上自体はフェンスはあるが繋がっていたはず

 

早まらない事を祈るしかないか

 

屋上に着くと数機のヘリがホバリングしていた

 

 

「屋上はクリアだ」

 

ネイサン『了解!総員降下開始!』

 

 

ネイサンの命令で順次隊員が降りてくる

 

輸送ヘリにはドアガンがいるため

 

掃討作業に参加させる

 

その後は護衛ヘリと共に一時離脱させる

 

後はここを制圧させて基地化させる

 

そこは後詰の部隊に任せる

 

全員の降下を確認してネイサンが近づいてきた

 

 

ネイサン「総隊長!」

 

「ネイサン准将、無事でよかった」

 

ネイサン「我々は基地勤務と中東での件があったので被害は最小限に留めれました」

 

「そうか、部隊はすぐに動かせれそうか?」

 

ネイサン「問題ありません、ご指示を」

 

「狙撃班を編成、屋上から周辺の監視、第2分隊以降は2人1組でモール内を制圧しろ、第1分隊は俺と来い」

 

全員『了解!』

 

「ネイサン、アレはあるか?」

 

ネイサン「………ありますが誰に使うのですか?」

 

「来ればわかる」

 

ネイサン「了解です、衛生兵!例の物を用意してついて来い!」

 

衛生兵「了解!」

 

「俺が先行する、近くまで来たら待機だ、合図したら来い」

 

ネイサン「わかりました」

 

 

俺は明音とメアリー、ネイサン含む第1分隊の部下達と共に移動する

 

俺達が向かった先はあの夫婦が向かったと思われる場所

 

俺の勘が悟っている

 

彼らが何をしようとしてるのか

 

 

コータ「あさみさん!!

 

中岡「え………」

 

ネイサン「総隊長、彼が?」

 

「ああ、だが貴官も知っているのではないか?」

 

ネイサン「え?ッ!?あの時、射撃場にいた日本の学生ですか!?」

 

「そうだよ、貴官が喧嘩を吹っかけて勝った奴だ」

 

ネイサン「その話を思い出させないでください」

 

「すまん、だけど頼れるだろ?」

 

ネイサン「ええ、あの時の時点で狙撃技術、集中力はかなりの物でした」

 

「ああ、だが今は漢を見せる時だがな」

 

コータ「ゼハー………ゼハー………」

 

ネイサン「帰ったら体力づくりからですかね?」

 

「同感だ」

 

中岡「コータ……さん?」

 

コータ「あさみさん、一緒に行こう!!

 

中岡「あ………」

 

 

コータの告白に中岡巡査があまりの状況にテンパってる

 

ネイサンや部下達は無言で事の結果を見守っている

 

あの老夫婦は懐かしかった過去を見ているかのように微笑んでいる

 

そして俺自身もコータの幸せを願っている

 

親友として、戦友として

 

この地獄を乗り越えるには支えてくれる人が必要だ

 

無論その相手を自身が支えるのも当然だ

 

ここでコータと孝にパートナーが見つかれば

 

今後の戦局で有利になるはずだ

 

まぁこの辺りは当人次第だ

 

 

中岡「………連れて行ってください!あさみも仲間にしてくださぁい!あさみ、コータさんと一緒にいたいです!!

 

「………ふぅ」

 

ネイサン「よし!」

 

コータ「た、拓真!」

 

「すまん、覗くつもりはなかったんだけどな」

 

コータ「いいや、大丈夫だよ」

 

「中岡巡査、コータは良い奴だ、支えてやってくれ」

 

中岡「あさみで大丈夫です、わかってます、コータさんと最後までいますから!」

 

コータ「あさみさん………」

 

「お暑い事で、コータみんなにあさみさんが加わる事を伝えてこい」

 

コータ「良いけど、拓真は?」

 

「俺はする事があるんだ」

 

コータ「わかった、行こうあさみさん」

 

あさみ「はい!」

 

 

コータ達が去るのを見送ると老夫婦の方を向く

 

男性の方はまだ元気そうだ

 

女性の方は先程よりは元気だ

 

まだ男性に手伝ってもらって立っている状態だが

 

 

お婆さん「いいですねぇ、若い方は」

 

お爺さん「なに、昔はわしらも負けておらんかったよ、それに君はわしらに用があるのだろう?」

 

「はい、まずは謝罪を、あの時お二方の前で切り捨てるような選択をしてしまってすみません」

 

お婆さん「気にしていませんよ、間違った選択ではありませんから」

 

お爺さん「そうです、結果的には君は取りに行ってくれた、むしろ感謝している」

 

「そう言って頂けてもらえると助かります、してお二人に聞きたいのですが……」

 

お爺さん「わかっているよ、君の質問は」

 

お婆さん「ええ、そのために私達はここにいますから」

 

「そうですか、そこの淵から飛び降りるつもりだったんですね」

 

お爺さん「これ以上年寄りが生き続けるには厳しい世界になった」

 

お婆さん「私もこの体ですから」

 

「わかりました、衛生兵!」

 

衛生兵「はっ!」

 

 

衛生兵が持ってきた錠剤を2人に見せる

 

この状況で死ぬ事を止めていない事

 

そしてその薬が何なのか

 

お爺さんの方は理解できたようだ

 

 

「自決剤です」

 

お爺さん「いいのかい?」

 

「そこから飛び降りるのはいくら2人一緒にでも痛みはあります、もしかしたら死にきれないかもしれません、しかしこの薬なら痛み無く眠るように逝けます」

 

お婆さん「どうしてそこまで?」

 

「これは俺なりの謝意と慈悲です」

 

お爺さん「慈悲?」

 

「この世界から苦しまずに死ぬ事です」

 

お爺さん「なるほど、わかった、ありがたく使わせてもらうよ」

 

お婆さん「ええ、ありがとう」

 

「いいえ、最後にお願いです、一応アレにならないよう死亡確認後、頭に銃を撃たせてください」

 

お爺さん「ああ、問題ない」

 

「それではお別れです」

 

お爺さん「最後に君みたいな子に会えてよかったよ」

 

お婆さん「元気でね」

 

「はい、お二人に良き来世を、幸せな世界に行く事を願っています」

 

 

会話を終えると2人は薬を飲み

 

手を繋ぎながら寝そべると少し呼吸をしてから静かに息を引き取った

 

できればベットで寝かせたかったが残念だ

 

衛生兵に死亡確認を取らせる

 

彼らが頷くと服にしまっていた拳銃で2人の頭に撃ち込む

 

正面ではなく側頭部に撃つ

 

これでせめて綺麗な状態で一緒にいられる

 

 

「2人の遺体を袋に収容しろ、絶対に離れ離れにするな」

 

ネイサン「はっ!必ずや!」

 

「………………これで良かったんだよな」

 

ネイサン「これは彼らの意思です、それに総隊長は少しでも痛みがない方法を提示しただけです」

 

「わかっているよ、さぁ設営準備に入ろう」

 

??「なめんじゃねぇえっ!」

 

ネイサン「今の声は?」

 

「急ぐぞ!」

 

ネイサン「はっ!」

 

 

この声の結果がどれだけ残酷だったのか

 

それはのちにわかる

 

だがこの時点の俺にはわからなかった

 

残酷な結末に……………

 

 

 

 

 




次回『犠牲者』
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