・モール内・第1小隊第5分隊第3班兵士side
俺達はネイサン准将の命令で総隊長が見つけた拠点候補に来た
到着時に少し問題があったようだが
総隊長の指示でモールの屋上に降下した
俺達は国連軍対バイオテロ対策部隊
第1中隊第1小隊所属だ
周りからは"死神の尖兵"とか"死神の最精鋭部隊"と呼ばれている
どちらかというと前者が多い
"死神"、この対策部隊は複数の中隊で構成されている
その全ての指揮権を有しているのが
俺達の総隊長、神崎中将だ
国連軍内で彼の事を知らない者などいない
同時に彼の二つ名"死神"
傭兵や各国家軍上層部が戦場での彼の行動から付けた二つ名だ
本人もそれを察したのか作戦時の名称も
死神にちなんで"グリム・リーパー"と呼称しだした
だが誰もそれを咎める者などいない
たとえ部隊外の人間が何か言ったら俺達が絞める
それだけ俺達にとって総隊長は大切な人なんだ
俺達第1小隊は各小隊の中で1番、総隊長に忠誠を誓ってると言ってもいい
命すらかけれるレベルでだ
この惨事が起きる前までは半年に一回非公式の序列戦があった
俺達に勝ったら第1小隊へ異動
負けた奴が勝った奴が元いた小隊に異動
それが嫌だから俺達は猛特訓する
そのため練度は国連軍トップクラスに入っている
説明はここまでにして今俺達がしている事だが
総隊長の情報だとこのモールの生存者は10人前後
出入口は全て封鎖されているようで
化け物の存在は確認されていない
しかしこのモールはそれなりに広い
どこかに侵入口があったり
確認されていない生存者がいるかもしれない
そのため2人1組で出入口の確認と生存者の探索をしている
兵士「なぁお前気づいたか?」
「何をだ?」
兵士「総隊長達だよ」
「達って事は光城大佐とドレイク大佐の事か?」
兵士「ああ、お前だって知ってるだろ?大佐達が総隊長の事を好きなの」
「まぁな、部隊内で賭けをしてるぐらいだもんな、どっちが付き合うかって」
兵士「そうそう、それにこの間のアンケート覚えてるか?」
「ああ、どっちかと付き合うかと、両方と付き合うだっけ?」
兵士「そのアンケート集計した結果、俺達第1小隊全員が"両方と付き合う"に投票してたんだ」
「まぁみんな考える事は同じだろうさ」
兵士「だな、俺達第1小隊だけじゃない、対バイオテロ部隊全員の総意」
『総隊長に人生に見合った幸せを』
「あの方はあの若さで十分国連に奉仕してきた、そしてこれからもだ」
兵士「ああ、それに俺達にも優しい、そんな良い人が辛い人生で終わっちゃいけない」
「できれば大佐達との結婚式とか見てみたいな!」
兵士「そうなったら部隊総出だろうな」
そんな話をしながらモールの1階の端の方まで来た
周囲に人影はいない
総隊長が言っていた生存者達は2階にいる
なら他に人はいなさそうだ
道中他の班と行動しながら見たが人や化け物が入りそうな出入口はなかった
先ほどから異常なしの報告が他の班からも来ている
こちらもそろそろ報告するとしよう
「分隊長、こちら第3班、異常ありm……」
???「なめんじゃねぇぇ!」
兵士「おい!今の声」
「危険かもな」
分隊長『今の声はなんだ?3班状況報告!』
「こちら3班、生存者グループで何か問題が起きたようです」
分隊長『了解した、確認は可能か?』
「可能です」
分隊長『では確認してきてくれ、私は小隊長に連絡する』
「了解、アウト」
兵士「よし、いくぞ」
「ああ」
俺達は銃を構えながら進む
この先は確か非常口があったはず
見張りは俺達で
この探索が終われば就く予定の場所
すると柱から腕が見えた
「おい!ここで何をしている?」
??「・・・・・・」
兵士「何か様子がおかしくないか?」
「確かに、いやちょっと待てよ?確かこの先は非常口しかないはずじゃ……」
??「……ヴァァァ!」
「ッ!?化け物!?」
兵士「なんでだよ!扉は全て塞いでたんじゃないのかよ!?」
「まさかさっきの叫び声って、誰かここから出たんだ!」
兵士「それで開けっ放しとか最悪すぎる!」
「分隊長!こちら3班!非常事態発生!」
兵士「しまっ!?銃を握りやがった!?」
分隊長『どうした?何があった!?』
「モンスターの侵入を確認至急応援を!あっ!クソッ」
兵士「俺の事は気にするな!」
「黙って奴を殺せ!」
兵士「手が離せないんだ!」
彼は完全に囲まれている
失敗した
完全に塞がれていた事で油断してしまった
そのせいで判断が遅れ彼は銃を掴まれ
ナイフを取ろうにも化け物に襲われていてそれどころではない
こっちは分隊長に連絡を入れていたから援護に回れていなかった
そして俺の横には既に化け物がいた
俺の腕を嚙みながら
……ああ、総隊長、俺達はダメみたいです
最後までついていけず申し訳ありません
すると目の前の化け物の頭の上半分が無くなった
「え?」
総隊長「すまない!遅くなった!」
「総隊長!?」
ネイサン「各班援護射撃続行!総隊長達に当てるなよ!衛生兵は彼らの救助を!」
「な、ぜ?」
総隊長「部下を見殺しにするわけないだろ?生きているなら助けに行くに決まってる、たとえそれが地獄でもな」
ああ、本当にこの人高校生かよ
この世界のどんな人間よりもかっこよすぎだろ
俺は涙を流しながら総隊長の戦闘を見た
sideout
・モール内・神崎拓真side
先ほどの叫びの元へ
ネイサン達と向かっていた
「あの辺りは確か第5分隊だったな?」
ネイサン「はい、そうです、先ほど第3班が確認に行きました」
「……何か嫌な予感がする」
第5分隊長『こちら第5分隊!第3班が接敵!モンスターの侵入を確認しました!』
「ッ!?、こちらグリムリーパー、第3班の現状は?」
第5分隊長『侵入の報告を最後に通信途絶しました』
「チッ、グリムリーパーより第1小隊全体へ、緊急事態発生!狙撃班以外の第1分隊と第5分隊は至急現場に急行、到着した班から攻撃開始!既に第5分隊の隊員2名は戦闘中、負傷の可能性あり、衛生兵は救助の用意!」
第1分隊長『第1分隊了解!』
第5分隊長『第5分隊了解!』
ネイサン「総隊長!第3班が応答がないという事は……」
「わかっているが彼らは私の部下だ、生きているのなら助ける、もしなっていたら殺す、ただそれだけだ」
ネイサン「承知しました」
「それよりも先ほどの叫び声的に生存者グループに何かしら問題が起きていないか気がかりだ」
ネイサン「誰か向かわせますか?」
「いや、先に《奴ら》を処理してからだ」
ネイサン「了解」
2階の通路を走っていると孝達が現れた
あさみとコータもいる所を見ると話は終わっているな
先ほどの騒動で来たのだろう
孝「拓真!何があった?」
「《奴ら》が侵入してきた」
孝「何だって!?」
「落ち着け、今俺の部隊が対処に向かってる」
孝「俺達に何かする事はないか?」
「なら生存者グループを見てきてくれ、さっきの叫び声からしてあのグループで何かしらの問題が起きてるかもしれない、明音、メアリー援護を頼む」
明音「わかったわ」
メアリー「わかりました」
孝「わかった」
ネイサン「総隊長は頼れるご友人を持ちましたな」
「まぁな、行くぞ」
ネイサン「はっ!」
現場に着くと既に第5分隊が射撃を開始していた
ただ近くにあったエスカレーターからも上ってきており
数が減る様子はない
原因の非常口はまだ開いたまま
近くで壁を背に抵抗している隊員は第3班だろう
さっき通り過ぎた小道の先は非常階段だったな
「第5分隊はエスカレーター付近を制圧しろ、第1分隊の半数はネイサン准将の指揮でここで援護、残り半数は後方の非常階段から1階へ向かい掃討しろ、侵入口を塞ぎ数が減ってきたら第3班の2人を救出する」
ネイサン「総隊長はどうされるのですか?」
「俺か?俺はこうする」
ネイサン「総隊長!?ここはモールの2階ですよ!?」
「気にせずさっさと行動に移れ!」
ネイサンの静止を無視し俺は2階の柵を乗り越えて1階に飛び降りる
着地して至近の《奴ら》に紅桜を抜刀しながら切る
まずやる事は非常口の封鎖
その後第3班の救出
最後に殲滅だが
非常口の周りの数が多い
先に第3班の周辺を掃討しよう
その間は彼らに任せよう
「こちらグリムリーパー、コブラ隊応答しろ」
コブラ『こちらコブラ1、状況は把握しています』
「侵入口は見えるか?」
コブラ『はい、射撃位置にもついています』
「流石だ、攻撃開始!非常口周りの敵を掃討しろ、ただし扉への攻撃は禁止だ、閉めれなくなる」
コブラ『無茶なオーダーですな』
「余裕だろ?」
コブラ『総隊長のご要望です、任せてください!』
「頼む、グリムリーパーアウト」
通信しながらも《奴ら》を切り続け3班の元に向かう
通信を終えてからは非常口の方から機関砲の音に釣られて
《奴ら》が非常口の方に向かいだした
それを見ながら隊員の腕に嚙みついている《奴ら》の頭の上半分を切り飛ばした
そのままもう1人の隊員にいる《奴ら》も切る
兵士「え?」
「すまない!遅くなった!」
兵士「総隊長!?」
ネイサン「各班援護射撃続行!総隊長達に当てるなよ!衛生兵は彼らの救助を!」
兵士「な、ぜ?」
「部下を見殺しにするわけないだろ?生きているなら助けに行くに決まってる、たとえそれが地獄でもな」
衛生兵「総隊長!」
「今のうちに彼らを連れてエスカレーター付近まで後退しろ」
衛星兵「了解!」
彼らが下がるのを見ながら非常口に向かう
途中の障害物は切り刻み扉を閉める
外側の《奴ら》は閉められた事に気づいたのか
ドンドンッと叩く音は聞こえる
一方内側の《奴ら》は第1,5分隊によって掃討されていた
3班の隊員2人はエスカレーター横で衛生兵に見てもらっている
ただ衛生兵の顔からして手遅れのようだ
俺は近づきながら拳銃の弾を確認する
残弾はある
だが何発も撃つ気はない
2発で彼らの頭にそれぞれ撃ち込む
衛生兵「総隊長」
「2人ともダメか?」
衛生兵「・・・・・」
「……そうか」
衛生兵「総隊長、薬はあります」
兵士「総隊長!」
「なんだ?」
兵士「いくつか、お願い、聞いて、もらえます、か?」
「ああ、もちろんだ」
兵士「ゴホッ総隊長は光城大佐とドレイク大佐とお付き合いされましたか?」
「つい先ほどだがな」
兵士「やっとですかハァ、みんな気づいてましたよ、彼女達の気持ち」
兵士2「部隊内で賭けをするほどでしたよゴフッ」
「それは私が悪かったな」
兵士2「悪い良いはあまり関係ない気がしますが」
兵士「そこで、です、ネイサン准将」
ネイサン「なんだ?」
兵士「賭けは我ら第1小隊の1人勝ちです」
ネイサン「そうだな」
兵士「なのでできればでいいです、最高の墓を頼みます」
ネイサン「任せろ、金がかかった墓を建ててやる」
兵士2「総隊長は彼女達を幸せにしてくださいよ?」
「当たり前だ」
兵士「もちろん、総隊長もです、あの世で他の戦友達と見てますから」
「ああ」
兵士「最後、ですゴホッゴアホッ!?」
兵士2「俺達の最後、総隊長に、委ねたいです」
「……そうか、わかった、最後は私が決めよう」
これは彼らの意思だ
薬で楽にさせる事もできるだろう
だが彼らにはそれよりも
俺は薬室に弾丸が入っているか確認する
次に周りの部下達を見る
全員安全装置を外していつでも構えれるようにしている
だが顔は焦りが見えている
命令されたとして仲間を撃ち殺せるか?
いくら練度が高くても
その過程の苦楽を共にした仲間を殺すには覚悟がいる
だがその責任は俺がとる
「ふぅ、隊員2名の感染を確認、規定により感染者の処分を開始する」
ネイサン「了解しました総隊長!総員整列!敬礼!」ビシッ
「貴官らのこれまでの奮闘に感謝する、どうかあの世で先に逝った英霊と共に見守っててくれ」
兵士「こちらこそ共に戦えて光栄でした!」
兵士2「総隊長、お元気で!」
「ッ!……これより処分を執行する!」
その直後、2発の銃声がモール内に響いた
衛生兵以外の隊員はネイサンの指示で敬礼し
衛生兵は死亡の確認を取ってから黙祷した
俺は生気を感じなくなった2人を見る
ウイルスが蝕んでいく中
最後は笑顔だった
これは仕方ない事だ
いくら出入口の完全封鎖ができているとはいえ
こういう事を想定しなければならない
だとしても彼らの死に
俺が関わっているのではないか?
俺が彼らを死へ導いたのではないか?
俺が彼らの"死神"になってしまったのではないか?
そう思って仕方ない
だがまずはこの原因を作った相手に復讐をしよう
彼らは望んでいないのだろう
だがこれは俺なりのケジメなんだ
「衛生兵、彼らの収容を頼む、ネイサン以外の各分隊は当初の予定通りに頼む」
ネイサン以外『了解!』
ネイサン「自分はどうしますか?」
「ついて来てくれ、ケジメをつけに行く」
ネイサン「了解しました!」
俺は最後に彼らを見てから
屋上に足を進めた
次回『復讐』