あれから1時間が経ち、資材と部隊が到着した
先ほどまで第1小隊のみで作業していたが
これで作業速度が上がるだろう
もっともこれから起きる事態の事を考えれば悠長に考える事はできないが
兵士A「この機材はここに置け!」
兵士B「了解!」
兵士C「非常用発電機の設置を急げ!」
兵士D「手すきの隊員でまだ屋上に残っている廃車をどかせ!手が足りてないぞ!」
兵士E「了解した、分隊集合!作業に入るぞ!」
周りで戦闘部隊と共に来た設営部隊が忙しなく動き回っている
屋上には非常用発電機に屋上の廃車を下層の階に完全撤去作業中
空いたスペースにヘリの発着場と整備拠点の作成
モール内では部隊の宿舎や簡易前線司令部の作成
その中、俺達はモール内のカフェにいる
念のため人払いもしている
「それにしてもまさか援軍があなたとは思わなかった、ジョナサン中佐」
ジョナサン「私もです閣下」
「だから閣下は………いや、今回はあってるな」
ネイサン「そうですな」
ジョナサン「改めて日本本州派遣軍第2大隊、大隊長のジョナサン・ブレンバ中佐です」
ネイサン「私は対バイオテロ対策部隊副隊長ネイサン・グレイ准将だ」
「俺はいらないな?階級が中将に二階級特進したぐらいだな」
ジョナサン「これで正式に閣下と呼べるようになりましたがいかがです?将官の地位は?」
「嫌味だよね?言い訳ないだろ?二十歳にもなってない高校生が将校だぞ?」
ネイサン「そうは言いますが対バイオテロ部隊の総数1個大隊を指揮下に収めてる高校生も存在しませんよ?」
「そ、それはそうだがなぁ」
ジョナサン「仕方ありませんよ閣下は国連軍内に多くのシンパを抱えていますから」
「………………この話は辞めだ辞め!降参だ」
ネイサンとジョナサンはお笑いながら頭を下げている
元々ふざけた側面もあったから気にしていないが普通はおかしいんだ
まぁそれよりもだ
現状の再確認と現在向かっている自衛隊の対処をどうするか
それに彼らの決断も聞かないとな
「それじゃあ、状況の再確認をしよう」
ネイサン・ジョナサン『はっ!』
「ネイサン准将、現在の国連軍の動きをもう一度教えてくれ」
ネイサン「はっ!まず各国の状況ですが英国は南部を完全制圧し北部を掃討中、総司令部も現在は南部に移動済みです、部隊も国連軍と欧州各国の残存兵力を集めた欧州連合軍の合同で欧州解放作戦の実施に入っています、米国も同様です、また南米大陸とアフリカ大陸は進展なし、オーストラリア大陸は部隊が到着した所です、それと詳しい状況はわかりませんがロシア軍との通信が確立しました」
「ん?ロシア軍?ロシア政府ではなく?」
ネイサン「はい、政府機能は完全に機能不全のようです、政府首脳部の安否も不明です、現在は各基地や海軍艦艇を避難所や司令部として治安維持と防衛に努めているようです」
「それについて総司令部の命令は?」
ネイサン「判断に悩んでいるようです、なにせユーラシア大陸は広大です、なので現状は欧州解放を主として進行状況次第でロシア解放も視野に入れる方針で話は進める模様です」
「それが妥当か、日本の完全掃討ができればそこを拠点に中国方面かウラジオストク方面から動けれるのだがな」
ネイサン「ですね、それとその日本の動きですが本州以外は配備完了との事です、本州は床主国際空港を補給拠点兼前線司令部として整備が完了しました」
「説明ありがとう、さて次の議題だがこちらに来ているお客さんについてだ」
おそらく自衛隊の兵力は1個分隊ほどだろう
現状どれぐらいの自衛隊員がアレに変わったかは不明
それは他国の軍隊も例外じゃない
幸い国連軍はほとんど被害はなかった
完全になかった訳ではないが指揮系統が壊滅するような事もなかった
話を戻すがこちら側が把握しているのは北海道、四国、九州に移動可能な部隊、艦船は移動完了済み
離島に駐留している部隊は現状維持と国民保護
本州の部隊は一部の基地は壊滅したらしい
無事な所はそのまま駐留して中継基地兼反攻拠点として機能するようだ
現在向かっている部隊については沖合の輸送艦から来ているとの事だ
編成は輸送ヘリ2機、観測ヘリ1機、護衛の攻撃ヘリ2機の計5機
ネイサン「ブレンバ中佐、携帯式対空ミサイルはいくつ持ってきた?」
ジョナサン「はっ!各分隊に1名ずつと予備2本です」
「多すぎないか?」
ジョナサン「当面は駐留する予定ですので多めに持ってきたんです、他にも対戦車ミサイル、グレネードランチャー、火炎放射器もあります」
「まるで戦争だな」
ネイサン「ある意味では戦争ではありませんか?相手がかなり強敵ですが」
「確かにな、痛みも感じず死の恐怖を感じない無敵のような元人間か」
ネイサン「最初に聞いた時はまるでフィクションの世界に迷い込んだ気分でした」
「俺もだよ、だが目の前でクラスメイトが喰われるのを見たら一瞬で受け入れたよ」
ネイサン「閣下は最初からこの地獄を通ってきたのでしたな」
「ああ、まぁ幸いというかアレの頭を撃ち抜けば殺せる事だな」
ジョナサン「ええ、もっとも頭を撃ち抜いても生きてたら我々はあの屋敷で死んでたでしょうな」
「違いない」
そこで3人で笑った
久々にできた余裕だ
笑えるうちに笑わないとな
もっとも彼らが来てくれた安心感からくるものもあるけど
さてそろそろ彼らの出迎えをしなくてはな
洋上には支援用に待機中の艦隊がいる
要請すれば航空支援ぐらいはしてくれるだろう、燃料次第だが
それに後詰の設営要員と機材を運んでくる輸送隊に護衛機がいる
間に合えば使えるだろう
「さてでは自衛隊の救助部隊のお迎えをしようか」
ネイサン「迎撃しますか?」
「いきなり殺意高いな」
ネイサン「閣下の事を考えれば来てほしくなかったのでは?」
「確かにそうだが民間人が邪魔だしな、回収してもらわないとそれに政府要人の死亡報告の写真も彼らに渡さないとな、ジョナサン中佐写真はできているか?」
ジョナサン「はい、こちらの封筒に入っている物がそうです」
「ありがとう、では彼らへの攻撃は禁ずる、いいな?ネイサン准将」
ネイサン「了解!しかし用意だけは構いませんね?」
「許可する、我が部隊とジョナサン中佐のとこの特技兵*1を10名借りるぞ?」
ジョナサン「問題ありません、すぐ招集します」
ネイサン「こちらはいつでも大丈夫です」
とりあえずは大丈夫だろう
これで何かあっても対応できる
できればその"何か"はあってほしくないけどな
さてではそろそろ返答を聞きに行きますかね
明音とメアリーは既にこちら側だから除外
冴子、麗、沙耶はこちら側に来ると明言した
残るはコータとあさみさん、孝、智江、静香先生
まず聞くのは…………
「貴官に聞くべきだなネイサン准将」
ネイサン「な、何をです?」
「静香先生の事だ、好意を抱いているんだろ?」
ネイサン「ええ、しかし彼女は………」
「こちら側に引き込めばいい、衛生兵に聞いた感じ腕は良いと評価は高い」
ネイサン「・・・・・」
「自衛隊の件が片付けば俺達はここを出る、それまでに決めてくれ」
ネイサン「了解です、しかし彼女がこちら側に来るのを拒否する可能性があるのでは?」
「その時はその時さ、俺は諦めれるが貴官が諦めれるかだ、もっともその心配は杞憂な気がするのだけどな」
ネイサン「そうでしょうか?」
「これから聞きに行く、結果は後で貴官にも伝えるから安心しろ、それまで屋上で警戒を頼む」
ネイサン「はっ!」
「ジョナサン中佐は先ほど伝えた通りに兵の手配と自衛隊の接近を各部隊に伝えてくれ」
ジョナサン「了解!」
俺は2人に後を頼み屋上から離れる
最初は静香先生に聞きに行こう
彼女は生存者グループの所にいた
先の件で刺された患者の容体を見ているらしい
どうも衛生兵が近づくと怯えてしまうから彼女に一時的に任せているとの事
診察を終えたのを確認して静香先生を呼び出す
周りに人がいない事を確認して話を切り出す
「彼の容体はどうです?」
静香「とりあえずは大丈夫よ、刺し傷もそこまで深くなかったのが幸いね~」
「それは何より、この後来る自衛隊にも彼の容体について報告をお願いします」
静香「そろそろ来るという事は………」
「そうです答えを聞きに来ました、こちら側に来ますか?」
静香「・・・・・」
「前回も言ったかもしれませんが断ってくれてもかまいません、現在で医療経験豊富な静香先生なら救助されてからも引っ張りだこでしょう」
静香「拓真君、私ねあの人の事好きになったの」
「あの人というとネイサン准将の事ですか?」
静香「ええ、拓真君からあの老夫婦がどうなったか教えてもらってショックで沈んでた時に彼が話しかけてくれたの、彼から感じる優しさに温かみを感じて彼の近くにいたいと思ったの、幸い私は両親共に他界しているし親友はリカだけだから日本人としての未練はあまりないの」
「わかりました、では静香先生は本日より国連軍の人間になってもらいます、よろしいですね?」
静香「ええ、もちろんよ」
「結構、ただ俺達の目標が終わるまでは付き合ってくださいね?最終的には俺も原隊に復帰するのでネイサン准将とは一時的に離れてしまいます」
静香「そこは心配しなくていいわよ~最後まで付き合うって決めてるから~」
「ありがとうございます、では自分は他の連中に聞いてきますので」
これで静香先生はこちら側になった
ネイサンとの関係は彼らの問題だ
彼にはこちら側に来るとだけ伝えればいい
さて次はコータとあさみさんだな
コータはともかくあさみさんは警察を辞めなければならない
まぁコータと警察組織、どちらを取るかなど想像できるけど
「というわけでどっちを選んだ?」
コータ「随分急な質問だね!?てか唐突すぎるよ!?」
「今更だろ?で?どうなんだ?あさみさん」
あさみ「やっぱりあさみの返答が左右するんですね」
「まぁねコータには拒否権はだしてるが俺としてはぜひ欲しい人材ではある、そして彼の心の支えとなるあさみさんも必要だ」
あさみ「あさみは最後までコータさんに付いて行くと決めましたからもう警察官としてのあさみはさよならです」
「そうですか、では俺達の目的が終わり次第、国連軍への編入となります、それまでは俺達と行動を共にしてもらいます、いいですね?」
あさみ「はい!」
「コータ、もうすぐ自衛隊が来る、大丈夫だと思うが彼女はお前が守れ、いいな?」
コータ「サー・イエス・サー!!!」
最後は孝と智江か
一番の問題点なんだけど
いやおそらくこちら側に来るだろうが、その場合命令権が俺にあって彼は指示に従ってもらわないといけない、ただ現在に至るまで意見の平行線が続いている以上危険な事に変わりない
果たしてこれをどうするべきか
まぁ最悪智江を人質にして鎖代わりに使うか
正式に国連軍所属になれば抗命罪で拘束できるしな
もっとも生きて帰れたらの話だけど
そんな考察を考えつつ孝と智江を見つけた
「孝、答えを聞きに来た」
孝「残るか、去るか、か」
「そうだ、先に言うが去っても誰も文句は言わないし2人の御両親もこちらが救助すれば自衛隊経由で届ける、危険を
孝「だけどそれでも俺は両親を助けに行きたい、もちろん智江のお母さんもだ」
「その選択が過酷な未来になったとしてもか?俺がお前を殺すかもしれない、智江を殺すかもしれない、2人を見捨てるか囮にするかもしれない、それでもか?」
孝「そうならないように行動するだけだ、後悔はしない!」
"行動するだけ"か
必ずしも実行できたからといって最悪の状況が変わる保証はどこにもない
まぁこれ以上言っても無駄だ
なら行きつく先まで行くしかないか
これには俺の決断も含まれる
リスクを承知で連れていくという決断
「わかった、その選択を後から後悔する事は絶対に許さない、少しでも後悔したら容赦はしないからな」
孝「ああ」
「よし、これからは俺の指示には従ってもらう、いいな?」
孝「わかった」
「智江もいいな?」
智江「ええ」
俺は2人の返答に頷きその場を離れる
これでいい
これで彼らを縛るものはない
同時に彼らの平穏もなくなるわけだが
こんな世界になったんだ、今更平穏を求めるのは無理だろう
さて新たに部下になった人間を護るとしようか
次回『来訪と引き渡し』