とある不死の発火能力   作:カレータルト

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お久しぶりです


人ありけり

 吸血鬼――夜の帝王にしてありとあらゆる妖魔の頂点、永遠の命を保有し自身も圧倒的な戦力と眷属をもってありとあらゆる敵を蹂躙する無敵の存在。

 それに睨まれた者が二度人前に姿を現す事はなく、ごく少数の例外を除いて彼らを滅殺できる者なぞ存在しない。

単純が故に穴も隙もなく、弱点がはっきりと分かっているからこそ対策を取られやすい。

 

 そんな存在が、吸血鬼と呼ばれていたらしい。

 そんな御伽噺のような存在が、そんな悪夢のような存在が、吸血鬼であったらしい。

 

 果たしてそんな存在が記されていたのがどの書物であったのか、またはどういった由来のある口伝だったのか私が知る事はこの先も無いのだと思う。

 それはつまり、「ぼくのかんがえたさいきょうのようかい」なんて、そんな存在は居ないとされていたらしい。あらゆる意味で全てが終わってしまって、白の中で呆然とする私に誰かが無機質な声でそう伝えた。

 

 ただ淡々と、吸血鬼だと

 不死の魂、無限の魔力、強烈な力、おぞましい能力を持つ怪異の王だと

 

 私も御伽噺ではそんな存在が居るのだと知っていたし、子供ならだれだって知っている存在は、しかしながら――だからこそ存在なんてしないのだと思っていた。

 

 誰にも彼にも存在を知られた魔の者が果たしてその秘匿性を保ちえるのかと言われればノーだ、断じてそんな事はあり得ない。

 誰しもが知っているという事はつまり、闇に強烈な日光を投射するのと同じ事。弱い闇であったならば忽ち消し飛んでしまうだろうし、深い闇であっても間違いなく弱体化してしまう、なぜならば彼らは元々「分からない」というその恐れから、畏れから生まれて育ってきたのだから。

 

 世界中のだれもが知っている存在は、だからこそ存在を保ちえないのだと――そう言われていたらしい、事実として“彼ら”の属する組織では依然として吸血鬼は仮想の存在であり、御伽噺の一種であるとの説が強く信じられてきたからだ。

 それが例え、誰かが吸血鬼の事実を押し隠してきた結果だとしても、世の闇に最も近く存在する彼らの下っ端すら認知できなかったということは、つまりそう言う事なのだろう。

 

 吸血鬼は既に居ない存在なのだと、そう思われていた。

 

 私が果たして吸血鬼が“なんだったのか”知る事はもう決してできない、私だけではなく世界中を探したところでそんな事が出来る者は極々限られた者しか不可能だろう。

 彼らの足跡は、彼らの爪痕は、彼らの伝承は、あまりにも世界各地に広がり過ぎているせいで軌跡を線で引こうともあまりにも数が多すぎるし、その収縮点を求めようとも情報が多すぎて理解する事なぞ出来はしない。

 

 それ程までの情報が多いのに、歴史にその霞さえ見せない存在が御伽噺でないと誰が言えるのだろうか。

 吸血鬼はその恐るべき能力と対策のみが記された、今はもう影も形もありはしない在りし日の怪異なのだと信じられていても何ら異常ではない、寧ろこのご時世になって未だに声を高くしてその脅威性を訴えた方が異常者扱いになるのは火を見るよりも明らかだろう。

 

 そう、ありはしないのだ

 彼らの存在を確定させるものは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ一つを除いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『吸血殺し』

 

 それは私にとって祝福であり、呪詛

 私のこれまでとこれからを縛る銀の足枷であり、十字架

 

 居る筈もない者を殺す矛盾した能力

 吸血鬼の存在を確定させる唯一解

 

 使い物にならない能力だが、正直全く役に立たない能力だが、その意味は計り知れないほど大きい。

 誰も勝てない者にのみ有効というその非常性よりも、そもそも誰も勝てない者が居ると確定させる方が重要ではあるけれど。

 

 私にとってこの能力が一体どう言った意味合いを持つか――それは神の祝福であり、人にとってのこれ以上ない程の呪いである事を理解したあの白い記憶は未だに忘れようとする私を戒めるように時折、なんの前触れもなく想起される。

 

 思い出せと

 忘れるなと

 

 一体それを理解したところで私に何が出来るのだろうか、吸血鬼に対して“だけ”は絶対的な破壊性を持つ“だけ”の少女に何を訴えているのだろうか。

 神様なんて存在はこれっぽっちも信じちゃいないけれど、もしそれが居たのだとしたならば彼は…彼女かもしれないし、性別なんて超越した存在であってもおかしくはないけれど、果たして自分に何をさせようとしていたのだろうか。

 

 なにせ自分がやった事といえば吸血鬼なんて御伽噺の存在を歴史の外側にわずかなりとも引っ張り出して、いたずらに被害を増やした挙句自分でそれを始末するなんてマッチポンプも鼻で笑う様な事なのだ。

 

 私にどうしろというのだ、私にどうなれというのだ。

 悲劇のヒロインにしては似合わないことなんて分かり切っているし、ヒーローにもなれないけれど。

 モブキャラにすらなれない中途半端な立場の自分を恨めしく思った所で所詮何にもなれないのだと、舞台の下からこちらを笑う奴らに言ってやりたかった。

 

 何かになりたいと思った訳ではない、何にもなりたくはなかった。

中途半端に小さなナイフを渡されるぐらいであれば、いっそ裸で追い出して欲しかった。

 

 ああ願わくば、願う事が赦されるならば

 運命よ、天上に住まう神なんて存在よ

 私なんて放っておいて、他の手頃な奴にスポットライトを当ててください

 

 

 

 

 

 私にとってそれは、生まれてから今日に至るまでに唯一ぶれないで思い続けている事であるのは言うまでも無かった。

 

 

 

 

 

 

 目覚めた時、そこが明らかに現世である事に私は僅かながらの安堵を覚えていた。

 それと同時に今体を横たえているのが病院の清潔で無機的なベッドである事をなぜか理解出来た事に苦笑した、ぼんやりと霞んでも尚明瞭に居座り続ける私の記憶がデジャヴーを呼び起こしていたらしい。

 

 

「変わらない。本当に」

 

 

 あの時、自分が果たしてどのような存在であるか、私が過ごしてきた日常が如何に薄氷の上に成り立っていたかはっきりと思い知らされたあの時、目覚めたのはやはりこれと同じような光景だった、

 

 真っ白い部屋に、平坦な天井に、硬くも柔らかくもないベッドと枕

 無味で無臭な殺菌された部屋に、何の色一つもないのっぺりとした正方形

 

 思えば、目覚めた時私はいつもこの部屋に居る気がする。

 自分にとって大きなことがあった時、私はいつだってこの部屋で目覚めている気がする。

 “吸血殺し”の意味を理解した後に倒れ込んだ私を包み込んでいたのがまるであの光景を連想させるような白だったものだから錯乱していたのを覚えている、まぁ少女どころかあの時の私は童女と呼んでも変わりのない年だったから可愛いものだろうけれど。

 

 目覚める前と、目覚めた後で世界は何も変わらない。

 大なり小なり法則性が乱れる訳も無いし、大きなニュースになる訳でもない。

 当たり前の話ではあるけれど、それがどうしようもなくやるせない気分になるのはなぜなのだろうか。

 

 分かっている、変わったのは自分だ。

 あの時だってそうだったし、今だってそうだ。

 

 アウレオルス=イザードたる“協力者”に裏切られる形となり、必然的に死に掛け、奇跡的に命拾いした結果として彼を失った。

 私を助けたのは間違いなく彼だ、摩訶不思議な力をその右手に宿す私のヒーローであった彼は上条当麻と名乗った。

 

 良く言えば熱血漢、悪く言えば考え無し

 私でも驚くほどの鈍感さは苛立つものもあるけれど、それを持って尚余りある程に彼という存在は近くに居て強烈だった。

 最初あった時の彼はまるで凡百な一高校生に過ぎない印象を与えられたが、次に三沢塾で邂逅した時の彼はまるで別人かと思えるほど雰囲気を変えていた。

 

 目に闘志を宿すその気迫だろうか、どんな困難な相手にも立ち向かうその蛮勇とも取れる姿勢だろうか、知りあっても無い赤の他人に心を痛められるその善心からだろうか。

 どの道、私は彼という存在に救われたのだと言い訳はできないだろう。

  彼と知り合って少しの間だけその後ろから見ていた、傷ついても尚立ち向かう彼の背中をただ縋るような想いをして見続けていた、それを思い出すだけで胸にこみ上げるこの気持ちは何なのだろう。

 

 今は分からないけれど、大切にしたい気持ちではある。

 

 けれども、私がどれだけ変わろうと世界は何も変わらない。

 あの事件が世界に与えた影響なんて爪先でかすめた程度でしかないのだと思うと、なんだかどうでもいい事であるかのように与えられている気がして、どうでも良くないのにそんな虚しい気分になってしまうのだが、どうしようもなくやるせないのだ。

 

 溜息をつく、二酸化炭素は大気中に拡散していく、何一つとして世界は変わらない。

 しかし私は変わった、少なくとも今までのようにどこか安穏とは暮らせないだろう。

 

 

「……これから。どうしよう」

 

 

 今までは三沢塾に監禁されていながらも衣食住には困らなかったけれど、これからはそうもいかないのだ。

 稼ぐ手段の無い私に残された路は二つ、片方は堅実に元居た場所へと戻る事、もう片方はこの学園都市で性懲りもなく足掻く事。

 

 前者のそれに対して、後者の道を歩むことは困難を極めるだろう。

 暴走した三沢塾に監禁されたのはまだ良い方と考えても仔細無いだろう、最終的には裏切られるとはいえ協力者の計らいでそこまで苦痛は味わわなかったのだから。

 けれどもこれからもその幸運が続くとも限らないのだ。いつ捕まらないとも限らないし、そうなった場合軟禁では無く監禁、最悪ホルマリン漬けもあり得るのだと分からぬ程に愚か者ではないと思っている。

 

 そして、それ程までして選んだ苦痛の路であろうとも得られる対価は期待できるとは到底言い難い。

 幾ら能力開発が異常といえるまでに先進的であるこの科学都市であろうとも私の持つ『これ』が彼らが研究する『能力』と別物である以上、答えが出る可能性はゼロに限りなく漸近するし、まずこの“珍しい能力を持つだけの小娘”に誰かが何かをしてくれることに期待は出来ない。

 

 ましてや、この能力と私を切り離すことなぞ。

 それは死をもってすら行い難いと言われてもおかしくはない事なのに。

 

 それでも私は、元居た場所に戻ろうとはどうしても思えなかった。

 あそこには何も無いのだ、私が求めるものは何も。

 だからこそ覚悟を賭して辿り着いたこの場所なのに、未だに迷っている自分を嘲笑いたくなる。

 

 これが例え世界一の女優になりたいとか、お金持ちになりたいとか、そんな子供じみた感情を凝縮して増幅させたような荒唐無稽な夢だとしたならば笑い甲斐があったのに。

 よりにもよって私がこれまで願い続けてきた事といえば、自分の今までとこれからを縛るだろうこの鎖をどうにかこうにか無くしてしまおうとすることなのだから。

 

 私はただの少女だ、無知で無力な子供に過ぎない、二十歳にすらなっていない。

 これといった訓練を受けた訳でも、修羅場を潜り抜けた訳でもない。

 ただ人とは違う能力を持っていて、知らず知らずのうちに家族を含めて全てを粉塵に還してしまった事が一度ある程度なのだ。

 

 考えている最中にドアの外に気配があったとしても気付ける力なんてない、突如ノックの音が鳴っても驚かぬほど胆力がある訳でもない。

 ひゃっ、そんな声を発した私がドアの方を見ればそこにはただ白衣に身を包んだ看護婦が一人いるだけだった。驚く事もなく、かといって威圧感を与える訳でもなく、ただその空間に馴染む様にそこに居る彼女は私を見て、ドアの外にちらりと視線を通した。

 

 誰か居る、二人ほど

 

 

「姫神さんね、何か具合の悪いところはないかしら」

「あっ。特にありません」

「うんうん、その様子なら面会も大丈夫そう」

 

 

 面会? 首を傾げる私の様子を見て逆に不審がるのは看護婦の方だったらしい。

 

 

「ええっと……お二人とも、あなたの付添と言っているけれど」

「ああ、そうだ」

 

 

 小柄でも大柄でもない彼女を少しよけるように現れたのは、目がすっかり白に慣れてきた私にとっては眩暈がするほどの色彩だった。

 一人は男性にしては驚くほど大柄で顔に変な刺青を入れた、どこか恐ろしさすら覚える燃えるみたいな赤髪の男性。

 もう一人は思わず顔以外の場所を凝視しちゃうけれど、間違いなく美人と言いきれる長い黒髪の女性。

 

 

「姫神秋沙、君に話があるんだ」

 

 

 ステイル=マヌグス

 神裂火織

 

 彼は、彼女は、自分の事を再度そう名乗った。

 魔術師、非日常からの訪問者が私を再び日常という名の暖かい沼から引き摺り上げた。

 

 彼らは要するに、自分を連れ戻す為に来たらしい。

 それが本当なのか、それとも隠れ蓑なのかは分からないけれどともかく私に関係のある存在である事は確かだった。

 

 彼らからは私が頼んで先程下がってもらった看護婦とはまったく別種の匂いがした。

 それは清潔であるか否かではない、そんな次元の違いではない――例えて言うなら極道と堅気の違いだ、無論彼らは極道の方に入る。むせ返るような法外者の匂い、この世の理を外れた者達の匂い、そして私が嗅ぎ慣れてしまった匂い。

 

 

「元気そうでなにより」

「……お蔭様で」

「君がいくら勝手な行動をした挙句我々に手間を掛けさせたとして恨んではいないよ、与えられた任務を全うするのが僕達の仕事だからね」

 

 

 皮肉だろうか、皮肉だろうな

 ここまで露骨に言われると少しへこむものがあるけれど、彼の表情を覗えばどこかイラついているようだった、それも結構――ますます萎縮する。

 

 

「ステイル、病院で煙草を吸えないからといってイラついてはいけないと思うのですが」

「イラついてはないよ、必要なのはわかっているしね。流石にそこまで無法者でもないさ」

「……十分。苛ついていると思うんだけど」

 

 

 ギロリと睨まれた気がした

 

 

「ステイル! 無駄に脅すなと言われているでしょう」

「ちっ……分かってる、さっさと本題に入ろう」

 

 

 怯えるなと言われても無理はない話だろう、相手が本気になれば自分がどれ程抵抗したところで毛ほどにも掛けず振り切る事が出来るのだから。例え相手がそんな事をしないと分かっていようとも、それでも緊張するなという方が無理な話なのだ。

 

 

「第一に、君には選択肢が与えられる」

「選択肢?」

「ここに残るか、僕達と一緒に戻るか――後者を選んだ場合は言わずもがな、問題は前者を選んだ場合だ」

「……消す。とか?」

「まさか、色々探した結果“霧ヶ丘女学院”が君の受け入れ先の候補に挙がった。君が望むのであれば学園都市に一先ずはそれなりの身分を保証される立場を与える事は出来るが」

 

 

 その話を振られることは、当時の私にとっては全くの想定外だった。

てっきりと連れ帰されるかと思ったが、よくよく考えてみればそうなるのも当然の話なのかもしれない。

 “吸血殺し”を意図しない形で発現した私を最初に保護したのが彼らの側だったに過ぎないのだ、私は彼らの身内でもなんでもないのだから――その事が追い出されたみたいで、自分から逃げ出した事を棚に上げて寂しく思ったりはするけれど。

 

 それでもその選択肢は自分にとって願ってもないものだった筈だ、それどころか数ある不安な要素が残らず解決するどこにも文句のつけようもない選択を与えられているのは考えるまでもない。一度ならず二度までも幸運というものは私に味方してくれたらしい、これまでの私であればノータイムで答えを出してもおかしくはない条件だった。

 

 けれど、今は

 手が震えて仕方ない

 

 

「私。は」

 

 

 無鉄砲だった、この件での私が起こした行動はただ“自分の能力を切り離したい”だなんてその考えだけで生きてきたから出来た蛮行だ。

 ただ運が良かっただけ、アウレオルスに保護されて、一時的とはいえ協力関係を結んで、上条君と出会って、助けられて――とんでもない幸運の星の下に生まれてしまったんじゃないかと思うぐらいの上に私は今も生きている。

 

 学園都市に居る内、あと何回そんな目に合うだろう、あと何回薄氷の上を全力で走り抜けて生き残れば私は目的を達成できるだろう。身分を保証されようともそれがなくなる筈もない。

 

 自分の運命を呪った事はあった、逃げ出してしまいたいと思った事は数知れず。

 けれども私は、死にたいと思った事は一度たりとも無かった。

 この生まれついて持つ力から手っ取り早くおさらばするには死ねばいいという事は最初から分かっている事だった、けれども私がそれを選ぶ事は一切ないだろう。これまでも、無論これからも、私は生きて能力と決着をつけたかった。

 

 だからこそ、死の恐怖というものに限りなく接近したあの数時間に、私はどうやらすっかりと怖気づいてしまったらしい。今まで私の原動力であったなにかはすっかりと枯渇してしまって、私は自分が無力極まりない少女だと突き付けられた。

 

 ここに居続けたら死ぬかもしれない、死ぬだろう、それが堪らなく恐ろしい。

 もうこれ以上この場所と関わりたくないと思う反面で、この場所から離れてしまえばおそらく一生私に答えは提示されることはないだろうと理性が断言している。

 

 死よりも恐ろしい危険に、身を挺して立ち向かうか

 死からもなにもかも逃げ出して、一生背を向けるか

 

 決して相容れる事の無い二つの路の間で、私の両手を二人の影が同時にお互いの方向に向かってあらんかぎりの力で引張る。

 

 「逃げるな」と私の理性が命ずる、今逃げれば何もかも叶わなくなる、これが最初で最後のチャンスだと。

 「逃げろ」と私の本能が叫ぶ、恐ろしい死から逃げ出す事の何が駄目なのだ、今逃げてもまた機会は巡るのだと。

 

 私はただ立ち竦んだまま、両手が捥げそうな痛みに顔を顰める事も出来ない。

 声が出ない、息が出来ない、二人の顔を見ていられない。

 

 

「私は」

 

 

 どうしたのだろう、私は一体どちらに進みたいのだろう。

 助け舟は見つかるはずもなく、ただ二人が囁く声が聞こえる。

 

 

「駄目だね、この様子だとやっぱりここに置いていった方が賢明だ」

「彼女は迷ってるでしょうに、それに彼女の意志を無視すれば我々が責任を取られますよ」

「分かりやしないさ、ボスにばれたところでお咎めはないだろ」

「しかし」

「だったら、君には何か明確な案があるって事だと受け取ってもいいかな。僕としては彼女をこのまま連れ帰って“やっぱりあそこが良かった”とか言われる場合が一番怖いんだけど」

「それは私とて同じ事です、ただの善意から連れて帰ろうと言っているのではありません。ただ迷う彼女を学園に放置すればどのような余波が産まれるか、ますます面倒なことになるかもしれないのですよ」

 

 

 やめてよ、私に何を求めているの

 私に能力が無ければ、こんな力が無ければ、こんな苦しくはないのに。

 胸が痛くも無くて、ただの一般人として魔術とも科学とも付き合わずに―――

 

 

 

 

ぐぅ、と

 

 

 

 

 音が鳴ったのは、私のお腹からだった。

 予想以上に大きなその音は二人を振り返らせるのに十分だったらしい。

 

 

「……お腹。すいちゃった」

 

 

 どうしよう、ものすごく恥ずかしい。

 さっきまでの葛藤が全部吹き飛んでしまうぐらい恥ずかしい、穴があったら迷わずはいりたい気分とはこのようなことなのだろう。

 

 真面目な話をしている時に、当の本人がお腹が減ったなぞ怒られてもおかしくはない事だ。

 恐る恐る二人を見ると、なんだか予想と違って脱力した表情を浮かべていた。

 

 

「そう言えば、僕もお腹が空いた」

「私も、昼食を抜いていろいろ調べてましたから」

 

 

 私の受け入れ先を調べていたのだろう、やっぱり申し訳ない。

 さっさと自分の道を決めてしまいたいけれど、そう簡単に決められる程私は単純な性格ではなかったみたいで。未だに他人からしたらどうでもいい事で悩んで戸惑って答えが出せないでいる、本当に嫌になる。

 

 

「ねぇ」

「ひゃっ!?」

 

 

 俯いているとぬっと現れるのはまるで喧嘩を打っているのかと思えるほど人相の悪い顔、多分私よりもずっと年上なんだろうと思うと何と言うか、やり辛くて。

 

 

「食事制限とかは出てないよね、出てないことにしよう」

「看護師に聞いてみましょうか?」

「いやいい、このまま連れていこう」

「えっと……どこへ」

 

 

 彼らはどこへ私を連れていこうとしているのだろう、もしかして第二次監禁とか――いやな想像が脳裏をよぎるけれどそれを一蹴するように鼻で笑ったステイルが「焼鳥屋、兼居酒屋」とだけ呟いた。

 

 

「私、未成年だけど」

「それを言うならここに居る三人とも未成年だ、多分最年少は僕だね」

「ええっ!?」

「お酒は飲めなかろうと大丈夫ですよ、取り敢えずあなたは何かを食べる必要がある」

「病院食なんてまずいものを食べていたらますます決断を鈍らせるじゃないか、そんなのはごめんだよ」

 

 

 そんなにまずくはないと思うけれど、そう思っただけで射殺される様な目線を向けられそうで怖い。

 幸いにも自分の足で立てたけれど、もしそうでなければどちらかに抱かれていたのだろうかと思うと冷や汗が出る。けれどもそこまでの重病人を無理矢理外出させやしないだろう――そうだよね? と聞いても誰も答えてはくれないけれど。

 

 

「まぁ、この時間だし多分僕達が行けばカウンターぐらいは開けてくれるだろう」

「あの店はカウンター席が一番人気なのに、よく言うものです」

「カウンターに何かあるの?」

「店主が人気なんだ、女将って呼ばれてるけど」

 

 

 女将、多分年上なんだろう。

 大人の女性ってイメージが浮かんでは消えていく、お母さんみたいな人なんだろうか。

 

 

「多分、あなたも会った事のある人ですよ」

「私が? でも……学園都市に知り合いなんて居ないし」

 

 

 元居た知り合いなんて全員消えてしまったし、魔術関係にも科学関係にも知り合いはいない。辛うじてアウレオルスが一番付き合い深かったけれど彼は間違えても女性ではないだろうしもうこの世にはいないのだと――事の顛末を知らなかった私は、そう思うのも仕方のない事だと思う。

 

 とにかく私には知り合いが居ない、けれどもまるで確信したように言われるのが分からなくて。女性の大人の知り合い? と首を傾げれば、意味ありげに神裂が笑う。

 

 

「その人は、藤原女将とか言われてるんですよ」

 

 

 私の脳裏に、一瞬だけあの白い閃光が煌めいた気がした。

 




色々あって纏めて文章を書く機会が無かったのでゆるして

覚えてる人居ないんじゃないかなとか思いつつ、もう何度目だ失踪

書きたいと思うけれど筆が、コメント返しします、放置してごめん



ほげ

P.S.
ホモにつっこまれ過ぎてワロリンヌ
ごめんなさい、今までホモマリンで覚えてました、なんでだ

展開遅いのは仕様です、デデデデッ


更にP.S

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