神の幼馴染   作:〆鯖缶太郎

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 料理は全くできないけど、ふと書いてみたくなった。
 リアルの息抜きで書いただけなので亀更新です。
 次話は今日中に投稿。


前菜

 北海道の北端に位置する離島。そこにある某会場の中。観客席では大勢の学生達が、後に歴史の節目と語られる瞬間に立ち会っていた。

 

『……こ……この連隊食戟。勝者は――……』

 

 連隊食戟。

 学生間に起こった争いごとを、一騎打ちではなく集団 対 集団によって解決するための変則的な食戟形式。

 今回賭けられたのは前代未聞。遠月十傑評議会全席と、一人の料理人の人生。

 正しく今、その勝敗が決した。

 

『――勝者は、反逆者連合!!!』

「……お粗末!!」

 

 司会者の熱の籠った宣告の後、今回の主役とも言える女生徒の凛とした声が会場全体に響き渡った。

 中枢美食機関(セントラル) 対 反逆者連合。

 一体この会場にいるどれだけの生徒が、反逆者連合が勝つと予想したのだろうか。

 恐らく、ほぼ全ての生徒が予想しなかったのだろう。観客席で喜ぶ者は誰一人としておらず、歓声を上げるのはステージに簡易的に設けられた檻の中の一部生徒のみ。

 

 そしてここに、新たな歴史の1ページが刻まれた。

 

 

 

 遠月茶寮料理學園「総帥」

 ――薙切えりな

 

 遠月茶寮料理學園 十傑評議会「第一席」

 ――幸平創真

 

 

 

 後に 薙切仙左衛門はこう記す。

 

 磨けば光る「玉」の世代ではない。研けば人を魅了する「宝玉」の世代であった。

 

 

 

〆〆〆〆〆

 

 

 

 桜舞い散るこの季節。

 寒さの中に暖かな風が吹き込み、ここ 遠月学園にも新たな春が訪れていた。

 それは出会いの季節であり、同時に新生活の始まりでもある。

 

 総帥が座する一室にて。

 卓上に置かれた書類の山がようやく平地になった頃、それを見計らったようなタイミングでノックの音が響く。

 

「えりな様 今日もお疲れ様です。生薬をお持ちしました」

「ありがとう 緋沙子」

 

 秘書である緋沙子から受け取った生薬を飲みながら、えりなは窓の外に広がる遠月を一望する。

 高等部へ進学して一年。たったそれだけの期間で、この学園とえりなの雰囲気は大きく変わった。いや、変えられた。

 幸平創真と出会い、振り回され、そして魅せられ。間違いなく中心に立っていたのは あの男だった。

 

「懐かしいですね。一年前のえりな様が今のえりな様を見たら、きっと別人だと言い張りますよ」

「あら? そう言う緋沙子だって、随分と丸くなったんじゃないかしら?」

 

 束の間の休憩。そこでこんな冗談を言って、笑い合う日が来るなんて……いや、あの時もこんな風に、

 

「あっ、えりな様」

 

 過去に思いふけようとするも、緋沙子の呼び声で現実へと引き戻される。だが続く言葉によって、再び思い起こされた。

 

「青葉様が編入してくるそうですよ。それも 昨年の幸平創真と同じで、合格者は彼だけだそうです」

 

 編入試験合格者の資料を手渡されながら、久方ぶりに彼の名を耳にする。

 昨年はえりな自身が編入試験の試験官を担当したが、それは十傑評議会第十席という立場であったからだ。総帥となった今、度重なるトップの交代とその後処理、そして卒業式やもうじき始まる入学式の準備など。立場的にも時間的にも、編入試験を見る余裕などなかった。

 そして合格者は一人しかいないが、編入試験を受けたのは数百人規模だ。つまり、その他は全て不合格となった。

 確かにえりなが総帥となり、十傑の席もガラリと入れ替わった。やろうと思えば試験基準を優しくし、全員合格だってできる。

 だがそれをしないのは遠月ブランドを落とさないためであり、大きな変革は混乱をもたらすからだ。

 加えてえりな自身が、お爺様である薙切仙左衛門の築き根付かせた考えを崩したくないという思いが強かったのも大きい。

 

 閑話休題

 

 緋沙子が青葉様と呼び、資料に貼られた証明写真に見覚えがあるように、この芳賀青葉と氏名欄に記入された人物は知り合いである。

 一つ年下の幼馴染でもあり、緋沙子がえりな以外に様付けする数少ない昔の友人であり、恩人だ。

 

 そこでふと、彼とした約束を思い出した。

 

「……約束、破っちゃったわね」

「約束 ですか?」

 

 緋沙子はどの様な約束をしただろうかと過去の記憶を探るが、ボンヤリとしている部分も多いのか思い出しそうにない。

 そんな首を捻る姿を見て、えりなは自らにも言い聞かせるように言った。

 

「あの時は確か、緋沙子もいたはずよ。お父様が屋敷を空けて、若菜さんと彼の住む自宅でお世話になった最後の日」

 

 緋沙子は漸く思い出したと頷き、確かにえりな様は約束を守れなかったなと納得する。

 そしてその約束の内容を、えりなは幼き日の光景を思い出しながら 呟く。

 

「私の必殺料理(スペシャリテ)が完成したとき、その時は青葉くんが……一番に召し上がってください」

 

 桜の木がざわめき、花弁が舞った。

 これから遠月に新しい風が吹くだろう。えりなが『神の舌』であるならば、差し詰め彼は『神の手』と称するに相応しい。

 謙遜する彼の姿が 目に浮かんだ。

 




 お読みいただきありがとうございます。
 拙い文章力ですが、極力違和感や矛盾が無いよう頑張っていきたい……。
 前書きで書いたように亀更新です。リアルの都合や作者のやる気で数ヶ月とか平気で空けるかもしれません。
 お気軽に感想や評価をしてください。
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