神の幼馴染   作:〆鯖缶太郎

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 原作完結してしまいましたね。一応エピローグ的なのが別であるみたいですが。
 アニメ化は一体どうなるのか……。


第四話

「本日の編入試験。合格者は――ゼロ名です」

 

 編入試験を終えた後、えりなは確かにそう報告した。

 会場を訪れた受験生の大半は辞退。唯一試験を受けた幸平創真も基準を満たせず、不合格にしたと。

 

 ――思い出すだけでも、腹立たしい。

 

 百歩譲ろう。百歩譲って、創真の作った化けるふりかけご飯は合格基準を満たしていたかもしれない。

 しかし、人間性に大いに問題があった。

 料理人であれば誰もが敬意を払う薙切えりな(神の舌)に対して、馴れ馴れしく偉そうな物言い。実家は定食屋で、如何にも無神経な二流料理人。

 そんな男、遠月学園には相応しくない。

 だから不合格にした。不合格にしたはずだったのに――。

 

 

 

〆〆〆〆〆

 

 

 

「それじゃあ、今日の定例会は終了だ。各自 解散してね……」

 

 回を重ねるごとに手慣れてきた瑛士の掛け声によって、本日の定例会も締まらない空気ではあるが 無事終了した。

 他の十傑が退出しようと席を立つ中、竜胆とももに挟まれ話しかけられている青葉を無意識に見ながら、えりなは入学式の出来事を思い出す。

 

 

 

 生意気で威勢の良い、聞き覚えのある声が聞こえた時は まさかと思った。

 彼が遠月の入学式にいるはずがない。何故ならその男は、他ならぬ えりなが落としたのだから。

 だが壇上へと目を向ければ、そこには幸平創真の姿があった。

 

「――思いがけず編入することになったんすけど、客の前に立ったこともない連中に負けるつもりは無いっす。入ったからには――てっぺん獲るんで」

 

 たった数十秒で遠月生徒全員を敵に回し、罵声を浴びながらえりなの控える天幕に入る創真。

 噛まずに言えたと安堵しているそんな彼に、えりなは問いただした。

 

「幸平くん! なぜ君がここに?!」

「いや。何故ってお前……合格通知が届いたら、そりゃ来るだろ。あの時はビビったぜー。不味いとか言うんだもんよ。美味いなら美味いって、素直に言えよな」

 

 違う。認めてなんかいない。私はこの男を確かに、不合格にしたのに!

 

「言っておきます。私は認めていないわ。君も、君の料理もね!」

 

 

 

 幸平創真……どうすればあの男を……。

 

「お疲れのようだね、えりなくん」

「……一色さん」

 

 振り向けば、にこやかな笑みを浮かべた慧の姿があった。

 青葉をジッと見つめながら何やら考え込んでいるえりなの姿を見て、心配して声を掛けてくれたのだろう。

 

「青葉くんの事が気になるのかい?」

「ええ。それもありますが、今は別の悩み事が……」

 

 そこまで答えて、えりなの思考がはたと止まる。

 慧が何でもないように発した問いをもう一度脳内で再生し、かみ砕き。そして今、自分は何と回答したか思い出そうとする。

 そしてえりなの結論が出る前に、慧はより一層嬉しそうに顔を綻ばせた。

 

「ふふ。青春しているね! 何か悩み事があれば、気軽に相談してよ」

「……なっ!」

 

 点と点が繋がり、慧が一体どの様な結論に辿り着いたかを理解し、思わず顔を赤らめるえりな。

 これではまるで、青葉を他の女に取られて嫉妬しているようではないか。

 誤解されぬよう慌てて訂正しようとするも、既にその姿は扉の向こうへと消えていた。青葉を含む他の十傑の耳に届かなかったのは、不幸中の幸いと言えるだろう。

 

 ――これも全て、あの男が悪い!

 

 えりなはその遣るせない気持ちも全て、創真の所為にすることにした。

 そんな時にスマホに電話が掛かってきたものだから、多少強く返事をしたのも仕方がなかったのかもしれない。

 

「もしもし?」

『あ、えりな様……。タイミングが悪かったでしょうか?』

 

 付き合いの長い緋沙子だからこそ、電話越しでもえりなの変化には敏感であった。

 十傑の定例会が終わったと思い連絡をしたが、まだ早かっただろうかと恐る恐る尋ねる。

 

「い、いえ。そんな事はないわよ。それで、何か用かしら?」

 

 コホンと誤魔化すように咳払いをするえりなに、緋沙子はあまり詮索しない方がいいと判断し、手短に用件を伝えることにした。

 

『はい。丼物研究会の下見に行った水戸郁魅からの報告です。正式に丼研と食戟をすることが決定したと』

「そう……」

 

 水戸郁魅とは、えりなの派閥に属する生徒の一人だ。

 『ミートマスター』とも呼ばれる彼女は、中等部でも常に成績上位者。特に肉料理の授業では「A評価」しか獲った事がない腕の持ち主である。

 そんな彼女に任せたのが丼研を取り壊し、えりな専用の調理棟を建てる事だ。勿論そんな決定はいくら十傑の一人と言えど、所有権を持つ相手の同意なしに出来るものではない。そして二つ返事で同意してくれる酔狂な者はいない為、結果的に食戟となるのだ。

 

 えりなは今回、当然食戟になることを見越していた。

 十傑の仕事の合間を縫って、えりな自身が食戟をするという手もある。だが、今回の食戟テーマは恐らく丼物。丼研の主将は高等部二年生だが、郁魅でも充分勝てるとリサーチ済みなので、ミートマスターの彼女に任せたのだ。

 だから何の心配もない。後は食戟が行われる日まで待っていればいいだろうと考えていた。

 だが――。

 

『実はその食戟に関して何ですが、対戦相手に変更があった様でして……』

「もしかして、対戦テーマが変わったのかしら?」

 

 相手が丼で来ると思ったからこそ郁魅を配置したが、対戦テーマが変わったとなれば少々厄介だ。

 テーマや相手によっては郁魅では荷が重いだろう。

 

『いえ。メイン食材は肉。作る品目は丼なので大方予想通りです。ただ……』

「もったいぶらずにいいなさい」

『……はい。その対戦相手が――あの編入生。幸平創真です』

 

 緋沙子も秘書として編入試験に付き添い、えりなが創真を不合格にした事は知っていた。入学式で壇上に立った彼の姿を見たときは驚いたし、えりながその後 見るからに不機嫌になったことも理解している。

 だからこそ編入生に関する話題はなるべく避けていたのだが、まさか編入して数日で食戟をするとは思いもしなかった。しかもそれが、直接えりなに関係しようとは。

 故に今回の報告で更に機嫌を悪くしないだろうかと身構えたのだが、返って来た言葉はその予想に反したものだった。

 

「――あら、そうなの。報告ありがとう」

『……食戟は三日後となっています。また何か分かり次第、此方から連絡させて頂きます』

 

 通話を終えたえりなは上機嫌だった。

 どうすれば悩みの種であるあの男――幸平創真を貶める事ができるかと考えていれば、のこのこと向こうからやって来たのだから。

 

「まさか、こんなにも早く機会が来るなんてね……」

 

 今から三日後が楽しみだと、えりなはほくそ笑むのだった。

 

 

 

〆〆〆〆〆

 

 

 

「食戟の観戦?」

「ええ。噂の編入生が今日、私の派閥の子と食戟をする事になっているの。青葉くんさえよければ、特等席で一緒に見てみない?」

 

 幸平創真 対 水戸郁魅の食戟が行われる当日。

 入学早々なめた口を利いた創真が食戟をすると聞きつけた生徒が集まり、会場は熱気を帯びた超満員となっていた。

 今日が休日であることに加え、食戟で賭けられる対価も これだけの生徒が足を運ぶ理由の一つとなったのだろう。

 

 水戸郁魅が勝利した場合――幸平創真は退学すると。

 

『お待たせしましたぁ! 食戟管理局より、この勝負が正式な食戟であると認定されました! 審査員は三名! テーマは丼、メインの食材は肉! それでは各コーナーより――両者入場!』

 

 いよいよ始まる食戟に、会場が割れんばかりの歓声に包まれた。

 

 まず先に姿を現したのはミートマスター、水戸郁魅。

 フードを目深に被り、全身を包む黒いロングジャケットが照明の落ちた会場で暗闇に紛れる。

 しかし、それも数秒。

 (まばゆ)い光に照らし出されると同時に脱ぎ捨てられたジャケット。その下から現れた褐色に色付くグラマラスな姿態は、忽ち会場にいる男達を沸かせた。

 

 続いて現れたのは今回の主役とも言える編入生、幸平創真。

 彼が入場するなり今日一番の大歓声……いや、大ブーイングが浴びせられる。

 けれど本人は至って平常運転。寧ろ何故これ程嫌われているのか理解できないと、内心首を傾げていた。

 

『それでは、改めて今回の食戟の対価を確認させて頂きます。水戸さんが勝てば、丼物研究会は廃部。かつ、幸平くんの退学。幸平くんが勝てば、丼研の部費増額。調理設備の増強。さらに――水戸さんが丼研へ入部することになります!』

 

 改めて聞いても、とても釣り合うとは思えない対価。

 だが創真はこれに同意するどころか、自ら進んで選んだのだから正気の沙汰ではない。

 相手の力量も分からずにそんな事をするのは余程の実力者か、後先を考えない愚か者のどちらかだ。

 

『では、参りましょう! 双方調理台に! 負けた者は全てを失う、舌の上の大一番!! 食戟――開戦!!』

 

 ゴングが鳴ると同時に、二人は直ぐ様行動に移す。

 郁魅が持ってきた食材はA5和牛。対して創真がスーパーの袋からガサゴソと取り出したのは同じく牛肉。それも、半額シールの貼られたサーロインステーキだった。

 創真のなめ腐っているとしか思えない食材選びに、再び会場が罵詈雑言の嵐となる。

 

 そんな様子を高見から見下ろしながら、えりなは隣に座る青葉へと問いかけた。

 

「青葉くんはこの食戟、どちらが勝つと予想しているのかしら?」

 

 それは興味本位の質問だった。

 A5和牛とスーパーの半額シールの貼られたサーロインステーキ。どちらが勝つかと聞かれれば、誰がどう考えても前者だ。

 仮にA5和牛が負けるとすれば、碌に料理のできない者が作った場合だろう。

 

 しかし水戸郁魅は、そんな料理人と呼べるかどうかも分からない低俗とは違う。

 肉を自在に捌くパワーと、それとは正反対に位置する食材に慈しみを持った繊細さを持ち合わせ。彼女であればどんな肉であろうと輝かせこそするが、その光を失わせる事は無い。

 どちらが勝つかなど、火を見るよりも明らかだ。

 

 そう考えていたからだろう。数瞬の後、青葉が出した返答に えりなは目を見張った。

 

「どっちが勝つかは、まだ分からないかな。食材だけ見たら、水戸郁魅の方がリードはしているけどね」

「……それはつまり、あの食材を見た後でも、編入生の方がより美味しい品を作れる可能性があると?」

「ん~。何て言うかな……」

 

 どう言葉で表そうかと、困ったように眉根を寄せる青葉。

 

 編入試験から一夜明けた後、青葉は約束通り 総帥に創真の合否を確認していた。

 その時に言われたのだ。「不合格となっていたが、儂が食した結果 合格に値していた為取り消した」と。

 食の魔王とも呼ばれる遠月学園の総帥――薙切仙左衛門が美味と評した以上、創真の品は合格に値していたのだろう。

 

 ならば何故、えりなは不合格にしたのだろうか?

 

 入学式での創真の発言を見れば、えりなの気に障る言動をしたのは何となく想像ができる。

 だがそれ以上に、神の舌と呼ばれてきた周囲の環境と、その影響で根付いたエリート気質が不合格にした原因だろうと青葉は考えていた。

 薙切という名。そして神の舌と称されるその味覚は、料理界において絶大な力を有している。そのプレッシャーに加え、味見役という幼少期からある多忙な仕事は、薙切薊の件を除いても えりなの価値観を決定付けるものであったのだろう。

 美味しいか、不味いか。上物か、安物か。料理とはそういうものであると。

 

 その考えが必ずしも悪いとは思わない。けれど青葉は、えりなにもっと広い視点で料理を見てもらいたかった。

 それが出来ればきっと、えりなは今よりも大きく成長できるから。

 

「料理は突き詰めたら美味しいか不味いかだけど、本当に大切なものはそこじゃないと俺は思うんだ。その料理を、その組み合わせを、その発想を自分なら思い付いたか思い付けなかったか。例え料理が不味かったとしても、そこには自分では想像も付かなかったモノがあるかもしれない。そう言った視点で見られる様になればきっと、えりなの料理に対する受け取り方や、視野がもっと広がると思うよ」

「思い付いたか……思い付けなかったか……」

 

 その言葉は、えりなの胸にストンと落ちた気がした。

 料理とは何であるか。料理人としてあまりにも当たり前に見聞きする故に、深く考えた事はなかった。

 えりなの思う料理と、青葉の思う料理。いや、全ての料理人にとっての料理は、それぞれ違う価値観を持っている。

 料理とは――美味しいか不味いか。その縛られた鎖を解きほぐした時、一体どんな光景が見えるのか。そんな事をえりなが考えた時だった。

 

『何よこの扉。開かないじゃない!』

『いや、お嬢。多分鍵が閉まってると思うんですけど』

『全く。折角ここまで来てあげたのに、面倒くさいわね。えりな、いるんでしょ! 早く開けなさい!』

 

 どこか懐かしいような、聞き覚えのある声。

 えりなを敬う事も臆する事もなく、乱雑に声を掛けてくる者は一人しかいない。最近ではその一人として、創真が追加されていたりするのだが……。

 

「この声は……アリスね」

「えりな様。どういたしましょうか」

「通してあげなさい」

 

 了承を得た緋沙子が扉を開けると、そこにはえりなの予想通り、薙切アリスの姿があった。

 その後ろには、彼女の側近である黒木場リョウが気怠げそうに立っている。

 

「あら、青葉くんもいたの。秘書子も元気そうね」

「誰が秘書子だ」

「ほら、リョウくんも ちゃんと挨拶しなさい」

「……どうも」

「アリス。一応聞くけど、どうしてここに来たのかしら?」

「私も編入生に興味があってね。そしたらここでふんぞり返っているえりなの姿が見えたから、態々来てあげたのよ。感謝しなさい」

 

 一体どこに感謝する要素があるのかとえりなは思うが、従妹であるアリスにそんな事を言った所で無駄だと理解しているので、心の中に留めておく。

 

 中等部の頃に久しぶりに再会した時は、えりなとアリスの関係は過去のわだかまりによって大分拗れていた。

 しかし直接会うのは初めてだが、アリスと手紙のやり取りをしていた青葉が間に入り二人を取り持つ事で、今では仲の良い従姉妹に戻った……と、青葉とリョウは思っている。何故思っているなのかと言えば、本人らは仲が良いと断じて認めようとしないからだ。

 

「ふ~ん」

 

 アリスはえりなの隣、青葉とは逆側に位置する席に座ると、郁魅と創真の調理風景を眺める。表情は先程までとは打って変わり、相手の力量を見定めようとするものだった。

 会話が途切れ、暫し無言の時間が流れる室内。調理も中盤を過ぎ、いよいよ料理の完成形が見え始めた所で、アリスは話を振った。

 

「確か彼女、えりなの派閥の子よね。えりなはあの子と編入生くん、どっちが勝つと思っているのかしら?」

 

 その質問は奇しくも、えりなが青葉に問いかけたものと同じであった。

 昨日までのえりなであれば、その調理姿を見るまでもなく 郁魅が勝つと答えていたかもしれない。いや、間違いなく答えていただろう。

 だからこそ、郁魅を創真にぶつけたのだから。

 

 ――けれど、今ならどうであろうか。

 

 一度根付いた倫理観は、そう簡単には変わらない。A5和牛と郁魅への信頼。それが創真に負けるとは……今でも思えない。

 だが、編入試験で食べた化けるふりかけご飯。馬鹿にしているのかと一時は席を立ったが、完成された姿を見て思わず足を止めていたあの料理。

 不味いと評してから、ずっと心の何処かで引っかかっているあの料理。

 

 ……考えれば考えるほど、らしくないと思ってしまう。何も無い虚空を懸命に掴もうとしている感覚だ。

 でも、一つだけ分かった事がある。もしあの料理を作った料理人と、郁魅が勝負をしたら。その時は、きっと――。

 

「――幸平くんが、勝つと思うわ」

「……えりな、何だか変わったわね」

「……どういう意味よ」

「そのままの意味よ」

 

 二人の会話を遮る様に、調理終了の合図を告げるゴングが鳴った。

 

『そこまで! これより審査に入ります。両者、品を前へ!』

 

 

 

〆〆〆〆〆

 

 

 

 ――フランス パリに店を構える料理店『SHINO'S(シノズ)

 そこでシェフを務める遠月茶寮料理學園 第79期生 元遠月十傑 第一席である四宮小次郎の元に、一本の電話が入った。

 

「四宮シェフ! 日本から電話が来てますよ」

「あ? 漸く一息吐いてるってのに、誰からだ?」

「遠月学園の堂島と名乗っていました」

「堂島さんから……?」

 

 堂島と聞いて心当たりがあるのは、遠月リゾート総料理長 兼 取締役会役員である堂島銀。

 学園を卒業して以来、プライベートの関係もない大先輩から電話が掛かってくるという事は、間違いなく遠月絡みの話だろう。

 だが、何故卒業してから十年近く経った今 電話を寄越したのかと、訝しみながら受話器を手に取った。

 

「お電話変わりました、四宮です」

『よお。久しぶりだな、四宮』

「堂島さん、お久しぶりです。それで、突然何の用ですか?」

『なに、遠月学園ではもうじき宿泊研修が始まるからな。そこにゲスト講師として呼ぼうと、直々に電話をさせてもらったまでだ』

「なるほど」

 

 友情とふれあいの宿泊研修……というのは名ばかりで、その実態は無情の篩い落し宿泊研修だ。

 遠月学園 高等部一年生の最初の試練であり、山奥の合宿所で毎日過酷な料理の試験を課される。そして当然、合格点に届かなければ即退学。

 四宮もかつてこの宿泊研修を生き抜き、遠月十傑 第一席まで上り詰めるに至ったのは懐かしい思い出だ。

 それがまさか、ゲスト講師として呼ばれる日が来ようとは……。

 

「態々直接声を掛けてくれたのはありがたいですが、俺がそこに行くメリットはあるんですかね? 骨の無い奴の集まりだったら、全員落とすだけですよ」

 

 この宿泊研修は学生側からすれば地獄かもしれないが、講師側からすれば遠月のより良い人材をいち早く確保する為のリクルート材料になる。

 だから四宮も良い人材がいるのであれば参加したい所だが、いなければ断ろうと考えていた。

 

『今年は特に期待できるぞ。何と言ってもあの仙左衛門殿が、今年の一年生を玉の世代と評しているのだからな』

「玉の世代ねぇ……」

『それに、お前の他にも水原や乾といった他の79期生や80期生も参加する予定だ。乾に関して言えば、四宮先輩が来るなら私も行きますっと言っていたが……。おっと、これは本人には黙っていろと口止めされていたんだったな。まぁそんな訳だ。久しぶりに同朋と会ってみるのもいいんじゃないか?』

 

 玉の世代と呼ばれる生徒達。それにかつて、共に研鑽しあった同級生や後輩と久しぶりに会うのも悪くはないだろう。

 一先ず参加の意思表明をしようと、四宮が口を開いた――その時だった。

 

『それに今年は、芳賀若菜の子もいるしな』

「――ッ!!」

 

 狙って言ったのだろう。言葉を詰まらせた四宮の反応を楽しむ様に、堂島は不敵に笑う。

 

『返事は一週間以内にしてもらえればいい。それまでじっくりと考えることだな』

 

 通話の切れた受話器を握りしめ、四宮は暫し呆然とその場に立ち尽くす。

 そしてポツリと、言葉を漏らした。

 

「あれからもう……そんなに経ったのか」

 

 芳賀若菜。もう聞くことは無いと思っていたその名を、四宮は噛みしめる。

 

「俺はアンタと――肩を並べられる料理人になれただろうか……」

 




 前回のアンケに参加してくれた読者様、ありがとうございます。
 秋の選抜とかが原作と同じ展開でも読みたいかどうかは割れますよね。全ての読者様の希望に沿う事はできませんが、他も含め面白くしていければな~と思います。
 そもそも、私がそこまで辿り着けるか謎ですが。
 料理作れないし知識無いくせに、料理の描写を必要とされる原作のSS書く……。りんどー先輩に悩まされる司先輩の心境が分かる気がしますね……。多分未来の私は料理描写書いてなさそう。

 さて、創真が入学。えりなが悩まされるという訳で、創真 VS 郁魅を書きました。最初の頃のえりなは以外と悪い性格をしていた為、青葉の影響もあって多少温厚にした結果こんな感じに。えりなの郁魅に対する扱いもまともになったかな?
 アリスとどのタイミングで会せようかと考えていたんですが、中等部の頃から直接付き合いがあるはずだし、宿泊研修で突然自然に会話させるのはきつい。と言う事で、今回の食戟を活用しました。
 料理や結果は書いてませんが、食戟は創真が勝ちました。今回は書かない方がいい感じに終わると思ったので。

 そして再び出てきた芳賀若菜の名前。
 前話の後、感想で若菜って何かヤバくない? って頂きましたが、まぁ……はい。寧ろ何故今まで誰も聞いて来なかったのだろうと思いながら返信させてもらいました。予告みたいな感じにしてあるので、興味がある読者様は見てみてください。
 次回はそれにお答えする形で、ちょっと本編とは外れますが若菜の過去に付いて書こうと考えています。元々このタイミングで書こうとは決めてたんですよね。
 そしてそれは事実上、本作の最終回みたいなものです。私が第二部でそこまでは書きたいって思っていたので。
 本当の物語の最終回は既に考えてありますが、アニメ終了までに書ききれるかな……。
 もう書くのが無理だと思ったら、要所要所書く短編集に切り替えて強引に最終回です。

 まぁそれはあっても先の話なので置いといて、恐らく次回は難産になります。
 若菜の設定は考えてあるのですが、それを言葉で表すのはまた別問題でして……。一応読んでて楽しめる感じに仕上げたいと思っているので、リアルの都合もあって暫く時間がかかりそうです。
 何ヶ月かかるかは分かりませんので、気長にお待ちください。

 そして今回は、本文が何気に過去最高の7,600字でした。次回はそれ以上になる予感もしますが……。
 ではでは、いつになるか分かりませんが、また会えたら嬉しいです。

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