神の幼馴染   作:〆鯖缶太郎

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 台風にはお気をつけて。


第七話

「食戟で四宮先輩を負かしたら――田所の退学、取り消してくんないすか?」

 

 恵を庇うようにして前に出た創真は、左手首に巻いていた手拭いを抜き払った。

 その瞳は、間違いなく本気。迷いもなく、曇りもない。ただ真っ直ぐと四宮を睨みつけていた。

 

 仲間の退学を覆すために、自分の身を犠牲にしようとする。中々に勇気ある行動だと四宮は思った。

 在校生以外との食戟の前例が無いわけではない。故に創真との食戟は可能と言えば可能であるが……。

 

「食戟か。また随分と懐かしい響きだな。だが、食戟には双方の合意が必要……だろ? 悪いが俺は、そんな勝負に付き合う気は無いんでね」

 

 この勝負は、四宮にとって時間の無駄でしかない。

 過去の自分なら間違いなく受けただろうと思うが、それはもう 昔の話だ。

 恵の退学は決定事項。さっさと話を終わらせようとしたその時、思わぬ乱入者が現れた。

 

「なかなか面白い事になっているようだな、四宮」

「……堂島さん」

 

 振り向けば堂島と、その後ろには乾の姿もある。

 

「途中からではあるが、話は聞かせてもらった。ここではなんだ。場所を移してゆっくりと話し合おうじゃないか。それと、そのテリーヌも持ってきてもらえると助かる」

「は、はい!」

「……チッ」

 

 大先輩の言うことには逆らえず、乾もいるため余計に話がややこしくなりそうだと舌打ちする四宮。

 創真の言葉に耳を貸さず、さっさと引き上げればよかったと後悔しながら歩き出す。

 

「四宮先輩。私の恵ちゃんに何をしようとしていたんですか?」

「お前には関係ないだろ。それに何だよ、私のって」

 

 他の学生へ先に移動バスで戻るよう伝えた後、頼んでもいないのに待っていた乾の言葉が引っかかり、問い返す。

 すると乾は途端に恵の可愛さについて熱弁しだし、聞かなければよかったと四宮はまた後悔するのだった。

 

 

 

「美味しいじゃないですか! 恵ちゃんの作った品!」

 

 場所を移して事務室。

 四宮が恵を退学にしようとしていた事を知った乾は、てっきり味が悪いとばかりに思っていたが、そうではないようだと驚きの声を上げる。

 そこで四宮は、改めて今回の退学までの経緯について語った。

 退学の理由が美味しさではないこと。傷んだカリフラワーを使う際、独断でアレンジしたこと。結果として、ルセット通りに作らなかったことなど。

 

「――と、言う訳だ。それに堂島さん。この課題は俺に一任されているはずだろ?」

 

 だから何の問題もないと語る四宮に、堂島は頷きながら。

 

「もちろんだ、四宮。お前が定めた試験内容と判定基準に不満は無いさ。だが……少なくとも、彼女は状況に対処しようとしたんだろう? そのガッツには一考の余地があるとは思わないか?」

「ちっとも思わないね」

 

 もし思っているのだとしたら、そもそも四宮は恵に退学を言い渡すはずがないとすぐにでも分かることだ。

 それなのに態々堂島がこんな質問をするあたり……。

 

「私は余地があると思いまーす!」

「むっ。なんとこれで同票だ……。退っ引きならんな」

 

 堂島自身が今回の退学の決定に賛同的ではなく、加えて乾が対抗してくると半ば確信めいたものがあったのだろう。

 四宮にとって予想通りすぎる展開に、だがどう結論を出すのかと皆が思ったところで、堂島は再び口を開いた。

 

「致し方ない。非公式の食戟をしようじゃないか」

 

 ――かくして、堂島によって取り仕切られる野試合が決定した。

 ルールは恵がメインで調理し、創真はサブとして参加する2対1。

 けれど今は合宿の最中であり、これから学生の二人は午後の課題に向かわねばならない。そこで今日の課題を全て終えた後、改めて行われる運びとなった。

 

「まったく……。こんな食戟に付き合わされるなんて、とんだ茶番だな」

 

 遠月離宮に戻った後、閑散とした廊下を歩きながら 四宮は思わずそう呟く。

 確かに恵の独断行動は不合格に値したが、一考の余地があるという堂島や乾の意見も理解できなくはない。

 だが非公式とは言え、食戟で勝つことができなければ結局は退学という条件。

 恵の料理の腕は既にテリーヌを食べた時に把握している。学生としては頑張っていた方だが、万一にでもあの腕の料理人に負けるなど 四宮は思えない。勿論、創真がサポートで加わったとしてもだ。

 そこでふと思ったことを、隣を歩いていた乾に投げかけた。

 

「なぁヒナコ。何で食戟を了承させたんだ? お前も田所の料理を食べたなら、少なくとも俺の皿よりも美味いとは思ってないだろ?」

 

 今回の食戟は四宮にとって不可解な点がある。

 それは、恵が食戟で勝てなければ退学という条件。元々退学にするつもりだった為、一見この条件は当然のように思えるが、相手は他ならぬ四宮自身。

 勝つのがどちらかなど分かりきっており、加えて堂島と乾は恵のテリーヌを既に食べ、その手腕を把握しているはず。

 食戟で勝つのはどちらか。そんなものは食べずとも、四宮だと察していなければおかしい。

 

 乾は四宮と同じく、自身の城を持つプロの料理人。日本料理がメインでジャンルは違うかもしれないが、その味覚は本物である。

 恵のテリーヌを食べて美味しいとは口にしていたが、だからと言って四宮と張り合えるとは思っていないだろう。故に、不可解なのだ。何故今回の食戟を押し通したのか。何故退学の引き延ばしにしかならない行為をしたのか。

 生憎と堂島は、会場の準備をしてくると言ってこの場にはいない。だから乾の考えだけでも聞こうと返答を待つ。

 

「そうですね……。確かに、恵ちゃんではプロの料理人である私達に到底及ばないでしょう。けど、四宮先輩の食戟に勝敗は関係ありません。だって先輩は、一度だって食戟で対価を要求したことが無いじゃないですか」

「…………」

 

 暫くして乾から紡がれた言葉に、四宮は思わず押し黙った。

 

 食戟と言えば、元遠月生徒からすれば懐かしい響きだ。

 そして乾にとって、当時の四宮の食戟は特別記憶に残っている。どんな対価を相手から要求されようと、決して自らは求めない。そんな先輩の姿が。

 

 ――何故無茶な食戟をするのかと、本人に直接聞いたことがある。

 だが四宮は、その質問の度に言葉を濁し。後に水原から聞いた話で、かつて学園に在籍していた とある生徒の真似をしているのだと知った。

 その生徒は乾が中等部に入学するのと入れ替わるように退学しており。十傑の権限で過去を調べても、詳しい記録は残されていなかったと記憶している。

 

「食戟の度に負けたらどうしようって、気が気じゃなかったんですよ? 十傑の席も退学も平気で賭けちゃいますし」

「……説教ならもう聞き飽きたよ。それに、もしもの時は私の店で雇ってあげますって言ってなかったか?」

「――そんな事も、言いましたね……」

 

 四宮と知り合った当初は、その考えを理解できなかった。いや、今も完全には理解できていない。

 意見がぶつかり合い、口論になることも多々あった。食戟の度に、人生を棒に振る賭けをするのは止めてくれと何度も言った。

 そんなある日。意地でも考えを改めない四宮に、つい――勢いで言ったのだ。

 

『何度でも言うが――これは俺個人の問題だ。俺がどうしようが、俺の勝手だろ』

『……分かりました。じゃあ、四宮先輩がもし料理人になり損ねたら。その時は私が先輩を貰います』

『はぁ? 俺がヒナコの店で働くってことか?』

『そ、そうです!』

『……分かったよ。もしもの時はな。まぁ、そもそもヒナコに自分の店を開けるかどうかが疑問でならないがな』

『できますよ! それはもう、四宮先輩を超えるような立派な料理人になるんですから、覚悟しておいてください!!』

 

 結局は……と言うべきか。四宮は遠月十傑 第一席まで上り詰め、あんな口約束などとっくに忘れられていると乾は思っていた。

 今の反応を見る限り、言葉の本当の意味はやはり理解していないようだが。

 

「けどな、ヒナコ――」

 

 そんな甘く切ない青春時代を思い出していた乾に、四宮は追い打ちを掛けるように言った。

 

「確かに俺自身は対価を要求したことはないが、相手自ら提示された場合は話が別だ」

「……え?」

「それに、今回は食戟じゃない。あくまでも非公式の食戟だ」

「じゃ、じゃあ。もし恵ちゃんが四宮先輩に負けたら……」

「そんなの、退学に決まってるだろ」

 

 何の迷いも無く言い放たれたその言葉に、乾は顔を引きつらせる。

 ――そうだ。そうなのだ。この先輩はこういう人であったではないか。四宮のことは乾もよく分かっていたはずなのに、すっかりと安心しきってしまっていた。

 

「俺はこの部屋だ。堂島さんから何か連絡があれば教えてくれよ」

 

 そう言い残し閉じられたドアの前で、暫し呆然と佇む乾。

 

「これは……まずいですね」

 

 あの余裕綽々なヘラっとした顔は冗談ではなく、四宮はやると言えば本気でやる男だ。

 恵が食戟で負ければ退学というのが決まった今、果たしてどうすれば阻止する事ができるのか。

 

 乾も割り当てられた部屋に戻り、脳をフル回転させた結果……一つの答えに辿り着いた。

 それはあまりにもセコイ、食戟に於いて禁じ手と言える行為。だが、形振り構っていられない。それに、四宮は言ったではないか。これは非公式の食戟だと。

 

「なら、何をしても構わないですよね……」

 

 不敵な笑みを浮かべ、早速とばかりにスマホを取り出し、乾は協力者となり得る者達に連絡していくのだった――。

 

 

 

〆〆〆〆〆

 

 

 

 遠月離宮の別館。その地下一階の厨房で、食戟が執り行われる事が決定した。

 今この場にいるのは、創真と恵を呼びに行った堂島を除いた五名。

 食戟をする四宮。審査員として招集された関守、水原、ドナート。そして、椅子に縄で縛られた乾。

 

「うぅ……。いったい誰ですか、私を密告したのは……」

 

 彼女がしようとしたこと。それは言ってしまえば不正行為である。具体的には、そうするように呼びかけた主犯だ。審査員として集まった三人に、例え四宮の方が美味しくとも恵に票を入れてくれと――。

 が、それが四宮にバレて敢え無く御用。現在の椅子に縛られるという状況が出来上がっていた。

 

「水原先輩ですか?」

「私は特には」

「じゃあドナート?」

「俺は昨日恵ちゃんに出会ってから、ずっと彼女のことを――」

「黙っていてください。それならまさか……」

「俺でもないからな」

 

 完全に自業自得なのだが、本人は何故四宮にバレたのか納得がいかないらしい。三人にそれぞれ問いただすも、全員違うと言い張る。

 その時、乾の頭に何かが当たり。見上げれば、紐を通した段ボールを持った四宮と目が合った。

 

「誰からも聞いちゃいねぇよ。どうせヒナコならそうするだろうって鎌をかけただけだ。相変わらずお前は――単純な奴だな」

 

 手に持ったそれを乾の首にそっとかけながら。ぶっきらぼうに、だがどこか優しくもある四宮に、乾はさっと顔を伏せた。

 顔が熱いのも、鼓動が高鳴っているのも、気のせいではないだろう。

 全てを見透かしてくるような四宮の瞳を間近に見て。そしてこの合宿が始まってから起きた彼とのやり取りに、必死に押し留めようとしていた学生の頃の心残りが甦る。

 伝えようとして素直に伝えられず、結局最後まで気付かれなかった感情。

 

 ――やはり私は、先輩のことがどうしようもなく……。

 

「――って、何ですかこれは!?」

「あん? 何って、見たまんまだろ」

 

 顔を伏せ、視界に入ったそれを見て、乾は思わず声を上げた。

 そこにあったのは、お手製感が満載な首かけ段ボール板。板の表面には『ただの観客』と、マジックでデカデカと書かれていた。

 

「これ以上何かされると面倒だからな。ヒナコはそこで椅子に縛られて黙って観てろよ」

「酷いです! 酷いですよ 四宮先輩!!」

「外野に何を言われようが、知ったこっちゃないね」

「先輩のバカ、アホ、マヌケ、人でなし、意気地なし、頑固者、頭でっかち、ナルシスト、鈍感野郎――って痛い痛い痛い痛い!」

「はいはい。ただの観客は静粛に」

 

 青筋を立てる四宮と、右手一本で顔面を割れんばかりに掴まれる乾。

 そんな二人のやり取りを見て、審査員であり同朋でもある三人は昔と同じようにため息を吐き、顔を見合わせ微笑んだ。

 ――相変わらず、四宮と乾は何も変わってないなと。

 

 

 

 ――その後。堂島によって連れられた創真と恵が加わり行われた食戟は、当然のように四宮の勝利で終わった。

 四宮の皿には票を表す三枚のコイン。対して恵の皿には一枚のコインもない。

 審査員の評価はどちらも上々だった。だがやはり、経験の差がありすぎたと言うべきか。プロの料理に学生は敵わなかった。

 

「実力の差は歴然……。四宮の圧勝という所だな」

 

 これにより、恵の退学が決定。力になれなかったと謝る創真に、恵の涙が溢れ出した時。

 ――パチッと、一枚のコインが皿に乗せられる音が厨房内に響いた。

 視線を向ければ、堂島が恵の皿の前に立っている。

 

「勝負はもう着いたはずですが、それは何の真似でしょうか 堂島さん?」

「む? いやなに。俺はこちらの品を評価したいと思ったのでな」

 

 四宮の問いに、堂島は悪びれた様子も無く言ってのける。

 審査員でもないのに、一体何のつもりなのか。そもそも票を投じるにしても、何故恵の皿なのか。

 理解不能だと語った四宮に、堂島は一枚のコインを投げ渡した。

 

「本当に分からないのか? 田所くんが作った料理。その中に答えはあるぞ」

「……どういうことですか?」

「四宮。お前は今、停滞しているな?」

「――ッ!!」

 

 

 

 ――遠月茶寮料理學園 79期 卒業式式典。

 卒業するその日を、四宮は遠月十傑 第一席として迎えた。

 第一席。それは、かつて在学していた若菜と同じ席次。

 彼女に弟子にしてくれと頼み込んだ時、私と肩を並べられる料理人になれたと思ったらまた声を掛けてくれと言われ、そして当人に勝手に姿をくらまされ。

 気持ちを整理し、彼女と並び、あわよくば超える為に。ただがむしゃらに、学園を過ごしてきた。

 だがそれでも、若菜には到底敵わない。同じ第一席であっても、格が違い過ぎた。

 

『フランスで自分の店を持って、プルスポール勲章を獲る』

 

 その年に最もフランス料理の発展に貢献したシェフへ与えられる勲章。もし獲れたとすれば日本人初の快挙となることを目標に、海外で腕を磨くことにした。

 そうすることで自分の料理を完成させ、名を上げ、いつか若菜と並び、彼女の目に留まると思って。

 

 六年間フランスで修業し、自分の店を開き、スタッフすらも敵であると思うようになり。

 切り詰め、切り詰めて、張り詰め通して――プルスポール勲章を獲った時、改めて分からされた。

 

 ――ああ。やはり、あの人には敵わないなと。

 

 四宮の中で生きる若菜は、遥か先へと行っていた。

 いや、彼女は止まっている。何故なら四宮は、あの日以降、若菜の食戟を見ていないのだから。

 なのに、それなのに、追い付けない。

 

 プルスポール勲章を獲って、次はどうすればいいのか。

 どうすれば、若菜に追い付くことができるのか。

 ここはまだ頂ではない。通過点でしかない。それなのに、それなのに周囲の人間は、四宮を称賛する。

 

 いつしか周囲に流され、納得して――足を止めてしまった。今更若菜に追い付く必要はないのではないかと、思うようになってしまった。

 

 

 

「気付いているんだろう? 勲章を獲った今、次に何処へ向かえばいいか分からなくなっている事」

 

 気付いている。そんなことは、他ならぬ四宮自身が一番身に染みて分かっている。

 料理人にとって、停滞とは退化と同義。必死に詰めた若菜との距離もまた、徐々に広がっているのだと。

 

「四宮。この勝負で看板料理(スペシャリテ)を出さなかったのは、自分の料理が止まっている事を 俺たちに知られたくなかったからか?」

「――違うっ!!」

 

 その問いを、四宮は咄嗟に否定した。

 いや、それは否定と言うよりも、叫びに近かっただろう。

 

 堂島の言い分は確かに間違っていない。停滞している事は認めよう。

 だが、それが看板料理を――必殺料理を作らなかった理由ではない。

 

 ――作らなかった本当の理由。

 それは、自分の手で作った必殺料理を……今出せる最高傑作を――認められたくなかった。

 美味しいと、頑張ったと、一流だと認められたくなかった。

 その時こそ、完全に立ち止まってしまう気がして。

 

「俺は……俺の料理はまだ、認められる訳には いかないんだ」

「……そうか。お前はまだ、必死に足掻いていたんだな……」

 

 ただ一人。堂島だけが納得したように頷き。両手を力強く握りしめた四宮に、恵の料理を差し出した。

 

「食ってみろ。今のお前に、田所くんの料理はピッタリだと 俺は思うんだ」

 

 

 

〆〆〆〆〆

 

 

 

 食戟が終わり 閑散とした厨房内で、堂島は目前に置かれた二枚の皿を眺めていた。

 その皿にはそれぞれ、三枚のコインが置かれている。

 

 ――あの後。料理を食べた四宮が恵に票を入れ、乾も半ば強引に参加することで食戟は引き分けに終わった。

 それ自体は良かっただろうと、堂島は思う。

 

「……堂島さん。こちらの皿、下げてもよろしいでしょうか?」

「む? あぁ、悪いな 関守」

 

 見れば、もう片付けはほとんど終わっていた。

 今回の食戟を取り仕切ったのは堂島であり、片付けはしておくと言ったのだが。関守だけが手伝いを買って出て、この場に残っていた。

 

「……四宮の停滞は、鋭すぎる才覚故……ですか」

 

 皿を見つめ、ポツリと呟いた関守の言葉に 堂島は首を横に振る。

 

「確かにそれもある。だが、奴の根底にいるのはあの料理人――芳賀若菜だ」

「それはまた……随分と懐かしい名前ですね」

 

 芳賀若菜。その名を関守は知っていた。

 寧ろ、彼女が在学していた時期にひと月でも遠月にいれば、知らぬなどあり得ないだろう。

 今では存在そのものが幻となった生徒。狂気とも呼べる食戟の頻度と、一度も黒星を付けたことがない料理技術。

 全ての食に精通していると言われ。デキる料理人が若菜の食戟を見ると、自身の料理像が呑まれてしまい、その姿すらも拝めなくなるとはよく聞いた話だ。事実、関守も若菜の食戟を観戦しないようにしていた事を、今でも覚えている。

 

「四宮は遠月では珍しい庶民上がりだ。奴は(はな)から第一席の実力があった訳ではない。故に早期に彼女を目標とし、惹かれてしまった」

 

 最初こそ問題はなかっただろう。学生時代は誰もが未熟で、まだまだ伸びしろがあり、限界は見えない。

 けれど目標とは、達成してこそだ。それなのに若菜を目標としてしまった四宮は、どれだけ研鑽しようと彼女には届かず、そのまま一流の料理人となってしまった。皆が手前でゴールする中で、四宮だけは走り続け――立ち止まってしまった。

 

「目標があるのに一向に届かない。俺だってその立場なら 立ち止まっていたかもな。だが、それでも四宮という料理人は一人で進もうとしていた。お節介だったかもしれないが、俺が四宮に食戟をさせたのは、軽く背を押す切っ掛けがあればと思っただけさ」

 

 その堂島の期待に恵は見事答え、そして二人は今日を(さかい)に変わっただろう。

 未来ある料理人がこれからどう進んで行くのかと考えながら、堂島は若菜の姿を思い浮かべた。

 

「思えば彼女もまた、不必要と思うモノを切り捨て、壊れてしまったのかもな……」

 




 敢えて言うと、最後の堂島の言葉はあくまでも彼の視点から見たものです。

 どうも~約二ヶ月ぶりですね。
 いよいよアニメが始まるという事で、何とか投稿を間に合わせることができました。
 と言っても、色々端折った感が凄い。良い具合にまとまらなかったのは許して……。文章力が欲しい、切実に。

 さて、前回のアンケ、ご協力ありがとうございます。
 食戟の描写は結局なくしました。書こうと思ったんですが、そこまでの気力がなく……。気になる人は原作を読みましょう。

 気を取り直して、今回の話について。
 若菜が介入しているせいで、色々と展開が変わっております。後は原作で語られていない部分などを想像で書かせてもらいました。
 四宮と乾は結局どうなったんですかね。他にも色々カップリングはありましたが、果たしてどうなったのか……。ファンブックだけでも買うべきかな~。まぁ、多分買わない。

 ……ダメだ。後書きの書き方とテンションを忘れてしまった(笑)
 寧ろ作者的には好き放題言える後書きの方がメインまであったのに~。

 そうだ。実は最終回の展開がちょっとブレてきているんですよね。
 最終回はこうしようって元から決めていたんですが、そこまで辿り着ける自信がなく。作者としては第一部でほぼ完結していて、この第二部であるIFストーリーは本当に気楽に適当に流して終わろうと思っていたんですが、何か普通に連載みたいになってしまい。
 正直な話、多分このまま続けるのは難しいです。
 なのでその内、唐突に時が流れて最終回を迎えたらごめんなさいと先に謝っておきます。
 休載はしても失踪だけはしたくないので、どんなに強引な形であれ完結することをご了承下さい。
 多分流れとしては、宿泊研修は普通に終わって、そこから時の流れが早くなると思われ……。その場合はもちろん、物語の設定や補足説明は完結後にするつもりです。

 ではでは、できれば月に最低一話投稿を目指して頑張ります。
 お気に入り、評価、感想など。お気軽に。
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