・今話は作者が本来予定していた最終話部分のみの投稿となっております。
・原作通り薊政権が発足した世界線であり、第二部と若干の異なりがあります。
・本文は2,000文字弱しかありません。
・後書きで本文並みに長い補足説明が入ります。
それでも良い読者様だけお読みください。
えりなの手によって――神の舌によって作られるその料理全ては
他者から見える完璧な料理も、えりなにとってはいつも通りに過ぎず。薙切の名を持つが故に 世界各国の最高傑作と評される料理を食してきた彼女には、料理で刺激を感じる事はほとんど無くなった。
学びとは残酷だ。料理について知れば知るほど、己の限界が見えてくる。しかしその限界を超える為に、学ばなければならないという矛盾。
……頼る術ならば 身近にあった。
幼馴染である芳賀青葉。そして、彼の母親である芳賀若菜。二人に聞いたならば間違いなく、えりなの望む答えが返って来るであろう。
けれどもそれは、問題を解かずに答えだけを聞いて 分かった気になっている愚か者と何ら変わりない。
だから、己の手で見つけたかった。己の舌で辿り着きたかった。
――料理とは何であるか。
あの食戟の日。青葉から図らずとも得た
あまりにも基本で当たり前すぎて、今まで疑問にも思わなかった料理に対する考え方。
自身の皿。青葉の皿。そして――創真の皿。
その全ては同じ料理という括りでありながら、全てが違っていた。
神の舌は料理の奥深さをまだ――何一つ 学んではいなかった。
「……約束、破っちゃったわね」
えりなは対面に座る青葉へと、そう話を切り出す。
これから果たすのは、えりなと青葉の十年越しの約束。
「青葉くんは忘れちゃったかもしれないけど、ずっと……昨日のように覚えているわ。私の必殺料理完成した時、その時は青葉くんが 一番に召し上がって下さいって」
けれどもその約束は結局、守る事ができなかった。
「でもあの時、あの瞬間だけは何も意識してなかった。幸平くんに触発されて、お父様に昔の私とは違うって見せつけようと思って」
気が付いたのは、その後。一夜明け、子供の頃の夢を見た時だ。
――ああ、そうか。私はついに必殺料理を作ったのか、と。
「勿論、まだまだ研鑽していくわよ。今の必殺料理だって、所詮は粗削り。第一歩に過ぎないんだから。でも――やっぱり一番は、青葉くんに召し上がって欲しかった」
だから――。
「だからもう一度、約束をしましょう。私の必殺料理が真の意味で完成した時。その時は青葉くんが、一番に召し上がって下さい」
えりながそこまで言うと、対面に座っていた青葉――の、役となって 代わりに座っていた緋沙子が神妙な顔で頷いた。
「えりな様。もういいんじゃないでしょうか? そろそろ青葉様がお見えになります」
「えっ? もうそんな時間? で、でも……あと一回だけ……」
「因みに、幸平創真は既にえりな様の後ろに」
それを聞いたえりなは目にも止まらぬ速さで振り向くと、実際に創真の姿を確認して飛び上がらんばかりに驚く。
「ゆっ、幸平くん!? いつからそこに!?」
「いやーいつからって、最初から? あっでも、何回もそのやり取りを新戸とやってたって事なら途中からか?」
「――――ッ!!」
見られた。見られてしまった。
創真を呼んだのは他ならぬえりなであり、彼は呼ばれた時間通りに来たに過ぎない。つまりは完全にえりなの自業自得である。
「大丈夫だって。青葉に今のことは言わねーから」
「……まぁ、何れにせよ 幸平くんには見られる事ですし? せいぜい私の邪魔をしない程度に盛り上げて下さいな、前菜さん?」
「っ! おーっ やってやんよ! 何だったらあの時の俺とは一味も二味も違うアレンジを加えてやる」
「ちょっと。コース料理なんだから、前菜担当の役割はちゃんと果たしなさいよ!」
前菜をやけに強調して言ったえりなに、創真は不敵な笑みを浮かべて厨房へと入っていく。
その様子を見ながら、えりな様はすっかり変わられたと緋沙子は思う。
「私も早く、えりな様に相応しい秘書にならねば……」
心の何処かで、焦りを感じながら。
短い本文でしたが読んでくれてありがとうございます。
青葉とえりなの約束が本作の要であった為、どうしてもこの部分は書きたかった、単なる自己満足です。
軽く今話について補足していきましょう。
『分岐点』の方では薊政権は発足しませんでしたが、此方は前書きでも書いたように発足した世界線……つまり流れは原作通りとなります。
進級試験の最後、連隊食戟での青葉はえりなと同じ反逆者連合に属していますが、最終兵器のような扱いでこれといった目立った出番はありませんでした。
最終試合となった創真&えりな vs 瑛士&竜胆の対決は創えりの勝利。
その際コース料理対決となり創真が前菜、えりながメイン担当となり、基本原作沿いに進みます。アニメだと『神ノ皿』最終話付近ですね。
以前のえりなであれば料理を作る際、候補にすらならなかったと断言できる食材を使った品。
ゲソやピーナッツバターは、他ならぬ創真から教えられた食材だった。
他の料理人にアドバイスをする。それは自分の限界を相手に伝えているだけだと、えりなは思っていた。
けれど、それは違う。アドバイスとは情報共有だ。
この世にある全ての食材を、そしてその全ての組み合わせを知っている者はいない。全ての調理法を知っている者もいない。中には自分では想像もつかないモノも多く含まれているだろう。
長らく教える側に立ち、教えられる側に回らなかった故に抜け落ちていたえりなの考え。
そもそも、教えるという行為は何なのか。
一流の料理を作れる者が、二流の料理人に手解きをするものか? 二流の料理人を自分の思う一流の料理人にするためのものなのか?
違うだろう。価値観を押し付け、価値観に縛られては新しい道は見えない。
そしてその価値観を壊すのに、一流も二流も関係ないのだ。料理の美味しい不味いは関係ないのだ。
自分では想像すらできなかったアイデア。教える側にとっては当たり前でも、教えられる側にとっては新鮮で新しい学びこそが、料理人にとって最も必要とするモノ。
そしてえりなは見事、必殺料理を完成させた。
これはまだ、えりなにとって序章に過ぎない。何故なら彼女の料理人生は今、始まったばかりなのだから。
補足としてはこんな感じですね。
本文の最後に緋沙子の不安が見て取れますが、続きを書く予定はないです。
最後の二文は消してもいいかなっとも思いましたが、緋沙子ならばそう考えるだろうと思い、書きました。
次回は若菜の過去編。
それを投稿し終えたら何かアイデアを思いつかない限り、本作はお終いの予定です。
本編の方はこれで完結とさせて頂きます。ありがとうございました。
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