――――――――――――D08基地司令室・朝
それはふとした事だった。何気なく執務の途中にお兄ちゃんがやった行動だった。
「がぁー…耳垢が溜まってんな…」
「どれどれー…おぉきったなーい」
お兄ちゃんが書類仕事してる最中耳に指を突っ込んでゴソゴソしたの。
耳垢が溜まってるとのことですのでちょっと覗いてみたらまぁ汚い。
掻きだした耳垢もけっこうでっかいのが指に乗ってたしコレはお掃除しがいがありそう。
あ、今日は私が副官です。副官任命は結構まちまちだからなぁ…
今日の私のお仕事は書類仕事補佐の他にも凶悪犯鎮圧と補給基地防衛及びカルト宗教鎮圧の行動ログ出力。
まぁ戦闘データの共有が主なお仕事になるわけです。データルームに引きこもることになるかな。
この基地自慢のデータルームには最新式のパソコンが設置されている。
人間操作が主になることを想定しているため人形に接続するためのケーブルは存在しない。
従ってキーボードとマウスっていう前時代的な入力装置を用いなければならない。
「データ入力してくるけど…あとで耳掃除しようか?」
「あー頼むわ」
「ん、りょーかい♪」
んっふふ♪お兄ちゃんに膝枕と耳掃除だ~♪やったやった♪
さーキリキリデータ入力してから至福の一時を味わうぞー!
あ、でも私のおっぱいが邪魔するかな…まぁ多分大丈夫でしょ…うん。
小柄な身体をふっかふかなPCチェアに沈めてからちょっと懐かしいようなPCに面を合わせる。
余分なソフトウェアは一切ないデータ管理ソフトと行動ログの記録に特化したものだ。
PCから伸びたケーブルの先には幾つも並んだハードディスクドライブ。
ドローンコンソールからも伸びてきていて映像データが入力されている。
さてと…じゃあまずは誰のログからデータに落とし込みますか。
一番行動が少なかった私とG28のデータからにしますか。えーっと…
たしかこれが地図データで…3D処理っと…ラペリングして配置につく。
射撃姿勢に移行してから敵の位置はこう…更にその後の犯人達の行動はこうでしょ…
で…この敵とこの敵は無力化。こいつとこいつはヘッドでダウン。
で…ココとコレはスペクトラにミンチにされて…残りは投降だね。
敵のデータを次は入力するか…ドローンの映像から引っ張ってこよう。
それから逆算して予想される動きを入力しよう。こういうのは演算力の高い私の得意分野だ。
同じく演算力が高いのはお姉ちゃん、FAL、わーちゃん、G36C、スオミだ。
俗に言う最高級品になるからね。I.O.Pの顔とも言ってもいいかな。
「ただ全体を演算すると流石に熱が出てくるなぁ…」
効率よく部分部分で演算しているんだけどそれでも全体を3Dマッピングとなるとリソースは割かれる。
となれば私の中のCPUにかなり負荷がかかってくる。その結果生まれるのは熱だ。
私達人形は言わば人間の形をしたPCだ。OSはAI、頭脳はストレージ。
いや、チョット違うか…まぁそういう風な感じと思っていただけたら良い。
酷使すりゃ熱となって出てくる。その冷却に擬似的に発汗する。
オーバークロックしたら頭痛という形で出てくるしいつかはエラーを吐き出し始める。
これでもかなり効率化してるんだけどねー…部分的にハイレゾ化させてほかはローポリとかね。
多分他の人形はこういう芸当は出来ない。全部適応する。だからそれぞれのスペックがもろに出る。
データ入力に関してはFALかわーちゃんかG36Cがずっとしていたらしい。まぁ他にさせるよりは良いからね。
今は私とお姉ちゃん、スオミが担当するようになって分担化が捗るようになった。
お姉ちゃんの完成度は高いんだけど細部まで拘るから結構仕上がるのが遅いのが難点。
私?適度に手を抜いてるから仕上がりも早いしデータとしては悪くないから良い評価だよ。
――――――――――――
「ふぅ…終わったー!」
「お疲れさん、ほいコーヒー」
「あぁスプリングフィールドのだね?わーい♪」
「しかし改めて戦闘データ見るとお前らに敵わないわ」
「そう?特殊部隊ってこういうもんじゃない?」
「精度が全然違うぞ」
そういうもんかなぁ?と思いながらコーヒーを啜る。正直人間の限界って言うのを知らないからなぁ。
漠然と人間よりも色々勝ってるってしか知らないしなぁ。頑張れば追いすがる事は出来るんじゃない?って思う。
あ、それより~…えっへっへー♪耳かき棒はこれだね…
「お兄ちゃん♪」
「んぁ?」
「耳かきしてあげる♪」
「あーそういやそうだったな…んじゃ頼むよー」
ソファーに座るとお兄ちゃんが太ももの上に頭を載せてっと…
あーやっぱりおっぱいが邪魔で頭が見えない…前屈みにならないと駄目だな。
どっちにしろ集中するために前屈みで覗き込むし変わんないか…
「おぉおっぱいおっぱい…」
お兄ちゃんの後頭部に押し当たるけど無視無視。中を改めて拝見しましょ?
わぁちらっと見たときから酷いと思ったけどかなりの耳垢ですよ。
軽く掻くとそれだけでも耳垢が結構出てくる。これは奥にでっかいのがありそう。
夜視モード使って暗い中を覗いてから掻く…お、ビンゴーでっかいのが出てきた。
カリカリとしているとお兄ちゃんも気持ちいいのかな目を閉じてる。
多分痛いってことはないんだろうなーって思いながらカリカリ…
「ぉ…」
「取れた取れた…わぁでっかい…」
「どれどれ…うわ、でけぇ」
トントンと耳かき棒をティッシュの上でスナップしたら掻きだした耳垢が落ちる。
ん…あとは耳にくっついてるカスを吹き飛ばせばOKかなー?
「ふー」
「ひょえ…」
「あはは、なぁにひょえって」
「うっせ…次こっち頼む…ぞ…」
「はいはい♪」
黙ったけどなんだろう…まぁ良いや、それより片方の耳もきれいきれいにしましょうねー♪
おーこれは酷い汚れっぷりだよ…見るからにでっかいのがあるし…何ヶ月掃除してないんだろ?
「んぉぉ…」
「お兄ちゃん?」
「そ、そのまま続けてくれ…」
気持ち良いんだろうね。よしよし…じゃあそのままやっちゃいましょ。
カリカリっと…うわ、これでっかすぎない…一回で掻き出せないよ?
「お兄ちゃん、動いちゃだめだよー?」
「む、むぅ…」
――――――――――――
「はーい、おしまいだよー」
「おぅ…もう少しこのまま…いや、なんでもない…そうだ。逆に俺が417の耳を掃除してやろう」
「んー?良いけど…お仕事はどうするの?」
「二人でやりゃすぐだろ…少しくらいズルけても平気平気」
そういうもんだろうか?まぁ良いか…お兄ちゃんとベタベタ出来るなら私は一向に構わん!
で、お兄ちゃんのお膝に寝転がるのは何気に初めてだな…おほぉ…
硬い太ももが丁度いい感じだ…所で私の耳って汚れたりするんだろうか?
だって私人形だし人間と違って新陳代謝って事はしないはずなんだけどなぁ…
「おー?ほほう、これはこれは…」
「え?まさか汚れてたりする?」
「結構な…そういやお前倉庫で目覚めたんだったっけか」
「ん…そうだけど。あぁ…その時からの汚れかな?」
「それもあんだろうな…どれ掻き出してやろう…」
うわーぉ…結構あると見られる…あ、入ってきた入ってきた…あは、ちょっとくすぐったい。
あー…カリカリされるのって気持ちいいね…あ、そこそこ…あはぁ~…
「ん~…そこそこぉ♪もっと掻いて掻いて…♪」
硬い耳かき棒が耳をカリカリ掻いてくれるの気持ちいい…これは良い…
すごく良い…やってもらうのはこんなに気持ちいいんだねー…はぁぁ…
「痛くないかー?」
「なーい…♪」
んー…このまま寝ちゃっても良いかもしれない…ふふへへ…
でもこのまま寝ちゃうのはもったいないな…お兄ちゃんの膝枕って貴重だし。
おぉ、ごろっと言った…って事は取れたのかな…ん…どれどれ。
「うわぁ…」
結構な耳垢が転がっていた…生体パーツってすげー…耳垢まで再現しちゃうの?
いやI.O.Pはバカなのかよ…バカなんだな…よーくわかったよ。
「はい、じゃあ反対側な?」
「はーい…oh」
「おぉブルンバスト…」
眼前にバベルの塔が…あ、そういう事ですか…やっぱりお兄ちゃんも男なんだね。
ちょっぴり安心したけどそういう事か…お、襲われたりしないよね…?
むしろ襲われても良いんだけど…うわ、ドキドキしてきた…
――――――――――――D08基地食堂・昼
「て訳でね。ドキドキしてたんだけどやっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだったよ」
「性欲はあって欲情しても手を出さないのね…見上げた理性と言うべきかそれともヘタレと罵るべきか」
「まぁそこはほら…ね?」
お昼食べに来ていたお姉ちゃんと隣り合ってカウンターで食べていた。
その向こう側には主任とイサカがいちゃついてるけど…まぁ気にしない。
ただお姉ちゃんの目が獲物を見るような鋭い目になったな…
「お姉ちゃんも言ってみたらしてもらえるかもしれないよ?めっちゃ良いよ」
「そんなに気持ちよかった?」
「そりゃもう…硬い感触にちょっとびっくりするけどね。カリカリと痒いところを掻いてもらえて…」
「ふぅん…」
おや?向こうのイサカがびっくりした顔でこっちを見てるけど…なんだろう?
とにかく気持ちいいから私的にはおすすめしておきたい。ぜひともお姉ちゃんも味わうべき。
「ねぇ417ちゃん?指揮官に何されたの!?」
「え?」
「硬いので痒い所を掻いてもらって気持ちよくされたんでしょう!?」
「え?」
「エッチしたんじゃないの!?」
「え"…ち、違いますけど…」
唾が飛んでくるぅ…鼻息も荒いし…お姉ちゃんが静かにキレてるんだけど…
違うって言ったらブツブツ言いながら戻っていったし…何だったんだ…
そもそもいきなりエッチってなんだよ…バカなんじゃねーの…
もしかして部分的に聞こえてそれで勘違いしたのか?
流石夜によーくお互いの部屋に入り浸って朝には一緒に出てくるだけありますことー
つまりはそういう事なんだろ?えぇイサカに主任さんよぉ。
「あ、そうだ。お姉ちゃんからはマッサージとかしてあげたらどうかな?」
「マッサージ?あぁ417の足つぼみたいな?」
「簡単な肩揉みだけでも全然違うから。スキンシップ代わりにどう?」
「良いわね。夕方にちょっと訪れてみるわ」
なおその際もおっぱいおっぱいうるさかった。
結局私がお仕事片付けたんだけど…なーにか?
耳かきって良いよね。
小柄な417にしてもらったら絶対おっぱい当たるよね。
つまりヘブン。
あ、これ100話目じゃん…