元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん   作:ムメイ

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間に合った()


Day105+@ その頃のD08

指揮官と417がハネムーンに出かけたその頃D08基地内は何時も通りに回っていた。

朝食を終えて第3部隊が午前出撃に出かけていき他の部隊は基地待機である。

書類仕事は予め任命されていたFALが処理している。

最適化も進んできた人形だからできる事だが指揮官無しでの完全自律作戦だ。

突然の出張をもぎ取ってきた指揮官だが仕事量の調整も行ったかFALが忙殺されることはなかった。

むしろ午前一時間ですぐに片付いてしまって暇を持て余すことに。

さて、そうなった場合のFALたちはどうするかと言えば各々好きに動くのだが…

 

「チャペルを抑えましょう」

「仮設で作っちゃったほうが良いんじゃないでしょうか?大型倉庫を作ってからその中に作ってはいかがでしょう」

「夜の営み用の部屋を確保しない?騒音がヤバイって苦情が出てるわ」

「その費用と物資をどこから調達するおつもりですか?」

「補給基地って便利な所があったじゃない。べ、別に結婚なんて興味は無いんだけど!」

『興味ないって言ってる割には参加してるじゃない。私もそんなに興味ないんだけど』

『全員分のウェディングドレスも用意しないとだめよ~?』

「そこツンデレ二人は結局指輪貰うつもりあるの?」

「「貰う!!」」

 

通信機まで持ち出して出撃中のMk23やUziも交えての作戦会議を始めていた。

要は結婚するにあたっての要望や自分達の意見をぶつけ合っているのだ。

渦中の指揮官は正妻である417とのハネムーン中ということもあってからやりたい放題だ。

そんな指揮官Lover'sの中で唯一黙りこくっている人形が居る。

417の姉、416だことの行く末を見守っている様に見えるが…実際はそうではない。

 

「別に式なんて重要じゃないのにね…」

 

そう言って左手の薬指を撫でている。ちゃっかりと先に指輪を貰っていたのだ。

ハネムーン前にしっかりと指揮官にキスと愛撫を貰っていて優越感に浸っているのだ。

417程ではないが指揮官の好みにツボっている上に417の姉でもある。

指揮官が大事にしない訳がない。実質上の正妻はHK姉妹という事になっている。

 

「式を挙げるにしても必要なものがあまりにも欠けているわ」

「用意できないのですか?」

「神父をどこから引っ張ってくるのよ!!」

『やっぱり街のチャペルを借りるのが良いんじゃないかしら?』

 

挙式を挙げる為の式場を建設するのは勝手だ。大型倉庫を作れば用途は多く使えそうだ。

だがその他が圧倒的に足りていない。祝詞を捧げる神父。

ウェディングケーキ、ウェディングドレスにタキシード。

そもそも祝福に訪れる客など居るのか?というところから始まる。

 

「ねぇ一つ提言良いかしら?そもそもだけど小さい式にしたらどう?」

「私達の一大イベントなのに?」

「身内で済ませる小さい式よ。そもそもだけどこの基地との繋がりがある基地なんて片手で数えられるでしょう?」

「そうですね…S09のユノさんに補給基地にHK417-16の所属基地…最近交流を構築したS03ですね」

「それにこの基地の職員連中くらいでしょ?大掛かりなチャペルや披露宴なんて開く必要性ないでしょ」

「まぁそうね…」

「S09の式に参列してたけど警備も大変よ?ダイナゲートだけで足りると思う?」

「うーん…そうね…」

「休みに合わせてもね…この基地周辺がいくら平和だと言っても襲撃が無いとは限らないわ」

 

I.O.Pにウェディングドレスの発注はかけているが何時届くかは不明。

式場とできそうなチャペルは街にあるかどうか…WW3で焼け落ちてないか。

調べる必要があるがそんな所で十分なのだろう。

 

「はい、それじゃあ調べに行くわよ」

「ケーキの用意は?」

「その物資を補給基地に打診しなさい!!」

 

式を挙げる為に乙女たちは奔走する。それぞれ己の幸せのために。

 

 

――――――――――――

 

 

「チャペルは無い!やっぱり現在の倉庫横に大型倉庫を建設するわ。そしてその中に簡素なチャペルを作るの、いい?」

「無いならしょうが無いわね…神父は?」

「一人確保したわ」

「次!ウェディングドレスの納期!」

「急ピッチで作り上げて次の休みには間に合いますわ」

「待ちなさい417のは!?」

「正妻のは別にもういいでしょう!!どうせ指揮官が用意するでしょ!!」

「もしかして嫉妬かしらね…」

 

女の嫉妬とはかく怖いものだが…今回ばかりは良い方向に転がるのかもしれない。

大体夫である指揮官が用意しないとでも思っているのだろうか?

ギャーギャー言い合いながらも指揮官に黙って準備を進める。

副官権限を振り回してから予算を出してから街の建設業者にも連絡をかけていく。

さらにI.O.Pの家具部門にも連絡してからチャペル風の家具をよこせと連絡したり。

指揮官が有事の際にと予算をかなり貯蓄していたのが幸いだった。

 

「じゃあ解散、それぞれ他に必要そうなものを見つけたら再度私に言いなさい!」

 

現在臨時で基地の指揮を取るFALはそう締めくくり全員を解散させた。

そして受話器を取ると矢継ぎ早に各方面へと連絡を取っていく。

この結婚報告は更に言えば本社にも出さなければいけないのだ。

当然複数婚である事なんて社内に知れ渡る。

 

「誰が正妻かなんてどうでもいいのよ。私達が幸せだったらそれで良いの!」

 

今はまだない左手のリングを夢見てFALは頑張る。全ては指揮官との幸せの為に。

 

『ちょっとちょっとFALー!いるー!?』

「はいはい、こちらFAL。何か問題があった?」

『何時も通りに巡回警備してたんだけど…早い話は映像を見て!』

「ホログラムを出しなさい…これは…」

 

司令部に転がり込んだ通信とホログラムにFALは息を呑む。

そこに映し出されていたのは…

 

「鉄血のハイエンドモデル…デストロイヤー?」

 

この地区には現れた事のない鉄血のハイエンドモデル人形だった。

 

 

「で、どうするのよFAL。なんか知らないけどこのデストロイヤーからは友軍反応があるんだよねー」

 

所変わり前線のスコーピオン。ただのハイエンドモデルなら連絡なんて入れない。

しかしこのデストロイヤーはデータベースの姿と細部が違って見える。

血色の悪い白い肌は幾分かI.O.P製の人形に近い血色の良い白さを持っている。

さらに言えば服にはG&Kのエンブレムが描かれていて左手にはシールド…これまたI.O.P製。

持っている武器は戦術人形がよく手にしている銃器と同じ。

IFFもまたG&K所属の信号を受け取っている。データ名はデストロイヤー・ヴィオラ

 

『ちょっと待ちなさい…そのIDは…あったわ、友軍登録されてるわ』

「マジ?鉄血の寝返り?」

『詳しくはわからないわよ…でもデータベースには…D09地区の所属になってるわよ』

「隣の地区じゃん、逃げてきたって感じ?」

『KIA扱いになってるわ』

「あーつまりははぐれかぁ、じゃあ回収しちゃうよ?」

『えぇ、容態は?』

「多分エネルギー不足で強制スリープだねーぐっすり」

「周囲敵影なしよ」

「他にはぐれらしき影もないわね」

「こちらM14、遠方にも敵影はみえないよ」

 

半ば行き倒れのように倒れ伏していたヴィオラをファイヤーマンズキャリーにて運ぶスコーピオン。

スコーピオンは一時離脱、残りのUziとM14、Mk23の三体とダミーで警備を続行。

KIA扱いになってしまった人形の扱いは拾い上げた基地に依存される。

所持権はI.O.Pだが…使用権はD08に移った。FALは早速手続きを開始した。

 

 

――――――――――――

 

 

担ぎ込まれたヴィオラは早速工廠に入れられた。

I.O.Pスタッフがにわかにざわつく。揃って後味悪い顔だ。

 

「ひゅー…こりゃまた」

「いやいや、これはでかすぎる…」

「極上ですわ…」

 

昏々と眠るヴィオラを取り囲むメンテナンス班の若い衆。

D08地区ではお目にかかったことのない鉄血ハイエンドモデルだ。

その造形に目を奪われる。主にその巨大で美しい形のおっぱいに。

Five-seveNに食われてから女を知った若い衆は盛りのついた猿のようなものだった。

 

「ペルシカ博士からの伝言です、ヴィオラに合意なく手を出した場合権限を行使してでも首を飛ばす…とのことです」

「「「「ヒエッ」」」」

「ついでに言えば…我々I.O.Pの本社のロクデナシが実験を重ねていたらしく…」

 

そこまで言ってテクニカルスタッフは口をつぐむ。言葉にするのも憚れる実験をしていたのだろう。

人形へは一定以上の愛情を注ぐペルシカが過保護を発揮するのは無理もなかった。

目立った外傷もなく直に目を覚ますだろう。

 

 

「FAL~やっぱり式に誰か呼びましょうよ」

「だから来る人数なんてたかが知れてるって言ってるでしょ!!」

「披露宴を挙げるのよ」

『姉としても417の披露宴は挙げたいわ』

「まぁそうね…じゃあウェディングケーキは?」

「私が物資が届き次第制作に入ります」

 

まだまだ続く結婚に関するドタバタ。FALが手配を済ませて…

そしてヴィオラに関する手続きもほぼほぼ終了。

 

「はーあ、アホくさーさっさと決めて騒げばいいだけじゃん」

「まぁそう言うなって…一大イベントなんだからよ…」

「そういえばお兄さんはさー」

「あー?」

「417とはどんな関係なんだっけ?」

「兄と妹」

「じゃあ指揮官のお義兄さんになるんだーへぇー」

 

そんな司令室の様子が見て取れる外からSAAとウィルバー

揃ってコーラを煽りながらドッタンバッタンを見守っていた。

いつもどこか擦れた表情を浮かべていたウィルバーの顔にも笑みが浮かんでいてSAAの目からみても浮かれている様に見えた。

しかしながらその心中は中々に複雑である。

元はと言え弟だった存在が完全に女として嫁に行くのだからショックはそれなりに受ける。

 

「結婚か…」

「お兄さんも結婚願望あったりするんですかー?」

「正直魅力的な女性が居ない」

「おーなるほどー」

「俺の好みはロリだし二次元の女だし」

「ロリコンでしたかー!」

「うっせぇ…ほら、今日は暇なんだろ?コーラ奢るから手伝ってくれや」

「はいはーい!」

 

指揮官とその妻が居ないD08基地は相変わらず賑やかに平和に回っていた。




ヴィオラとはなんぞや?
作者の別作品で徹底的に不幸な目に遭ってきた主人公だよ。
デストロイヤー・ヴィオラちゃん。

417以上のでっぱいだぞ()

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