「もうすぐR06地区勢力内に入るよ」
「向こうの指揮官に一報入れておくわね~」
無線アンプと化したダイナゲートを肩に乗せながらバギーカーを転がしていく。
かなり離れてしまった為に個人携行の無線機ではもう距離外だ。
そうなると役に立つのが鹵獲して改造したこのダイナゲートだ。
拡声器にもなるがそれ以外に戦闘面で使うとしたらこんな無線アンプだ。
毎回出撃時に私に引っ付いて回るのもアレだけど…大体はバックパック内で大人しくしてくれるからOK。
という訳で私が運転して隣で45姉が無線で連絡を取り合っている。
R06地区にはもうダーリンからの情報が行っているらしいが礼儀としてこっちから直接連絡を入れる。
まぁ名誉にこだわる指揮官なら指揮下に入って動いてから手柄を譲れば問題ないし。
私達としてはD08地区で暴れてトンズラしようとしたっていうのが許せないだけだし。
「皆喜んで、向こうの指揮官も快く協力してくれるみたいよ」
「ヒュー、太っ腹」
「一部隊を偵察に出してるみたい…通信圏内に入れば情報も入るでしょうね~」
何部隊中の一部隊かは存ぜぬが駆り出してくれるのはありがたいね。
相手の規模だけでも分かればそれだけで作戦行動が取りやすくなる。
相手の兵力把握が一番大事、罠の種類も分かれば上等。
「で、今回は45と9はどうするんだ?」
「今回は私達もカチコミね~」
「家族はみんなで旅しなくちゃね♪」
「黄泉送りの片道チケットを叩きつけるのね?」
「そのとーり♪」
「じゃ、楽しい血祭りの開催だね」
「あまり血を浴びるのは好ましく無いのですが…」
「そうよ血塗れで帰るなんて…べ、別に指揮官の事なんか気にしてないわよ!」
「ツンデレ乙」
割とヴィオラってスラング使うよね。いや、使い古されたミームか。
ヲタク界隈でたまーに見てからうっわ懐かしいものを…みたいな反応する物が多い。
まぁかくいう私も使ってるんだけどね。この付近の廃墟を根城にしてるみたいだけど…
うっわ廃棄された街かぁ…こりゃ探すのが面倒になるな。
「あのおバカさん二人が区画名まで言ってたから特定は簡単ねー」
「というか45姉緯度経度単位で割り出してなかった?」
「流石にそこまではあの短時間でハッキングかけられなかったわよ」
あーやっぱハッキング仕掛けて探知してたんだね。オリジナルの45姉ってのが電子戦特化モデルらしいしね。
量産型の45姉もその流れを組んでいるから造作も無いことか。
「じゃ、ここからは先行している筈の部隊と通信してから情報をもらって…」
「お宅訪問からのー」
「集団ツアーチケットの押し売りー♪」
「「イエーイ!」」
「お二人とも仲が良いのはいいのですが…」
妹連合で勝手に盛り上がってたけど45姉が無線でやり取りしてから情報を聞き出してくれていたらしい。
ルートナビゲート情報が入ってくる。一先ずソコへと向かうとしよう。
――――――――――――
「この廃屋がそれ?」
「そうそう、複数人の人影が確認されているらしいわ」
「417、ちょっと双眼鏡貸して…」
「はいどうぞ、416姉なにか見えるの?」
「……視認される限りトラップの類いは見えないわ」
埋没させていたとしても何かしらの痕跡というのが残る。
土の均し方が若干異なっていたり雑草の生え方一つしても違ってくる。
まぁ今の時代でそもそも限られた土地の中をさらに狭めるような愚行はするやつが少ない。
もっぱらは死角に仕掛けたクレイモア等の対人地雷が殆どだ。
すこし離れた場所のビルから偵察中…R06基地の偵察部隊は有事に備えて待機中。
あとは考えられるとすると小生意気にもさらに逃走経路を用意している事だけだが…
「念の為にダミーに先行させるわ」
「了解、皆準備は?」
全員黙ってハンドサインで応じるメインフレーム同士で伝達、準備OKの証として前方から後方へかけて肩を叩いていく。
「行動開始、殲滅するわよ」
ビルの闇からぞろぞろとダミーを引き連れて廃屋の様子を伺う。
中に見える人影の数は大凡4、談笑中と思われる。
「4人」
「レディ」
「手榴弾いくよー」
手筈通りにまずは入り口を確保する。ついでに扉の向こうにトラップが仕掛けてある可能性もあるから…
そんな時のためのグレネードランチャーですよ。ポンっと間抜けた音と共に発射される40ミリ榴弾。
その後にスモークが投げ込まれるどっちみち押し入った時点でバレるからどうでもいい事だ。
大した距離もないためほぼ真っすぐに扉へと飛んでいき炸裂する。
木製の扉は木っ端微塵…だけなら良かったんだが…続けて何かが炸裂する音がする。
やっぱりクレイモアの類いが仕掛けられてたか。
「Los!」
まずは416のダミーが突撃する。煙を突っ切って飛び込んだのは人影が確認された部屋だ。
相手も慣れているのか発破音がした時点で動き出している。
すばやく座っていたソファーなどを倒して即席のバリケードを作っているが…
「Granate」
「Ja」
そんなの関係ねぇよとばかりに再装填も終わったグレネードを叩き込む。
こっちはお前らの命なんざどうだって良いんだよ。お命頂戴するまでよ。
続けてヴィオラがシールド構えながら榴弾砲とMASADAによる制圧射撃を行う。
「クリア、さて楽しいパーティータイムね」
スモークが晴れた頃に転がっているのはグレネードに内蔵された鉄片が身体に突き刺さり痛みに悶える人間と…
5.56ミリ弾の直撃を受けて倒れ伏している人間…出血も多く放っておいても死に絶えるだろう。
敵対存在で現在行動可能な物は見当たらない。
「うぷ…」
まぁこの惨状に若干一名吐き気を催しているが仕方ないよ。
だってほぼ奴らのど真ん中に叩き込んでやったんだからそりゃぁもうぐっちゃぐちゃになっちゃうよね。
直撃だったらその直撃箇所がまるっとえぐれて飛んでいったんだろうけど。
「パーティーじゃなくてツアー案内でしょ♪」
「そうね~コイツらには集団で旅行に招待してあげてるんでしょ?」
「あぁそうだった」
軽口を叩き合いながら未だに痛みに悶ている人間の頭にサイドアームでトドメの一発を入れていく。
にわかに騒がしく何処からか足音が登ってきている。何処かに地下室があるんだろうか?
「一匹残らず地獄へご招待するわよ」
「じゃ、早速だけど…燃えて貰う?」
「ははん?良いわよ、やったろうじゃない」
全員に聞こえてくる足音から相対距離を測る。近い。それぞれ装備も抱えている。
足並みが全く乱れていない事からもよく訓練されてるのも窺える。
だけど、人形相手には物量の上に奇策を練らなくちゃいけないんだぞ。
「フラグアウト」
タイミングを合わせたUziが焼夷手榴弾を投げ込む。
ちょうど起爆直前で奴さんの集団の頭が出てきた。Uziの顔が確信に満ちた笑みに変わる。
炸裂音と共に聞こえてくるのは悲鳴だ。
「ぎゃぁぁああああ!!」
「もえ、燃えてるゥゥうう!!」
「消してくれ!消してくれぇ!!」
その場で転がって火を消そうと苦しんでいる。火だるまになるのを避けるため後続は手出しできちゃいない。
チッそのまま出てきてたら良かったんだがまぁそこまでバカじゃないか。
「ヴィオラ」
「分かっている」
鉄血製大口径榴弾砲が火を吹いた。今にも吐きそうな情けない顔はソコには無かった。
――――――――――――
「状況終了」
「うげー…血みどろ…」
「流石にこれは酷いですわね…」
「ちょっとはしょうがないかなと思ったけどね~」
「あれ、ヴィオラは?」
「ほら、あそこで吐いてる」
若干一名が不調を訴えているがまぁそれはコラテラルダメージだね。
そしてテロリストの巣窟だった廃屋は見事に赤で染められていた。
中に転がっているのは人類権利団体の過激派メンバーばかり。
まぁ元っていう頭がつくけどね。家族揃ってみーんなあの世へ叩き落したばっかり。
そして私達も返り血で真っ赤っ赤…流石にこんな状態で帰るのは女の子として無理。
しかしながら街に行こうにもこんな血みどろ状態だと入れてもらえないし…
水辺?この付近で見つけるまでバギーカーでドライブしろと?冗談きついよ。
「しきか~んこっちは今お掃除が完了した所ですよ~……え、本当?やった♪」
「45姉、指揮官はなんて?」
「ここR06地区の指揮官に交渉して一晩泊めてもらえる事になったわ」
「え、じゃあお風呂も?」
「勿論OKでしょうね」
「「「「「ヤッター!」」」」」
「うぷ…血なまぐさい…ご主人の香りに包まれて寝たい…」
ヴィオラも無事復帰したところで次なる目的地はR06基地になった。
一晩他所の基地にお邪魔するっていうのは初めてだ。
学生の頃にあった遠方学習に泊りがけで出掛けた時みたいでちょっとテンションあがる。
それよりさっさとお風呂に入りたい。この返り血まみれなのをどうにかしたーい…
「そのまえにこの死体の山の後処理ね~」
「あー」
「焼夷手榴弾で焼くのは?」
「面倒だしそれ採用」
結局もう一回血みどろになりながら自分たちで作った血の池から死体を漁ってから一箇所に纏めて燃やした。
適当に掘った穴にその焼却処理した物を押し込んで土を被せてそれでおしまい!
さぁーいざ行かんR06基地…
という訳でこっから先は「かしましオペレーション」で見てね!