最近の私とヴィオラの行動や気にかけている事をお姉ちゃんが必死にメモってる。
特につわりの兆候やその最中にかなり気にかけた事とかね。
今日の朝とか結構必死な顔で聞いてきたから包み隠さず話した。
つわりって結構きつい、いつでもどこでも突然やってくるんだもん。
楽しくお食事中に私やヴィオラは血相変えて飛び出した事が結構あった。
勿論それはつわりから来る吐き気が原因だったりする。
それを防ぐ方法は無い。だからできることと言ったらその後のアフターケアくらい。
嘘みたいだけど妊婦と同じアルゴリズムが私の中で組み上がっていっている。
食事の趣向だって一時的にとは言え変わったし……ヴィオラはひどくて……
自分の装備の榴弾の火薬を見てから美味しそうなんて言ってた。
止めなかったら危うく口に入れて居たかもしれない。
どうもD08基地に追加で送られたAI更新データの中にそういう物が仕込まれていたのかもしれない。
若しくは疑似感情モジュールや人間の脳と同じである電脳が突き動かしているのか。
まだそこは解析段階だけど少なくとも私達の妊娠中の挙動っていうのは人間のそれと変わりない。
「ダーリン、ほっぺたにくっついてる」
「ん?」
「……とれたよ、ごちそうさま♪」
安定期に入った私とヴィオラは取り敢えず日常生活を前と変わらない様に動けるようにはなった。
ただ、私は農作業や整備等の力仕事は絶対にするなとストップがかかっている。
前と変わらないようにダーリンの隣に座ってイチャイチャできるのは良い事だ。
「あーいいっすよねー、指揮官はそんなに侍らせて」
「俺らにもちょっといい思いさせてもらっても良いじゃないですかねぇ?」
「具体的に言えばおっぱいを揉みたい」
偶然近くの席に座っていた整備の若い衆の4人が一様に私達の食事風景を羨んでいた。
ダーリンの席には大体私が隣に居るし多い時は嫁全員で囲むから10人で一緒に食事している。
まぁ今日もなんだけど。AR小隊のダミーがくる前はSOPが大体膝の上を占拠していた。
そのSOPはと言うと……ちょっと周囲を見ればAR小隊の所で仲良く食事している。
「まぁ私達から言うとしたらね……」
「アンタ達オープンスケベ四天王は下心を隠しなさいよ」
「二言目にはおっぱいだったら幻滅するに決まってるじゃない」
「「「ハッフン……」」」
「そんな事よりオナニーだ」
傍に誰かしらがつけば大人しくなるんだろうけどね……童貞捨ててから色々増長してる節もあるし……
ダーリンも自分を振り見てるのだろうか気まずい表情でお茶をすすっていた。
――――――――――――
『指揮官、さっき前線からあられもない悲鳴が上がったんだけど』
「トラップに引っかかったバカが居るらしい」
『あぁー……あれまた回収しなくちゃいけないの?』
『私もあれはもう近づきたくないですよ、指揮官……』
『愛ちゃんももうご勘弁です、エロ同人みたくなりたくないです……』
『もう適当にほっときましょうよー』
『仕方ないですね、では私が回収してきます!』
今日も朝から元気に出ていった警備部隊からの通信が入っていた。
そのちょっと前に報告が入っていて回収に命令を出そうとしていた。
あ、今日は私が副官です。そろそろ動かないと私の頭にカビが生えちゃいそう。
ちなみにトラップに誤って捕まった際の脱出方法のレクチャーで全員捕まってたりする。
だから一度経験済みだし……そうじゃなくても何度かとっ捕まってたり。
ちなみに今日は二箇所から捕まえている報告が出ている。
つまり二度もあのウネウネ蠢く触手トラップに近づかなくちゃいけない。
皆それぞれかなりのダイナマイトボディだから触手トラップの好みにどストライクらしい。
あの触手トラップにも多少の知能があるらしい。コミュニケーションは取れる。
主に筆談になるけど……彼らの系譜はとある研究所で生まれたらしい。
基本的には植物との間の子だったりするから光合成で生きていけるらしい。
知性に関しては後々の研究で判明したものだ。
機嫌が悪い時はわりと言うことを聞いてくれなくてとっ捕まる事がある。
「今日は誰が捕まるだろうね」
「毎回捕まることはねぇから……」
『今日も元気ですにゃぁぁー!!!?』
『カルカノー!?』
「「………」」
通信機越しに聞こえてくる悲鳴にお互い顔を見合わせる。
どうやら今日は機嫌が悪かったらしい、カルカノ姉が餌食になっていた。
『確保!』
『緊縛完了です』
『はい喋る前にコレを噛んでくださいね♪』
この様子からとっ捕まったのはまたドリーマーみたいなのか。
通信機から聞こえてくるのはちょっと甲高い……幼い感じの声だ。
しかし二箇所って事はコンビで動いていたって事なのかな?
――――――――――――
「あっははは、なっさけない姿で転がされてるわねぇ」
「「ふぉひーまぁ!?」」
開幕大爆笑で迎えたのは我が基地で保護状態にあるドリーマー。
識別の為に別個にまた名前が与えられドリーマー・リリーと名乗る事に。
そんなドリーマーの前に転がされているのはデストロイヤーとゲーガーと呼ばれるハイエンドモデルだ。
デストロイヤーはご存知、ヴィオラの元々のモデルだ。ちっこい。
で、ゲーガーというとアーキテクトの片割れで割と苦労人……だと思う。
だってあの自由奔放、ノリと勢いが全てのゴーイングマイウェイだぞ?
アレを抑えて制御しなくちゃいけないとか気苦労は計り知れないな。
「何よ、そんなに驚くこと?」
「もがもがも……」
「ゲーガーは……ふぅん、かなり最近に製造されたみたいね」
まぁ驚くだろうね、ドリーマーがG&Kの基地に居て自由に歩き回ってるんだもん。
おまけにおっぱいはアルケミストもかくやと言った所までバインバイン。
片手にはクレープ持っててぱくつきながら笑ってるんだもん。
「ところでぇ……デストロイヤー、あんたの製造番号……****よね?」
「……!」
「あら、当たりねぇ……嬉しいわぁまたデストロイヤーをぺろぺろできるなんて……」
露骨にデストロイヤーが怯えた様子で頭を振ってる。
あーこの波長は間違いなくG28の系譜だな。クソレズの波長だよ。
ちなみに私が控えている理由?勿論だけど飯テロの為です。
「ねぇゲーガー……鉄血の配給、どれくらい補給したのかしらぁ?」
「………」
「そう、二週間も良く頑張ったわねぇ。もう私は無理よ……417ぁ?」
「はいはい、今日は暑いしさっぱりといただける冷麺だよ」
「「………?」」
甘酸っぱいソースで和えて冷やして締めたつるつるの麺と……その上に彩りを与える野菜類。
ここで猿轡が外される。この扱いに二人揃って怪訝な顔。
しかしながら美味しそうな匂いが鼻孔をくすぐりデストロイヤーはすぐによだれを垂らしはじめた。
「ここの基地は良いわよぉ……大人しくしてるだけで美味しいご飯とおやつ、それに遊びもあるのよ」
「おやつ!?………だ、だまされないわよ、ドリーマーが何回も私の飴玉盗ったの覚えてるんだから!」
「これが……くっ、だが……」
「それにぃ……私なんてアトリエを持てたのよ、個室もあるしぃ……あら、美味しい」
「それ私のじゃん!!」
「一度犬になったんだしみっともなく犬食いしてみたらぁ?くふ、ふふふふふ♪」
これが平常運転のドリーマーか……なおその後入ってきたお姉ちゃんによってドリーマーは思いっきりゲンコツ食らって伸びた。
――――――――――――
「「うまー♪」」
鉄血二匹追加で保護となりました。二人共武装の類は思いっきり破損していたしちょうど良い。
そういえばずっとドリーマーが黙ってるんだけど何かあったんだろうか。
「指揮官に伝えていて頂戴、新しいお人形が一人追加されるからって」
「……ダーリンに?って事はドリーマーが作ったの?」
「まぁそうなるわね、兎に角伝えておいて」
最終調整がとかブツブツ言いながらドリーマーは食器を片付けてからアトリエに向かっていった。
新しい人形ね……というかあのアトリエそんなのも作れるんだ……
テクニカルスタッフの方も慌ただしくなっていたし……また工廠が締め出し区域になるな。
「よ、隣良いか?」
「あ、ダーリン……もちろん、今日の冷麺は私お手製だよ♪」
「ほほー……で、あの二人は?」
「無事メシ堕ち」
「よっぽど鉄血の配給は不味いんだな……」
お隣にちょっと手続きとかしてお昼が遅れたダーリンが座ってきた。
「そういえば人形が追加」
「お、もう知ってたか……何体かまた警備強化にって送られてくるんだ」
「ん、いや……ドリーマーがね」
話すとどうも本社側から基地内警備についてツッコミを入れられたらしい。
かなりの規模になりつつあるこの基地の警備はアーキテクト製のだーちゃんが殆どを担っている。
人形の歩哨がほぼ居ないんだ。という訳で警備体制の見直しをしろって叩きつけられたらしい。
ドリーマーの件は完全に寝耳に水らしく驚いていた。
「じゃ、後でドリーマーのアトリエに向かうのが良いか」
「かなぁ」
――――――――――――
Booting.....90WishAIProtocol...
checkRunning....GKDive.bat....ok
TypeUMPAI....ok
Body....ok
FireControl....ok
****Routine....ok
ALLgreen,UMP40 reboot complete;
「お目覚めかしらぁ?」
ガンガンと痛みを感じる頭を押さえながら起き上がる。
ここはドコだろうか。あたいは……
「おはよう、UMP40……鉄血の犬のフリをしたI.O.Pの手先……」
「……?」
ネットワークにつながろうとしてもネットワークが存在しない。
「あらぁ、ごめんなさい……ついうっかり……」
ぱちん、と指を鳴らされて何事かと思えば……
「ぅ……あ……」
「死んだはずなのに生き返らされて……更に言えば人間に自分の使命すら騙されていたなんて……どんな気分かしらぁ?」
溢れ出るように電脳に書き込まれ……封印が解かれていくメモリーの数々。
この人形が意図的に埋め込んでこうやって解いたと思う。
アタイが死んでUMP45はどうなった?更に言えばアタイが信じていた任務は……
刷り込まれたまやかしだった……?あたいは何を信じたら……良いの?
「40、貴女はもう公的には死んだ扱い……こうして生き返ったのもだーれもしらないの……生かした筈の45でさえ知らないのよ……」
「……」
「だから良いじゃない、もう一度拾った命……大事にしましょう?この基地は暖かく迎えてくれるわ」
40を会わせてからギャン泣きさせたい。