美羽ちゃんの嫉妬カワイイってのを書きたかったんですが結果から言えば美羽ちゃんあんまりでねぇ!!
美羽の嫉妬カワイイところを書きたかったのですが結果から言えばあまりでてこないしそこまで発揮できてない!!!がんばります・・・
「美羽。おはよう」
「あら佑斗、おはよう。どうしたの? こんな時間に」
俺は寮の共有スペースでくつろいでいた美羽に起きた挨拶をした。時刻は16時になったかどうかというあたり。つまりかなり早起きだ。今日は金曜日。体の疲れもあったはずなのに、不思議だなと自分でも感じていた。
「いや、なんか目が覚めちゃって。それに美羽こそどうしたんだ?」
「奇遇ね。私もそうなのよ」
俺と美羽はそういうと、珍しいこともあるものだなと二人で笑いあった。
「佑斗? せっかく早く起きたんだし、散歩でも行かない?」
「散歩?」
「えぇ。 佑斗とつ、付き合ってからはしてないけど、たまに一人で散歩してたのよ。案外気持ちいいわよ?」
未だに赤くなる美羽。こういうところがほんとに可愛いんだよな……
「それもいいかもな。よし、行こうか」
俺は快諾すると、玄関に向かった。
「ちょっと待って佑斗、急ぎすぎ。メモくらいは残しとかないと無駄に心配をかけちゃうでしょ?……夕ご飯前には戻るわっと。これでよし」
美羽がメモを残す姿を確認すると、俺は改めて玄関に向かった。
「うーん!気持ちいい!」
睡眠時間が少なくて早起きするのは体もがきついが、不意に早起きしたときの夜は気持ちがいい。と言っても前までは朝だったわけだが。
「これも、体がヴァンパイアとして慣れたってことなのかな」
「……えぇ、そうね。ねぇ佑斗?佑斗はーーんむっ」
俺は、また少し落ち込んだ顔をし始めた美羽の唇に指を当てた。
「そういう話をしたら怒るぞ?俺は後悔なんてしてない。むしろ、こんなに可愛い女の子と付き合えて、同じ時間を過ごせるなんてすっごい幸せだ」
嘘偽りのない気持ちを、美羽の顔を見ながら伝えた。美羽の顔は、みるみるうちに落ち込んだ顔からキョトンとした顔へ、そして真っ赤な顔へと変化していった。
「きゅ、及第点にしといてあげる。80点」
美羽は恥ずかしいのか、少し俺から離れながらそう言った。
及第点の割に点数高いな……
「さて、行こうか」
踵を返して俺が歩き出すと、後ろから足音がつづ……かなかった。
振り向くと、美羽が真顔で立っている。
「美羽さん……?」
咄嗟に口を出た言葉は、敬語になってしまった。
それが余計美羽の勘に触ったらしい。途端にムッとした表情になった。
(よーく見ろ六連佑斗……気づけることがあるはずだ……)
俺は注意深く美羽を観察した。(もちろんこれ以上機嫌を損ねないようになるべく短時間で)整ったスタイルに小さくなく大きすぎということもなく綺麗な胸。とても長いが手入れが行き届いているサラサラの赤い髪。そして少し怒り気味の顔。
うん。今日も可愛い。……いやそうじゃなくて。
さらに注意深く見る中で、ようやく俺は気がついた。俺は美羽のもとまで戻ると、その手を握った。
「……時間かかりすぎ。マイナス50点。次にやったら落第よ?」
あぁ良かった。なんとか合っていたらしい。マイナス50点はかなり痛手だが。
俺は謝ると、その手を引いて少し嬉しそうな表情が隠せていない美羽と歩き始めた。
「ただいま」
「ただいまー」
「あっ、美羽ちゃん!ーーと、六連くん!おかえり〜!」
「あっ、おかえりなさいです!」
寮に戻ると、布良さんが出迎えてくれた。布良さんが俺にだけ遅れて気づいたのは、そのままの意味で俺が遅れて入ってきたからだ。
稲村さんの声は、遅れてキッチンから聞こえた。いつも通りご飯を作ってくれているらしい。
「布良さん。悪いけれど、ご飯の準備ができたらまた呼んでくれる?部屋にいるから」
「えっ?あっ、うん!」
美羽はそれだけ言うとスタスタと自分の部屋に歩いていってしまった。
「……六連くん?美羽ちゃんと何かあったの?」
布良さんは、まだ玄関近くで立っている俺の方を振り向きながら言った。
(まぁ当然そういう質問になるよな……)
稲村さんはご飯作りで忙しいようなので、とりあえず布良さんには事情を話すことにした。
ーー遡ること十数分前。
俺と美羽は、手を繋ぎながら寮から2、3キロほどのところまで歩いてきていた。散歩だとするとなかなかいい距離だ。
「美羽。そろそろ折り返そっか?」
「えぇ、そうね。あまり時間をかけすぎても布良さん達に迷惑だものね」
俺が声をかけると、美羽は少し細い道の方に足を向けた。
「あれ、来た道はこっちだけど?」
「わかってるわよ。こっちでも帰れるし、景観が変わった方が面白いでしょ?」
さすがに近くは散歩慣れしているのか、美羽はこっちの方が実は少し早いだとか、細い道だからこそ犯罪が起きやすいため風紀班としても覚えておくといいわよ、だとか色々と教えてくれた。
俺はうなづきながら知らない道なので黙々と美羽に手を引かれるままついていった。
そして少し歩いたとき、前からフラフラとした足取りでこっちに向かう人影があった。
「女の人か……犯罪に関係は、しないよな?」
「えぇ。酔ってるだけでしょ」
俺たちが風紀班ならではのそんな会話をしながらちょうどすれ違うとき、その女の人はガクンと体勢を崩した。
俺は咄嗟に美羽とつないでいた手を離し、その女の人に肩を貸した。女の人は俺にしなだれかかるような形となった。
「あらぁ、ごめんなさい、ヒック」
(うわっ、酒くさっ!?)
やっぱり、かなり酔っているようだ。
「あなた……かっこいい顔してるじゃなぁい?ちゅーしてあげる。ほら、ちゅー!」
かなーり酔っている。女の人は俺の顔をガシッと掴むと顔を近づけてきた。
お酒でこれだけ酔えると言うことは人だ。人なのにこんな時間からここまで酔ってしかも一人でいるとは……世の中いろんな人がいると言うことにしておこう。
俺はその顔を必死で防ぎながらそんな思考を巡らせていた。
「いい加減にしてください!ほら、一人で帰れますか?」
俺は顔を掴む腕を引き剥がし、女の人を立たせると、そう言った。
「えぇー。少しくらいいいじゃなぁい」
女の人はそれでもしつこく絡んできた。
「美羽ー?こう言う人ってどうすれば……」
俺は仕事の先輩でもある美羽に助けを求めることにした。
俺が声をかけながら振り向くと、そこには明らかに不機嫌な顔をした美羽がいた。
「私、先に帰ってるから」
美羽はそういうとスタスタ歩いていってしまった。
かなりまずい。なにか美羽を怒らせることをしてしまったらしい。しかも美羽が先に帰ってしまうと道がわからない。
「ちょっ、ちょ美羽!?」
俺は未だ絡んで来ようとしていた女の人を振り払うと、急いで美羽についていった。
あとは寮につくまでずっと無言で同じ感じ。まずヴァンパイアなのでスタスタといってもかなり早い。しかも俺は道を知らない。美羽の後をついていくので必死だったのだ。
「と、そんな感じ」
俺は一連の流れをかいつまんで布良さんに説明した。
「美羽の機嫌がずっと悪いんだけど、布良さんなんでかわかる?」
「あぁー……六連くんが、自分で考えた方がいいんじゃないかな……?」
「えっ!?」
割と真面目に悩んでいたのだが、布良さんにはアッサリと流されてしまった。
「ねぇねぇユート。ミューとなにかあった?」
「あぁいや、なんともない……はず、なんだけどな?」
夕ご飯の時には、やはり目についたのかエリナがコソコソと俺に話しかけてきた。
「にひひ。もしかして、欲求不満?ダメでしょユート。ちゃぁんとミューを満足させてあげなくちゃ」
「はぁ……」
「あれま。ほんとに悩んでるの?ユート」
「ちょっとエリナちゃん、ダメだよ。美羽ちゃんがーー」
布良さんが話に割って入ってきてくれたが時すでに遅し。
「私、今日は先に行ってるから」
美羽はガチャン、と少し強めに食器を置き、手早く片付けて部屋へと行ってしまった。
「あちゃー……もしかして、エリナやっちゃった?」
「六連くん。矢来さんの機嫌があまり良くないみたいなんですけど、何か心当たりはありますか?」
学校では、大房さんにまでこんなことを言われてしまった。俺は、思い切って大房さんに理由がわからないので聞いてみてくれないか、と頼んでみた。
「わかりました。私でよければ、矢来さんに話を聞いて見ますね。……わ、ひゃう!?」
少し張り切り気味の大房さんがくるっと踵を返すと、ちょうどクラスメイトとぶつかってしまった。そのまま体勢を崩す大房さん。咄嗟に俺は少し抱きしめるような形になりながら、その体を支えた。
「大丈夫か?大房さん」
「ふゃぁ…ごめんなさい、ありがとうございます、六連くん。……あれ?」
「うん?」
大房さんがそんな声をあげたので、その目線を追ってみると、さっきまでいた美羽の姿が消えていた。
「まずいよ六連くん……朝から美羽ちゃんに謝った?」
「いや、それが顔も合わせてくれないんだよ……」
学校からの帰り道。いつも通り俺と美羽と布良さんは、風紀班の支部へと向かっていた。……と言っても、明らかに不機嫌な美羽は少し先を歩き、俺と布良さんはコソコソ話しながら後ろを歩いていたが。
「もぉー……それで、なんで美羽ちゃんが怒ってるかはわかったの?」
「いやそれもだなーー」
「布・良・さん?」
「ひにゃぁ!?」
コソコソ話していた俺と布良さんは、突然の美羽の声に体ごとビクッとさせた。(まぁ俺が驚いたのは主に布良さんの声にだが)
「ほら、着いたわよ。着替えてきましょう?」
「う、うん。じゃあ六連くん、またね!」
「おう……」
ちょうどいいのか悪いのか、支部についたので、そのまま仕事ということになった。
「わからない……」
「おう、来たか。矢来、六連、布良。ちょうど良い」
舛方主任のところに顔を出すと、なにやら難しい顔をしていた。
「何かあったんですか?チーフ」
「たった今、無許可での吸血があったと報告があった。場所は開発地区だ。犯行の無計画性から『L』を使っている可能性もある。ちょうど他の班も仕事に当たっていてな……吸血鬼の手が足りないところだった。急いで向かうぞ」
「「「了解」」」
今日も巡回をして終わりかな……なんて軽い考えは、容易く蹴り飛ばされた。
「でもチーフ。『L』ってーー」
「あぁ。開発、流通自体は止めたはずだ。溜め込んでた分を使って気でも狂ったのか……依存性から体がクスリを求めて、って感じか?あぁったく、麻薬となんら変わらんな……」
明らかに面倒臭い、という顔をした主任と共に、俺たちは支部を出た。
「ここが潜伏場所で間違い無いんだな?」
それから数時間。本当に計画性がなかったのか、潜伏していると思わしき倉庫が割り出された。
「矢来と六連は突入を任せる。事前の吸血は済ませておけ。布良含むC班はバックアップ。D班は倉庫を取り囲め。その他細かいことは事前に伝えた通りだ。ネズミ一匹逃すな!」
「「「了解!」」」
俺と美羽は、主任の指示で配置についた。
「美羽、準備できてるか?」
「えぇ。」
少し返事をしてくれるか怖かったが、そこは仕事と割り切って返事はしてくれた。明らかにそっけなかったが。
「それじゃあいくぞ……3、2、1!」
俺がかけた掛け声と共に、倉庫を開け放った。中には二人組の男がいた。
「なっ、なんだお前らぁ!?」
「クソッ追手か!!」
「ほんとに無計画なのか……美羽!そっちを任せた!」
「えぇ、わかってる!」
俺と美羽は、一人づつを目標に定め、一気に距離を詰めた。
「捕まってたまるか!!」
男のうち一人がそう叫ぶと、ちょうど俺たちと男たちとを分けるように火の手が上がった。
ーーが。その火の手はすぐに美羽の念動力によって抑え込まれた。
「まず、一人!!」
「ごっ、ガッ!?」
俺はその間をくぐり抜けると、片方の男を取り押さえ、すぐさま気絶させた。
(戦い自体も慣れている奴らじゃない……!)
この分なら美羽の方も既に捕まえているだろうと目線を移すと、ちょうど、“美羽が“弾き飛ばされるところだった。
「きゃあっ!」
「美羽!!!」
(なんだ!?何もしていないのに美羽が急に飛ばされた!?)
俺は、必死に思考を巡らせながら美羽の方へと走り出した。
「ヘヘッ!風紀班って言ってもこんなもんか!俺の能力なら、勝てる!」
(能力はなんだ……?考えろ、考えろ……)
その時。男の目の前の空間からヒュルヒュルと風のような音がした。
(空気を操るのか!?クソッ、間に合え!!!)
俺は、咄嗟に脚力を増加させ、倒れこむ美羽の前にその体を投げ出した。
「ぐっ、うっ!?」
その瞬間、男に向けていた背中側に衝撃が走った。硬化能力を使っていてこの衝撃。
(拳銃並みの威力はあるぞ!?)
「佑斗!」
目の前から、体を起こした美羽の叫び声が聞こえた。衝撃はまだ連続して起こっている。
「大丈夫だ……美羽は、絶対、俺が守るか、ら……」
俺は無意識に言葉を発していた。正直、衝撃で意識を失わないように気を張り、足を踏ん張る以外のことは考えられなかった。
「そうじゃなくてーー」
美羽が何か言おうとした時、パン!パン!という拳銃の音と、男の悲鳴が聞こえた。その瞬間、背中に降りかかる衝撃はかき消えた。
「美羽ちゃん!六連くん!大丈夫!?」
(そうか……布良さんが……)
どうやら、布良さんの模擬弾で男は無力化できたらしい。後から聞いた話だが、俺たちの方へ能力と意識を向けすぎて、背中はガラ空きだったらしい。
俺は、意識だけは保ちながらも、膝からその場に倒れこんだ。
「佑斗!!」
美羽は俺のところまでかけてきて、体を支えてくれた。
「バカ!ほんとにバカ!!」
おいおい。そんなに言うか。
「私の能力で防げばいいでしょ!?」
……たしかに。言おうとしてたのそれか。
「鈍感。お人好し。だから私が守ってあげるって言ったのに……」
散々言っている美羽だが、少し泣きそうになっていた。俺は、罵られついでに聞いて見ることにした。
「ごめん、美羽。このことも、朝からのことも。正直に言うと言われた通り鈍感だからか、なんで美羽が不機嫌だったかわからないんだ。良かったら教えてくれないか?」
「朝?……あぁ、あれ。ほんとに1日気づいてなかったのね」
美羽は少し呆れ気味にそう言った。
「あれは、その、佑斗が私の手を離して女の人に抱きついたのが嫌で……」
美羽は顔を少し赤くして告白した。
「それに夕方はエリナとイチャイチャするし、学校じゃ大房さんを抱きかかえてるし」
……どうやら色々とやらかしていたらしい。
「いやだがそれはーー」
「佑斗」
一応説明しておこうと思った俺だが、その声も美羽の声に押しとどめられた。
「わかってる。佑斗は下心でそんなことしないし私のわがままだってことも。けどね?もしも、私が本当に善意で、仕方ない理由があったとして、男の人と抱き合ってたり手を繋いでたら、どう?」
「……すまん。」
美羽にそう言われてようやく理解できた。簡単に言ってしまえば嫉妬だ。だが悪いのは確実に俺だ。美羽に言われたことが実際に起きたら、絶対に嫌だ、と思った俺は、謝ることしかできなかった。
「もういいのよ。佑斗は鈍感だものね。……でもーー」
男二人を気絶させ、風紀班の面々が倉庫の中になだれ込んできた。
「この負債は大きいから。」
その賑やかになってきた中で、美羽は俺の耳へと顔を近づけ、俺にだけ聞こえる声でそう言った。
ーー真っ赤な顔で。
(しばらく許してもらえないかな……)
今日は金曜日。少なくともこの週末は、負債の返済に追われそうだ。