「先輩、考え方がお宿の手伝いに相応しくないかと! いつも通りなら大体合ってる気はしますが!」
※まだオチを知りません
「先輩、私も従業員の皆様と同じ服装にしたのですが……どうですか?」
「ますたぁ、私もどうでしょうか?」
「GJ、素晴らしいチュン……」
※清姫の服装はマスター(作者)の妄想で補っています
というわけで、『感謝の気持ち』を集めるために旅館で働くことになったカルデア一行。
「先輩、せんぱーい? おかしいですね、先程こちらの雑巾掛けをお願いしたのですが……」
「こっちのお酒を猿長者様まで持っていってチュン!」
「了解ですチュン!」
「先輩!? 何で雀さんに混じって接客してるんですか!?」
「チュン、忙しいので手伝ってくれと言われたからついやってたチュン」
「チュン? ……あ、リライス様だチュン!」
「気付いていなかったのですか!?」
と、雀になったマスターが従業員に混じって働くアクシデントもあったが(ちなみに紅女将曰く、「中々の接客すきるでち、感心するでち、チュチュン」とのこと)、一日働いて問題が出てきた。
「圧倒的客不足チュン……!」
「ですねえ。昔から居候状態の方が数人いるくらいですし、貰える『感謝の気持ち』も文字通り雀の涙ですよ」
「あんまりな事実に涙も出ないチュン」
「しかしこうなると、期日までに集めきるのが……」
「現状では不可能だろうな。あと宿を見て回ったのだが、規模の割に閉まっている施設や部屋が多すぎる。女将以外の従業員が雀九羽だけとはいえ、これは妙だ」
「ほっつき歩いているだけかと思ったら、ちゃんと仕事してたんでチュンね所長」
「貴様いちいち私を無能扱いしないと気が済まないのか!?」
「これでも敬意は持ってますチュン」
「普通に示せ! これでもとか言っている時点で自覚あるんだろうが!」
いい加減所長がキレそうだが、リライスは気にせず話を進める。余談だが、隣に清姫がいるので嘘は言っていない、そして割といつもの光景である。
「とりあえず、お客が増えないことにはどうしようもないですね……とはいえ、他のお客様はしばらく来ていないとのことですし……」
「ふむ、ならこういうのはどうだろうか?」
そこでフィオナが提案したのは、神や迷い人でなく縁を結んだサーヴァントを呼び寄せようとのことだった。これなら自発的に誘致が出来るし、自分達もいるのだから女将の許可さえ貰えれば招いても大丈夫だろうとの事。
平行して、閉鎖している客間・施設を修理・改装することにした。客が増えることを考えたら、今の数では足りなくなるだろうからだ。
この提案を受けたリライスは、(多分)驚いた顔で、
「……フィン・マックール、顔自慢と部下弄りだけのキャラじゃなかったチュンね」
「ははは、手厳しいなマスター! 何、こういう時くらい知恵者としての力を見せなくてはね。
それに、窮地に陥った女性に手を差し伸べるのは、騎士として当然の行いだろう?」
「うん、いつものフィンだチュン」
とはいえ、方針は決まった。明日からは通常の雑務も交えつつ、改装のための資材集めと作業も行う必要がある。忙しくなりそうだ。
「あ、玉藻。女将に修繕の許可を貰うついでに、閻魔亭の図面がないか聞いて欲しいチュン」
「図面ですか? それは構いませんが……何にお使いするんですか?」
「そりゃ勿論、建築にだチュン」
「素人が見てどうにかなるんですかねえ……」
明けて翌日、資材集めも一通り終わり。
「おはようございまチュ。皆ちゃん、揃っていまチュか?」
「「「「「「「「「「チュ~~~ン!」」」」」」」」」」
「フォ~~~ウ!」
「元気な挨拶、たいへん結構でち。……一人多くないでちか?」
「先輩、そちらは従業員の雀さん側ですよ!?」
と、段々閻魔亭側に馴染んできているリライスだが、それはさておき。
「女将さんから許可も貰ったし、始めるチュン。全員、用意はいいチュンか?」
「「「「チューン!!」」」」
「好き!!(返事)」
「何でうつってるチュン。それと清姫、今はそれじゃないチュン。それと、サーヴァントだからといって安全確認は怠らないことチュン」
てな感じで、改築作業が始まった。
「マスター、追加の材木持ってきました!」
「ありがとチュン、じゃあ邪魔にならない適当な……いや、指示するとこに置くチュン」
「先輩、ディルムッドさんが金槌で自分の指を叩きました!」
「唾つけとけば治るチュン」
「マスター!?」
そんな感じで作業しつつ、約一時間後。
「あの客間を使えるようにしたでちか!?」
「はい、設計上は大丈夫なはずですチュン。古くなった部分の取替えと、清掃しかしてないですチュンが」
「いや、それで充分でち。まさかこんな短時間で仕上げるとは……リライス、お前様宮仕えの大工だったでちか?」
「そんな大袈裟なものじゃないですチュン。以前工事の監督経験がちょっとあっただけですチュン。
それに私は指示を出しただけで、サーヴァントの皆の規格外な力による作業効率と、読めない部分を清姫が助けてくれたからですチュン」
というより、古語でほとんど読めなかったのだが。清姫(補助役)がいなければマジで積んでいたかもしれない。本人は「ますたあのお役に立てるのが、私の何よりの喜びですから(ハート)」と、リライスを頭に乗せつつ大変嬉しそうである。
「……これは、あちきも考えを改めないといけまちぇんね。これならお客様が増えても」
「御免、宿泊をよろしいだろうか?」
話している途中に、着流しを雅に着込んだ青年剣士――自称NOUMINの佐々木小次郎が入ってきた。
「いらっしゃいませでちお客様、歓迎するでち。……何だか血生臭い感じがしまチュね」
「大丈夫ですチュン、基本的に胡散臭くて暇があれば刀振ってる男でチュンが、聖女(物理)もいないし率先して面倒事は起こさないはずですチュン」
「ははは、その知っているような辛辣な物言い、そちらの雀殿はリライスを思い起こさせるでござるな」
「残念ながら本人でチュンよ、小次郎。その言い分だとカルデアの方でチュンね」
「――なんと。いやはや、つくづくそなたは奇々怪々な事象に巻き込まれるのだな。見ていて飽きないとはこのことか」
「面白がらせるためにこうなってる訳じゃないチュン。とはいえ、お客様なら歓迎するチュン」
「小次郎さん、いらっしゃいませ! 来てくれたのですね!」
「ほう、マシュもか。なるほど、怪異ではなく人の縁、か。女将、部屋を見繕ってくれるか?」
「……リライスが言っていたさぁヴぁんとでちゅね。そういうことなら構わないでち」
「お客様チュン! お荷物お持ちするチュン! そっちはお部屋の用意をするチュン!」
「合点だチュン!」
「先輩!? だからそっちは雀さん達の仕事ですよ!?」
「ますたぁ、私から離れないでくださいましね?」
「……は、つい条件反射で仕事に返事してたチュン」
「ははは、社畜は辛いでござるなあ」
「否定出来なくて悲しみに暮れそうだチュン」
「だ、大丈夫ですよ先輩! 皆で一緒に頑張りましょう!」
「ますたぁにはいつ如何なる時も私が憑いていますから、大丈夫ですよ(ハート)」
「……ありがとうだチュン、二人とも。そして清姫、字がおかしいチュン」
「何か悲しい空気を感じまチュが……とりあえず、お客様が来たのはいいことでち。では、追加の食材を用意するでちか」
「じゃあ私達も手伝いに行きますチュン。あと、ケルト(脳筋)組も連れていくチュン」
という訳で、マシュ達に湧いて出てきた魔猿を頼みつつ、紅女将とケルト組、そしてリライスは一路御山に食材狩りに。
「ゴアアアァァァ!!」
「む!? 後ろから!?」
「チューン!」ゴズッ
「ゴギャアアアァァァ!?」
「ま、マスター!? 今のはマスターが!?」
「ボケッとするなチュン輝く貌! 怯んでいる内に倒すチュン!」
「! 了解!」
「驚きました、マスター。雑魚とはいえ、いつの間にそんな力を手に入れたのですか?」
「別に身に着けたんじゃなくて、この姿のお陰チュン。他の雀達に聞いたら魔獣くらい、連係プレイで倒せる力はあるらしいから、いけると思っただけチュン」
「な!? まさかぶっつけ本番だったのですか!?」
「んな訳ないチュン、事前に確かめたチュン」
「ははは、戦術面だけでなく戦略面でも頼りになってきたなマスター! さしずめ美しき女傑と言ったところか!」
「後で覚えてろチュンフィン」
「……確かに呪いとはいえ、神気が宿っているから理屈では成立しまチュが……思い切りが良すぎでち」
夕飯は豪華になりました。
おまけ
「生サーモンうまうまチュン。女将さんの料理は絶品だチュン」
「見かけは雀さんですが、食べ物は人間準拠なんですね先輩」
「チュン。だからマシュがミミズ取ってこようとしたら全力で止めたじゃないかチュン」
「すいません、水差しも用意するつもりでした!」
「完全にペット扱いじゃねえかチュン」
「私は飼うより飼われる派ですわ安珍様」
「聞いてねえチュン」
後書き
リライスの口が悪いのはデフォ。例外はマシュと清姫くらい。
追記
ゴルドルフ所長は不憫枠(ツッコミ役)