ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに   作:クラウンドッグ

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よろしくお願いします!


ボーダー入隊編
クロウ・アームブラスト


その感覚は、かつて味わったものと良く似ていた。尤も、その時は記憶を封印されていて、おまけにセンスのいい仮面まで着けさせられていたのだが。

 

微睡みから覚醒するような、あるいは水面から顔を出すような感覚。

 

 

かつてその感覚を味わったのは、自分がジークフリードなんて名乗り出す少し前の話だった。

 

 

 

 

☆★

 

 

 

完全に意識を取り戻したクロウ・アームブラストはゆっくりと瞼を開ける。

 

 

 

そこには近代的な街並みが広がっていた。クロウの記憶にある、時代の最先端を行く街、クロスベルに勝るとも劣らない風景が視界を埋め尽くしている。

 

 

 

「ここ、どこだ?」

 

 

 

そこでクロウは根源的な疑問を口にした。自分は仲間たちと共に相克を乗り越え、そしてリィンや相棒と共に大気圏外に脱出したはずだ。

そこから先の記憶はないが、まさか目覚めたらこんな都市にいるなんて思いもしなかった。

 

不死者であるこの身は相克が終われば消え去るのみだったはずなのに、未だにこの世に存在している事さえ謎だ。まさかここがあの世なんて事はあるまい。

 

 

クロウはひとまず歩いてみる事にした。とりあえず地理がつかめればここがどこなのかわかるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてクロウによる調査が始まった。

3時間かけてわかった事は、ここはまずゼムリア大陸ではない事。導力技術がなく、しかし文明の発展度合いで言えば間違いなくゼムリア大陸を凌駕していた。そしてここ三門市では、近界民(ネイバー)と呼ばれる異世界人から侵略を受けている、という事だった。

しかし三門市もただ侵略を許すわけもなく、界境防衛機関《ボーダー》なる組織が日々近界民(ネイバー)と戦っているのだとか。

 

 

異世界からの侵略者と戦うなんて、いったいどこのフィクションだと笑いたくなったが、自分たちの戦いも振り返って見れば大概頭がおかしいものだ。20歳そこらの若者たちが世界の命運を懸けて戦うなんて世も末だ。……いや、まさしく世も末だったわけだが。

 

 

 

 

と、かつての戦いを思い出しながら苦笑していたクロウの目の前に黒い稲妻が落ちる。

その直後に耳をつんざくサイレンの音が鳴り響いた。

 

 

 

『緊急警報。(ゲート)が市街地に発生します。市民の皆様は直ちに避難してください」

 

 

繰り返されるアナウンスは、今ここが近界民(ネイバー)の侵略を受けている事を意味していた。

 

黒い稲妻と思ったそれは近界民がこちらの世界に渡るための門だったのだ。

 

 

 

「おいおい、マジかよ……」

 

 

門から現れるのは三体の近界民。一体はバンダーと呼ばれる捕獲・砲撃用のトリオン兵で、もう二体はモールモッドと呼ばれる戦闘用のトリオン兵だ。

 

 

本来ならトリオン兵を運ぶ門はボーダーの誘導装置によって警戒区域という民間人立ち入り禁止地区にのみ開くのだが、現在三門市ではそうした誘導の効かないイレギュラーな門が開くようになっていた。

クロウの眼前に開いた門もその1つである。

 

 

 

「チッ…」

 

 

舌打ちをしてクロウはトリオン兵の前に立つ。

二丁拳銃やダブルセイバーを失っているとは言え、戦った事もない民間人よりはマシだろう、という判断だった。とにかく、ボーダー隊員が来るまで時間を稼げれば良い。

 

迫り来るモールモッドのブレードを躱し、バンダーから放たれる砲撃を避ける。相克を戦い抜いたクロウからすれば対処に易い相手だ。

 

 

(しかもこいつらーーー)

 

 

こう動けばこうする、という動きが決められているように感じた。

それはまさしくその通りで、トリオン兵はプログラムされた動きしかできない。クロウは開戦わずか数分でそれを見破ったのだ。

 

 

いつまで凌げば良いのやら、わからないクロウはいっそ倒してしまおうかと考えた。

しかし、通常兵器ではトリオン兵にまともなダメージは与えられないという話だ。だがそれでも多少ならダメージを与えられるのではないだろうか。

 

武装を失おうとも、身体に刻まれたチカラは無くしていない。

それは、ジークフリードになったときに与えられたチカラ、あるいは呪い。

 

その名はーーーー

 

 

「動くな………!」

 

 

『アイ・オブ・バロール』ーーーーバロールの魔眼。

見ただけで殺すという最高位の魔眼ーーそのレプリカをクロウは埋め込まれていた。

 

魔眼に見つめられた三体の近界民はしかし、外殻にわずかに亀裂を走らせただけだ。通常兵器ならぬ魔眼でも、トリオン兵には効果が薄いようだった。

 

 

 

 

その後、二分も凌いだだろうか。

 

 

 

「鈴鳴第一、村上現着」

 

 

ボーダー隊員がやってきた。右手に剣を、左手には盾を構えた物語の勇者さながらの男だが、その目は確実に戦況を把握するだけの冷静さが備わっているのが見て取れた。

 

 

村上 鋼ーーーーNo.4攻撃手(アタッカー)としてボーダー内でも有名な彼だが、三体のトリオン兵を翻弄するクロウを民間人と知って驚きの表情を浮かべる。

 

てっきり非番の隊員が応戦していると思っていたのだが、まさか生身の民間人がトリオン兵を相手にしているなど、考えもしなかった。しかもトリオン兵の外殻にはわずかだが亀裂が走っている。この傷もこの民間人がやったのだとしたら、人間としては規格外だ。

 

 

「スラスター、オン」

 

 

村上は左手の盾ーー『レイガスト』を剣に変形させると、オプショントリガー『スラスター』を発動し、そのままバンダーに投擲する。

 

レイガストはそのままバンダーの目ーーートリオン兵の弱点ーーを貫く。

 

 

 

 

クロウは村上がトリオン兵を任せるに足る力量を持つ事を確認すると、

 

 

 

「あとは任せたぜ!」

 

 

と言い、もう一度『アイ・オブ・バロール』を発動。モールモッド二体の動きを封じると、逃げ惑う人混みに紛れて姿を消した。

 

 

 

「待て!」

 

 

村上は叫ぶがクロウは応じず、去っていく。村上は距離を詰めて来るモールモッド二体を、

 

 

 

「旋空孤月」

 

 

右手の剣ーー『孤月』のオプショントリガー『旋空』を発動して沈黙させる。

 

 

 

これにてイレギュラー門から現れたトリオン兵の対処は完了したのだがーーーー、生身でトリオン兵に対抗できる人物という大きな謎が出来てしまった。

 

 

 

「なんなんだ、彼は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

 

 

イレギュラー門での件を報告した村上は、ボーダー本部司令、すなわち最高司令官である城戸に呼び出されていた。

 

 

会議室に入ると、そこには3人の男たちが待っていた。

 

 

 

最高司令官、城戸正宗

本部長、忍田真史

玉狛支部支部長、林藤匠

 

 

(この面子は……)

 

 

珍しい組み合わせというわけではないが、いつもここにいる鬼怒田や根付、唐沢がおらず、この3人だけというのが、今日村上が上げた報告が、この()()()()()()()()()組織に所属している3人の琴線に触れたという事なのだろう。

 

 

「聞きたい事がある。村上隊員、今日遭遇したという男は名は名乗らなかったのか?」

 

 

まず聞いてきたのは城戸だった。顔の傷を指でなぞりながら。その作業はまるで過去を忘れないためにやっている儀式のようにも思える。

 

 

 

「いえ、すべて報告書にまとめた通りです」

 

 

簡潔に村上が返すと、今度は忍田が聞いてくる。

 

 

「身長は180センチ程度、白髪で赤い目だったというのは本当か?」

 

 

「間違いありません。日本人離れした容姿だったのでよく覚えてます」

 

 

忍田の問いに肯定すると、3人は顔を見合わせる。

 

 

「こりゃ、似過ぎでしょう。身長から特徴、生身でトリオン兵と渡り合う所まで」

 

 

林藤が言うと、城戸と忍田も唸るように肯定する。

 

再び傷をなぞりながら、城戸記憶を掘り返す。思い出の中の男を瞼に映しながら、その名を呟く。

 

 

「ああ、似ているな………リィン・シュバルツァーに」




ってな感じで第1話となります!
さぁさぁ、伏線ばらまいていきますよ(笑)!
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