ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに 作:クラウンドッグ
しかし、あまりにも他のボーダー隊員の活躍の場面がなくなるため、ああいった感じになってしまったのです……!
話の最序盤の独白がほぼほぼ無意味になるという………
上手くいっていた。
三雲修は空閑遊真と別行動をとった後、木虎と合流しラービットを一体撃破した。しかし、連続投入されたラービットにさすがの木虎も対応できずキューブ化され取り込まれてしまう。
その後、玉狛第一の木崎レイジ、小南桐絵、烏丸京介の助けにより窮地を脱する。
上手くいっていた……
民間人の避難をしていたC級隊員が狙いだと判明し、C級隊員たちを連れてボーダー本部に退避する三雲だったが………
さらにトリオン兵に囲まれてしまう。ラービットの数こそ少ないものの、50は下らないトリオン兵の群れ。目的のC級隊員たちを狙っての襲撃に、玉狛第一の面々でも対応が遅れてしまい……
迫る影を消し飛ばす、空を破る閃光。
密集するよう誘導されたトリオン兵をまとめて消し飛ばしたのは、トリオンモンスターと話題のC級隊員、雨取千佳のアイビスだった。
トリオン兵を一蹴した三雲とC級隊員たち、玉狛第一は、さらにA級1位部隊の射手 出水公平、同じくA級の米屋と緑川と合流した。
ボーダー最強の部隊と言われる玉狛第一とA級の3バカ(弾バカ、槍バカ、迅バカ)が揃い、余程の事がない限りは崩れないフォーメーションが出来上がった。
上手くいっていた……はずなのに。
☆★
「金の雛鳥か」
アフトクラトルの遠征艇の中で、そのリーダーであるハイレインが報告を受けて呟く。
それは尋常ならざるトリオンを誇る千佳を指しての事だった。
「そろそろ頃合いか。……ミラ」
「はい、出られるのですか?」
「本来は出るつもりはなかったが、ああも手練れが揃われては出るしかあるまい。俺とヴィザ、ヒュースで金の雛鳥と雛鳥の捕獲にいく」
そして、遠征艇から三門市に新たなる門が繋がった。
☆★
三雲修は、軍師であり策士である。
それは先の風間とも模擬戦からでも、後のB級ランク戦でもわかる事だ。
とても中学生とは思えない知識と知恵、工夫で勝ちをもぎ取りにいく。
その能力はボーダーでも上位に食い込むであろう。
しかしそれは、あくまでボーダー内部に限った話である。
アフトクラトル遠征隊の隊長であるハイレインは、自国では領土争いで日々謀略を重ね、戦となれば陣内で策を練る。『神の国』と称されるアフトクラトルを四つに割る内の一つの領主としての判断力にも長ける。加えて上に立つもののカリスマもあるとなれば、三雲に優っている点など一つもない。
これこそが軍師として、策士として、戦士として、隊長としての格の違いである。
その門に気づいたのは、玉狛第一に着いて来ていたレプリカの子機…ちびレプリカだった。
「ヴィザ、本気でやれ」
黒い門から飛び降りた3人の人型近界民を視認し、杖を掲げた老人がトリガーを作動させる。
「ええ………、『
「伏せろ」
ちびレプリカの声に咄嗟に反応できたのは、A級の面々だけだった。
アフトクラトルの狙いがC級である以上、彼らの至上目的は千佳であるとわかったレイジが弟子を庇うべく突き飛ばす。
レイジの右腕は三雲を星の杖の射程圏外に押し出し、その先にいた千佳を刃から守り抜きーーーー切り飛ばされた。
それだけでなく、杖の老人の周囲は切り裂かれている。ボーダー隊員たちはもちろんのこと、建物や地面まで御構い無しだ。
着地した3人の人型近界民を見て戦々恐々とするC級隊員たち。彼らの大半は先の星の杖によりトリオン体の換装が解除され生身となってしまっている。
そこに追い打ちをかけるように大量のトリオン兵が投入される。
「三雲!おまえはC級を連れて避難しろ!米屋、フォローしてやってくれ」
「りょーかい」
「…了解!」
足止めを買って出たのは玉狛第一と出水と緑川だった。米屋はC級をボーダー本部に続く避難路に導く三雲のお守りに任じられる。
三雲も優先順位を鑑みて素直にレイジの指示に従う事にした。
しかし、それをアフトクラトルの面々が許してくれるはずもない。
「逃がすか」
ヒュースが『
さらに追撃しようとしたヒュースだが、そこに烏丸のアステロイドが撃ち込まれる。
「おまえたちの相手は俺たちだ」
☆★
「ここまで、来れば……!」
三雲と米屋はC級隊員たちを連れてボーダー本部に繋がる緊急用の避難通路の入口まで来ていた。
三雲が手をかざすとロックが解除され、ドアが開いた。
あとはここからC級をボーダー本部に逃せばミッションコンプリート…という段になって彼らの前にラービットが現れる。
「千佳、みんなを連れて逃げろ!」
三雲が指示を出すと千佳は「うん!」と返事してC級の仲間たちと共に避難通路に入っていく。
そうはさせまいとラービットは大きな腕を振り上げる。
気づいた三雲がレイガストをシールドモードで構えるが、ラービットの剛腕は人ひとりなら易々と吹き飛ばしてしまうほど。吹き飛ばされた三雲が避難路を破壊してしまうところまで予期した米屋は、三雲の背にシールドを2枚重ねた。
今の最優先はC級隊員の避難だ。避難通路の崩落は避けなければいけない。C級を狙うラービットの拳を三雲が受け止めるのならば、三雲がそのパンチで吹き飛ばされないようにすれば良い。
シールド2枚のフルガードならば、三雲のレイガストで軽減したパンチの威力は殺しきれるはず。これなら最悪、三雲がレイガストとシールドのサンドイッチで緊急脱出するだけで済むーーーー
しかし、予想とは往々にして裏切られるもの。
ラービットは振り上げた拳を防御に回す。迫り来る弾丸から身を守るために。
狙撃銃のトリガー『イーグレット』はトリオン量に比例して飛距離が伸びるという特性がある。ゆえにラービットはどこから狙撃されたのかわからない。代わりにその目が捉えたのは、獰猛な影だった。
瞬間、しなる刃。
ブレード型トリガー『スコーピオン』2つを無理矢理に繋げたその技は、まるでカマキリの如くして、マンティスと呼ばれている。
そのマンティスの考案者にして使い手であるB級2位影浦隊隊長、影浦雅人が参戦する。
影浦のマンティスはラービットの防御を掻い潜り腹部を引き裂いた。
「ゾエ!」
影浦が愛称で呼ぶのは悪友でありチームメイトの北添尋。
さらに北添が登場し、メテオラをラービットの引き裂かれた腹部に撃ち込んだ。
よろめきながらも倒れぬラービットの弱点を、今度こそイーグレットの狙撃が仕留め打つ。そのイーグレットの使い手こそ影浦隊のスナイパー、絵馬ユズルだ。
影浦隊のコンビネーションは瞬く間にラービットを撃破した。その動きはA級部隊に相当する。事実B級上位部隊はA級予備軍と呼ばれており、今のB級1位と2位の部隊はかつてA級だったほどだ。
頼もしい援軍に安堵の息を漏らす三雲と米屋。
三雲は玉狛第一と出水、緑川が人型近界民と交戦している事を伝える。
すると影浦は「面白そうだ」と言って米屋と共に救援に向かう。
「僕も行きます…!」
その後に続こうとした三雲だったが、影浦と米屋に制止される。
三雲修はまだまだ未熟である。本来はB級としての実力さえ持たぬ、ただのメガネ。特例でC級からB級に昇格したものの、その実力はようやくトリオン兵モールモッドを倒せるほどだ。
そんな自分が加勢に言ったところで、意味がないのはわかっていた。ゆえに2人の制止を三雲は受け入れた。
その後、三雲は避難通路から本部へ避難するC級の援護をする事になった。避難路の位置が敵に漏れている事は考えにくいが、C級隊員たちは星の杖の攻撃によって大半がトリオン体を破壊されて生身の状態だ。B級隊員がそばにいてやるだけで心強いだろう。
そして、三雲修は自らの無力を思い知る事となる。
☆★
凶悪。
その一言に尽きる。
神の国、アフトクラトルの玄界侵攻の人型近界民であるヒュース、ヴィザ、ハイレインのコンビネーションは、おそろしく緻密でありながら大胆、そして穴がないものだった。
「『
ハイレインの操る黒トリガー『卵の冠』は、自らのトリオンを生物のカタチとして放ち、それに触れたトリオンをキューブ化させる能力を持つ。それはトリオンで構成された武器も同じ事だ。防御すら許さぬ最悪の敵。
その卵の冠の能力を理解したボーダー隊員たちは必然的に回避を選択する。
そこに、
「蝶の楯」
アフトクラトル最新鋭のトリガー、蝶の楯は無数の欠片により構成される。その真価は磁力と斥力。
磁力と斥力により超高速となった欠片の弾丸は回避する隙などなくガードするしかない。欠片を1つでも身に受けたら最後、磁力によって行動を制限される最巧の敵。
蝶の楯の弾丸をガードしたボーダー隊員らに襲いかかるのは、もう1つの黒トリガー。
「星の杖」
星の杖、アフトクラトルの国宝であるこの黒トリガーに、すでに緑川と木崎が緊急脱出していた。
不可視の斬撃はシールドさえすり抜ける……と思われていたが、緊急脱出した木崎が、その正体を見抜いていた。
円周上を疾る刃。それこそが星の杖の能力だ。星の杖を中心に大小様々な円を作り出し、そこに刃を走らせる。シールドをすり抜けると勘違いしたのは斬撃は正面からではなく横からだったから。不可視だと思ったのは、ただ単に見えないくらい速いだけだ。
ハイレインが誘い出し、ヒュースが動きを止め、ヴィザがしとめる。
この3人の連携はその形が基本であり、また凶悪であった。
無論、基本があれば応用もあるのが世の常だ。
「どうすんのよ!?このままじゃジリ貧だわ!」
「耐えるしかありません。C級を避難させた米屋が影浦隊を連れて戻ってくるのを待ちましょう」
隊長である木崎を緊急脱出に追い込まれていたが、玉狛第一の小南と烏丸は冷静さを失ってはいなかった。
現在、玉狛第一はヒュースとヴィザの2人組と対峙していた。
すでに緊急脱出してしまったが、緑川と木崎によりハイレインはヒュースとヴィザから離され、出水と単独で戦っている。その出水にはちびレプリカが同行し、卵の冠の柔軟な攻撃から出水を守っていた。
ヒュースとヴィザの連携では、先ほどのハイレインの役目をヒュースが負う形となっていた。
つまりは誘導、それに加え本来の役割である足止めもだ。幾分か効果は落ちるもののしかし、ヒュースはその両方をやってのけるほどには優秀だった。
こういった敵地では、一般民を脅かす事により敵兵を分散させるのが良く効く手だと知っているヴィザだが、今回においてはその作戦は使えそうにない。
ボーダーによって門を誘導されてから、各方向に分散させたトリオン兵らがほぼすべて撃破されているからだ。
どうやら相当の使い手が市民の守りに入っているらしい、とヴィザは考えていた。ならば、今求められるのは現状の打破。
玉狛第一の動きから、援軍が向かって来ていることを察知したヴィザは手札を切る。
トリオン兵に指示を出して玉狛第一を襲わせた。ラービットならぬ既存のトリオン兵ならば足止め程度にしかならぬ。しかし、ほんの1秒でも気を逸らせればそれで充分。
呼び出したのは捕獲用のバムスター。玉狛第一の隊員たちのような熟練のトリガー使いを相手にすれば1秒も保たずに倒されるであろう雑魚。
しかし、相手の視界から自分を消すその巨躯が今は重要なのだ。
「邪魔よ!」
視界を奪われた小南と烏丸はすぐにヴィザの狙いを察する。この目隠しの裏でヴィザが星の杖を解放すれば、避けることは困難だ。
「小南先輩!」
仕掛けた小南を制止するように呼びかけるが、すでに遅い。
小南の『双月』は一撃でバムスターを狩り、ヴィザの星の杖の刃は小南を捉えーーーなかった。
一足でバムスターまで距離を詰めた小南はそのままトリオンの弱点である目を破壊、そのまま高く飛び上がった事で星の杖の刃を躱していた。
攻撃手3位、天性の戦闘センスを持つ小南だからこそできた、老練の達人の読みすら上回るアクション。
飛び上がった小南は爆散する前のバムスターを蹴ってヴィザに向かって加速する。
バムスターの爆散によって生じた爆風を受けてさらに加速。体勢を崩さぬ事に苦心しながら、無機質な音声を聞く。
「『
小南の両手にある2つの小型の刃が接続され、大きな戦斧へと変形する。
一撃でヴィザを両断するべく豪快に戦斧を振りかぶった小南。2段階の加速によりすでにヒュースの援護は追いつかない。
もらった!と小南は確信する。
そして、そのまま。
再び無機質な音声が現実をアナウンスする。
「
一刀、両断。
戦斧を振りかぶったまま、小南のトリオン体は2つに分かたれた。
振り抜いた体勢のヴィザ、その手にあるのはトリオンの剣である。
星の杖とはただ円周上に刃を走らせるだけではなく、その杖の中に刀を隠す黒トリガー。
「仕込み杖か!」
星の杖が中〜遠距離を得意とするトリガーだと思っていた玉狛第一からすれば、まさに悪夢の如き事実だ。
しかもあの老人は単純な接近戦でも強いと烏丸は見抜いた。
米屋と影浦隊が到着するまで、あと3分弱。
判断は一瞬。
「『ガイスト』起動」
烏丸が判断するのに止まった一瞬を撃ち抜かんと、ヒュースが蝶の楯の超速弾丸を撃ち放つ。
しかし、烏丸は刹那の間に姿を消した。そこに無機質な音声だけを残して。
「な……!?」
「
瞬く間にヒュースの背後に回り込んだ烏丸は防御の薄い左腕を斬り飛ばす。
さらなる一撃を加えようとしたところで、小南を切り裂いた神速の一刀が抜き放たれる。
ヴィザの振るった一太刀を距離を取って躱した烏丸からは、トリオンが漏出しているのが見てとれた。
ガイストとは、あえてトリオン体のバランスを崩す事によって武器や脚にトリオンを集中させてパワーやスピードを上げるトリガーだ。
もちろん、トリオンを漏出させるため長続きはせず、およそ3分という時間制限を過ぎたら緊急脱出してしまう短期決戦用の切り札だった。
そのガイストを起動させた烏丸を見てヴィザは「ほう…」と感心したように漏らし、少しだけ笑んだ。
「あなたがこの部隊のジョーカーだったか」
☆★
出水vsハイレインは、ほぼ互角のまま状況は沈着していた。
ハイレインのトリガー、卵の冠はトリオンならば何でもキューブ化してしまうという凶悪な性能を持ち、さらにはキューブ化したものからトリオンを吸収する能力すらあるが、生物を模したトリオン攻撃しかできないため、単純なスピードだけならヴィザの星の杖どころかヒュースの蝶の楯にすら劣る。
その代わりにトカゲやクラゲを模した攻撃で敵を足元から崩す搦め手を使うのだが、今回に限ってはその搦め手は成功していない。
鳥のトリオン攻撃で出水の意識を上に引きつけてトカゲのトリオン攻撃で足元からキューブ化させるつもりだったのだが、ちびレプリカがシールドを張った事により防がれてしまった。
ちびレプリカのトリオン量は少ないが、下からも攻撃があると警戒されたのが何よりの痛手だ。
しかし、スピードでは劣るとは言え卵の冠のトリオン弾をすべて撃ち落とす出水の実力はさすがA級1位部隊の射手。弾バカと呼ばれるだけはある。
その出水は、ハイレインの卵の冠の能力について考えていた。卵の冠はトリオンならば無差別でキューブ化してしまう恐ろしいものだが、逆にトリオン以外の物質には効かないのではないか?
仮説はあったが、それを実行する事はできない。対応に手一杯というのもあるが、生き埋めにするにも瓦礫が少ない。というか戦闘の余波で近場の建物は全て倒壊してしまっている。
「だけど逆に……」
それは、狙撃手の射線を遮るものがないという事だ。
瞬間、着弾。
「む……」
ハイレインを守るようにその周囲を泳いでいたサカナの形をした卵の冠の防壁の一部がキューブとなる。
「やーっと来たか」
安堵の息を漏らす出水。遠くでスコープを覗くのは影浦隊のスナイパー、絵馬ユズルだ。
出水の救援要請を受けて影浦隊は絵馬をヘルプに寄越したのだった。
「狙撃手か……だが……」
サカナの防壁を増加させるハイレインだが、その意識のズレを見逃す出水ではない。
「おっと、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ」
出水の両の手に現れるトリオンキューブは、ただの1秒も待たずに1つのキューブに変化する。
「『
合成弾。出水が考案した射手用のトリガーを練り合わせる技術。二種類の弾を組み合わせて様々な効果をもたらす事ができる。
バイパーとメテオラを合成してできたトマホークは、軌道を操作できる炸裂弾だ。
トマホークはハイレインを囲むとサカナの防壁にぶち当たり、周囲を派手に照らす。
サカナの防壁はトマホークの炸裂によって大幅に削られ、キューブと化して地に落ちて行く。さらにハイレインは爆風に煽られて体勢を崩してしまう。
ハイレインは防壁を増やすか体勢を整えるか選択を迫られる。瞬時に後者を選ぶが、それが間違いであったと刹那ののちに痛感する。
砂埃舞う状況において狙撃は困難である。そんな当然の理解を覆す技量を、絵馬ユズルが持つと知らぬがゆえに。
イーグレットから放たれた弾丸がハイレインの腹部を撃ち抜く。
脇腹を大きく削られたハイレインは渋面をつくりながらサカナの防壁を増加させる。
次いで、二度の狙撃。サカナの防壁がキューブと化す1発。残る1発は防壁の間をすり抜けて右足を貫いた。
着地したハイレインを出水のアステロイドが追撃する。それはサカナの防壁でなんとか防ぐが、トリオンの漏出がひどく継戦は困難に思われた。
出水はハイレインの様子を見て勝利を予想する。あれだけトリオンが漏れていれば、ボーダー隊員なら緊急脱出は必至だ。それはこの黒トリガー使いも同じであろうと。
しかしーーーー、
「お待たせしました」
黒い門が開き、女の人型近界民が現れる。
「エネドラの始末、終了しました」
「ああ」
「それと」と女の人型近界民ーーーミラはさらに門を開き、多数のトリオン兵を出現させた。
「必要かと思いまして」
「良くやった」
ハイレインはそう言うと、卵の冠でトリオン兵をキューブ化させてトリオンを吸収する。さらに吸収したトリオンで傷を修復したのだった。
「おいおい……反則だろ……!」
「さらばだ、玄界の射手」
出水の背中に当たる卵の冠の攻撃。ミラの黒トリガー、窓の影によってワープしてきたものであった。
緊急脱出、と無機質な音声が出水公平の敗北を伝える。
☆★
「チッ」と珍しく舌打ちしたのは迅だった。
「どうしたの?」
隣を駆けるのは黒トリガーを起動させた空閑遊真だ。
「最悪だ……こんなときに、食い合った……!」
迅のサイドエフェクトは未来予知。可能性のある未来の世界を見ることの出来る千里眼だった。
と言っても、実際に目にした事のない人物の未来は覗けないし、遠い未来になるほど精度は低い。しかし逆に近い未来の出来事ならば高確率で予知した事が現実になる。
その未来予知で、迅は自分の予知の最悪が更新されるのを視てしまった。
「?」を浮かべる遊真に迅は説明する。
「俺のサイドエフェクトだけど、ボーダーにはそれに似たサイドエフェクトを持つやつがいる」
一瞬の間を置いて迅は、その者の名を語る。
「夜凪刀也……ヨナさんの『超直感』だよ」
「ヨナさんの……で、それが?」
「ヨナさんも自分の直感に従って最良の未来を掴み取ろうとする。俺も同じように最良の未来を予知で引き寄せようとする」
2人の男が未来に干渉しようとする。するとどうなるか?
そんな問いかけに悠真は当然のように「良くなるんじゃないの?」と答える。
「未来はそんな単純なもんじゃない」
迅はらしくなく焦った表情で続ける。
未来とはいい未来から悪い未来まで順番に並んでいるわけではなく、最善の道と最悪の道が隣り合ってる場合もあり、揺れ動く未来はレールを転がる玉のようなもので、ちょっとした干渉で弾かれて隣のレールに移るものだと。
今回、迅が選び取ろうとした未来は、最高から2〜3番目のものだった。そこから1番近い最悪の未来では、三雲修が死んでしまうものだった。
しかしたった今、視た未来では運命の玉は正真正銘、掛け値無しの最悪のレールの上に乗ってしまっていた。
それこそ刀也がサイドエフェクトで掴み取ろうとした最善の未来のレールのすぐ隣にあった最悪の未来だった。
「………避難通路から基地に逃げるC級とメガネくんが、やられる」
主人公どころか刀也すら出ない展開(笑)
A級3バカが東の救援に来なかった世界線という説明は前々話くらいの後書きで説明しましたが、そのためC級の援護に早く駆けつけられたというわけです。
しかし、C級の援護が万全になってしまったがためにハイレインがヴィザ、ヒュースと共に出撃してしまったわけですね。
それと、原作では開かなかった緊急用の避難通路の扉が開いたわけですが、イルガーの特攻どころかエネドラの基地への侵入すら許さなかったからです。その2ファクターがなければ避難通路は使える事としました。
そして、避難通路が使えれば最善の未来へと繋がると直感した刀也がイルガーの特攻から基地の絶対死守を指示しエネドラを基地に侵入させなかったのです!
しかし、その最善は三雲修の腕に「蝶の楯」のマーカーがつけられた事で最悪に変貌してしまった……というのが今の状況です。
時系列がだいぶグチャっとなったので整理。
人型近界民と交戦開始→風間がエネドラに敗れる→クロウとランバネインが交戦→刀也がエネドラと交戦、勝利→クロウがランバネインに勝利→ミラがハイレインに合流(イマココ!