ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに   作:クラウンドッグ

14 / 65
ヴィザ撃破!からの『Ⅶ"sギア』の起動!!

まあ刀也が単独でヴィザを倒せるわけがないのよね。百戦錬磨のヴィザを倒すには、それこそ遊真のようなジョーカーか風刃による星の杖射程外からの不意打ちしかないという結論に至りました。
クロウが戦ってたら面白い事にはなりそうですが。


帰らせはしない

ハイレインにとって、それはまるで読めていた一手。

 

あらゆるトリオンをキューブ化させる卵の冠。それを破るための手段として、遊真が選んだのはシールドを7枚張り、かつ急速接近する事でシールドすべてがキューブ化される前にハイレインを撃破しようとしたわけだ。要はゴリ押しである。

しかし、ただの猪突猛進ではなく計算された突撃。レプリカの本体と別行動になった以上はもう多重印は難しい。ハイレインが二宮と撃ち合っていた際にせっせと仕込んだ印すべてを使って、ここでハイレインを倒す。

それが遊真の経験から導き出された勝つための最善手だった。

 

 

 

確かに卵の冠を破るための良手の典型例がそれだ。しかし、有効的であるがゆえに今までもそうやって卵の冠を打破しようとした敵も多く存在した。

遊真のとった最善手はハイレインにとってすでに経験済みのものだった。

 

 

 

なにも、仕掛けていたのは遊真だけではない。ハイレインもまた、二宮との撃ち合いの最中に罠を仕掛けていたのだ。

 

 

 

『弾』印を踏みつけたはずの遊真だが、思ったほどのスピードはでない。ハイレインとの距離を一瞬で詰めるはずが、そうはならなかった。

 

見ると、『弾』印三重の内の二重は足元に忍び寄って来ていた卵の冠から生み出されたトカゲによりキューブと化してしまっていた。ゆえに『弾』印は多重印としてではなく単体の印としてでしか機能しなかった。

単純に三分の一のスピードしか出ない。誤算だった。いくらシールド7枚張りとはいえ、このスピードではキューブ化されてしまう可能性がある。

 

 

だが、この勝機を逸してしまえばレプリカの補助なしでハイレイン撃破は困難となる。だから、迷いはない。ぜんぶ使う。

 

 

「『鎖』印」

 

 

地面に仕掛けていた5つの『鎖』印が起動し、ハイレインをぐるぐる巻きにして拘束する。

しかし、鎖はハイレインに触れた先からキューブと化してしまう。拘束できたのなんてほんの一瞬だ。

だが、もちろん遊真の仕掛けもこれですべてではない。

 

 

 

「『射』印」

 

 

さらに8つ、射撃の印を解放する。二宮ほどとはいかないまでも、弾幕と言っていい弾数がハイレインに向かって撃ち込まれる。

 

素早い二連撃に、ハイレインの卵の冠は追いつかない。

鎖で拘束された一瞬の遅れが、致命的となる。卵の冠での防御が間に合わない。鳥もサカナも、ハチもクラゲもトカゲも。その生成が追いつかない。

 

 

弾丸が、ハイレインのトリオン体を射抜く。右脚を撃ち抜き、脇腹を抉り、側頭を掠める。

 

だが、ハイレインの意識はそこには向いていない。そもそも銃撃は防ごうとはしておらず、生成が追いつかないのではなく『射』印にはもともと自分の周囲を泳がせていたサカナで受け流すつもりだった。

ここまでの損害は想定外だが………

 

 

ハイレインとてただでやられるわけもなし。

シールドで卵の冠で生み出される鳥やハチから己を守る遊真。しかし、乱雑に襲ってきていたはずのそれらが急に統制されたように一点突破を試みてきた。

キューブ化させるのは一部分のみ。狙いはシールドを貫いたその先だと言わんばかりにシールドを一枚一枚貫通してきていた。

 

遊真がハイレインを撃破するのが早いか、ハイレインが遊真をキューブ化するのが早いか……

 

結果としては、ハイレインに軍配が上がった。

 

 

『盾』印7枚を貫いたハチの群れが、そのまま遊真に殺到する。遊真がハイレインを殴る寸前だ。その一寸の差で遊真はハイレインに届かない。シールドを貫通したハチが遊真の手に触れたその瞬間、遊真の手はぐにゃりと形を保てなくなる。キューブ化する前兆の、まるでダメージを与えられないであろうその腕を、遊真はそのまま……否、新たな仕掛けを施して振り抜いた。

 

 

『錨』印(アンカー)

 

 

『錨』印は三輪のレッドバレットを模してつくられた印であり、その効力はレッドバレットと同じく敵を重石で拘束するというもの。『射』印と混ぜて使うのが主たる使い道なのだが、直接相手に触れる事でも発動できる。

 

卵の冠をくらい、歪んだ腕でダメージを与えられないと考えた遊真は咄嗟に『錨』印でハイレインの動きを制限しようと試みたのだ。

 

 

 

遊真はハイレインに一撃を加えたあと、歪んだ右腕を肩からちぎり取る。ちぎり取られた腕はそのままキューブ化して、遊真の右肩からはトリオンが漏出する。

 

 

ハイレインも『射』印で撃ち抜かれた箇所からのトリオン漏れが酷く、手近なところには回復に使えそうなトリオンキューブはなく、トリオン体の修復もままならない。

 

 

戦況は膠着した。

 

 

そこに《蒼の騎士》が現れる。

 

 

 

☆★

 

 

 

二宮の対ミラとしての基本戦術はメテオラで視界を防ぎつつ、窓の影のワープゲートをくぐり抜ける軌道でハウンドを撃ち、ガードが空けばアステロイドを叩き込むーーーというものだった。

 

 

二宮のフルアタックハウンドは、四方八方からミラに襲いかかる。まさに逃げ場のない蜂の巣というやつだ。

その全てを窓の影で他所へ飛ばす事もできるのだが、さすがにトリオンの消費が激しい。ヒュースはまだしもヴィザの回収は絶対しなければならない。そのためのトリオンは温存しなければいけないし、先ほどのように狙撃手を狙ったとしても、その攻撃をキャンセルする手段を二宮はもっているようで、攻撃のはね返しも徒労となる。

 

二宮は同時発動可能なトリガーは2つ、というルールを利用していた。ボーダーの規格のトリガーはトリガーホルダーに8つのトリガーをセットできるのだが、そこから併用して使えるトリガーは2つというルールがある。旋空やレッドバレットなどのオプショントリガーは別だが、トリガーを同時に3つ以上は起動できないようになっているのだ。

 

3つ目のトリガーを起動したら1つめのトリガーが消える、と簡単に言えばそういう事だ。実際は利き手用のメイントリガー、副装備のサブトリガーに分かれるのだが、二宮がやっているのは、自分の弾トリガーが窓の影のワープゲートに取り込まれた瞬間に次のトリガーを起動して、ワープゲートに入り込んだ弾トリガーの効力を無にしている、という事だ。

 

 

ゆえに、ミラが二宮の放った弾トリガーをワープゲートを通してはね返したとしても、その弾トリガーから攻撃力は失われているため意味がないのだった。

 

 

 

そのためミラは先ほどから二宮の弾を避けるために小刻みなワープを繰り返していた。

 

 

 

ハウンドにはトリオンを探知して追尾する機能がある。小刻みなワープ程度ならば、ハウンドがどちらに動いたかでミラのワープ地点を割り出せる。

 

 

「奈良坂、タイミングは掴めたな?」

 

 

「はい、いけます」

 

 

ミラを追ってハウンドが軌道を変えた瞬間、二宮はメテオラを撃ち出す。ミラは再びワープして避けようとするが、奈良坂の狙撃銃ーーライトニングーーが二宮のメテオラを撃ち抜き、空中で炸裂させる。

 

爆風に煽られたミラは体勢を崩してしまい、そこに二宮の一手が叩き込まれる。

 

 

「ハウンド + ハウンド = ホーネット」

 

 

ハウンドとハウンドの合成弾。アステロイドとアステロイドの合成弾であるギムレットが、アステロイドの特徴である高威力を更に伸ばすように、ホーネットはハウンドの特徴である誘導能力を高めたもの。

 

 

 

爆風で煽られたミラに突き刺さる、ホーネットの弾丸。トリオン体の各部に穴が空き、このままでは戦闘不能もかくや、という段になってミラはようよう腹をくくる。

 

大窓を使用してホーネットから逃走。さらに追ってくる弾をさらに大窓で二宮に返却する。

二宮は新たなトリガーを起動させる事でホーネットを消し去り、動きの変わったミラを見やった。

 

 

ミラとて黒トリガー。窓の影は戦闘向きとは言えないが、それでもノーマルトリガー相手に遅れを取るなどあり得ない。

それが例え二宮のような破格とも言える相手であっても。完全勝利を捨てれば、いくらでもやりようはある。

 

 

 

 

 

「悪いわね……悪あがき、させてもらうわ」

 

 

 

☆★

 

 

遊真とハイレインの戦闘は、膠着したと言って過言ではない。

どちらともトリオン体の一部を失っており、決め手といえる手段を打てないためにどちらとも消極的にならざるを得ないのだ。

 

 

遊真は、かつての戦闘で死んだはずだった。敵国の黒トリガーにやられて死ぬはずだった所を父親に助けられた。遊真を助けた父親、有吾はそのまま遊真に黒トリガーを遺して死した。

本来そこで死ぬはずだった遊真の肉体は有吾の黒トリガーの内側に封印されていて、今もゆっくりと死に向かっている。

その遊真の生身の肉体が黒トリガーの内側に封印されているのなら、トリオン体換装前の姿はなんなのか?

それも、トリオン体だ。ゆっくりと死に向かっている体の代わりに黒トリガーで作られた仮初めのトリオン体。

 

本当の肉体は封じられているため、死にかけた時点で肉体年齢は止まり、遊真は小学生とさえ間違われるような外見なのだ。

 

 

遊真はたとえ戦闘体を破壊されたとしても、生身さえトリオン体のため戦う事が可能だ。遊真にとってこれは、最後の手段、秘中の秘といえよう。

 

しかし、そんな秘中の秘さえハイレインには相性が悪い。

卵の冠はトリオンにのみ作用する。いざとなれば換装を解除して逃げればハイレインはどうしようもない。

だが遊真はトリオンの戦闘体を解除したとしても、生身さえトリオン体だ。黒トリガーの力が使えなくなればすぐにキューブ化されるのがオチだろう。

 

 

だから遊真は消極的にならざるを得ない。

 

対してハイレインも遊真ほどの使い手を足止めする事に意味を見出していた。

1番重要なのは、この遠征が成功するかどうかだ。すでに雛鳥たちは多数確保しているが、金の雛鳥も連れて帰れれば次の神の座は決定したようなもの。だから、遊真をミラの討伐に動かさないのがハイレインの現在の至上目的だった。

遊真が消極的になるのなら、同じく負傷しているハイレインも無理して積極的に攻める必要はないのだ。

 

 

しかし、状況とはえてして変わるもの。

ミラの方に向かった二宮の代わりに、ランバネインを撃破したという黒トリガー使いがこちらに向かってきているという。

それとほぼ同時にミラが手傷を負ったと通信で聞いたハイレインの判断は早かった。

 

 

玄界のトリガーには通信機能は通常装備のようだが、遊真の黒トリガーは違うと見抜いたハイレインは、ミラと連携する。

 

遊真が消極的ならば、多少防壁を減らしたとしても支障はない。

 

 

 

ハイレインの手元に小さなワープゲートが開きーーー、そこに卵の冠から産まれたトリが吸い込まれるように消えていった。

 

 

窓の影の能力を知らない遊真はそれが何かわからず、戸惑いながらも周囲を警戒するが何もない。ならばトリはどこへ消えた?

ハッとした遊真だが、遅い。もし仮に遊真がミラと対峙し窓の影の能力を知っていたのなら、もし遊真の黒トリガーに通信機能があったのなら。二宮に迫り来る危険を知らせる事ができたかもしれないのに。

 

 

 

 

☆★

 

 

 

 

悪あがきをさせてもらう、と言って不敵に笑むミラに、二宮は何もさせまいとアステロイドを叩き込む。

 

アステロイドは当然のようにワープゲートに吸い込まれ、同時に二宮の目の前に展開した出口側のワープゲートから吐き出される。

 

 

これまでと同じ要領で新たなトリガーを起動してはね返されたアステロイドを消去する二宮。

 

その背中に、軽い衝撃。

 

 

 

「なっ……!?」

 

 

二宮の背後に開いた、もう1つのワープゲート。そこから放たれたハイレインの卵の冠からつくり出されたトリが二宮のトリオン体を蝕んでいた。

 

 

入口と出口のワープゲートをそれぞれ2つ開くという芸当を、二宮の前で披露した事はなかったミラ。

 

 

「切札とはこういうものよ」

 

 

二宮は油断していたと言える。ミラのワープゲートによる攻撃のはね返しを無効化する手段を見出し、それを過信していた。ワープゲートを同時に開けるのは1つの入口出口のみだと思い込まされていた。

それはかつて、東の薫陶を受ける以前の、トリオン量にあぐらをかいていた頃の二宮。射手の王という異名は、単に射手No.1だからではなくまさしく二宮の王らしい普段の態度から来ている。それはつまり、傲慢。二宮匡貴という男の根源。王たる資質が、今回ばかりは勝利を遠ざけた。

 

 

例え射手の王であっても、黒トリガー2本の連携の前には敗れる他なかった。

 

 

 

 

だが、ただでやられるわけにはいかない。二宮は緊急脱出する前に、アステロイドを消すために起動したトリガーをミラに差し向けた。

 

 

 

「ハウンド!」

 

 

「窓の影………少しは学びなさい」

 

 

 

呆れたように声を出すミラは窓の影のワープゲートで、ハウンドを奈良坂の周囲に放った。

二宮の悪あがきは、味方を撃破するという最悪の展開として結実した。

 

 

 

そして、ボーダー隊員2人をハイレインとの連携で退けたミラはトリオンを漏れ出す腕を押さえながら、もう一度「窓の影」と唱える。

 

 

金の雛鳥を含む、多数の雛鳥………トリオンキューブの回収が完了した。

 

 

 

 

☆★

 

 

 

 

 

門が開く。いや、正しくはワープゲートというべきか。近界民が通常使うそれよりも遥かに利便性の高い黒トリガーによるワープゲート。

 

 

「ヴィザ翁、お迎えにあがりました」

 

 

 

「ええ、ありがとうございます」

 

 

 

そこから現れたのはトリオンキューブを回収して遠征艇に戻ったミラ。戦闘不能になったヴィザの回収にやってきたのだ。

 

 

しかし、そこには当然のようにヴィザを撃破したボーダー隊員と思しき人物がいた。

飄々としていて、どこか掴みづらい雰囲気の男は迅悠一。自称実力派エリートの迅はしかし、ヴィザの回収を止めようとはしない。

それを不思議に思った当のヴィザが「止めないのですか?」と尋ねる。

 

 

「ええ……そりゃあ。ここでアンタを捕らえたら、アフトクラトルは今度は本気でここを攻めるでしょ?」

 

 

 

「………なるほど、そこまで視ていましたか」

 

 

 

サイドエフェクトである未来視により、ヴィザを捕虜とした場合の未来をこそ迅は憂いていた。国宝の1つである星の杖と、その担い手が共に囚われたとなればアフトクラトルも領地争いという段ではなくなってしまう。

アフトクラトルが本気で攻めてくれば、玄界は終わりだ。だから迅はここで手を出す事はしなかった。

 

 

ぷつり、と黒い穴に消えていくヴィザとミラ。

その姿を見届けて、迅はいつものように呟くのだ。

 

 

「はい、予測確定」

 

 

 

☆★

 

 

 

エラー

 

 

と、そういった意味の文言がモニターに表示される。

「え?」と声をあげるミラ。何度操作してもそれは同じで。

 

 

 

多数の雛鳥を確保し、さらには金の雛鳥まで手に入れた。これで帰れば遠征は大成功。四大領主の1人である主人ハイレインが次代の実権の掌握が決定する。そのはずなのに。

 

 

あとは、遠征艇の待機命令を解除して帰還命令を出すのと同時にハイレインを回収すればそれで終わり。それなのに。

 

 

 

 

 

「どうして待機命令が解除できないの……!?」

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

アフトクラトルの遠征艇。そこに忍び込んだ一体のトリオン兵。黒い炊飯器のような外見の彼こそが、遠征艇のコントロール権限を支配していた。

 

 

 

「帰らせはしない」

 

 

 

無機質な声はしかし、相棒に託されたがゆえの重みを有している。

 

 

心を有したかの如きトリオン兵。レプリカ。それが彼の名だ。

 




レプリカーーー!

原作とは逆に、アフトクラトル遠征部隊を帰らせないために艇の支配権を得たレプリカ先生でした。
しかしレプリカ先生の活躍はまだ序の口よ……


まじ二宮さんサーセン!主人公勢を活躍させるためには原作勢には多少無能になってもらわなければいけないという悲劇。
遊真にしても、無理矢理相打ちという形にしました。書いてた途中で「あれ?これ遊真勝ちそうじゃね?」と思ったのは秘密。

あと『窓の影』のポテンシャルについては捏造です。ワープゲート多数展開とかできてたかな…?とか思いつつ二宮退場のために、ワープゲートの多数展開は可能!という事にしました。


主人公勢活躍云々と言いながら、今回の話でもクロウ、刀也は出てこないという……次話に期待!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。