ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに   作:クラウンドッグ

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B級ランク戦開始前。

隊長は?夜凪刀也だ。
隊員は?クロウ・アームブラストだ。
オペレーターは?沖田陽子だ。

あと、ランク戦に足りないものは?

そう、隊服だ。


忘れてはいないか?クロウがかつて《C》と呼ばれていた時の衣装を。
思い出してほしい。刀也は何の羞恥もなくリィンの黒コートを着込んでいた事を。

あえてひらがなを使おう。

かれらは、あたまがわるいーーーー!


B級ランク戦編
B級ランク戦、開幕


沖田陽子を引き抜いて1週間。夜凪隊の申請を行い、それは無事に受諾された。

B級21位部隊、夜凪隊結成だ。

 

そんな夜凪隊より注目を受けている部隊があった。先の記者会見でヒーローとなった三雲修率いる玉狛第二(三雲隊)だ。

 

しかし、夜凪隊とて知名度では負けていない。むしろ古参の隊員たちは夜凪隊をこそ注目していた。

 

 

そこでメディア対策室、ボーダー内の広報を担当する服部が2人にインタビューをした。

 

 

 

『今回、本気で勝ちに行くつもりです。……まあ、B級2位以下に負ける気はしないかな』

 

 

ーーーーボーダーマガジン、B級ランク戦開始前の抱負より一部抜粋。

 

 

 

刀也はここぞとばかりに挑発していた。

このボーダーマガジンは隊員たちに無料で支給されているものであり、そこには各ポジションでのナンバーが提示してあったり、隊員の戦闘能力をグラフ化していたり、今回ならランク戦に向けての意気込みが記載してあった。

それを娯楽として楽しむ者もいれば、読み込んで情報収集だと宣う者もいる。そして、こういった雑誌に求められるのは総じて刺激である。

 

刀也の挑発的な言動は波紋を呼び、基地を歩けば睨みつけられるのが常となっていた。

 

 

 

加えて、インタビューを受けたものの堅実な挨拶をした三雲は記者会見で見せた胆力も評価され、手強いのではと囁かれていた。

B級22位、最下位からの下克上が期待される、という広報部のコメントまで付いていた。

 

どうやら夜凪隊と玉狛第二を対比して見せるようにわざと編集しているようにも感じられる。

 

 

敵意の篭った視線を向けられる夜凪隊であったが、クロウはもちろん刀也も陽子も相当肝っ玉がでかいようで、堂々と道の真ん中を闊歩する姿はむしろ顰蹙を買い、ランク戦になったら袋叩きにしてやろうと冗談のような同盟を組む隊もあったという。

 

 

そんな噂もどこ吹く風とばかりに余裕綽々の表情だった夜凪隊はーーーー

 

 

 

 

☆★

 

 

 

「なあ、どうすんだこれ……ランクはもう明後日からだろ?」

 

 

「………困った。これは困った」

 

 

現在、隊室で頭を抱えていた。テーブルに広げられているのは白紙だ。いや、何も記入されてはいないがPCで打ったと思われる綺麗な明朝体の文字が左端で「隊服デザイン案」と形を成している。

 

 

 

すっかり忘れていた、とばかりに四時間前に「あ」と呟いた刀也はすぐさま隊服のデザインの考案に取り掛かった。

自分は今のままの隊服でもいいのだが、クロウがどうしても嫌だと言うから新たなデザインの隊服でランク戦に臨む事になったのだ。

 

 

クロウも服を選んで買う分にはセンスはあったが、自らデザインするとなると筆が鈍ってしまう。刀也も私服はそれなりのセンスだが「ボーダーの隊服って基本的にコスプレだろ?」精神の持ち主のため暴走して変な方向に全力疾走しかねない危うさがあった。

陽子に至っては「アタシはオペレーターだから関係ないね。…久しぶりに他の隊のオペレーター連中と話をしてくるよ」と隊室から逃げ出す始末。

 

 

ここに、夜凪隊史上最大の危機が訪れたのだ。

 

 

「ランク戦自体は明後日から…隊服を間に合わせるなら最低でも明日にはデザイン案を提出したいところだな………」

 

 

初戦から揃った隊服だと格好いいだろ?という意見はクロウと刀也で合致しており、どうしても明日中にはデザイン案を完成させなければいけなかった。

 

 

壁掛時計を見ると時刻は22時。「これ、徹夜だよな…刀也?」と聞くクロウに刀也はにこやかに「せやな!」と応えたという。

 

 

 

それから数時間、あーでもないこーでもないと2人は意見を出しあって、やがて日は登る。

 

 

「…もう朝か」

 

 

時計を見てクロウが伸びをする。すでにコップのコーヒーは飲み干してから数時間。カフェインも切れる頃合いだ。

 

 

「………完成したな」

 

 

隊服デザイン案を書かれた紙を持ち上げて感慨深く呟く。

 

 

「よし、じゃあ提出してくるわ!」

 

 

目の下にクマをつくりながらも元気よく隊室を出て行った刀也を見送り、クロウはソファにダイブして目を瞑る。

寝る前の一瞬、ふと冷静になり……

 

「あのデザインで良かったんだよな………?」

 

 

呟くも睡魔には抗えず、眠りに落ちていったのだった。

 

 

☆★

 

 

B級ランク戦開始当日。

徹夜で考案した隊服に袖を通し、いざランク戦へ!

 

の前に鏡で自分たちの姿を確認する。うん、絶対的に微妙…略して絶妙である。

 

 

「…なあ刀也、これ……」

 

 

「言うな!なにも言うな…!おれたちは頑張ったんだよ…それだけは嘘じゃない…」

 

 

 

またどこぞの創作物から丸パクリしたようなセリフが刀也から飛び出す。しかしそんなセリフにクロウも全面同意する。こればっかりは追及してはいけないと本能が叫んでいた。

 

 

鏡に映る20代の男性たちは、絶妙に厨二風の恰好をしていた。コスプレ染みたボーダーの隊服を嫌い、スーツを隊服として設定しそれが逆にさらにコスプレっぽくなってしまった二宮隊よりも。

黒のロングコートを着こなす太刀川隊は「うおー!カッケ―!」と絶賛するだろう。王子隊の若干イタい隊服デザイン(それでも妥協したという話)を考案したという王子隊オペレーターである橘高早矢も「イイネ」と賛同するだろう。

しかし、それらの少数派を除く大多数からは苦笑を浮かべられること間違いなしだ。

 

 

しかしクロウは≪C≫やジークフリードの衣装に身を包んだ事のある剛の者。そして刀也もリィンの遺志を遂げようとする鋼の精神の持ち主だ。2人は円陣を組むと「ゴーイングマイウェイ…ファイヤー!」と奇声をあげてランク戦に向かった。

 

 

ちなみに陽子は「へぇ、いいんじゃないかい」と夜凪隊の隊服デザインを評価したという。

 

 

 

 

☆★

 

 

 

「B級ランク戦開幕!1日目、昼の部をお届けします。実況は宇佐美。解説はこちらの方々です」

 

 

「二宮だ」

 

 

「三雲です。よろしくお願いします」

 

 

実況には玉狛第1、玉狛第2のオペレーターである宇佐美栞、解説にはB級1位部隊の隊長である二宮、記者会見で一躍有名人になった三雲が選ばれていた。B級ランク戦の初戦だけはあり、豪華な面子だと観客席は盛り上がる。

 

 

 

「初戦は17位間宮隊、19位茶野隊、20位常盤隊、21位夜凪隊の4つ巴ですが、ずばり注目のチームはどの部隊でしょう?」

 

 

 

「夜凪隊だな。夜凪さんは元々A級隊員だった、B級下位部隊なら一人で蹴散らすだけの戦力がある。それにマップ選択権もあるから優位に進める事ができるだろう」

 

 

 

「ぼくも夜凪隊です。隊長の夜凪さんはもちろん、隊員のクロウさんもすごい強さで…、今季のシーズンのランク戦初参加というぼくの隊との共通点もあるので」

 

 

 

「なるほど、つまりライバルとして注目してると」

 

 

「そんな、ライバルなんて…」

 

 

恐れ多い…と言おうとして思い留まる三雲。これは宇佐美からの試験に等しい。夜凪隊を超える意志はあるのかと。ランク戦を続けていけばいつか夜凪隊と対戦する日もあるだろう。畏怖するのではなく、乗り越えるべき壁として認識できるのか、という問いかけ。力量の差がどうとかは関係ない。そういった力を振るうのはあくまで己の魂と意志・・・そう教えてくれたのは他でもない夜凪刀也なのだから。

だから、ここでライバル宣言してもいいはずだ。あなたを、夜凪隊を超えると。

 

 

 

「いえ、そうです…夜凪隊はライバルとして注目してます」

 

 

三雲は頬に冷や汗を垂らしながらも、解説の場で堂々と宣言した。それは紛れもない宣戦布告であり、挑戦状を叩き付けられた2人は後に「受けて立つ」と笑みを浮かべたという。

 

 

 

 

「マップが決まったようだな、市街地Aだ」

 

 

玉狛第2の決意表明を尻目に二宮が言外に注意する。モニターに表示されたのはスタンダードなマップである市街地A。ステージ選択権があるのは試合で1番順位が低いチーム。今回の場合、該当するのは夜凪隊だ。

 

 

 

「市街地A…最もスタンダードなステージですね。これはいったいどういう意図なんでしょう?」

 

 

 

「スタンダードなステージはそれだけ波乱が起きにくい、実力差が明確にあらわれる。……要はそういう事だ」

 

 

 

「夜凪隊は他の部隊との実力差を見せつけるためにこのマップを選んだとの推察。そういえばランク戦の意気込みに夜凪隊長は『B級2位以下に負ける気はしない』と言ってましたね。『負ける気はない』ではなく『負ける気はしない』というのがまた挑発染みたコメントでしたね」

 

 

マップ選択の意図はおよ二宮と宇佐美が語った通り、であり「かかてこいよ、蹴散らしてやるから」という夜凪隊の声が聞こえるようである。

 

 

 

「はは…大胆不敵というか…」

 

 

三雲は夜凪との付き合いもあり、ある程度はその人となりを把握している。だからボーダーマガジンの夜凪のコメントが明確に挑発しているものだとわかる。しかし夜凪とロクに喋ったことがない他の隊員たちならどうか。たとえ挑発とわかていても乗る。それはもうノリノリでだ。それもこれも夜凪隊の面々がこれ見よがしに基地を肩で風を切って歩いている様を見せつけたからだ。

 

 

ここで宇佐美がB級ランク戦についての説明を始める。

B級は上位、中位、下位グループに分かれて、グループ内で3つ巴又は4つ巴で戦い、ポイントを奪い合う。1人撃破につき1点、他の隊が全滅した上で自分の隊が生き残っていたら生存点として2点が加算される。

前シーズンの順位を引き継ぎ始まり、順位に応じた初期ボーナスポイントが付く事になっている。

そしてランク戦終了時に1位と2位だった部隊にはA級への挑戦権が与えられる事となっている。

 

ほどなくして各隊員がステージのランダムな位置に転送されランク戦が開始された。

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

「作戦はガンガンいこうぜ!だ」

 

 

 

「テキトーだな」

 

 

 

ステージ選択をして作戦タイムに移行した夜凪隊だったが隊長が立てた作戦はただガン攻めしようぜ、的なものだった。

 

 

 

「まあ、いいんじゃないかい。B級下位に苦戦するようなアンタらじゃないだろ?」

 

 

しかし、そんな夜凪の作戦に賛成するのは陽子。どうやら陽子は自分所属する隊の力を信じているようで、そう言われてはクロウもあきらめるしかない。

 

 

「ハッ、たりめーだ」

 

 

そんな返事に刀也と陽子は満足げに頷いた。

 

 

 

「よし、じゃあもうちょい詰めるぞ」

 

 

作戦を詰めるという刀也。ガンガンいこうぜをこれ以上どう詰めるというのか。

 

 

 

「とりあえずクロウ、レイガストとスラスター以外禁止な」

 

 

 

「はぁ!?」

 

 

 

「あ、あとバッグワームとシールドも使っていいぞ」などど言う刀也はクロウの苦情をまったく受け付けないモードに変貌した。

「なんでだよ」と聞くクロウだったが、返ってきた答えはおよそ予想通りだった。

 

 

「トリガーセットが割れてないってのはかなりのアドバンテージだからな。B級下位はそれを捨ててまで勝ちに行く場面じゃない」

 

 

「それは…負けそうでも、か?」

 

 

「仮に負けそうでも、だ。むしろ俺かお前のどっちかは落とされて次の油断を誘うのでもいいな」

 

 

仮に負けそうでも、指定されたトリガーだけしか使ってはいけない、と言う刀也にクロウはかつてない本気度を感じ取った。

“何事にも全力で取り組むぜ”なスタンスの刀也が「負けても」と言うのは、その負けが次の勝利に繋がっているからだ。刀也はランク戦の一戦一戦に全力に取り組むのではなく、B級ランク戦そのもの…否、遠征に選抜される事を第1目標として、それを達成するためだけに全力を尽くしているのだと理解した。

 

 

「わーったよ。隊長の指示に従うさ。………でもな、別に勝ってもいいんだろ?」

 

 

ニヤ、と笑うクロウに刀也も「ハッ!」と笑い、

 

 

「ああ“別に勝っても構わんのだろう?”だ!」

 

 

いつか見たアニメーションの英雄のセリフを口にした。

 

 

 

 

「そろそろ始まるよ!」

 

 

そんな風に男2人が和んでいると、キッとした表情の陽子がそう告げた。

 

 

「気合い入れて行っといで!」

 

 

「ああ、夜凪隊の成り上がり伝説の開幕だ!な、クロウ!」

 

 

 

「おう、見せつけてやるとしようぜ。おれたちの…誰にも邪魔はできねぇ、おれとおまえの英雄伝説をな!」

 

 

 

 

そして彼らは転送され、B級ランク戦が幕を開けた。

 

 

 

 

 

☆★

 

 

市街地Aのステージに転送された各隊員たちはそれぞれレーダーを見て仲間がどこにいるか、どこに敵がいるかを確認する。このレーダーは緊急脱出と同じくトリガーに標準装備されている機能だ。

 

 

「クロウ、どこにいる?」

 

 

「中心よりちょい北東だ。刀也、おまえは?」

 

 

「南西の端にいる。…手分けして各隊を撃破しよう」

 

 

「了解だ。やられんなよ、隊長?」

 

 

 

2人は無線(こちらもトリガー標準装備)で会話しながら、手分けして敵部隊を殲滅することに決めた。

B級下位部隊は基本的にランク戦開始後、隊の合流を優先するのが常だ。これは上位チームにも当てはまることであり、隊の連携を重視した戦術でもあるのだが、夜凪隊はその定石を無視して対戦相手を探すことにした。それは自分は負けないという自信と、全対戦相手のポイントを根こそぎかっさらうための速攻の意味があった。

 

 

 

「あれは…間宮隊か。刀也、強襲するぜ」

 

 

 

「了解。こちらも茶野隊を発見した。交戦開始する」

 

 

 

クロウと刀也はちょうど合流を果たした間宮隊、茶野隊をそれぞれ発見。交戦に入った。

 

 

クロウはバッグワームを使っておらず、その接近は間宮隊にとって把握していた会敵だった。そして実際にクロウと間宮隊が相対したのは、間宮隊が得意とする中距離であり、間宮隊の三人は一斉にハウンドを起動する。メイン、サブの両方から放たれる全隊員のフルアタックハウンドは『追尾弾嵐(ハウンドストーム)』と呼ばれ強力な技として知られている。

B級下位部隊としては破格の攻撃力を誇る間宮隊のハウンドストームを前にして、しかしクロウはひるむ様子をまったく見せない。

それどころかむしろ好戦的な笑みさえ浮かべて、

 

 

「甘えよ」

 

 

レイガストを構えてスラスターを起動、加速されたブレードに合わせて跳躍し、ハウンドストームを潜り抜けて間宮隊に肉薄。レイガスト一閃。クロウは一太刀のもとに間宮隊の面々を緊急脱出させた。

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

「ここで間宮隊が緊急脱出!ハウンドストームをものともせず…クロウ隊員、これは強い!」

 

 

 

観客席ではそんなクロウの活躍に沸いていた。ブレードトリガーとしては人気のないレイガストだが、その特徴を活かしたクロウの戦闘技術に魅了されたと言ってもいい。

しかしそんなクロウの活躍とは裏腹に、隊長である刀也はクロウほどの活躍は見せていなかった。

 

クロウと違い、バッグワームを起動していた刀也は茶野隊への奇襲が成功した。それで隊員の藤沢を緊急脱出させたのはいいものの、その後は茶野の二丁拳銃による弾幕の前に防戦一方と化していた。

1対1で交戦している茶野と刀也をレーダーで発見し好機と見定めた常盤隊がすぐそこまで迫って来ていた。それを実況である宇佐美が説明し、「ランク戦前の挑発のせいで刀也が挟撃を受けるのではないか」と推測する。

 

 

その様子を見た解説の二宮がゆっくりとまばたきをして、

 

 

「これは悪辣な罠だ。茶野隊長に苦戦していると見せかける事で常盤隊を誘き寄せるためのな。常盤隊がクロウ隊員のもとに向かわなかったのは間宮隊を瞬時に撃破したクロウ隊員の火力を恐れてだろう。だが夜凪隊長はすぐに倒せるはずの茶野にあえて苦戦して見せることで自分のほうがクロウ隊員より弱いのだと印象付けた」

 

 

「心理的な誘導という事ですね。しかし挟まれてしまっては危険なのは変わらないのでは?」

 

 

すべてを説明するわけではなく、話を解説に振ることで実況席を、観客を考えさせる宇佐美。そんな気遣いを感じつつ三雲は所見を述べる。

 

 

「夜凪隊長はまだ弧月、シールド、バッグワームしか使ってません。残るトリガーに何らかの切り札があるんじゃないかと思います」

 

 

「なるほど、確かにトリガーセットが判明してないのはかなりのアドバンテージです。そろそろ常盤隊が茶野隊長、夜凪隊長の交戦場所に到着するようです」

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

はめられた、と気付かないほど常盤隊は間抜けではなかった。

茶野と接戦を繰り広げる刀也を確実にしとめるために部隊の合流後、刀也を倒しに向かう。茶野に苦戦するくらいだ、全隊員でかかれば負けることなどあるはずがない。大口を叩いたことを後悔させてやる。

 

 

常盤隊がその場に到着する。それを視認すると同時に刀也は素早く踏み込み茶野を両断すると、今度は常盤隊に視線を向ける。茶野に苦戦していたのは自分たちを誘き寄せるための罠だったのだと常盤隊が気付いたのはその時だ。

あれは獲物を追う狩人の瞳だ。視線に射抜かれた常盤隊の面々はさしずめ蛇に睨まれた蛙の如く硬直してしまう。

 

一瞬の忘我の後に撤退をしようとするも時すでに遅し。

 

 

 

「旋空弧月」

 

 

距離を詰めた刀也は旋空を発動。散り散りに逃げようとしていた常盤隊の3人を一刀のもとに切り捨てた。

 

 

 

そこに、狙い澄ましたような狙撃弾が放たれる。

常盤隊は4人部隊であり、そこにはスナイパーも含まれていた。常盤隊の最後の1人が、仲間を緊急脱出させた男へ引き金を引いたのだ。

 

迫る弾丸は必中不可避のものであるはずだった。しかし刀也には超直感のサイドエフェクトがある。常盤隊の狙撃手がこの場にいないことを知っていて、なおかつ超直感があれば狙撃であろうと避けるに易い。

 

 

頭をひょいと動かして狙撃を回避した刀也は「見ぃつけた」と不気味に笑むと、常盤隊の狙撃手の位置をクロウに伝え、その後2分と経たず夜凪隊の勝利が決定した。

 

 

☆★

 

 

「ここで決着!夜凪隊の完勝です!生存点含め11ポイント獲得、暫定順位6位!なんと中位をすっとばして一気に上位部隊に躍り出た!夜の部次第ではこのまま上位残留もありえます。これは超新星現る!といったところですかね?」

 

 

「そうだな、夜凪隊長はもちろんのこと、クロウ隊員もA級並みの実力だ。実際B級上位くらいの力はあるだろう。しかし、今回のは夜凪隊の作戦が上手くハマり過ぎた結果だ。いつも同じ実力が発揮できるとは限らない。…今回の勝利に驕らず、なお精進する事を期待する」

 

 

「ただ単に戦うだけでなく、心理的な誘導もそうですが盤外戦術も駆使する夜凪隊のやり方は、相手を作戦にハメるためのものだったという印象を受けます。そこまで考えてランク戦に臨む部隊の覚悟に身が引き締まる思いです」

 

 

二宮、三雲が続けて答え、宇佐美が満足げに頷くと「また次回に期待が高まります!」と締めてここにB級ランク戦、1日目昼の部が終了した。

 

 

 

☆★

 

 

 

「夜凪隊大勝利〜!」

 

 

「イエ〜イ」とハイタッチするクロウと刀也。そこに陽子も加わり、夜凪隊のスタートはバッチリだったと改めて理解する。

 

 

「いいスタートダッシュがきれたな、刀也」

 

 

「おう、さすがはクロウ。略してさすクロだ」

 

 

「2人とも、良かったよ!」

 

 

ひとしきり騒いだところで陽子がぱん、と拍手をして意識を締める。

 

 

「とりあえず上位に食い込んだわけだが、おそらく夜の部の結果で中位に落ちるだろう。B級中位部隊ともなれば今回みたいに圧勝はできないよ。ヨナさん…次もトリガーの解禁はなし、なんて言わないよね?」

 

 

「それはねーよ。次回からは確実に勝ちに行こう。俺も孤月と旋空だけって縛りも解くし、クロウ…おまえも他のトリガーを解禁して良し!」

 

 

「オーケーだ!このクロウ・アームブラストの真の実力ってやつを見せつけてやるとするぜ」

 

 

締まったはずの空気が再び緩むものの、クロウも刀也も慢心していない事を看破した陽子は微笑むのみ。

 

 

 

こうしてB級ランク戦は開幕した。波乱の幕開け、冒険の夜明け。星の彼方に向かう旅路、その一歩を、確実に進めた夜凪隊なのであった。

 

 




夜凪隊の隊服はFGOの魔王信長の第二再臨(織田吉法師)の金属の装飾を外した感じで、帽子がバンダナみたいになってます。

クロウのバンダナが戻ったよ、やったね!

なお刀也は左右反転の衣装となっております。利き手の方を自由にしたいよねって事のようです。


なお最初のイメージはプリヤの雪下士郎(アーチャーインストール時)でしたが、あれは厨二過ぎた……!さすがに徹夜してあたまがわるいクロウと刀也でも「これはないな」と結論する事でしょう。
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