ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに   作:クラウンドッグ

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一方その頃、他の場所では……という回です。


トップスリー

「奇襲に注意しろよ」と言って三雲らの前から刀也は走り去った。見える距離にはいるが、即時救援は不可能。雨取の狙撃がありはするものの対外秘のミッションのためアイビスは使用禁止されている。ならイーグレットやライトニングを使えば良いのではないか、という話になるが「狙撃銃一丁の援護なんてないのと一緒だ。ランク戦じゃあるまいし」と言うのが刀也の言であった。加えて刀也も動きながら戦うタイプのため誤射する可能性も考慮して援護射撃はなし、という事でまとまった。

 

こちらから援護できないという事は逆もまた然りであり、だからこそ刀也は奇襲に注意するよう言い残したのだった。

 

100という相手にたった1人で大丈夫なのだろうか?

三雲が心配になってそわそわしていた所に「大丈夫だ」と村上が声をかけた。

 

 

「ヨナさんの強さは知ってるだろ?あの人は孤月一本で勝負すれば太刀川さんにも負けない。それに今は色んな戦い方をしてるから、こうなったらボーダートップクラスの戦力だ」

 

 

「詳しいんですね?」

 

 

「まあ、昔からいる人だしたまに目立つ事をするしね」

 

 

「そういえば、前にA級のランク戦に出てたとか聞いたんですけど」

 

 

三雲が言ったのは先日のROUND4の解説に呼ばれていた加古の言葉からの予想である。それに村上は「ああ」と当時の事を思い出す。

 

 

村上がボーダーに入隊した頃のA級ランク戦に刀也は腕試しと称して1人で臨んでいた。16ラウンドある内のランク戦で勝利したのはわずかに2回。夜凪刀也は当時も強かったが、対応に易い相手となっていた。

 

八葉一刀流は八つの型があり対応力に優れた剣術であるが、トリガーとして再現した戦技は別だ。一度起動したトリガーは途中でアクションを止める事ができないため八葉一刀流のモーションを見切った連中からすればこれ以上ないカウンターのチャンスになる。刀也は現ボーダー設立わずかの時点で八葉一刀流の剣技を模したトリガーを使い始め、(たまにやる遊び以外では)ずっとそれを主力としてきたため、太刀川くらいの四年選手となると見飽きるくらいに見切った技なのだ。

 

そういった事もあり刀也のA級ランク戦での勝率は低かった。と、そういう説明を三雲にする。

 

 

「……もしかして夜凪さんは八葉一刀流を使わない方が強いんじゃないですか?」

 

 

説明を聞いた三雲がふと疑問に思った事を口にすると、村上は「あー…それは」と言いにくそうに刀也が戦っている方向を向いた。ちょうど戦闘が始まった所のようだ。

 

 

「そうだ。ヨナさんはあの剣術に拘らないほうが強い。本人は認めたがらないけど。でも今はB級ランク戦でオリジナルトリガーの使用は禁止されてるから本来の…というのもおかしい表現だけど、容赦ないヨナさんが見れる」

 

 

村上の言う“容赦ないヨナさん”というのは八葉一刀流に拘泥せず、己のベストと思えるアクションを起こせる。それには相手の思考を誘導する奸計も込みだ。

 

 

「…すごい」

 

 

村上の視線につられて三雲も刀也の戦闘情景に目を向ける。シンプルな感想に村上も同意し、

 

 

「さすがに黒トリガーは別格だな。でも、そんなすごいヨナさんに合わせられるのは太刀川さんみたいなトップランカーたちだけだと思ってたけど……まさかルーキーが、むしろヨナさんを引っ張っていくほどの実力を持っていた事も驚きだ」

 

 

村上のセリフに三雲は1人の男を想起する。

 

 

「クロウさんですね。……今回は夜凪さんとは一緒にいないみたいですけど、どこに配置されてるんですか?」

 

 

「それはーーーー」

 

 

☆★

 

 

「さあて、来賓のご到着だ。しっかりもてなしてやるとするか!」

 

 

壁を、あるいは床を潜り抜けるトリガーを駆使してその場に出現した2人の男を見て言ったのはクロウだった。

 

 

「そうだな、一丁やるか」と孤月を抜いたのは太刀川。

「一応おれたちが最終防衛ラインだからね?気を抜かないでよ」とスコーピオンを握ったのは迅。

攻撃手ランキングNo.1にして総合ランキングNo.1である太刀川。その太刀川のライバルである迅。太刀川や迅を相手取り勝るとも劣らぬ実力を示したクロウ。ボーダーのトップスリーとも言える面子が並び立っている。

 

 

ガロプラの目的は“遠征艇の破壊”だ。アフトクラトルの甘言…“金の雛鳥を確保できればガロプラを同盟国に格上げする”という展開は理想的だ。夢のようだと言い換えてもいい。しかし所詮は夢であり現実的ではない。宗主国であるアフトクラトルの要請であるため人員を割く事になってしまったのは確かな痛手だ。

手を伸ばしても届かない夢とは別に、ガロプラは現実的な目的を設定していた。それが“遠征艇の破壊”。アフトクラトルの目的のひとつであろう玄界の目をガラプラに向けさせるという目論見を躱しつつ、玄界の追撃を避けるための手段であった。

 

その目的を阻むため、遠征艇の防衛に駆り出されたのがクロウ、太刀川、迅の3人だった。

 

 

「まずはーーー牽制するぜ」

 

 

二丁拳銃を構えたクロウはそれぞれトリガーを起動したガロプラの遠征部隊の男たち、ガトリンとラタリコフの間を分けるように連射する。

 

 

飛び退くように分かれた内の小さい方ーーーラタリコフに迅と太刀川が肉薄する。グラスホッパーを踏んだ太刀川を待ち構えていたのは『踊り手(デスピニス)』と呼ばれたトリガー、浮遊する円形の刃だ。4つ5つは捌いて見せるものの、いかんせん数が多くラタリコフを仕留める前に距離を取られてしまった。

 

しかし、そこに迅の追撃。踊り手の円刃をひらひらと避け、あるいは受け流しラタリコフに接近する。迫るドグは太刀川が旋空孤月で片付け、胸に刃を突き立てる刹那ーーーー

 

 

 

「ーーーー迅!」

 

 

クロウに呼び止められ、振り返る間もなくその場を飛び退きーーー銃弾がトリオン体を掠める。撃ってきたのはガトリンだった。その右腕がガトリング砲に変化している。

 

 

「あらら……」

 

 

ガトリンとクロウを交互に視る。無数の未来が次々と映っては消えていく。クロウも戦法は豊富だがガトリンも相当であり、そのため未来視の精度が低くなっているのだ。

 

ガトリンの右腕がガトリング砲に変わっているのを見て驚いたのはラタリコフも同じだった。ガトリンは遠征部隊の隊長であり、その実力は折り紙付きだ。そんな男の腕を、自分が見ていないたったの一瞬で切り落としたクロウの実力を測りかねているのだ。

 

 

たったの一合で自分の右腕を切り落とすだけでなく左腕にまで刃を食い込ませたクロウにガトリンも脅威度を上げていた。

二丁拳銃を連射したクロウに接近したガトリンは『処刑人(バシリッサ)』の大刃4つをクロウに向けて振り下ろしたが、クロウは二丁拳銃をレイガストに持ち替えてそれを受け止めるだけでなくスラスターを起動しダブルセイバーを回転、大刃を弾き返すのみならずガトリンの右腕を切断した。左腕までいければ上出来だったが、弾かれた勢いに乗って跳んだガトリンには届かなかった。

ガトリンは切られた右腕に新たなトリガーを取り付けてガトリング砲に変化させ、ラタリコフを襲う迅に銃撃を浴びせたのだった。

 

「こいつは良く切れそうだ」

 

 

ガトリンの処刑人を見て太刀川は悠長に感想を漏らした。処刑人はガトリンの背中から伸びる4本のアームに取り付けられた大刃だ。もしかしたらガトリンの右腕となったガトリング砲は大刃と付け替えが可能な処刑人の部品かもしれない。

と、そんな事を言っている間にガトリンは傷ついた左腕をラタリコフに切らせて、そこに新たなトリガーを取り付けた。いかにも重砲という呼び方が相応しい砲口にエネルギーがチャージされているのを見てクロウは咄嗟にレイガストをシールドモードに切り替えた。

ガトリンの左腕に新たに取り付けられた重砲からの砲撃は遠征艇を隠した格納庫に向けられており、クロウはガトリンと格納庫の中間に位置していた。放たれた砲撃をクロウはレイガストで受け止め、さらにスラスターで持ち上げるようにして砲撃の軌道を天井方向に逸らした。

まともに食らえば緊急脱出間違いなし、頑丈な格納庫でも1発で砕かれるだろう威力の砲撃を防いだクロウは死に体になっており、そこを頭に刃を取り付けたドグが狙うが、サイドエフェクトで展開を読んでいた迅のエスクードによりドグの攻撃は阻まれ、クロウは体勢を立て直す。

 

 

「あっぶねー。いきなり終わる所だった」

 

 

「ナイスカバー、クロウさん」

 

 

「いや、助かったぜ迅」

 

 

クロウらと同じくガトリンたちも体勢を立て直しており、二、三言交わしている。

 

 

「連発してこない所を見るにクールタイムがあるみてぇだな。迅、視えるか?」

 

 

「うん、いくらかチャージに時間がかかるみたいだね」

 

 

「できれば次を撃つ前に倒したいもんだが…どうする?」

 

 

「太刀川と迅で小さい方をやってくれ。その間おれがでかい方を食い止めておく」

 

と、クロウが提案した作戦はこうだ。

クロウがガトリンを足止めしている間に迅と太刀川でラタリコフを倒し、その後3人でガトリンを撃破する。

ただし迅はあまり前がかりにならず、未来視でガトリンの遠距離攻撃やドグの援護に対処するように。

 

 

迅と太刀川はその作戦に了解しラタリコフに向かって攻撃を仕掛ける。当然ガトリンが妨害しようとするがクロウがカバーに入り、戦闘再開と相成った。

 

 

 

 

☆★

 

 

夜凪刀也の背後に控える7つの武具が光を放つ様を見て三雲は「綺麗だ」と無意識に呟いていた。遊真も雨取も村上も似たような反応だ。

 

 

「気をつけろ!ワープ女が来るかもだぞ」

 

 

そこに刀也から無線で警告を出され、ハッと我に帰る三雲たち。次の瞬間、空間に穴が穿たれてそこから伸びた手が雨取を捕らえんとするが、遊真と村上の鋭い剣撃により撃退された。

 

 

「ヨナさんの指示がなかったら少しやばかったな」

 

 

「だね。だけどこの奇襲が失敗したから敵はきっと次の手を打ってくる」

 

 

と、村上と遊真が会話した直後、門が再度開かれてバムスターやモールモッドなどのトリオン兵が姿を現した。その進行方向は市街地の方面である。

 

敵の目的は明らかに戦力の分散だ。刀也と雨取たちを確実に連携不可能な距離まで引き離すこと。もしここで市街地に向かうトリオン兵を放置して雨取を捕らえる事ができなくても代わりに市民を捕獲すれば良いという考えなのだろう。

そこには立て続けの侵攻による市民の恐慌、ボーダーの権威失墜という狙いもあるかもしれない。

 

 

「どうする?」

 

 

聞いた村上に、玉狛第2の視線は隊長である三雲に集められた。三雲はここで追うメリットやリスクを天秤にかけ、すぐに答えを出した。

 

 

「追いましょう!」

 

 

「ヨナさん、おれたちは市街地に向かうトリオン兵を追うよ」と刀也にすばやく伝達した遊真に、反応もまた早かった。

 

 

「了解!市街地に入らせんよう頼む。あと人型のやつには気をつけろ、近界民が遠隔操作してるやつが紛れ込んでるかもしれん」

 

 

遊真も同じように「了解」と返す。

 

 

「いざとなれば……空閑、わかってるな?」

 

 

通信越しの刀也の言葉は、いつもに増して真剣味を帯びたもの。刀也の言う“いざ”という時とは、真に市街地が危機に晒された場合と雨取が捕獲されそうな場合であろう。

その忠告に遊真はいつものように答えた。

 

 

「うん。躊躇わないよ、おれは。ヨナさんこそやられないでね」

 

 

「ハッ!言いやがる!言うからにはそっちもちゃんと仕事しろよ!」

 

 

遊真の返答に刀也は大仰に笑い、三雲たちにエールを送った。通信は終わり、三雲らと刀也は本当の意味で二手に分かれる事になった。

 

 

 

☆★

 

 

ARCUS(幾多の縁絆紡ぎし証)、駆動」

 

『Ⅶ"sギア封印機構、解除鍵選定開始。

 

ガイウス・ウォーゼルーーーー合致。

 

ミリアム・オライオンーーーー合致。

 

マキアス・レーグニッツーーー合致。

 

サラ・バレスタインーーーーー合致。

 

クルト・ヴァンダールーーーー合致。

 

エマ・ミルスティンーーーーー合致。

 

オーレリア・ルグィンーーーー破却。

 

 

第一拘束解除、『焔』解禁。

 

第二拘束解除、『蒼焔』解禁。

 

第三拘束解除、『暁』解禁。

 

第四拘束解除、『落葉』解禁。

 

第五拘束解除、『黒葉』解禁。

 

第六拘束解除、『無仭』解禁。

 

第七拘束封印継続』

 

 

 




ガトリンやそのトリガー『処刑人』の設定は妄想です!ガトリング砲とか…あったらいいな。
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