ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに   作:クラウンドッグ

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ちょっと更新遅れちゃったかな?すまぬ!
GWはちょっとゲームが忙しかったんだ。


リィン・シュバルツァーの到達点

『Ⅶ"sギア』はリィン・シュバルツァーが黒トリガーとなったもの。そのすべてを注ぎ込んでカタチとなったもの。

 

その“すべて”には当然、リィン・シュバルツァーを蝕んでいた“黒の呪い”も含まれる。

 

“黒の呪い”は能力の制限という形でⅦ"sギアを汚染している。

 

その汚染を除去するために必要なのがARCUS(幾多の縁絆紡ぎし証)だ。

 

リィン・シュバルツァーと共に戦った仲間たちの武具を召喚し使役する儀式。

 

儀式を成功させれば能力の制限は少しずつ解放される。

 

 

 

 

『Ⅶ"sギア封印機構、解除鍵選定開始』

 

 

それは人の声ではなく、機械音声のようなもの。言ってしまえばアナウンスだ。

 

 

それが刀也の脳内だけで響いているのか、それとも他の者にも聞こえているのかさえも定かではない。

 

ふと直感が働き、三雲らに警告を出す。

 

 

「気をつけろ!ワープ女が来るかもだぞ」

 

 

通信を隙と見たかランバネインとレギーが連携して仕掛ける。雷の羽による重砲の連射と剣竜の重撃。

 

 

そのすべてを。

 

 

「踊れ」

 

 

叩き落とす。

 

刀也の背後に控えていた7つの武具が光を伴って空中を自在に飛び回る。

 

十字槍が、白き傀儡が、散弾銃が、導力銃と剣が、双剣が、魔導杖が、宝剣が、乱舞する。

 

 

 

「…とてつもないな」

 

 

「……ッ!」

 

 

それにランバネインは感想が口から溢れ、レギーは言葉を失っている。2人の連携が撃ち落とされる間、アイドラを操るヴィザは観察に徹していた。

 

三雲らの方でも状況の変化があったようで、新たに開いた門から出現したトリオン兵を撃破しに行く事にしたようだ。

 

そんな折、刀也は控える武具を見て微笑む。これこそ刀也以外の誰にも見えないが、刀也の瞳はしっかりと幻影を写していた。その武具の持ち主たちの横顔を。

 

 

『ガイウス・ウォーゼルーーーー合致』

 

 

 

槍が、納刀されていた太刀に吸い込まれるようにして消えた。同時にガイウスの幻影も消え失せる。

 

 

 

「む、武器が消えた…?」

 

 

『ミリアム・オライオンーーー合致』

 

 

アガートラムとミリアムの幻影が太刀に吸い込まれて消える。

 

 

『マキアス・レーグニッツーー合致』

 

 

散弾銃とマキアスの幻影も。

 

 

「よくわからないがーーーチャンスだろこれは!」

 

 

刀也の操る武具が消えたことを好機と捉えたレギーが再度突貫する。ランバネインも援護しようと雷の羽の砲身を構えたが、アイドラ=ヴィザに制止される。

 

 

飛び上がり、重力も加算した叩きつけをやろうとしたレギーを襲うのは、緋色の飛ぶ斬撃。

 

 

攻撃に向けていた意識を防御に切り替えてガードする、が勢いに負けて元いた位置にまで押し戻されている。

 

 

『サラ・バレスタインーーーー合致』

 

 

緋空斬を放ち、抜刀した体勢の刀也。その手に握る太刀にまたもや武具が吸収され。

 

 

「残念だがな、もう遅い」

 

 

そして、死神にも似た宣告をした。

 

 

『クルト・ヴァンダールーーー合致。

 

エマ・ミルスティンーーーーー合致。

 

オーレリア・ルグィンーーーー破却』

 

 

 

立て続けに武具が飲まれるように消えて、6つの輝きが太刀に宿る。

 

 

『第一拘束解除、『焔』解禁。

 

第二拘束解除、『蒼焔』解禁。

 

第三拘束解除、『暁』解禁。

 

第四拘束解除、『落葉』解禁。

 

第五拘束解除、『黒葉』解禁。

 

第六拘束解除、『無仭』解禁。

 

第七拘束封印継続』

 

 

「今回も第六拘束までか……条件はⅦ組とそれ以外か……?まあいい」

 

 

太刀の鋒をレギーらに向けて、「いざ参るぞ」と一言。

 

 

「駆動完了。『無仭』発動」

 

 

☆★

 

 

「薄気味悪いくらい上手くいってるな」

 

 

スコープを覗き込みながら言ったのは東春秋。《最初の狙撃手》と渾名されるボーダー屈指の狙撃手にして後進育成の名手。

 

その東が言い知れぬ不気味さを感じ取っていた。

 

 

「そうですか?」と返事をしたのは古寺章平。三輪隊の狙撃手の1人であり地形戦には造詣が深い事でボーダー内では名前が通っている。

 

 

「敵戦力の3割が夜凪さんの方に行ってて、指揮官は風間隊が押さえてる……相対的にこっちが楽になるのは当然じゃありませんか?」

 

 

「それはそうだが…」

 

 

確かに理屈では古寺の言う通り。しかし東の経験と直感が一筋縄では終わらないと予測していた。

 

 

「夜凪からの報告では今回の侵攻にアフトクラトルも便乗してるという話もある。最悪、あのとんでもない黒トリガーが出てくる事も想定しておこう」

 

 

そこで東は同じく理屈で古寺や周囲の狙撃手たちの警戒度を上げる事にした。

 

 

 

やがて正面からの敵も減ってきた段階で、見知った形がトリオン兵の軍列に加わった。アイドラやドグとは一線を画す存在感はラービットだ。

 

 

「新型…!?ここでか?」

 

 

先の大規模侵攻で大きな被害をもたらしたトリオン兵ラービット。その性能はA級隊員に勝るとも劣らぬほどだ。

 

 

「総員、アイビスに持ち替えて新型を狙え!」

 

 

しかし、その脅威度故に対応訓練は怠っていない。

大規模侵攻時に得たデータとのシミュレーションでアイビスの銃撃を何度も叩き込めば装甲が砕ける事はわかっている。その他の脆い場所も。

プレーン体とモッド体3種の行動パターンもすでに読めている。

大規模侵攻の時ほどの脅威とはならないーーーーーはずなのだが。

 

 

「人型がシールドを重ねて新型を守ってる!?」

 

 

「なんだあいつ…これまでのどの新型とも動きが違う!」

 

 

そんな不気味な予感は前線が押され始めた事で周囲にも伝染していく事になる。

 

 

 

☆★

 

 

 

不気味さを感じていたのは何も玄界の兵だけではない。ガロプラの遠征部隊副隊長であるコスケロも同種の薄気味悪さを感じ取っていた。

 

今回の遠征はアフトクラトルの要請によるもの。本来ならガロプラ、ロドクルーンのみで行われるはずだった侵攻にアフトクラトルが参加しているのは、前回の侵攻での成果が少なかったからだと思われる。

 

アフトクラトルの最優先目標は“金の雛鳥”。これを確保するためにガロプラを焚き付けレギーを拐かしたまでは理解できる。“金の雛鳥”確保のために、戦術としては愚の骨頂である戦力の分散をしたのも、ガロプラとしては痛手だが意図は理解できる。

 

 

だが、これはなんだ。

 

アフトクラトルのトリオン兵としては最高の戦力を誇るラービットの最新モデルを、正面で苦戦するガロプラを助けるために5体も投入するのはどういう了見だ。

 

 

確かに正面で負けてしまえば、戦闘はそのまま終わりと言っても良い。ガロプラの遠征艇に加わっているアフトクラトルの面子もガロプラの退却には従う他ないからだ。

“金の雛鳥”の確保も新たな敵黒トリガーの出現で難航していると聞く。ならその黒トリガーを撃破し“金の雛鳥”を確保するまでの時間稼ぎとして正面戦闘にラービットを投入した?否。それなら“金の雛鳥”の方にラービットを投入した方がマシだ。

 

アフトクラトルの目的は未達成のまま、遠征は終わる。

ハイレインはそんな負け戦にこだわるような人物ではなかったはずだ。彼なら戦力を温存し次の機会を伺う定石に従うはずなのに。

 

ならば今のこの状況が示すのはーーーー

 

 

「戦いの最中に考え事か?ずいぶん余裕だな」

 

 

コスケロはいらぬ思考を中断し、眼前の3人を見やった。

 

すなわち、風間隊の面々を。

 

 

「余裕なんてないよ」

 

 

言いながら、コスケロはドグと連携して攻撃を仕掛ける。瓦礫の隙間に仕込んでおいた『黒壁(ニコキラ)』を一斉に立ち上がらせ半球状のドームを作ろうとするが、風間隊の3人はそれが完成する前に黒壁から逃れようと跳躍する。

 

そこを狙い撃つのがドグの光線だ。しかしそれも跳躍と同時にシールドを展開した歌川と菊地原により防がれてしまう。が、それでも成果がないわけではなかった。

黒壁は歌川の脚を捉えていた。今や歌川の右脚部には黒壁の粘性物がとりつき、まともに走れない状態になっている。

 

 

黒壁は半固体、半液体のスライムのようなトリガーだ。ブレードトリガーなどに黒壁の一部が付着するとブレードが切れなくなったり、腕に付けば武器が握れなくなり、脚に付けば踏ん張りが効かなくなる。殺傷力こそないものの、相手に不利益なトリオン効果を与えるトリガーである。

 

 

「内側からスコーピオンで切れるか?」

 

 

「…無理です」

 

 

付着した黒壁をスコーピオンを体から生やす事で切除できないか風間が提案するも不可能だった。

 

 

「じゃあ切るよ」

 

 

そんなやり取りの後、菊地原が歌川の右脚部を切り落とした。

 

 

「足スコーピオンでなんとかなるでしょ。カメレオンの併用は無理だけど」

 

 

宣告から1秒もなく脚を切られた歌川は苦い顔をするが、コスケロ相手に足を使えないのは致命的なため、結果的には時間短縮ができて良かったと思うべきだろう。

 

 

風間隊が言葉を交わす間も戦闘は止まらない。

ドグをけしかけながらコスケロは再び黒壁を仕込んでいく。黒壁による奇襲は菊地原のサイドエフェクト“強化聴覚”で避けられているが、ドグとのコンビネーション次第では先程のように避けられない事もある。

 

「おれたちの役目はこいつを抑える事だ」

 

 

しかし、問題ないとばかりに風間は言い放つ。ボーダー本部の方に現れた敵の増援で慌てつつあった菊地原と歌川も少し落ち着いて、コスケロを相手に集中する事ができるようになる。

こうした風間のクレバーな判断があってこそ、風間隊はA級3位という実力を保持しているのだ。

 

 

☆★

 

ボーダー本部内に侵入した人型近界民は3人。その内の2人はガトリンとラタリコフだ。残る1人は途中で行き先を阻むボーダー隊員の足止めをしていた。

ガロプラ遠征部隊の紅一点、ウェン・ソーである。

対峙するのは狙撃手を除く影浦隊と弓場隊。

 

ウェン・ソーは自らの右腕とほぼ全てのドグを失ってようやく影浦の特質を掴んだ。即ちサイドエフェクト“感情受信体質”による回避性能の高さを。

 

 

影浦は相手の攻撃を察知できる。攻撃しようとする意思を受信し精度の高い回避力を有する。その点で言えば刀也のどこに攻撃がくるかわからない“超直感”、読み逃しのある迅の“未来視”より優れていると言えよう。

 

加えて影浦は回避力もそうだが攻撃力も攻撃手の中でトップクラスである。根付にアッパーカットをくらわせて10000点没収されなければ今でもランカーだった事は間違いない。

 

 

そんな影浦を相手に、ウェン・ソーは勝つ事をやめた。

とは言っても負けを許容するわけでもない。影浦への攻撃が読まれるのなら、その他を先に倒してしまえば良い。

 

まずは鈍間ながらも気が利く銃手、北添に目を向ける。

 

 

「『藁の兵(セルヴィトラ)』」

 

 

トリガーを起動し、実体のない分身で敵を惑わせる。

 

 

「なっ……」

 

 

「増えた!?」

 

 

一瞬にして倍増どころではない増加にボーダー隊員たちは驚くも、隙は見せずウェン・ソーに攻撃をしかける。

 

その攻撃のほとんどが分身をすり抜けるも、どれか一体にだけ手応えがあった。

 

これで偽物の中に本物が混じってる事がわかったが、どれが本物かはわからない。

普段なら北添のメテオラで吹き飛ばすのだが、今回の防衛戦は対外秘でありメテオラが解禁されているのはボーダー本部でも深部にある格納庫のみだ。

 

影浦の、北添の、弓場の、帯島の攻撃の尽くがすり抜け、あるいは防がれる。

ふと帯島が頭上を影が横切った事に気付いた。普段なら気にしない程度のものだが、この場においてはありえない事象だった。

見上げた帯島は何かが浮いているのを発見した。藁の兵のタネだと理解した帯島はアステロイドをそちらに向ける。

 

 

「上ッス!弓場さん!」

 

 

「帯島ァ!良く気付いた!」

 

 

同じく弓場も二丁のリボルバーを天井付近で浮遊するそれに向けた。

おそらく光を反射する事で分身を作り出しているのだろう、仮説を証明するようにデバイスを破壊する毎にウェン・ソーの分身が減ってきていた。

 

 

しかし、それでもウェン・ソーが北添を撃破する方が速い。トリオン供給機関に刃を突き立てられた北添は「えぇ、こっちじゃないの」と言って緊急脱出するのだった。

 

 

☆★

 

ああ、これか。これがそうなのか。アイドラ越しにヴィザは理解した。

 

これが、あの時に見れなかった剣技の完成形だ。

 

 

 

 

「ーーー壱」

 

 

壱ノ型『螺旋撃』

 

 

荒々しく渦巻く炎の如き闘気が周囲のトリオン兵を砕く。

 

 

 

「ーーー弐」

 

 

弐ノ型『疾風』

 

 

残像の追随すら許さぬ神速の斬撃が重なり、すべての敵を逃すまいとする。

 

 

 

 

「ーーー参」

 

 

参ノ型『業炎撃』

 

 

燃え盛る炎が叩きつけられる。それはまさしくガードを破壊する一撃。

 

 

 

「ーーー肆」

 

 

肆ノ型『紅葉切り』

 

 

鋭い一閃が通り過ぎる。滑らかに過ぎる剣撃は斬られた事にさえ気付くのが遅れる程だ。

 

 

 

「ーーー伍」

 

 

伍ノ型『残月』

 

 

居合の構えから放たれる大斬撃は、水面の月の如く。一瞬の溜めを隙と見誤ったレギーに手痛い反撃を見舞う。

 

 

 

「ーーー陸」

 

 

陸ノ型『緋空斬』

 

 

空を駆ける緋色の斬撃は逃げる者の逃走を許さず。

 

 

 

「ーーー漆」

 

 

漆ノ型『無想覇斬』

 

 

抜刀、一閃。ランバネインに七つの斬撃を刻み込む。

 

 

 

「ーーー八葉一刀『無仭剣』」

 

 

壱ノ型から漆ノ型まで、繰り出された斬撃が収束する。

 

これこそが八葉一刀流の秘奥義。リィン・シュバルツァーの到達点。夜凪刀也の目指す頂。

 

 

 

太刀を鞘に納めた刀也。無仭剣はすべての敵を斬り払っていた。ドグやアイドラなどのトリオン兵団、レギーやランバネインまで。

 

 

「なるほど、大胆だとは思ってたけど」

 

 

消え去ったレギーやランバネインの姿。おそらくはボーダーの緊急脱出を真似た技術だろうと当たりをつける。

 

その事を本部に伝え、刀也は考える。どちらに行くべきだろうか、と。

ボーダー本部の防衛ではラービットの新型、星の杖のブレードを使うのが何体か現れたらしい。

三雲たちの方は今のところ増援はないが、いつ雨取が狙われるかわからない恐怖はあるだろう。

 

ボーダー本部防衛戦については、いくら星の杖の能力の一部を使えるからと言っても多勢に無勢だろう。

三雲らの方もいざとなれば黒トリガーを使うように遊真に言っている。

 

なら、ここで待機するのが良かろうと結論する。どちらにも動けるように。どちらにも動けるぞと敵方を牽制するために。

 

待機の姿勢を決め込んだ刀也の視界の端に、彼が現れたのはそれからすぐの事だった。

 

 

☆★

 

 

最終防衛線である格納庫前の戦闘では、クロウは押されつつあった。

 

対峙するガトリンには僅かばかりの余裕があった。精鋭揃いとされるガロプラの遠征部隊長らしい経験の厚みから、ガトリンはクロウの長所を発揮させない戦い方をしていた。

 

 

クロウの一瞬の技の冴えは敵ながら称賛に値するものだ。特に会敵一番に自身の腕を落とされたガトリンは驚いていた。

だからこそ、その技の冴えが発揮される近距離戦を拒んでいた。二丁拳銃による銃撃も避けるか防がれるかされ、近づこうとすれば4つの大刃が襲いかかってくる。銃撃と剣撃の組み合わせも対処されてしまう。

 

ガトリンにとって幸運だったのは、クロウが常に格納庫をカバーできる位置でしか動かない事だ。大砲を警戒しての事だろうが、それがガトリンとクロウの戦況がガトリンに傾いている一助になっている。

 

クロウにしても、戦況を激動させたいという思いはなかった。

迅と太刀川はラタリコフを押している。ドグはすべてあちらに行っているが、それでも迅らの優勢は変わりない。そして迅と太刀川がラタリコフを撃破し、こちらに加われば勝利できるはずだ。だから、その時をクロウは待っていた。

 

ガトリンの大砲のチャージがいつ終わるかわからない。そのため迂闊に攻勢に出る事はできないがジリ貧なのはガロプラ側の方だ。クロウには先程のように大砲の射線を逸らす技術がある。

 

ガトリンも同じ結論に至ったのか、中間距離での戦闘をやめて大砲を構えた。クロウの背後にある格納庫に向けて。

 

それをクロウはハッタリだと断じる。前回防がれたのと同様の状況での砲撃など失敗する。それに大砲を撃つ際には、後方に吹き飛ぶのを防ぐためか大刃を地面に突き刺していたが、今回はそれをしていないのだ。

 

 

好機と見たクロウはハウンドを撃ち散らしながらレイガストに持ち替えて接近する。

ハウンドは大刃によってすべて防がれてしまうが、すでにクロウの間合いに入っていた。

レイガストを振り上げたその時、クロウの全身を踊り手の円刃がズタズタに切り裂いた。

 

 

「な、に……!?」

 

驚愕と共にレイガストを構えていた腕が切り落とされた事に気づく。生まれた刹那の硬直で、

 

 

「さらばだ」

 

 

ガトリンの大砲が放たれる。大刃による支えもなしで、しかし至近距離にいたクロウを外すはずもなく。トリオン体を貫いて、遠征艇を隠した格納庫に向けて進む。

 

だが、その砲撃を阻むべく床面からいくつもの壁がせり出して来た。迅のエスクードだ。それが幾重にも張り重ねられ、砲撃の軌道を逸らす。ガトリンがブラフのために支えを使用しなかったのもあり、大砲が着弾したのは格納庫の隅の方だった。

 

 

 

攻防の要たる踊り手をクロウに向けた事で、ラタリコフは太刀川に撃破されている。

迅は“未来視”によって大砲が格納庫に直撃するのを防ぐためメインとサブのエスクードを重ね張りして、隙ができた所をドグに襲われ大きくトリオンを漏出させた。緊急脱出も遠くないだろう。

 

いつかと同じように胸に大穴を開けられ、緊急脱出するまでの間の一瞬でクロウは考える。

 

自分が落ち、迅が落ち、太刀川1人でガトリンに対抗できるのか。

 

難しいだろう。失敗すれば遠征の延期は決定的だ。数年ほどの遅れが、いったいどれほど自分からゼムリアを遠ざけるのか。

 

それは避けなければいけない。自分のために、刀也のために、リィンのために。

 

 

そのためなら、禁忌の力に頼る事にいっさいの躊躇いはない。

 

 

クロウは、ポケットに入っている“それ”に触れた。

 

 

「使っちゃダメだ!クロウさん!」

 

 

叫んだ迅は、いったい何を“視た”のか。

 

しかし、クロウは確かに言霊を紡いだ。

 

 

 

「七の騎神、起動」

 

 




本作においてはB級ランク戦の上位、中位、下位の昼の部と夜の部は別日にやってる事にします。諸事情による!
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