ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに   作:クラウンドッグ

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なんか駆け足になってる気がする…

時系列的には17話→16話となっています。今回の16.5話はその間のお話です。


幕間♯3
16.5話 2人目


「はあ!?なにやっちゃってんのかなあ、バカなの?」

 

 

隊室に戻って事の次第…忍田に遠征中に途中離脱する思惑がある事を話した旨を説明すると刀也は見事に予想通りの反応を示した。

 

 

「はぁ…それで?明かしたからにはそれなりの方策があってか?」

 

 

秘密を洩らしたのはなんらかの次手を考えているからか、とため息交じりに聞く刀也。しかし否というクロウに「ぱ~」と物理で気が抜ける声を出して一拍おいてから、

 

 

「そんじゃどうすんべ」

 

 

なげやりに、あるいはぞんざいに言葉を吐きかける。クロウへの罵詈雑言もほどほどにして未来に目を向けた刀也ではあるが、その様相は考えるのもメンドクサイ…と言っているようだった。

 

 

 

「さて、どうするか……忍田の旦那を説得する材料はねぇのか?秘蔵のエロ本とか」

 

 

 

「アホか」

 

 

「今は電子書籍の時代だ」と続けて刀也は、次の手は?とクロウに視線をやる。

 

小ボケを挟んで否定する刀也は本当に参っている様である。クロウは軽々に離脱計画を話したことを反省するが、仲間に黙って出ていくなんて不義理が過ぎる。きちんと別れを済ませて、笑って見送られた方がいいに決まっているのだ。刀也が自分やリィンのようにならないためにも。

 

 

「説得材料がねえなら作るしかないな。…本当になにもないのか?」

 

 

本気の表情になったクロウを見て刀也は唸りながら考え込み「ないことはない、けど…」と歯切れも悪そうに机を漁り、1冊のノートを引っ張り出した。表紙にはでっかく㊙と書いてある。

 

 

「マル秘…っておい」

 

 

まるで子供の落書き帳のようなノートにクロウは失笑するが刀也は「ははは」と笑い、雰囲気が大事なんだよ、と言った。

 

 

「こいつはおれがこの4年で書き溜めた秘蔵にして死蔵の初見殺しの技の数々だよ。子供騙しだけど…まあ、だからこそ初見殺しなんだな」

 

 

少し古ぼけたノートを広げて見せる刀也だが、絵心はないようでページの中心を棒人間が泳いでいるようにしか見えない。その代わり文字はびっしり書き込まれていて、これが決して子供が落書き気分で作ったノートではないと理解する。

しかしそれでも構図がわからずハテナマークを浮かべるクロウに刀也は実践を申し出て、初見殺しと呼ばれた技の数々を披露した。

それはエスクードとテレポーターを併用した奇襲だったり、旋空弧月に見せかけた弧月とスコーピオンの合わせ技だったり、弾トリガーを誤解させての蜂の巣だったりと種類に富んでいたし、真に初見殺しと呼んで差し支えないものだったが。

 

 

 

「でもこれだけじゃ弱すぎるだろ」

 

 

結論を出したのは刀也だ。それにはクロウも同意見であり、これだけでは忍田を説得できないと断じる。

 

 

再び隊室で頭を抱える2人。しばらくしてクロウが名案を思い付いたとばかりに顔を上げる。

 

 

「おれの技能を、そのノートみたいにまとめるってのはどうだ?」

 

 

それは遠中近…すべての距離を制することができる完璧万能手にもつながる戦法を記した書物となるだろう。

 

 

「ありだな…完璧万能手育成メソッドの確立……となると荒船とは競合…?いや協力して連名ならいけるか。あとレイジにも手伝ってもらったがいいな」

 

 

クロウが提案した完璧万能手育成メソッドの確立は荒船哲次の野望である。すでに攻撃手としてマスタークラスに至った荒船は今は狙撃手の技能を習得中だ。より完璧万能手に近いのはクロウだが、すでにメソッド確立に動いている荒船を競合相手にするのは面白くない展開であり、今まで売った恩を全部買い戻してでも味方につけたい人材である。*1加えてすでに完璧万能手としてボーダー最高の戦力に数えられる木崎レイジにも協力を仰いだ方がよい。

 

そこまで話し合って、いい線はいっているが決め手に欠ける気がする2人。

 

 

結局、良い手が浮かばず消沈したクロウらだったが、この話はまた後日にするという事で落ち着く。

 

 

その後、一服したところで唐突に刀也は言った。

 

 

「おれたち夜凪隊は、B級からスタートすることにした」

 

 

言葉足らずは刀也も自覚していることで、説明を始める。

まず、自身が単独で部隊を立ち上げた場合はA級からのスタートになる事。そこにクロウを加えることでA級部隊のまま難なく次回の遠征部隊選抜戦に参加できるであろう事。

対してクロウが最初から夜凪隊に所属している状態で部隊を結成した場合はB級スタートになる事。

 

 

「裏技があるもんだな。んで、そんな裏技を知ってんのにわざわざB級で始めるつもりなのはなんでだ?」

 

 

「理由はいろいろある。まず1点目として、ルールとして定められちゃいるけどクロウも言った通り裏技…抜け道に等しい。そんなのでA級になっても顰蹙を買う。要は嫉妬だがな。2つ目、経験を積むため…クロウのな。おまえならもうボーダーでもトップクラスに迫るだろうけど、まだトリオン体に慣れてないし、そのためね。んで3つ目、B級ランク戦で、おれたちの強さを誇示するため。なんで夜凪隊が遠征隊に選ばれないんだーってなるくらいに圧倒的な強さを見せつけて、遠征部隊に選抜されるための後押しにしたい」

 

 

「ふむふむ、なるほどな。正しい手順でA級に昇格して、その軌跡を見せつける事で遠征部隊選抜のための示威にしたいってことだな」

 

 

「そう、A級は強いしな。今のクロウじゃ負けに行くようなもんだし、B級からコツコツやったほうがどことも揉めん。おれもちょっと前にA級ランク戦に挑んだらシーズン中に3回くらいしか勝てなかったしな。まあおれも感覚とか取り戻すためにB級からやりたいわけよ」

 

 

 

刀也の説明にクロウは納得したように頷いて、

 

 

「わかったぜ。それじゃあB級から始めるとするか…おれたちの成り上がりの軌跡をな」

 

 

「成り上がりの軌跡とはなんとも締まらんが…がんばろーぜ、クロウ」

 

 

笑んで刀也は拳を突き出す。対するクロウもニッと口角を上げてそれに応える。コツン、と拳がぶつかって、

 

 

「おう、刀也」

 

 

言ったクロウに刀也が眉を吊り上げる。

 

 

「いつの間にか呼び方変えてんのな。いいんだけども」

 

 

「いい加減、夜凪じゃ他人行儀臭くてな。今後は名前で呼ばせてもらうぜ。おれたちは同じ目的を掲げた同志ーーーもとい、仲間だからな」

*1
荒船の野望は1部の人たちには知れており、成果を横取りするような形で発表すればクロウたちの敵に回る者もいるため




刀也くんが仲間になる回でした。まあ元から仲間と言えばそうなんですが。

プラス、夜凪隊がなぜA級からスタートしないのか疑問に思ってた読者の皆さんにその答えをお披露目する回でもあります。
A級B級の仕組みうろ覚えだったのでBBFを読み直しました。ので、ここらへんの設定は公式通りのはず…

あと、覚えている人いるかわかりませんが刀也が最初からA級隊員だったとかいうあれはBBFによるとあり得ない設定でした。ごめんなさいね。

第0次近界遠征での1件や八葉一刀流に固執した刀也を哀れに思った上層部が、刀也を食わせていくために給料が出るA級に任命したという設定が爆誕した瞬間でした。


次回の前書きあたりでⅦ"sギアについて解説します。
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