ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに   作:クラウンドッグ

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大規模侵攻編開幕……!


そろそろ無双しないと……(使命感

大規模侵攻編ですが、ついにクロウが黒トリガーを………


大規模侵攻編
侵攻開始


「門の数、38…39…40……依然増加中です!!」

 

 

三角市の空は暗く染まり、空間には黒い穴が穿たれる。

 

 

近界最大級の軍事国家、アフトクラトルによる大規模侵攻が始まる。

 

 

 

作戦室では本部長の忍田の指示が飛ぶ。

 

 

「任務中の部隊はオペレーターの指示に従って展開!トリオン兵を撃滅せよ!!1匹たりとも警戒区域から出すな!!非番の隊員に緊急招集を掛けろ!全戦力で迎撃に当たる!!戦闘開始だ!!」

 

 

 

 

門から侵攻してきたトリオン兵はいくつかの集団に分かれてそれぞれの方角へ市街地を目指していた。

本部基地から見て西、北西、南、南西、東の5方角だ。

 

 

その報告を受けて忍田は、厄介だと考え込む。

 

 

「どう思う?」

 

 

そこで忍田は夜凪にそう聞いた。『超直感』のサイドエフェクトを持つ夜凪なら敵の狙いを看破できると思ったからだ。

 

 

「陽動ですね。でも追わないと市民に被害が出る」

 

 

「そうだな。

現場の部隊を三手に分けて東、南、南西の敵にそれぞれ当たらせろ!」

 

 

三方角の対処はこれで良い。ならば残る西と北西は?

忍田は「心配はいらない」と聞いてきた根付メディア対策室長に返事をする。

 

 

「西と北西にはすでに、迅と天羽が向かっている」

 

 

迅悠一……S級隊員だったが黒トリガーを手放した事でA級隊員となった。サイドエフェクトで未来が分かる上に戦闘能力はノーマルトリガーでもボーダー最強クラス。

 

天羽月彦……黒トリガー持ちのS級隊員。戦闘能力だけなら風刃を装備した迅にも勝る、文字通りボーダー最強の戦力。

 

 

 

しかし、夜凪は忍田の判断に異を唱える。

 

 

「いや、西と北西は天羽だけで充分でしょ。迅は遊撃に回した方がいい駒だ」

 

 

そう自分の直感が囁きかけてきている。5方角への侵攻は陽動…それなりに強い駒はあるだろうが、黒トリガー持ちの天羽がいるなら問題はない。

 

夜凪の直感の鋭さを知っている忍田はすぐに具申を聞き入れて迅に連絡を取り、遊撃に回るように指示した。

 

 

残る3方角に向かうトリオン兵にはトラップで足止めし、防衛隊員の到着を待つ。

次第に数々の部隊が現場到着を報告してくる。

 

 

ひとまずはこれで……かと思いきや

 

 

「まだかな」

 

 

まだ敵は何か手があるのだと、夜凪の直感が語りかけてきた。

 

それに答えるように新型のトリオン兵の出現が報告された。その新型に妨害されて、他のトリオン兵が市街に向かうのを阻止できない事も。

 

それに対しての忍田の判断は早い。B級の合同部隊で、市街地を防衛しに行く。助けに行く順番は非難が進んでいない地区が優先される。

 

 

 

その裏で夜凪は、どこか腑に落ちないものを感じていた。

トリオン兵の分散は、戦力の分散という戦術においてやってはいけないタブーだ。しかし、そのタブーを犯すだけの利点があるという事。

 

分散されたトリオン兵は本当に陽動か?

それについては、陽動で間違いないとサイドエフェクトが告げたのだから間違いない。

じゃあ新型は?新型のトリオン兵…『ラービット』はトリガー使いの捕獲を目的としたトリオン兵だ。なら、即戦力となるトリガー使いの捕獲が目的か?違う。小型トリオン兵で偵察してきた奴らがこちらのトリガーに緊急脱出(ベイルアウト)機能がある事を把握してないわけがない。

 

「ーーーーそういうことか」

 

 

そこまで思考して、敵の狙いを理解する。

 

トリオン兵の分散は、市街地が狙いに見せかけた陽動で、本当の狙いは市民の避難を誘導してるC級か!

 

 

 

「爆撃型が本部基地に向けて突撃してきています!」

 

 

オペレーターの慌てた声が作戦室に響き渡る。

 

モニターを見ると爆撃型トリオン兵『イルガー』が2体、ボーダー本部基地に向けて突撃をしてきていた。

 

 

「砲台を使って撃ち落とせ!」

 

 

 

「ダメです!弱点部をガードされてます!」

 

 

イルガーは空を旋回して爆弾を投下するのだが、一定以上のダメージを受けると自爆モードに切り替わり、突進を始める。自爆モードに切り替わるとイルガーは弱点をガードしてさらに撃破しにくくなるのだ。

 

 

「総員衝撃に備えろ!」

 

 

忍田の指示に従って作戦室の全員が身構える。

 

しかしーーーーーーー

 

 

 

衝撃はいつまで経ってもこなかった。イルガー2体が撃破されたのだ。

 

 

 

 

 

「どうやら間に合ったみてぇだな」

 

 

モニターに映し出されたのは蒼色の騎士だった。

 

 

 

 

☆★

 

 

 

「これが……」

 

 

「そうだ。これがリィン・シュバルツァーの遺した黒トリガー」

 

 

大規模侵攻にあたり、特例としてC級隊員ながら黒トリガーの所持を認められたクロウは、黒トリガーの保管室に案内されていた。

 

 

「上層部の人たちはアンタがこれを起動できると思ってるらしいけど、どうなの?」

 

 

案内したのは寺島雷蔵という、開発室のチーフエンジニア。クロウの使うレイガストや、広範囲爆発弾である『メテオラ』の開発者だ。

 

 

「さあな。試した事はないが……」

 

 

そう言いながらクロウは黒トリガーを握る。

 

ドクン、と脈動を感じる。同時に脳裏に浮かぶ相克の記憶。《黒》の声がかすかに聞こえた気がした。

 

 

「いけるぜ」

 

 

「起動もせずに……」

 

 

 

そこで、館内にアナウンスが入る。

爆撃型トリオン兵が基地に向けて突撃してきているという事だった。

 

 

 

「俺が出る!寺島、案内助かったぜ!」

 

 

 

クロウはそう言うと、黒トリガーを持ったまま駆け出す。最短距離で屋上まで向かうと、すでにイルガーは目の前だった。

 

 

 

「は、初陣の相手にしちゃ役不足だな」

 

 

そして、そのまま屋上から飛び降りる。

 

 

 

「『七の騎神(デウス=エクセリオン)』起動」

 

 

 

相克が終わり、灰のもとで再び統合された『大イナル一』。そこから分割された力の欠片のひとつを、呼び出す。

 

かつての相棒の名を。

リィンと共に相克を勝ち抜いた《蒼の騎神》の名を、呼ぶ。

 

 

 

「来い!オルディーネ!!」

 

 

 

蒼が纏う。

それはかつて起動者(ライザー)として騎神を操縦していた時の感覚とは違う、まるで自分自身が騎神になったかの如く。

 

手にはゼムリアストーン製のダブルセイバーが握られていた。いや、ゼムリアストーン製に見えるが、これもトリオンによって形作られているのだろう。

 

 

 

「はは、なんか……随分と久しぶりな感覚だな。またよろしく頼むぜ、相棒」

 

 

 

 

「ーーー応!」と聞こえたのは、たぶん幻聴なのだろう。

 

 

クロウは目の前の敵に集中する。まずはあいつを叩っ斬ろう。

 

 

 

重力に従って落ちるだけでなく、後背部のユニットからトリオンを噴出させて加速。急降下の勢いのままにイルガー2体を真っ二つにした。

 

傷ひとつない基地外壁を見てクロウは呟く。

 

 

「どうやら間に合ったみてぇだな」

 

 

 

☆★

 

 

「クロウくんか!?」

 

 

モニターに映し出された蒼色の騎士人形を見て忍田が叫ぶように聞く。

 

 

「ああ、忍田さんか。こちらクロウ・アームブラストだ」

 

 

「適合したか!」と鬼怒田がガッツポーズする。根付も新たな戦力の増加に喜んでいる。

 

そんな中、城戸はいつものまま「灰色ではない、か…」などと呟いていた。

その呟きを耳にした夜中は目を細めるも、杞憂だと思考の果てに追いやる。

例え四年前の近界民侵攻の時に、城戸がリィンがあの黒トリガーを使った姿を目撃していたとしても《灰の騎神》と《蒼の騎神》では外見が違う。本当のリィンの黒トリガーが別にあるという発想には至れないだろう、と。

 

 

 

「おれは今から警戒区域を回る!隊員たちへの連絡は頼んだぜ!」

 

 

 

クロウは忍田といくつか言葉を交わすと、遊撃として動くと宣言した。黒トリガー『七の騎神』には連絡機能がない。今は肉声をトリオンの集音器で拾っているだけだ。

クロウの姿を見たら隊員たちは、新手のトリオン兵か人型近界民だと思うだろう。そういう勘違いを防ぐためにクロウは司令部に連絡を頼んだのだ。

 

 

「わかった、健闘を祈る!」

 

 

「応よ!」と言うとクロウは背中のユニットからトリオンを噴出して彼方へと飛んでいく。

計測値からしても風刃や、ひょっとしたら天羽の黒トリガーをも上回るかもしれないだけの数値が叩き出されていた。クロウの存在だけで戦況が変わるほどのものだろう。

 

 

 

「爆撃型、後続3体来ます!」

 

 

「3体だと!?クロウくんへの連絡は?」

 

 

「返答ありません!通信機能未搭載の黒トリガーのため音声が通じていません!」

 

 

 

クロウならイルガー3体を落とすのは容易だろう。しかし、脅威を認識できていないのでは意味がない。

 

 

「1匹までなら砲撃で落とせる!残る2匹をなんとかせい!」

 

 

鬼怒田がそう言う。とあるC級隊員による外壁ぶち抜き事件以降、耐久度を上げているのだが、それでもさらなる後続がある可能性を考えると今はできるだけ基地を無傷のままにしておきたい。

 

 

「1匹は慶が落とす!残る1匹は……」

 

 

 

「俺が出ます」

 

 

そこで夜凪が立ち上がった。自分が出るのはここだと直感が告げているのだ。

 

 

 

「夜凪くん……ここか?」

 

 

「はい、このままここにいても俺は役立たずです。もう直感で指示を出す段は過ぎた……あとは忍田さん、お願いします」

 

 

 

「わかった。…鬼怒田さん」

 

 

「わかっとる」

 

 

鬼怒田が返事をしつつ手元のパネルを操作する。すると夜凪の足元にボーダーのマークが浮かび上がった。

 

 

「ワープ起動する。行き先は?」

 

 

「屋上で!」

 

 

鬼怒田が「わかった!」と言うと同時に夜凪の足元のマークが淡く輝き、司令室から姿が消える。

 

 

 

☆★

 

 

 

 

「おっ、来たなヨナさん」

 

 

 

基地屋上で夜凪を出迎えたのは太刀川だった。A級1位部隊隊長、太刀川慶。個人総合ランキング1位にしてNo.1攻撃手。現役のボーダー隊員では間違いなく最強の男。ただし大学の単位がやばい。

 

 

 

「おう、すまんが時間がない。話は聞いてる?」

 

 

 

「ああ、あれを1匹ずつだったか?」

 

 

太刀川は接近してくるイルガーに視線をやりながらそう言う。

どうやら司令室から連絡が来てるようだった。

 

 

「うし、じゃあやるか」

 

 

夜凪の言葉と同時に2人が屋上を駆け出す。目標はすでに自爆モードに切り替わり、弱点部をガードしているイルガーだ。

 

 

屋上から跳ぶ瞬間、夜凪は言う。

 

 

「太刀川、踏ませろ!」

 

 

夜凪の言葉に太刀川は「了解!」と笑い、その足元に『グラスホッパー』を展開した。

グラスホッパーとは、言ってしまえば、飛べる板だ。それを踏む事でグラスホッパーの板と垂直方向に跳ぶ事ができる。

 

 

太刀川は夜凪の意図を察して、夜凪をグラスホッパーで飛ばす。

急加速した夜凪はイルガーに接近する。しかしその横をさらなるスピードで太刀川が飛んでいく。

太刀川は基地に突撃してきているイルガー1匹を見事に孤月二本で叩っ斬る。それはNo.1アタッカーの名に恥じないだけの剣の腕だ。

 

 

対照的に夜凪はイルガーの弱点を守る歯ーーを模した盾ーーの前に着地する。

 

 

「悪いな、太刀川みたいに綺麗に斬ってやれないよ」

 

 

孤月専用のオプショントリガーである『旋空孤月』ーー瞬間的にブレードを拡張するものーーを使えば可能かもしれないが、夜凪のトリガーの8つの枠全ては孤月を除き、A級隊員の特権である新トリガーの作製を駆使して(鬼怒田に無理を言って)つくりだした……否、師の技を模倣した夜凪刀也専用のオプショントリガーで埋まっている。

 

 

「三の型」

 

その内の1つを起動する。トリオンによって燃え上がった孤月の刀身が赤熱する。

 

 

「『業炎撃』!」

 

 

叩きつけられる孤月とそれを包む炎。

力任せの一撃は、イルガーの歯盾を砕き散らしーーー、むき出しになった弱点を夜凪は孤月で突き刺した。

 

 

 

「他愛なし……ってか」

 

 

最近見たアニメーション映画の髑髏面の暗殺者の真似をしてセリフを吐く。墜落するイルガーをクッションに着地した。

 

 

上を見ると、基地の砲台が最後のイルガーを撃ち落とした頃だった。

太刀川はすでに忍田の指示で新型を斬りにいったようだ。

 

夜凪は司令部との通信を繋げると、忍田に告げる。

 

「忍田さん!敵はこれからも爆撃型を散発的に投入してくると思う。とにかく一発も食らったらだめだ!基地が保つとしても、それ以外の所で綻びが出る……そこが分岐点になるかもしれない」

 

 

 

迅なら「おれのサイドエフェクトがそう言ってる」と言う所だ。夜凪の超直感は彼の未来予知ほど正確ではないが、自分の知らない事象にまで直感が及ぶのは迅のサイドエフェクトに勝る一点である。

 

 

それを知っている忍田はやはり、夜凪の言葉を重く受け止めて「わかった」と返事をする。

 

 

「おれは遊撃に回ります。なにかあれば連絡してください!」

 

 

夜凪は言い切ると通信を切る。

同時に地面を強く蹴って駆け出す。その顔には、薄い笑みが貼り付けられていた。

 

 

「さてさて、異界の侵略者に俺の八葉がどこまで通じるやら……試すいい機会だな」




大規模侵攻編第1話でした!

最初から飛ばしすぎだって?それはおれもそう思う。
まさかの初回からクロウが騎神の黒トリガーを起動するっていうね……


七の騎神(デウス=エクセリオン)
相克を勝ち抜いたヴァリマールの黒トリガー。大イナル一として再錬成されるまえに黒トリガーと化したため無尽蔵に力を湧き出す《鋼》の性質は有していない。
《灰の騎神》が取り込んだ6つと自己を含めた7体の騎神のうちの1体を起動者の適正に合わせて、鎧として纏わせる黒トリガー。
要はリィンが起動すればヴァリマールの鎧を纏い、クロウが起動すればオルディーネの鎧を纏い、リアンヌが起動すればアルグレオンの鎧を纏う。
高い防御性能を誇り、武装は相克時に装備されていたものがそのまま格納されている。
倒した敵の力を奪う事が可能で、逆に力を与える事で眷族にする事ができる。
サイズは起動者の身長〜騎神の全長まで自由に調節できる。



なんのひねりもなく騎神!という感じですね。精霊の道とか転移とかそういう便利機能も生きてます。ただ使う場面があるかどうか、使える条件が整うかどうかは微妙です。
それに加えてスキル『終わらない相克』を発動!(笑
眷族って言っても命令権とかないし……たぶん力を吸収したほうがいい。


なんか夜凪が主人公くさくなってきた……どうしよう。
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