ワールドトリガー 《蒼の騎士》、軌跡の果てに   作:クラウンドッグ

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更新が遅れてすまぬ……
引っ越しとかゲームとかが忙しかったんだ……





ジョーカー、あるいは……

東春秋……ボーダー隊員では年長の部類に入る彼は、かつてはA級1位の部隊を率いた『最初の狙撃手(スナイパー)』。

戦術理解度が非常に高く、隊員のすべてに慕われていると言っても過言ではない男。

そして、上層部以外では唯一、夜凪刀也がチームを組まない理由を知っている存在。

 

 

 

 

その東が、苦戦していた。

相手はアフトクラトルの人型近界民、ランバネインだ。

 

シールドを貫く圧倒的な火力により隊員たちを落とされてしまうも、合流した荒船隊の面々や来馬と共にランバネイン撃破の術を探っていた。

 

しかも、厄介なのはランバネインに加えて新型トリオン兵がその援護をしている点だった。飛翔・砲撃の特性を持つラービットが2体。

 

 

合流していた柿崎隊はラービットを撃破しようとしてランバネインに発見され、緊急脱出に追い込まれてしまった。

 

ラービットが炙り出しを行い、ランバネインがトドメを刺す。ランバネイン単体でも厄介だが、ラービットがそれに拍車をかけている。

ランバネインは強力なシールドを装備していて且つ常に余裕をもって狙撃にも対応できるように構えている。そこでラービットが砲撃で市街地を破壊して潜伏している隊員たちを炙り出す。

 

単純だがそれ故に強力な作戦だった。

打開できないわけではないが、今の面子だけでは無理だ。少なくともA級隊員が3人は必要だ。もしくは太刀川や天羽のようなジョーカー、あるいは……

 

 

 

 

☆★

 

 

 

警戒区域ーーーそれは、四年前の第一次近界民侵攻で被害を受けた地域の事だ。

多くの死者を出したあの日から、ここから人はいなくなった。警戒区域の中心にボーダーの本部があるのみだ。

 

破壊の痕が目につく。破壊された家屋は少なくはないが、多くもない。まさしく戦争後の景色とでも言うべきもの。

 

 

もしも………もしも。あの時《大地の竜(ヨルムンガンド)》と《千の陽炎(ミル=ミラージュ)》が激突していたら、こんな光景が生まれたのだろうか。

 

帝国と共和国の戦争は本格化する前に阻止できた事は喜ばしい。だけど、その後の世界を見る事ができなかったのは心残りだ。

 

スタークとの約束を果たせなかったのも、リィンを生還させる事ができなかったのも……

 

 

 

ーーーーー感傷だ。

 

 

今からでも遅くない、と思う。

 

スタークとの約束を果たすのも、黒トリガー(リィン)を連れて帰るのも。

 

 

 

「そのためにも、ここを切り抜けなきゃな……」

 

 

 

 

☆★

 

 

 

 

クロウの登場にまず気づいたのはランバネインだった。

 

東らを捜しつつ、しかし新手の不意打ちにも対応できるよう割いていた意識に、蒼の騎士の姿が引っかかる。

 

 

猛スピードで飛来する蒼色の騎士人形。遠目にも見えるそれは、普通のボーダー隊員たちとは明らかに違う。

玄界の黒トリガーか?とランバネインは思考を巡らせる。見たところ鎧を身につけているようだが、珍しい。防御力は如何程のものなのだろうか?

 

 

 

「新手か!くらうがいい!」

 

 

真っ直ぐに向かってくるクロウに向かって銃を連射するランバネイン。その手にあるのはアフトクラトルの強化トリガー『雷の羽(ケリードーン)」。雨あられと尽きぬ砲撃が広範囲を破壊するトリガーだ。

 

 

ボーダーのシールドを容易く貫通する攻撃力を持つ弾丸をーーーー

 

 

 

「おおおおおっ……!」

 

 

 

ーーークロウはダブルセイバーを回転させて弾く。

 

さながら、緋き魔王の千の武器を防いだ時のように。

 

 

 

しかし、そこでさらにクロウを狙う砲口がふたつーーーー

 

ラービットがトリオンを集約させ、砲撃を蒼の騎士に向けて放とうとしていた。

 

クロウを視界に捉えたランバネインがうった策ーーー自らを主攻と見せてラービットを伏兵と化し、射程距離に収めるというもの。

正面からの攻撃には強くとも、三方向からの同時攻撃には対応できるものか。

 

 

 

 

「ーーー見えてるぜ」

 

 

だが、クロウにとってはそんなものは見え透いた策だった。

武のみならず知にも長けたクロウにとり、その程度は策とさえ呼べない。

 

 

 

投げ放たれるダブルセイバーは弧を描きラービット2体を切り裂き破壊する。クロウの得意とする『ブレードスロー』だ。

 

 

 

「武器を失くしてどう防ぐ!?」

 

 

 

それをランバネインは隙と判じた。ラービットを破壊されようとも雷の羽の弾丸を撃ちこめればその時点で勝ちだ。

 

 

マシンガンの如く乱射されるトリオン弾はしかし、容易く回避される。破壊力に加えて連射速度が売りの雷の羽…その弾速は決して遅くはない。

しかし、相手が悪過ぎた。

 

 

元々、オルディーネは飛翔能力に長けた騎神だった。そして『七の騎神』の一部となってもその能力は健在だ。

 

銃口に近づけば近づくほど上がるはずの命中率を馬鹿にするように、クロウは空を泳ぐ。

 

 

その様子を見てランバネインは理解する。釣られたのは自分の方だと。初めから避けなかったのは何故か?ラービットによる砲撃を誘発するためだ。

クロウはB級合同部隊と会った際に、すでにランバネインに加えて新型がこの場にいると聞いていた。

しかし、発見できたのはランバネインだけだった。ならば、自分を囮にして新型を釣り出し撃破すれば良い…というのがクロウの狙いだったのだ。

 

 

クロウにとってこの程度は策とさえ呼べない。なぜなら、敵は自分の掌の上なのだから。

 

 

 

 

ランバネインへの肉薄と同時に2体のラービットを破壊したダブルセイバーがクロウの手に戻ってくる。

 

 

 

 

「おおおおおお!!」

 

 

 

「らあああああ!!」

 

 

 

 

さらに連射速度を上げる雷の羽に、さすがのクロウも被弾する。しかし、ただの一発で騎神の鎧を砕けるはずもなく。

 

被弾覚悟で突撃したクロウだったが、東らを相手にしてなお余裕のあったランバネインの全力を傾けられては、一太刀の元に切り捨てられるはずもなく。

 

 

 

 

狙撃銃の弾丸さえ防ぐ高性能なランバネインのシールド3つが重なり、クロウの一撃を防ぐ。一瞬の抵抗の後に砕けてしまうシールドだが、ランバネインはその間におよそ5発の弾丸をクロウに撃ち込んでいた。

 

 

 

交錯の後に飛び退いて距離を取る2人。

 

 

クロウの鎧にはヒビが入りーーー

 

 

「なるほどな………貴様が…玄界(ミデン)のーーー」

 

 

ーーーランバネインは左腕を失っていた。

 

 

その攻防を見ていた東は光明を見出す。クロウこそが求めていたジョーカー、あるいは

 

 

「ーーー切り札(ワイルドカード)か!」




短いですが今回はここまで!

ワイルドカード、本来の意味とは違いますがクロウのクラフトとかけて使わせてもらいました。



『《蒼の騎士》、軌跡の果てに』は出水、米屋、緑川のA級3バカが東たちの救援に来なかった世界線です。

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