それでは、どうぞ。
雄英の入学試験から早くも1週間の月日が流れた。
あのあと、白衣の老婆が来て、緑谷くんに天使の口づけをしてから、背中の少女と緑谷くん、あと、嘔・・キラキラ少女改め、麗日さんを空飛ぶ絨毯に乗せて救護室に運んでから、帰宅したのだった。
その晩、夕食の時、父さんから試験はどうだったか聞かれて筆記はまずまず、実技では自分のやったことを説明した。
「なるほど、分かった。むっ、ちよちゃん、醤油を取ってくれ。」
「はい」
「ありがとう。しかし、雄英の試験方法も嫌なやり方だ。」
「え?」
「実技試験だよ。その方式ではヒーローに求められるのは戦闘力だ、ということになる。でもな、現場に出れば分かるんだよ。力だけで何かを成そうとするのはヴィランのそれと同じだ。昔のちよちゃん、っヴン、母さんのように非戦闘系の個性でヒーローの力になれる者もいる。だから、理忘れるな。ヒーローの職務は自分にできることを全力で行うことだと。それをできる人が皆からヒーローと言われるようになるんだ。」
「・・・分かったよ、父さん。」
その後深夜2時、睡眠中にトイレに行きたいと思いリビングの前を通ると、父さんが1人で晩酌をしながら静かに涙している所を見た。・・・何かあったのだろうか。
後日、緑谷くんと学校であった時にお礼を言われた。
「いやいや、あれは俺ができることを全力でやっただけだから、当然のことをしたまでだよ。それより、高校で会ったら、よろしく。」
「うん、僕は受かるかどうか分からないすれすれだけど、合格したらよろしくね!」
緑谷くんと別れて、後輩達が俺達卒業生のために歌の練習などで忙しそうにしているのを見て、送られる側も意識し始めた2月の終わり、いつものように学校から帰ると母さんがパタパタと音を立て、エプロンで手を拭きながら出迎えてこう言った。
「おかえりなさい、雄英から手紙来てたわよ。緑谷くんと爆豪くんの家にも郵便屋さん行ったみたいだから、今度結果聞いてみたら?」
「ただいま、ようやく来たんだね。そうだね、あとで連絡してみるよ。手応えはあったんだけどなんて書いているかな?」
「お父さんが帰ってきてから空ける、それとも先に空けちゃう?」
「父さんを待つよ、合否も気になるけど、受かったら受かったで父さんにお願いしたいこともあるから。」
「分かったわ。父さん今日はデスク担当らしいから、帰りは18時頃かしら。それまでにお風呂済ましちゃいなさい。」
「分かったよ。それじゃ、お風呂溜め始めるね。」
俺はそう言って母さんから雄英の校章が入った封筒を受け取って風呂溜めボタンを押してから、俺は自分の部屋に入った。
風呂から上がると、父さんが帰ってきていた。
「おかえり、父さん」
「あぁ、ただいま。雄英から手紙来たんだってな。どうだった?結果。」
「まだ見てないんだ。家族みんなで見たいと思ってさ。」
「そうか、なら今から見るとしようか。リビングで待っているよ。」
「こっちも体拭き終わったらすぐ行くよ」
そうして、封筒をもってリビングに行くと父さんと母さんが待っていてくれた。
「来たか」
「早く開けましょう、理」
「今から空けるから、ちょっと待って。」
そう言って、一息ついてから封筒を開く。中には数枚の資料と平たく丸い装置が入っていた。それには小さいスイッチが付いている。押すのかな?
そう思いながらスイッチを押すと・・・
『私が投影されたぁ!!』
No.1ヒーロー"オールマイト"が投影されたのだ。
「なぜオールマイトが?」
父さんが一言つぶやくと
『なぜ私がこんな所に居るのか気になるよね!!その理由は私が雄英に教師として務める事になったからさ!!HAHA!!!!』
流石の俺もオールマイトの爆弾発言に驚きを隠せなかった。父さんも
「これは、エンデヴァさんが荒れるな。」
「そうねぇ、焦凍くんを預けるんだものねぇ。」
懐かしい名前が聞こえて来た。あいつも雄英なのか。元気にしてるかなぁ。
『さてさて、時間もあまり無いことだし結果発表を行っていこうか!まずは筆記試験は何も問題は無かったよ!そして、実技試験は敵ポイント48ポイントだ!敵ポイントは全受験生で2位の成績!いや、素晴らしい!!』
自己カウントよりも少ないな。どこかで計算くるっていたかな?危ない危ない。
『だがしかし、受験生に与えられるポイントは敵ポイントだけにあらず!実は審査制の救助活動ポイントもあった。』
「ほぅ。」
『我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力!救助ポイント。君の場合、後半は救助に徹している所作がよく見られた。特に0Pヴィランから逃げる学生たちを助ける姿勢。その結果審査で勝ち取ったポイントは、敵ポイント48ポイント、救助ポイント32ポイント、合計80ポイント文句無しの1位での合計だ!!世野少年…君は間違いなく今年の新入生でトップになる事間違いなしだ!さあ共に学ぼうぜ!ここが君のヒーローアカデミアだ!!』
「よかったじゃない、理。合格よ!」
「これからが、大変になるな。」
「ありがとう、父さん、母さん。」
書類もあったが同様のことが書かれていて、入学説明会も3月上旬に行われると書かれていた。
「そういえば理、お父さんに頼みたいこと、あったんじゃないの?」
「俺にか?」
そう、これが父さんと一緒に見たかった理由。
「うん。父さん、これからヒーロー科に行くにあたって、ヒーローのいろはって言うのを教えてもらいたいんだ。」
「それなら学校に行けば習うことができるだろ。」
「それじゃぁ、ダメなんだ。俺にとってのヒーロー。理想のヒーロー。それは、エンデヴァ事務所所属サイドキック。ヒーロー:ラウンドラップに聞きたいんだ!」
「それは、お前が俺の息子だからか?」
「違うとは言いきれない、僕にとって初めて見たヒーローは父さんだったから。でもいまは、1ヒーローの卵として聞きたいと思っているんだ。」
「・・・・・・分かった。なら、明日の夜から俺の仕事が終わってからやるとしようか。現場でのリアルな声と学校での教えは必ずしも同一とは限らない。テストで戸惑うことになる恐れもある。それでもいいのか?」
「もちろん。」
少しピリッとした空気が流れる。これからは父さんが命を張っている世界に共に行くのだ。当たり前と言えば当たり前かもしれない。そんな仕事の空気が流れている中、
「さぁ、それじゃ今日はおめでたく合格の祝宴としましょ。」
ふわりとした母さんの言葉は家族への空間に戻す力になった。
「ちよちゃん、今日はボトルを開けよう」
「もう、飲み過ぎないようにしてくださいね。」
なんだかんだ言って、息子の合格は嬉しいのが父親である。
・・・・・
時はさかのぼり入学試験後の教務部
雄英高校ヒーロー科の会議室では、雄英の校長や教師陣が参加する重要会議が行われていた。
「実技総合成績が出ました」
前方の大画面に受験生の名前と成績が上位からズラリと並ぶ。それを見た教師陣から声が複数上がる。
「救助ポイント0で2位とはな!」
「後半、他が鈍っていく中、派手な個性で敵を寄せ付け攻撃し続けた。タフネスの賜物だ。」
教師達が注目しているのは爆豪勝己。敵ポイントのみで2位になった存在だ。
「対象的に敵ポイント0で8位」
「アレに立ち向かったのは過去に居たけどぶっ飛ばしちゃたのは久しく見てないわね」
「思わず、テンション上がっちまったからなー」
こちらは緑谷出久である。
「そして、1位の彼が」
「敵ポイント48、救助ポイント32で敵・救助ともにバランスよく合格した子ね。とても好みだわ!!」
「試験開始直後、遭遇した敵を難なく倒しそこから無双状態ね。救助を見るからに個性の扱い方も上手いです。この映像を見てください」
画面には、粉を落としながらロボが崩れていく姿、またある画面には、コンクリートを砂状にして救助している姿が映っていた。
「このときは、皆と一緒に逃げ出したと思ったわね。」
「自分には無理と考えるまでは皆と共通、その中で自分にできることを常に考える姿勢、人のために行動している事が伝わってくるね。実に合理的な思考経路だ。」
「相澤君がそんなこというなんて珍しいね。」
「俺だって褒める時はありますよ。」
「それでもさ。」
「だが・・・」
「だが?」
「一方で危うい思想だ。彼の場合は個性の反動から考えると自己犠牲の精神が強すぎる嫌いがある。」
少し、相澤先生が不服そうな顔をする。
「そこは、これから僕達が教えていけばいいじゃないか。まだ学生。至らない所はあって当然さ。」
「確かにそうですが・・・、人の根っこを変えるのは中々難儀なことだと思いますね、俺は。」
「まぁ、その時はその時だよ。それじゃ、今年の首席は世野理でいいね?」
「異議なし」
教師一致で世野理の首席合格が決まった瞬間であった。ただ一人相沢消太を除いて。
一度、ここで一区切り。次はいつになるのかな?そしてどこまで書くのかな?それは自分にも分かりません。