東方桃幻隊 ~Battle of Popstar – Word War vision~   作:小林ミメト

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 デデデが、ナイトメアから送られてきた自称美人のキャバ嬢に追いかけまわされているちょうどその頃、霊夢と魔理沙は幻想郷に帰る方法を見つけるために国立博物館の前にいた。

メタナイトに、幻想郷へ帰る方法を教えてもらえそうな人物を探してもらい、彼女なら何かわかるかもしれないとこの場所を教えてくれたのだ。

 建物の外観はギリシャの神殿のような作りで真ん中の青緑色の球状のドームの上には黒地に大きな黄色い星のマークが描かれた旗が立っていた。


第十八弾:ポッキーデスゲーム!?愚狸娘vs幻想少女

「メタナイトによれば、ここで副館長として働いているらしいわよ。」

 

 「なあ、ところであの旗は何なのぜ?」

 

 「さあ?」

 

 「あれは私たちの国、プププランド共和国の旗よ。」

 

 いきなり後ろから声がしたので驚いて振り向くと、この前カービィと戦った時にいた女性がいた。

 

どこかに探検でもしてきたのか、ピスヘルメットを頭にかぶり、サファリジャケットを着用し、背中に背丈の半分くらいのリュックサックをしょって双眼鏡を首にかけていた。

 

 「初めましてじゃないけど、あの時は名前を言ってなかったわね。私はフーム、ここで副館長として働いています。」

 

 「私は、博麗霊夢。気軽に霊夢と呼んでもらっても構わないわ。で、箒を持っているこちらが、私の助手兼掃除番の霧雨魔理沙。」

 

 「ヨロシクナリ!・・・って誰がコ●助じゃい!!」

 

 フームは、魔理沙の乗りツッコミにコロコロと鈴を転がすような声で笑った。

 

 「フフフ・・・カービィと戦っていた時とは大違い。やっぱり例によってデデデに騙されただけのようね。」

 

 霊夢:「そうみたいね、カービィが無事なのであれば今すぐに会って謝罪をしたいんだけど・・・。」

 

 フームは、悲しそうな顔をして首を振った。

 

 「カービィは、いまだに行方が分からないわ。かなり勢いよくあなたたちに吹き飛ばされたようね。」

 

 魔理沙:「そうか・・・せめてもの償いに、カービィの救出を手伝いたいんだが。」

  

 「気持ちはうれしいけど、今から探すとなると何日もかかるわ。それに私の弟がカービィを探しているから、あなたたちの帰る方法を探してからでも遅くないわ。」

 

 フームがそう言って霊夢たちを中へ案内しようとしたその時、車のクラクションがあたりに鳴り響いた。

 

 「なに?あれ!?」

 

 フームが、もうもうと立ち込める土煙の方に双眼鏡を向けて見てみると、必死の形相でこちらに車を走らせてくるデデデが見えてきた。

 

 「デデデ!?」

 

 「なんだって!?」

 

 デデデは、見覚えがある三人を発見すると彼女を倒す案を思いついて車を止めた。

 

 「ようやく観念したようねん。」

 

 「ああ、だがわしも高貴な身分であるが故、ポッキーゲームをするには条件があるゾイ。」

 

 デデデはニヤッと笑ってその条件を話した。

 

 「なるほど、彼女たちを倒せば私とポッキーゲームしてくれるのね。」

 

 「その通りゾイ!では、行くがよい愚狸娘ちゃん!」

 

 「合点承知の助兵衛!!」

 

 フームが双眼鏡で二人のやり取りを除いていると、話が付いたのか二人がこちらに近づいてきた。

 

 「デデデと豚の魔獣らしきものがこっちに来るわ!」

 

 デデデは、ゆっくり車を進めながら拡声器を取り出して、三人にこう告げた。

 

 「あー、あー、貴様ら三人に告げる。よくもわしを散々バカにしてきたな、今からその報いを受けるゾイ!!この、愚狸娘ちゃんでな!!」

 

 「うっ!何よこの匂い!!」

 

 フームは、あまりの体臭の臭さに悶えた。

 

 「あなたたちは、私の旦那様を散々コケにしてきたって言うじゃない。初対面の人だったとしても・・・それは許されないワアアアア!!!!」

 

 愚狸娘は、魔が鋭くなって赤く光り、同時に筋肉が盛り上がって袖と靴下が破れ、気持ち悪い紫の唇から鋭い牙が生えた魔獣の姿となった。

 

「あいつは、魔獣だったのかゾイ?」

 

愚狸娘は鼻息を勢いよく噴射し、四つん這いになって大地を勢いよくけり、イノシシのごとく突っ込んで来た。

 

 「あぶねえ!!」

 

 「きゃあっ!!」

 

 三人は間一髪でよけると、それぞれの戦闘態勢をとった。

 

 フームはリュックから麻酔銃と散弾銃を取り出して構えた。

 

そして、霊夢はお祓い棒を持って周囲に陰陽玉を浮遊させ、魔理沙は八卦路を構えた。

 

 「やる気になったようね。でも、これで一気に片を付けてあげるわ!」

 

 そう言うと、愚狸娘は右手から紫色の気の塊をためた後に三人めがけて連射した。

 

 「そんなもん、打ち消してやるわ!」

 

 フームが必死でよける中、二人は得意の弾幕勝負ということもあって、ギリギリでよけながらなるべく多くの弾幕を発射させて、そのうちの何発かは命中した。

 

 「グアアアアアアっ!!」

 

 魔「やったぜ!」

 

 フ「すごい!!」

 

 愚「まだまだアアアア!!」

 

 だが、煙の中から現れたのは無傷の愚狸娘だった。

 

 霊「嘘!何発か当たってんのに!?」

 

 魔「しぶといイノシシだぜ!」

 

 愚「だれが、ウ〇チ臭いイノシシよぉおお!!」

 

 ブチギレた愚狸娘は、両腕を思いっきり地面にたたきつけて、その衝撃で破壊されたコンクリート片を百裂ラッシュで三人に向かって吹き飛ばした。

 

  魔「そこまで言ってねえダルォ?!」

 

 魔理沙は、軽口を叩きながらも破片を愚狸娘ごと吹き飛ばすためにマスパを撃った。

 

 「む`` ゔ ゔ ん`` !!」

 

 「なに!?グハア!!」

 

 だが、ところどころ黒焦げになった愚狸娘がマスパから飛び出してきたため、対処しきれずに勢いよく殴られて吹っ飛ばされてしまった。

 

 「魔理沙!?」

 

 「痛ッ!!・・・大丈夫だ。少し骨を折っただけだぜ。」

 

 ダァン!!

 

 「ブギィ!!」

 

 突然銃声がしたので振り向くと、フームがどうやら愚狸娘に向かって麻酔銃を撃ったようだ。

 

 「何すんじゃあ!!」

 

 愚狸娘は、怒りに任せてフームめがけて紫色の弾を放った。

 

 「嘘!?熊を一秒で眠らせられる麻酔銃が効かない!?」

 

 フームは、狼狽しながらも紫色の弾をよけた。

 

 「逃がさないわ!!」

 

 愚狸娘は、紫色の弾をフームめがけて四方八方に放った。

 

 「ならば!」

 

 ダーン!ダーン!

 

 フームも負けじと散弾銃を弾の装填と発砲を繰り返しながら、右へ左へと走って愚狸娘の攻撃をよけた。

 

 あまり使い慣れていないのか、愚狸娘にかすり傷か手のひらにあたる程度の命中率だったが、それでも十分相手を疲労させるほどの活躍を見せた。

 

 「成長したなフーム。」

 

 その様子を物陰で見守っているものがいた。メタナイトだ。彼は、三人がピンチに陥ったらソード、ブレイドとともに助太刀するつもりだったが、どうやらその心配はいらないようだ。

 

 一方デデデは、そろそろ頃合いだろうと思ってこの場をこっそり抜け出そうとしていた。

 

 「あ!いたいた!陛下ー!」

 

 「おーエスカルゴン!!」

 

 デデデは、とてつもなく悪いタイミングで現れた従者に対して心の中で舌打ちした。

 

 「陛下があのままあの醜いメス豚に食われちゃったかと思って見に来たら・・・これどういう状況でゲスか?」

 

 「実はな・・・。」

 

 ~ ケツデカピ●グー説明中 ~

 

 「はあ?何をやってるかと思ったら・・・。」

 

 「な?わし凄いだろ!?」

 

 「でも、それってどちらかが勝っても地獄、負けても地獄、ヘルオアヘルでゲスよ。」

 

 デデデは少し考えた後自分の愚かさに気づいて狼狽した。

 

 「あー!そうだったゾイ!!わしはどうすればよいゾイ?!」

 

 その時、デデデの携帯が『飛べ星のカービィ』を鳴らしながら震え始めた。

 

 「誰からゾイ。こんな時に・・・。」 

 

 「もしもし、デデデ陛下。愚狸娘ちゃんはお気に召しましたk・・・。」

 

 セカンドが言い終わる前にデデデとエスカルゴンは猛抗議した。

 

 「お気に召すわけないゾイ!!」

 

 「そうでゲスよ!!お前さんを沖に召してやろうか!?」

 

 「あれのどこがキャバ嬢ゾイ!これだったらフームをキャバ嬢にした方がまだましゾイ!!」

 

 だが、セカンドは悪びれる様子もなく話をつづけた。

 

 「陛下の苦情もごもっとも、本当は彼女もれっきとした魔獣ですから。」

 

 「やっぱり・・・。」

 

 「わしをだましたのかゾイ!?」

 

 「ふっふっふ・・・申し訳ありません。ただいまとある実験の最中のため、陛下のわがままを利用させてもらいました。お詫びとして実験が成功した暁には・・・。」

 

 そこまで言うとセカンドは、スマホのようなものをいじり始めた。

 

 「ざっと、このくらいの金額をお支払い致します。」

 

 そう言ってセカンドは携帯の画面を見せた。

 

 「いち、じゅう、ひゃく、せん・・・ご、五百万デデン!!??」

 

 あまりの金額にエスカルゴンは、目が飛び出してしまい戻らなくなってしまった。

 

 「ちなみに、その実験とはなんゾイ?」

 

 「どんな無機物でも魔獣にできる薬、『ナイトメアオブキメラ』を本当に使えるかどうかという実験です。」

 

 「なぜ、そこまでして即席の魔獣が欲しいんでゲスか?」

 

 すると、セカンドは少し悲しげな顔をして理由を語った

 

 「エスカルゴン殿もご存知の通り、二十年前のナイトメア壊滅の折に魔獣の大半が死滅。残された魔獣たちも、ナイトメアウィザード様の力の影響を受けられなくなったせいで、星の戦士たちによる残党刈りで三分の二程度が帰らぬ魔獣となってしまいました。」

 

 「なるほどそれで・・・。」

 

 「そうです!そこで、我々は考えました。少なくなった魔獣のサポートとして、身の回りの物を魔獣化させればいいのだと・・・。そこで開発したのが、エスカルゴン殿の科学技術と、夢を食べる少女の血液で作った薬、『ナイトメアオブキメラ』です!」

 

 「そう考えると、あの金額もうなずけるでゲスな。」

 

 「ハイ!」

 

 「と言うことは、奴は水が弱点というわけかゾイ?」

 

 「まあ、エスケル魔獣皇帝液DXをベースにしていますからね。」

 

 「あー!さりげなく私の薬にケチつけたでゲスな!!百万デデン増やすでゲス!」

 

 この、最後の発言のやり取りを物陰で聞いていたメタナイトたちは聞き逃すはずはなかった。

 

 さて、こちらはフームたち。愚狸娘の攻撃をよけつつも、着々と攻撃を当ててはいるものの、相手が頑丈過ぎてなかなか倒せずにいた。

 

 「クソ―!どうすりゃいいんだぜ!」

 

 「フーム!霊夢殿!魔理沙殿!」

 

 声のする方を見ると、メタナイト、ソード、ブレイドが買い物かご一杯に水のペットボトルを持って走ってきた。

 

 「メタナイト卿!?」

 

 「受け取れ!!」

 

 「これは・・・水!?」

 

 「そいつはこの間の魔獣と同じ水が弱点だ!!ありったけの水をぶちまけてやれ!!」

 

 デデデは、悔しそうに車のハンドルを叩いた。

 

 「あー!メタナイトめ!盗み聞きしておったか!」

 

 「陛下、こうなってしまっては実験が失敗したも同然。なので、逆に一千万デデン払ってもらいます。」

 

 あまりの額に、二人はずっこけそうになった。

 

 「倍になってるじゃないでゲスか!それになぜ!?」

 

 「セカンドは、呆れた顔で説明した。」

 

 「なぜも何も、そんな開けた場所で堂々と味方の弱点を言う人がいますか!・・・失礼。オホン!・・・というわけで、失敗の原因を作った罰金として一千万デデン払ってもらいますからね。」

 

 そう言うとセカンドは、一方的に通信を切った。

 

 「あ!待つゾイ!コラー!」

 

 「昔のカスタマーと違って怒りっぽい性格でゲスな。」

 

 一方、弱点がばれてしまった愚狸娘は必死の形相で飛びながら水をかける少女二人から逃げていた。

 

 「きゃあー!やめてえええ!!」

 

 「形勢逆転だなメスブタァ!ホレホレ!!」

 

 魔理沙と霊夢は、悪人顔でどんどん水をかけていった。

 

 「やめろって言ってるだろうがアアア!!」

 

 愚狸娘は、ものすごい形相で魔理沙に向かって飛びかかったが、魔理沙は間一髪で急上昇してよけた。

 

 「うおッと!」

 

 「魔理沙!高度に気を付けて!捕まったらおしまいよ。」

 

 「ああ、わかってる!」

 

 「霊夢さん!魔理沙さん!消防車をありったけ呼んで来たわ!!」

 

 霊夢と魔理沙が声のする方を見ると、愚狸娘が逃げる方に消防車が何十台と配置されていた。

 

 「放て!!」

 

 消防車が放水を一斉に放つと、愚狸娘が断末魔の悲鳴を上げながら見る見る小さくなっていき放水をやめると、そこにはびしょぬれになったイノシシの貯金箱が転がっていた。

 

 「ああ!とうとうやられちゃったでゲスよ陛下!!」

 

 「賠償請求もされるし・・・これじゃあ愚狸娘が勝っていた方がまだましだったゾイ。」

 

 「デデデ陛下~。今度というこんどは許しませんからね~。」

 

 デデデとエスカルゴンが冷や汗をかきながら恐る恐る前を向くと、それぞれ武器を持った三人が般若顔で立っていた。

 

 二人の悲鳴と消防団の笑い声が夕焼け空にこだましたのは言うまでもない。

 

 その頃、誰もいなくなった博麗神社の境内にふよふよと漂う幼子のような見た目をした妖怪がいた。ルーミアだ。

 

 「ここにも霊夢はいないのか。」

 

 ルーミアは、みんなが口々に霊夢や魔理沙がいないと騒いでいたので、紅魔館の宴会をこっそり抜け出して、真夜中になるのを見計らって博麗神社までやってきたのだ。別に心配で見に来たわけではなく、ただ何となく霊夢がいない神社の状態がどうなっているのか知りたくて見に来ただけなのだ。

 

 しばらく物色していると、境内に一人の男が現れた。

 

 「おー。人間!」

 

 ルーミアは嬉しそうにその男性に近寄っていった。

 

 男性は声には出さなかったものの、少々驚いた様子だった。

 

 「お前は、どこから来た?食べられるのか?」

 

 人里の人間が聞いたら、腰を抜かしてしまいそうな物騒な質問だが、その男は日本語がわからないのか首をかしげていた。

 

 「Wo ist das?」

 

 男は、ドイツ語でここはどこだ。と、質問をした。もちろん通じてるわけがないが。

 

 「まいったな。外の世界の人間か・・・。しかも、雰囲気が普通じゃあない。食べられないならいいや。」

 

 ルーミアは、頭を掻きながらその場を立ち去ろうとした。

 

 男は、ルーミアを呼び止めようとしたのか、比較的大きめの声で髪飾りを差しながらこう言った。

 

 「Das Haarschmuck ist niedlich.(その髪飾り可愛いね。)」

 

 「ん?あーこれ?かわいいでしょ・・・触ってみる?」

 

 髪飾りを褒められた気がしてうれしかったのか、ルーミアは照れながら男に髪飾りを触れるくらいまで近づけた。

 

 すると、本来は本人でさえ外せない髪飾りは、彼が手から放つ黒いオーラとともにスルスルと外れた。

 

 「あ・・・。」

 

 ・・・という間もなく、ルーミアの周りに黒い靄が急速に集まりだして、背中の部分の紫色の靄は大きな鳥の翼のように羽ばたき、男の手から離れたリボンは宙を舞って頭の上でリングを作り始めた。

 

 しばらくすると、そこには服装はそのままだが明らかに身長が伸びており、先程ののほほんとした表情ではなく、どんな生き物の生き死にも興味がないと言わんばかりの冷徹な目をしていた。

 

 「おお!力が戻ってきた。・・・なるほど、そなたは心に闇を持っていたのか。先ほどは解らなかったが、今なら手に取るようにわかるぞ。」

 

 ルーミアは、もしかしてと思ってあれを行った。

 

 〈そこのお前さん。わしの言葉がわかるかの?〉

 

 〈・・・!脳に直接話しかけてきた!?〉

 

 〈やはりか、どうやら同じ闇属性だから脳の波長が合ったのだろう。先ほどは封印されていたがゆえ、それができなかったのだろう・・・ところで名はなんと申す。〉

 

 〈・・・私はドイツのアンスバッハから来た・・・カスパー・ハウザーだ。〉

 




 ルーミアは、基本的に「そーなのかー」とか「わはー」としか言わないイメージだったのですが、物語の最後に入れたルーミアとカスパー・ハウザーの全くかみ合っていない会話シーンを書く際に、ルーミアのことをpixivなどで調べたら「そーなのかー」は原作では二回しか言っておらず。「わはー」に関しては全く言ってないそうで、この事実を知ったときには思わず「そーなのかー」となりました。
 
 

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