東方桃幻隊 ~Battle of Popstar – Word War vision~ 作:小林ミメト
「これでも食らえ!」
先に仕掛けたのはウィスピーウッズだ。彼は、器用に自分の根っこを手足のように扱い、紫を締め上げようと根っこを四方八方に展開した。
「甘い!」
だが、弾幕勝負で鍛えた紫には止まって見えるような攻撃だった。あちこちからやってくる根っこをホイホイよけていった。
「まだまだ!」
ウィスピーウッズは、根っこでとらえるのが難しいと判断すると、今度は、自分の毒性のある空気弾とリンゴが同時にあたるところまで根っこで紫を誘導した。
「しまった!」
どうやら紫は油断していたようだ。まさか、木が自分を誘導して毒息とリンゴ落としを同時にやるなどと思ってもみなかったようだ。
しかも、運の悪いことにそのリンゴの中に食事中の毛虫が混ざっていたようだ。
毛虫は、急にリンゴごと木から落とされたものだから何事かと思って、リンゴの中から顔を出したら、一人の女性と目が合った。
「アンンギャアアアア!!!」
そのため、おおよそ女性とは思えない悲鳴を上げながら紫は前も見ずに、岩壁に激突して伸びてしまった。
しばらくして紫が目覚めると、森の動物たちが自分を取り囲んで心配そうに見つめていた。ゆっくりと起き上がってあたりを見回すと、そばには根っこで器用にガラス製のコップを持ったウィスピーウッズが植わっていた。
「驚かせてすまなかったな、毛虫が入っているとは思わなかったよ。」
そう言ってウィスピーウッズは、コップを手渡した。中にはなみなみと黄色い液体が入っていた。
「これは・・・。」
「お詫びのしるしにと思ってリンゴジュースを作ったんだ。」
紫は、恐る恐る口に入れるとリンゴそのものの味が舌を駆け巡ると同時に、ほんのりと甘いリンゴの香りが鼻から抜けていくのが分かった。
「おいしい・・・。」
「ハハハ、気に入ってくれて何よりだよ。先ほどは、私の仲間が君を罵倒したことについては私がわびよう・・・すまなかった。」
ウィスピーウッズは、木の上の部分を大きくしならせて頭を下げる仕草をした。
「いえいえ、いい運動になりました。」
紫は、その滑稽な姿にコロコロと鈴のような笑い声を発した。
「その笑い方・・・私が愛した花に似ている・・・。」
「花?」
ウィスピーウッズは、赤くなっていた顔を振り回して気を落ち着かせた。その周りでは、動物たちがクスクスと笑っていた。
「あ、いや何でもない。時に紫さん・・・先程からスカートで光っているものは何かな?」
そういわれて、紫は慌ててスカートのポケットからワープスターを取り出した。すでに限界を迎えているのか、青紫色に変色し始めている。
「それは、カービィのパワーの源ワープスター!なぜ君が持っているのかね?」
「拾ったのよ。つい先ほど森の中でね。」
「なるほど・・・紫さん。あなたがまだ、ここが別世界だと信じられないようであれば、それをもってカブーの谷に行くと良い。・・・誰か、道案内してもらえるか?」
「俺が行くぜ!」
そう言って、手を挙げた・・・いや、翼を挙げたのはクーの息子であるソラチだった。
「では、ソラチ君。頼んだぞ。」
「あいよ!じゃあ紫さん!しっかりついてきてくださいよ!」
「ハイハイ。」
大丈夫かしらと多少不安に思いつつ、ソラチの飛ぶ方へ歩いて行った。
しばらく歩いていると、ワープスターの様子が急変した。先ほどの光より弱弱しくなり、若干黒くなり始めたのだ。
「おい紫さん!なんかワープスターの様子がおかしくねえかい?」
「ほんとだ!大変!ちんたら歩いている場合じゃないみたいね。」
そう言って、紫はスカートのポケットの中から足をそろえて両腕広げた人の形をした紙を取り出して、それをフウッと息を吹きかけて飛ばした。
すると、それは紫の目の前でくるりと一回転した後、ボンという音とともに白い煙がモクモクと立ち上りやがて煙が晴れてくると、そこには、マルクの帽子によく似たナイトキャップのようなものをかぶった黄色い九つの尾を持った狐の獣人がいた。
「お呼びでしょうか紫様。」
「紫さん・・・・こ、こいつは。」
「彼女は私の式神、八雲藍よ。蘭、早速で悪いんだけど妖狐の姿になって私を背に乗せてくれないかしら?」
「御命令とあらば承りますが何ゆえに?」
「急いでカブーの谷というところまでいかなくちゃいけないの。道案内は彼がしてくれるから。」
蘭は、上空で見下ろしている彼に向かってお辞儀をした。
「よろしくお願いします。・・・あの、失礼しますがお名前は?」
あまりに妖艶でかしこまった態度をとるため、紫に対してもため口をきいていたソラチは、顔を赤くして敬語で応えた。
「え?あ、ああ。俺はソラチと言いマス!!こちらこそ宜しくお願いしまっス!」
「解せぬ。」
「紫様?今、何かおっしゃいましたか?」
「いえ、別に。いいから早く変身なさい!」
「では、行きます!」
そう言うと蘭は、紫色のオーラを身にまとったかと思えば、口や手足がみるみる人間のものからイヌ科の動物に近いものへと変化していった。同時に黄色い体毛もワサワサと生えはじめ、物の数秒で紫より一回り大きな妖狐へと変化した。
ちなみに、獣化する前の服装や帽子はそのままである。
「この姿、元に戻ったときに毛の処理が大変だから、あまりやりたくなかったんだけどな。」
その時、何かが勢いよく乗っかる感触がして思わず悲鳴を上げてしまった。
「キューン!!?」
「ほら!ぼさっとしてないでさっさと行く!ソラチもぼーっとしてないで彼女をエスコートしてあげなさい!」
蘭・ソ「ハ、ハイ!!」
蘭は、言われるがままに紫を乗せてソラチを見失わないように必死で走り抜けた。
「紫様ー・・・。なんか、機嫌悪くないですか?」
「気のせいです。」
しばらく行くと、森が開けて大きな崖にそびえたつ堀の深いキャピィ族の石像が見えてきた。
「つきやした。あれがカブーです。」
カブーと呼ばれたその石像は、口のあたりをゆっくりと動かしてしゃべり始めた。
「久しぶりだな。ソラチ君。何の用かな?」
紫は、蘭から飛び降りるとソラチよりも前に出て自己紹介した。
「初めましてカブー殿。私は、幻想郷で妖怪の大賢者を務めております八雲紫と申します。」
「君のことは、ウィスピーウッズがテレパシーで私に伝えた。何でも、ワープスターを私に直してほしいようだな。」
「驚いたわ。あなたたちってそのようなこともできるのね。」
「勿論だ。そして、君がココを幻想郷と信じて疑わないこともすべて知っている。込み入った話はわたしの中でするとしよう。」
「さあ、こちらです。」
ソラチに進められるがままに、二人は、カブーの根元にある人一人くらいは入れるサイズの穴に入っていった。
古めかしい石造りの階段を降りるとそこには、ワープスターがピッタリはまる大きさの溝が比較的きれいに磨かれた台座に掘られてあった。
「これにはめればいいのね。」
「ハイ。」
紫が台座にワープスターをはめると、急にワープスターが光だして周りは真っ暗な宇宙空間に包まれた。
「な、なに?」
「紫様?!」
何が起きたかわからず、紫はスペルカードを取り出し、蘭は毛を逆立て牙をむき出しにして警戒した。
すると、どこからともなくカブーの声がした。
「長生きカブー応える・・・。ここは、私の精神空間ゆえに死ぬこともない。君の話を聞かせてもらおう。」
自分やその式が消滅してないことを確認すると、落ち着きを取り戻してカブーを問い詰めた。
「幻想郷じゃないとすれば、ここはどこなのですか?」
「ここは、ポップスター。君たちが外の世界といっている場所がある星『地球』とは違う遠い遠い星だ。」
紫はこれでようやくここが幻想郷ではないと確信した。なぜなら、紫はウィスピーウッズに外の世界のことは一度も言っていないからである。
「あなたはなぜ外の世界を知っているのですか?」
「そこにも、私の仲間がいて大昔にテレパシーで話し合っていたからだ。」
カブーによると、マーイと呼ばれる宇宙最古の星の戦士が、地球をナイトメアの魔の手から守るため、ムーと呼ばれる大陸に立てた自分たちそっくりの守り神を作り上げ、それが数万年もの間カブーと交信しており、そのためカブーは地球の事情も幻想郷のことも知っているのだ。
「ナイトメア?」
「正式名称は『セイントナイトメア』。『ホーリーナイトメア』を前身に持つ企業帝国だ。彼らは、魔獣と呼ばれる生き物を使役して銀河征服を企んでいる。」
彼が話している間に、どこからともなく一つ目で大きな角が生えたもの、蝙蝠のような羽に鋭い目つきで口にはサーベルタイガーの牙を持つものなどが、次々と彼女たちの目の前に現れては消えていき、まるで百鬼夜行のようだった。
そして、最後に大きく曲がった角が左右についている巨大マントの人物が現れた。
「こいつは・・・。」
「彼が、ポップスターや幻想郷を支配しようとしている企業帝国の社長、ニューホーリーナイトメアだ。」
「なるほど、では私はこれから何をすればよいのですか?」
「カービィというピンク色の丸い形をした星の戦士と接触し、幻想郷を救うための助力を乞うと良いだろう。」
すると、今まで空間に圧倒されていた蘭が紫に話しかけてきた。
「紫様。大事な人物を忘れていませんか?」
「そうだわ!カブー殿!霊夢と魔理沙は今どこにいるのですか?」
「霊夢と魔理沙は、プププシティという場所で暮らしている。デデデという元大王がナイトメアから魔獣を送らせてきたが、今のところすべて返り討ちにしている。しばらくは、こちら側の魔獣退治を任せてもよいだろう。」
カブーが言い終わると同時に空間は元に戻り、台座に埋め込まれていたワープスターが浮いて紫の手元に戻った。
「え!?もう治ったのですか?」
「損傷がひどかった部分だけ直しただけだ。だが、カービィを乗せられるぐらいまでは回復している。」
「ありがとう。カブー。」
紫は、そう言い残すと蘭、ソラチとともにカブーの谷を後にした。
今回、二話にわたって語られた紫の回想の時系列は、第八弾の冒頭より前あたりです。
なんだか、書いていくうちに自分でも時間軸がわからなくなりそうで怖いです。(;^ω^)