東方桃幻隊 ~Battle of Popstar – Word War vision~   作:小林ミメト

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 ここは、銀河系のどこかにあるすべてが機械でできた星『ミード・ドーグ』。
そこには、かつてカービィたちによって倒されたはずのナイトメアが運営するホーリーナイトメア社のロゴマークがその星にでかでかと張られていた。
 いや、星というよりも地球とほぼ同じ大きさを誇る宇宙船とでも言っておこう。
 そして、その船の指令室らしきところで悪夢を食べる、いわばナイトメアにとっては脅威となりうる獏を模した少女がつかまっていた。


第六弾:模倣魔獣ネーマー

 「おい!ここから出せー!」

 「静かにしてください」

 黒のカウボーイハットに紺のジャケットスーツ、黒の革靴とほぼ全身黒ずくめの日本の営業マン顔負けのニコニコ顔の男性が笑顔のまま、少女がつかまっている檻に左手を翳しそのまま握るような動作をすると、急に少女が苦しみだした。

 「んが・・・ぐぐ。」

 どうやらこの男は、人や物に直接触れずとも対象物に干渉することができるようだ。

 「その辺にしておけ、どうせその檻には強力な封印が施されているから容易には脱出できまい。」

 男が後ろを振り向くと、そこには四方八方を光で照らされナイトメア社のマークに似たシルエットとしかわからない人物が奥の方で立っていた。

 「ニューカスタマー、お前は先代と違い感情がうまくコントロールできておらぬ。」

 「申し訳ありませんニューナイトメアウィザード様。」

 ニューカスタマーは恭しく頭を下げた。

「ホーリーナイトメア社のカスタマーサービスは、全宇宙に存在する愚かな暴君に魔獣を注文させ、そこから我々が目指す銀河の完全征服を礎とするのだ。」

「存じ上げております。」

「その過程でどうしても我慢ならぬ態度をとる暴君も存在する。その小娘程度の罵詈雑言で愚痴を言うようではまだまだだな。」

ちょうどその頃、デデデ城ではデデデが盛大なくしゃみをしていた。

 「デェーックシ!!」

 「口を押えて下さいよ陛下。」

 「全くでゲスよもー」

 エスカルゴンはデデデのくしゃみを盛大に浴びたらしく、鼻水まみれになっていた。

 「陛下ともあろうお方がしっかりしてくださいな。」

 そういって霊夢は、霖之助からもらったポケットティッシュをデデデに渡した。

 「噂している奴がいかんのだゾイ。」

 鼻をかみながらもデデデは噂したやつを恨んだ。

 今現在彼らは食堂へとつながる通路を歩いていた。

 魔理沙は、デデデたちに聞こえない程度に霊夢に話しかけた。

 「おい、霊夢。どうする?カービィを完全に退治してないことを報告すべきか?」

 「黙っててもどっちみちバレると思うわ、だからあえてこの件は報告する。」 

 「それは、巫女としての勘というやつか?」

 「ええ。」

 霊夢は一呼吸整えるとデデデに今までのことを報告した。

 するとデデデは怒るどころか逆に喜んでくれた。

 「君たち、よくやってくれたゾイ!!」

 あまりに意外な反応に霊夢と魔理沙はきょとんとしてしまった。

 「え、ですがカービィはまだ完全に倒したわけじゃ・・・。」

 そう魔理沙が言おうとしたところ、デデデは左手で制した。

 「わしは殺せとは言っておらん。それに、マスタースパークとやらでのパワーの源であるワープスターの破壊、そしてそれの強化版であろうファイナルスパークでカービィに少なくないダメージを負わせた。成果としては十分ゾイ!!ガハハハッ!!」

 「それに霊夢殿に至っては、我々に対する反乱勢力の最終兵器をいともたやすく使用させた。これ以上の成果はないでゲスよ。」

 「それはどうも・・・。」

 あまりにも褒められたものだから、二人とも互いに見つめあって苦笑いするしかなかった。

 

~ ナイトメア社の宇宙船『ミード・ドーグ』~

 

 「時にニューナイトメアウィザード様。先程からそちらに漂っている黒い靄(もや)はなんでしょうか?」

 ニューカスタマーは、少女の檻の前を行ったり来たりしている靄を指さした。

 「そうか・・・君は知らぬか・・・。そいつがかつて初代会長率いるホーリーナイトメア社を銀河征服まで行かせてくれた魔獣の中の一体だ。」

 「な、なんと!そうとは知らずにわたしは指さすなどと!・・・あの、失礼ですがこのお方の名は?」

 「そいつは、模倣魔獣ネーマーだ。ちなみにそいつは数あるネーマーの中の一個体だ。」

 「模倣と言いますと、どんなものにも変身できるのですか?」

 「もちろんだ。ネーマー君、試しにそこの少女・・ドレミ―スイートに変身してみろ。」

 すると黒い靄はもぞもぞと動き出し、あっという間に八頭身の人間の姿かたちになったかと思うと、見る見るうちにドレミ―の特徴ともいえる獏のしっぽ、サンタ帽子風のナイトキャップが形成され、最終的に完全にドレミ―スイートそのものになった。

 「な、何よこれ・・・。」

 ドレミ―が驚くのも無理はない、なんせ自分の目の前をうっとうしく漂っていた黒い靄が、あっという間に自分と瓜二つの姿になったのだから。

 「素晴らしいですね!どんなものに変身できるネーマー様の力、このお方さえおれば星の戦士など赤子同然でしたでしょうに・・・。」

 ニューカスタマーは、営業スマイルをより一層輝かせて興奮したが、ニューナイトメアウィザードは、表情は解らないがどこか困惑した様子だった。

 「いや、実はそいつには少しばかり欠点がある。」

 「・・・といいますと?」

 「今この瞬間、この個体は、ドレミースイートしか変身できなくなった。つまり模倣魔獣ネーマーは、変身する前は目の前にいるものであれば誰であろうとその姿をまねることができるのだが、一度まねをすれば、そのまねしたものしか変身できなくなるのだ。」

 「だから、かつてのホーリーナイトメア社も全宇宙を支配するのに時間がかかったのですね。」

 「そうだ。だが、その代わり見た目はもちろん能力、体力、そしてある程度知能を持った生物ならば記憶をもコピーする。」

 能力と聞いてドレミーは背筋が凍るような嫌な予感がした。

 そして、ニューナイトメアウィザードはドレミーが恐れていたことを口にした。

 「そこでだ、まず手始めに幻想郷という数々の能力持ちがいる場所を征服し、この全宇宙の再征服の礎となってもらうのだ。」

 「私は、何をすればよいのでしょうか?」

 「すでに八雲紫に擬態している個体を監視しつつ、デリバリーシステムを使って、デデデにネーマーを含めた複数体の魔獣を売りさばいてくれぬか?」

 デデデとはどういうお客様なのかをニューカスタマーにレクチャーすると、彼は深々とニューナイトメアウィザードに頭を深々と下げた。

 「承知しました。ニューナイトメアウィザード様。」

 ニューカスタマーがモニターに映っている偽紫を監視している間、ニューナイトメアウィザードは、シルエットから白い歯を覗かせて不敵な笑みを浮かべた。

 「陛下、あなたから受けた借りを利子付けて返させていただきますよ・・・ホホホホホ。」

 




 自分で書いておいてなんですが、ようやく物語が進展してきた感じです。(;^ω^)
 というか、一か月投稿とかほざいておきながら、五話目を投稿してから二週間後に次話投稿というなんという計画性の無さ・・・。
 まあ、早ければそれでいいかな?(*'ω'*)次回もお楽しみに!

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