東方桃幻隊 ~Battle of Popstar – Word War vision~ 作:小林ミメト
その頃、ブンたちはカービィを探してとある森の中を歩いていた。
「どうだ。見つかったか?」
「だめですブン署長。森の住人たちに聞いても知らない、分からないだそうです。」
「そうか・・・よし!あそこへ行ってみよう。」
「どこへですか?」
「この森の主さ。」
そういうとブンは、急に自分の庭のごとくどんどん先へと進んでいき、ついにウィスピーウッズのところまできた。
「オーイ!ウィスピー!」
ブンがそう叫ぶと突然巨木がもそもそと動き、木にできた穴のような目と口が現れ、ピノキオのような鼻も形成された。
「久しぶりだなブン君。」
隊員たちは、いきなり木が顔を形作りしゃべりだしたものだから全員腰を抜かしてしまった。
「こ、この木があの有名なしゃべる木の一人・・・じゃなくて一本の・・・。」
「ウィスピーウッズだ。よろしく・・・ハハ、そんなに怖がらなくてもいい。ここの森の木を切り倒そうとしなければ危害は加えないよ。」
怖がるなと言われても、そんなドスの利いた声で言っても説得力ねーよとブンは思った。
「せっかく再開した後で悪いんだけど、カービィ見なかった?」
「カービィか?彼なら俺の頭の上で寝てるぞ。」
ブンが上を見上げると、ピンクの丸っこいのが生っているリンゴに交じって眠っていた。
「カービィ!」
「ぽ、ぽよ?あ、ブン!久しぶりなのだ。」
眠い目をこすりながらカービィはホバリングをしながらウィスピーウッズから降りてきた。
「カービィ無事だったか!でも、なんでウィスピーウッズの上で寝てるんだ?」
すると、カービィの代わりにウィスピーが話し始めた。
「俺は、この嵐が始まる前に少し昼寝をしていたんだ。そしたら、リックが真っ青になったカービィを連れてきたんだ。」
「リックが?」
ウィスピーは、木の葉のついた枝の集合体を自らの意思で縦に動かし、相槌のようなしぐさをした後に話をつづけた。
「ああ、そこで何をしていると聞いたら、カービィが何者かにやられたと言ったんだ。そこで俺は、カービィにリンゴを与えてやった。するとカービィは、みるみる元気になり気づけば俺の頭の上で寝てしまったというわけだ。」
「そうか、おまえとリックには感謝しないとな。ところで、何かカービィに変わったことはなかったか?」
「そうだなー、そういえば、カービィが寝た後に黒い靄のようなものが飛んできてカービィの上で物色するようなしぐさをした後に、デデデ城の方角に飛んで行ったんだ。」
「何!?デデデ城に!?」
その頃デデデは、いまだカービィに似た化け物に追い回されていた。
「ギャアアアアア!お助け―!」
「ウラメシヤ~」
デデデが、場内を必死こいて逃げ回っていると不意に角から焦った形相で出てきたエスカルゴンとぶつかった。
「イテェ!痛いゾイ!」
デデデとエスカルゴンはそれぞれおでこに大きなたんこぶができた。
「痛つつ・・・ヒエー!!へ、陛下!」
デデデは避けられている気がして、むっとした顔でエスカルゴンの胸倉をつかんで抗議した。
「なぜ、わしを見ておびえるゾイ!!」
「当たり前でゲしょうが!あんな脅かし方をしてからに!」
「一体何のことゾイ!」
「わたくしめがトイレから出た後に、突然鎌のようなものを持って追いまわしたでゲしょうが!」
「鎌だと、わしはそんな野蛮なものを武器にしている覚えはないゾイ。」
とはいえ、二十年ほど前に鎌よりも恐ろしいもので追いまわしたことはあるが・・・。
そんなことを思っているとエスカルゴンが突然青ざめた。
「な、なんゾイ。」
もしやと思ってデデデが振り返ると、そこにはあのカービィ(?)がいた。
「ミツケタミツケタ・・・。」
「で、出たアアアア!!!!」
「へ、陛下!置いてかないでほしいでゲスよー!」
廊下を二人が走っていると、向こうから鎌を持ったデデデが向かってきた。
「あ、あれでゲス!私が見た鎌を持った陛下でゲス。」
「後ろはカービィの幽霊、前は鎌を持ったわし・・・絶対領域ゾイ!」
「それを言うなら絶体絶命でゲスよ!!」
デデデがふと右の方を見るとそこには、かつてフームが子供時代に使っていた部屋があった。
「しめた!あそこに逃げるゾイ!」
「ハイでゲス!」
間一髪でデデデたちは部屋に逃げ込み、中から鍵をかけた。
だが、ほっとしたのもつかの間、デデデはもっと恐ろしい光景を目の当たりにした。
「こ、これはどうなってるゾイ。」
「へ、部屋がさかさまになっているでゲス!」
デデデたちは、蜘蛛の巣をかき分けながら恐る恐る歩みを進めていくと部屋の奥の方から声がした。
「デデデ!今度は私の部屋に侵入していったい何を企んでいるの!?」
ビックリして目を凝らしてみると、フームがゆっくりと近づいてきた。
「フームか、脅かすでないゾイ!それにこの部屋の惨状は・・・。」
「お前さんは、今、国立研究所に住み込みで働いている身。なぜここにいるんでゲスか?さては、本物じゃないでゲスな・・・。」
「バレたか・・・。」
そういうと、偽物のフームはニヤッと笑って黒い靄に変身して部屋を出ていった。
それと同時に、天井にくっついていた家具や机が落下し始めた。
「に、逃げるゾイ!!」
「ハ、ハイ!!」
間一髪でデデデたちは、崩落するフームの部屋から逃げ出せた。
「た、助かったゾイ。」
「ソレハドウカナ?」
デデデとエスカルゴンがゆっくりと声のする方を見ると、偽カービィと偽デデデが立っていた。
「ギャアアアアア!!!」
「だから待ってって言ってるだろーが!!」
デデデとエスカルゴンは、もはや逃げ場はここしかないと思ったのか、地下へ向かって走り出した。
「陛下!この城、まさか呪われているんじゃないでゲしょうな?」
「バカモン!この城は立て直してからまだ二十年もたっとらんし、その間一回も殺人事件は起きておらんゾイ!」
「じゃあ、さっきの三体はどう説明すればいいんでゲスか!?」
「わしが知るか!!」
やがてデデデは、不自然に通路を埋めたと思われる壁のひび割れを見つけた。
「隠れる場所はここしかないゾイ!」
「は!?か、壁の中でゲスか?」
「かなり前に、わしは何か理由があってこの通路を埋めた気がするが、この際どうでもよいゾイ!」
そう言うとデデデは、ハンマーを取り出してひび割れた壁に思いっきりたたきつけた。
するといとも簡単に壁は崩れ落ち、中から古びた通路が顔を表した。
「ゲホゲホ・・・ずいぶん古く作ってあるでゲスな。」
「古く見せているわけではない、確かこの通路だけは四十年以上前に創られてからそのままだったはずゾイ。」
「よ、四十年前!?でもさっき二十年前に立て直したって・・・。」
「壊されたのは地上部分だけゾイ。だから地下だけは立て直してないゾイ。」
壁を壊す音を聞きつけたのか、偽物たちが近づいてきた。
「こっちから、音がしたゾイ。」
「逃がさないわ。」
「ヤツラノニオイ・・・スル。」
「い、いかん!エスカルゴン!早く壁を埋め戻すゾイ!!」
「あ、あの・・・陛下。それが・・・壁が勝手に元に戻っていくでゲスよ。」
デデデが、そんな馬鹿なと壁の方を見ると確かに瓦礫が勝手に動き、元通りになっていくではないか。
「こ、これはどういうことでゾイ!?」
「私が知るか!」
エスカルゴンのため口にキレたデデデがハンマーを振り下ろそうとしたその時、男のうめき声のようなものが彼にだけ聞こえた。
「へ、陛下?どうしたんでゲスか!?」
「い、今だれかうめき声を挙げなかったかゾイ!?」
「は!?壁の向こうにいる連中じゃないんでゲスか?」
「いや、明らかに違う男性の声が廊下の先でしたゾイ。エスカルゴン、ライトをだせい!」
「ハイハイ。」
エスカルゴンが懐中電灯であたりを照らすと、明かりにびっくりしたのか小さな隙間に潜んでいたねずみが大量に出てきた。
あまりの気持ち悪さにデデデは、エスカルゴンに飛びついた。
「ギャアアア!!!ネズミ嫌いゾーーーイ!!」
「重い陛下も嫌いでゲスーーー!」
すると今度は廊下の奥から誰かが近づいてくるような音がした。もちろんなぜかデデデだけに聞こえていた。
「ドウゥオ!今度は近づいてくるゾイ!」
「さっきから何をバカなことを言ってるでゲスか?」
覚悟を決めたのか、デデデはエスカルゴンから飛び降り、ハンマーを構えて走り出した。
「こうなったら、原因を徹底的に調べ上げるゾイ!」
「へ、陛下!暗い中廊下を走ったら危ないでゲしょうが!」
ところが、一斉に廊下に飾ってあった松明に火が付き、とある檻の前でそれが途切れていた。
「どど、どうなってるゾイ・・・。」
「とにかく、あの檻まで行ってみるでゲス。」
例の檻まで行ってみるとそこには、古めかしい鎖につながれたキャピィ族のミイラがあった。
「オホー!このミイラよくできているでゲスなー。」
ふと、デデデを見ると頭を抱えてうずくまっているではありませんか。
「陛下。大丈夫でゲスか?」
だが、エスカルゴンの声は全く届いていないのかブツブツと何かを唱えていた。
「何ふざけているんでゲスか?!私を怖がらそうったってそうはいかないでゲスよ。」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
ただ事じゃないと思ったエスカルゴンは、何かにおびえるデデデをしょってここから逃げ出そうとした。
「おいていけー。」
突然、檻の方で声がしたので恐る恐る振り向くとそこには、先程のミイラが鎖を引きちぎってエスカルゴンたちを襲おうとしていた。
「アゲーーーーーーー!!!」
エスカルゴンは断末魔の悲鳴を上げて気絶してしまった。
それを待っていたかのように、今度は、エスカルゴンが主人をほっぽりなげて気絶してもなお、何かに対して謝罪をするデデデに手を伸ばそうとした。
あと一歩というところで、壁を破壊する音が聞こえてきた。
「邪魔が入ったか・・・。」
そうつぶやくと、ミイラはガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
それと同時に糸が切れた操り人形のごとく、デデデも崩れ落ちてそのまま気絶してしまった。
そして、例の偽物三人組が気絶した二人に向かってきた。
「ついに見つけましたゾイ。デデデ陛下、エスカルゴン閣下・・・。」
「ホーリーナイトメア社がお見えでゲス。」
「ヒキズッテデモツレテイクノダ・・・。」
いよいよ、本物のデデデたちと新生ホーリーナイトメア社が次回対面します!
お楽しみに('ω')ノ