ゆかりさんをお迎えする話   作:ゆかりさんを甘やかし隊

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同じ画像を見た人がいれば多分すぐ分かるやつ。文章の練習も兼ねて書いてるので読みづらかったら申し訳ない。

あと最初の方はちょっとだけ世界観についてつらつらと書いているのでそんなん要らねぇよ!という方は読み飛ばしても多分問題ないかと。

・ボイスロイドが肉体と意思を持っている
・世界がその存在を認めている
・そのボイスロイドが商品として売られている←重要

この点さえ留意して頂ければ。




結月ゆかりが家に来た

 ボイスロイド、という存在がこの世には存在する。元々は文字読み上げソフトでしかなかったようだが、それはもう20年以上前のこと。

 

 とある科学者がある日発表したのだそうだ。

 ――ボイスロイドに人格と肉体を与えることに成功しました、と。

 そこから世界の流れは加速した。何せその学者が発表した技術は当時のそれを遥かに逸脱しており、別のとある学者曰く何世紀も後の未来を見ているようだ、とされるほどであったのだから。倫理的な問題は多々ありやれ違法だのやれ非人道的だのと騒ぐ団体もいたが――それ以上に彼女の齎す技術は人類を魅了した。

 

 閑話休題。

 

 さて、そんな新世代人格搭載型生体アンドロイド――いわゆるボイスロイドが世に流通し始めてから約10年。都会では行き交う人間に混じって、ぼちぼちとボイスロイドが見かけられるようになりつつある。

 しかし一人、もとい一体購入するのにも馬鹿みたいな金額がかかるのだ。何せ九割五分がSKのハンドメイドでその技法は彼女以外誰も見たことが無い。出回った当初はウン億という金額が付いたとも言われるそれは、単なる一庶民でしかない俺にとっては違う世界の代物である。

 

端的に表すと、ボイスロイド一体買う値段で家が建つ。

 

それ故、飛びつかずにはいられなかったのだ――大学生が三ヵ月バイトすれば稼げそうな値段で売られていた彼女に

 そのせいで一ヵ月もやし生活が続くことになることなんて小さな問題だった(・・・)

 

 今更後悔しても遅い。そもそも気付くのが遅過ぎた。

 そんな安値で売られているボイスロイドが、何の事情も抱えてない訳が無かったのだ。

 

 記憶の奥底からボイスロイドの知識なんて引っ張り出してはみたものの、そうそう現実は逃避させちゃくれない。

 

 ――さしあたっては。

 

貴方も私の声じゃなくて身体が目当てで購入されたんですよね? もう脱いだ方が良いですよね?

「あの」

ひっ、な、何でも言うこと聞きますから殴らないで欲しいです! お願いします!

 

 目の前で自ら服をはだけさせる彼女をどう説得するか、考えることにしよう。

 

 

 

 

 ###

 

 

 

「まずは落ち着いて、ね? 深呼吸とかしてみてほら。ひーひーふーって」

「……あの、お言葉ですが私たちボイスロイドは孕むことはできないので、あっ、そのごめんなさい! 殴らないでください!」

「…………あー、うん。じゃあとりあえず服着て」

「はいっ! 畏まりました!」

 

 脱ぎ捨てていた服を拾い、わちゃわちゃと着始める彼女を見て瞠目する。

 いやぁ……だめでしょこれは……。

 

 ボイスロイドを世に生み出した科学者某が世界に与えた影響は限りなく大きい。その一つが、ボイスロイドに関する憲法・法律の(ほぼ強制)施行である。ボイスロイドの取り扱いに関して凡そ50項目はあるそれらの中に、有名なのがいくつかある。

 一つ、ボイスロイドに対し精神的・肉体的のどちらにおいても暴力行為を行ってはならない。

 一つ、ボイスロイドの意思を無視して行動を強制させてはならない。

 一つ、ボイスロイドに勝手に手を加えてはならない。

 

 破った場合、もれなく50年以上の懲役か1000万以上の罰金だ。狂ってるとしか言いようのないそれは、数あるSKの問題行動のうち突出している一つとして有名だ。

 

 先の彼女を思い出す。薄紫のショートカットに、胸程まで伸びた前下がり。同色のワンピースを着る時に見えた腹部の腫れと、それを隠すように張られた絆創膏。よく見れば首筋のあたりにも不自然な腫れと変色がある――それはすぐにパーカーで隠されてしまったが。

 

 どうみてもアウトです本当にありがとうございました。

 

 背筋を冷や汗が伝う。この状況をもし誰かに見つかってみろ、それこそ人生が完全に詰む。なんてことのない平民の家系で親族に社長や会長もいない、となれば金は払えない。

 懲役50年……大よそ人生の半分だ。人生最大の危機である。もし捕まれば童貞のまま還暦を迎えるなぁ、ははは。

 

「……」

 

 いや笑えねぇ。そんな人生嫌過ぎる。

 童貞を捨てるだけなら……と、チラりと彼女の方を見る。目が合った瞬間ビクッとされた。その目じりには涙が浮かんでいる。

 

 いや無理無理。手を出したら更に罪が重くなるとか、そういったこと以前の問題だ。

 可哀想過ぎて無理。そもそも童貞に怖がる女の子を押し倒す勇気なんぞあるはずもない。それにそこまで畜生に堕ちた覚えも無い。

 うーむ落ち着け。落ち着いて考えろ俺。

 

 先ほどのワンピースの下のひと繋ぎの大秘宝(ワンピース)を拝んだところで、結局今後どうするかを考えなければならない。ひとまず目の毒でなくなったであろう彼女を観察する。

 

 結月ゆかり型、であることは間違いない。見た目は17~18歳くらいに見える。少女から大人になりかけといったところだ。不安げに揺れるアメジストの瞳はこちらを見ているようで見ていない。どこか遠くを見ているか、はたまた過去を連想しているのか……おそらく後者であろう。

 見た目だけでなくボイスロイドを象徴するその声もまた実況動画等で聞いたことのある声そのままだ。

 

『……結月ゆかりと、申します。本日より貴方様のお世話となります』

 

 雪降る中、路地裏の小汚い中古品屋で、ガラスケースに展示されていた彼女。胡散臭いキャッチに捕まり案内されたそこが、彼女との初対面だった。それから10分もせずにあれよあれよと上手く話に乗せられ俺は彼女を買ってしまう。そう言えば、と店員が言っていたことを思い出す。

 

『中古品なのである程度前の持ち主の記憶が残ってる場合がありますので、はい。それとややキズ(・・)が残っております。その辺りは目を瞑っていただけると幸いです、はい』

 

 がっつり記憶残ってんじゃねーかクソッタレめ!!

 それどころか心も身体も傷だらけじゃねーか!!

 

 てっきり服の傷か小さい傷跡程度だろうと勝手に思い込んでいた俺の責任も少しはあるが……にしても、少しくらい説明してくれたって良いだろう。

 

「……あの店員許さん

「わ、私、何かしましたでしょうか……? ごっ、ごめんなさ」

「いや独り言だからほら顔上げてお願いしますマジで顔上げてくださいどうか」

 

 思わず漏れ出た言葉に彼女が反応する。そうだったボイスロイドは耳も良いんだった。

 膝を付き頭を下げようとする彼女をなんとか止め、慌てて手を差し出す。そもそもここは玄関なのだ。ご近所さんにこの会話を聞かれた時点で詰む可能性すらある。せめて場所を変えなければ。

 

「……? えと、あの……?」

 

 しかし伸ばした手は掴まれることなく。代わりに、キョトンとした表情が返って来た。首を傾げているのが可愛い、じゃなくて。問題はそこじゃない。彼女は今、本気で戸惑っているのだ。

 

 

 つまりは、それは。

 この少女は、今まで一度も手を差し伸べられたことが無いのだという証明であり。

 

 ……もしくは、そんなことさえ忘れてしまうような壮絶な経験をしたか。あるいはボイスロイドであるからこそ、その両方か。

 

「そりゃ、ねぇだろ」

 

 力が抜ける。彼女がどんな過去を背負っているか、それは分からないし予想もしたくない。もしかしたらとんでもない事件に巻き込まれたのかもしれないし、それはまだ終わっていない可能性すらある。

 ただ、それでも。

 

「こっち、来て」

「……はい」

 

 少女の手を握り、ゆっくり立たせてから先導する。伏し目がちにこちらを見上げ、空いた手を胸の前で握るその姿はどこか小動物を連想させた。

 ドクン、ドクンと彼女の手を通して鼓動が伝わってくる。アンドロイドってすげーなと思わず感心したが、それ以上に彼女の手が冷えていることが気になる。

 

「ここ、座ってて。あーあと今ストーブ付けるから。すぐ温かくなると思う」

「あ、や、その……はい。分かり、ました」

 

 しがない男子大学生が暮らすアパートの一室だ、そう大したものもない。リビングまで彼女を引っ張っていき、ひとまずこの部屋に一つだけある椅子――ゲーミングチェアだが――に戸惑う彼女を座らせる。何か言いたげに瞳が揺れるが、少し待っててくれるように頼むと黙り込んでしまう。コミュニケーション能力が高ければ気の利いたことの一つでも言えるのだろうが、俺にそんなスキルは無い。

 

 キッチンに向かい、カップを2つ手に取る。毎朝の日課だが、昼に飲んじゃいけないというルールも無い。ポットからお湯を注ぎ、インスタントの粉末を溶かす。片方にミルクをたっぷり入れて完成だ。

 

 湯気立つカップを両手に持ち、行儀悪く足でリビングの引き戸をスライドさせる。突然開いたドアに驚き立ち上がろうとする彼女にそのまま座ってるように伝え、片方のカップを渡す。

 

「熱いから気ぃ付けてな」

「…………はい」

 

 カップと俺との間で視線が暫しさ迷い、ようやく彼女は受け取った。猫を借りたらこのようになるのだろうか、と昔親から聞いた諺がふと頭を過ぎる。最も、今目の前にいるのは横切る黒猫なんて目じゃないくらいの厄ネタなのだろうけど。

 

 それでも。俺にはもう、彼女を見捨てるなんてことはできない。何をしているんだか――そうやって頭を抱える未来の自分が容易に想像できた。だが、渡したミルク増し増しのコーヒーに口をつけ、美味しそうに目を輝かせる彼女を見ているとそんなのはどうでも良いやと思えてくる。

 

「ちょっとは落ち着いた?」

 

 未だ背筋を伸ばし浅く椅子に座る彼女に問いかける。ビクりとしてカップを落としそうになり、前のめりになりつつ「はい」と返す彼女の顔は多少ほぐれたような気がする。恐らくこちらの方が素なのだろう。

 

「じゃ、自己紹介しよう」

「……は、はい」

「俺は――」

 

 表情は未だ固く目はどこか遠くを見ているようだ……だが、どうしてかこのまま放っておく気にはなれなかった。

 互いの名前を確認し――彼女の方は最初に名乗っていたが――互いの呼び方を決める。寝る場所から着る服まで細かいことは後々決めるとしよう。ひとまずは、これが第一歩だ。

 

「これからよろしくね、ゆかりさん」

「……よろしくお願い……します」

 

 こうして、俺とゆかりさんの日々が始まった。

 

 

 

 

 

 結月ゆかりが家に来た。




はい。はいじゃないが。

ということでした。参考にさせていただいた(というかシチュエーション丸パクリした)画像はこちら※かなりえっちです↓
https://twitter.com/tetotetotetoga/status/1080419217617211393?s=19

勿論無許可です。ごめんなさい。チキンハートの私には絵師様に直接コンタクトを取るというのは余りにハードルが高かった……!
商業利用じゃないし絵のトレースでもないしセーフやろという安直な思いでやっちまいました。許し亭許して。

もし絵師様の方にご迷惑がかかるようでしたら削除する所存です。


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