俺の右手が寄生されたのはまちがっている。   作:MAEKOU

1 / 1
始まり

 地球上の誰かがふと思った。

 

 人間の数が半分になれば燃やされる森も半分になるのだろうか?

 

 人間の数が百分の一になれば垂れ流される毒も百分の一になるのだろうか?

 

 

 

 

 地球上の誰かがふと思った。皆の命を守らなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日の光が無くなった深夜。港に生き物と呼ぶにはあまりにも生物としての機能がない何かが海から這い出てくる。その何かは這い出て、動き、港に停まっているトラックの荷台に忍び込んだ。全てはここから物語が始まる。

 

 

 

 

 

 

 何処かの寝室に`何か`が行動しており、ベットを上る。上った先には40代後半程の男性が妻と一緒に寝ていた。小さく、細い`何か`はあろうことか男の耳を突き破った。

 

「うッ!!......がっ....あああ!」

 

 目の瞳孔は開ききっており、苦悶の声を上げる。流石に妻もその呻き声で起きるも男の呻きが直ぐに治まって妻は「いびきか」と思うだけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千葉県のある一軒家にも、その`何か`はいた。天井から落下し、ベットに着地する。`何か`のターゲットになったのは高校生と思われる男性だった。寝ている顔はとても整っており、体格、身長は平均くらいと思われる。ただ特徴を上げれば髪からぴょこっと生えているアホ毛だろうか。

 男はイヤホンを指した状態で寝ていた。寝落ちというやつだろう。`何か`は耳から男の脳に入ろうとしたがイヤホンが邪魔で入れない。

 ならばと、鼻からの侵入を試みる。

 

「ん......?......なんだ..?....って、うわっ!!」

 

 男は鼻に何かの生き物がいる事に咄嗟に気付き`何か`を捕まえおもいっきり投げた。`何か`は壁に激突し床に這いつくばる。男は整理整頓が得意なのか部屋は綺麗で身を隠す遮蔽物等なかった。

 

「くそ!!...なんなんだ?電気を点けないと」

 

 男は机からリモコンを取り、部屋の電気を点けた。男はやっと、今自身に襲い掛かった生き物の姿を目に納める。

 

「蛇?.....なんで?」

 

 呆けたのを隙と捉えたのか一気に加速して右手を食い破り侵入する。

 

 

「痛っつ!!!...なんだ!!?やばいやばい!!」

 

 男は咄嗟に服の裾をまくり上げて素肌を出し、イヤホンのコードで腕を絞める。よく見ると表皮ごしに何かが蠢いているのが分かる。

 

「クッソ!!!止まれ止まれ!!止まれ!!!!」

 

 日頃は卑屈な考えで日々を過ごし、自身に対しても自虐ネタで内心盛り上がっているような男でもこの時ばかりは命の危険を感じていた。去年の入学式、車に轢かれた時よりもリアルに危機を感じていた。

 

 流石にそんなに暴れていては隣の部屋はおろか、家中に叫び声が聞こえてしまう。

 

 唐突に男の部屋の扉が開く。そこにいたのは、生意気と可愛いと思ってしまう中学生くらいの女だった。女は男同様に髪からアホ毛がぴょこっと出ている。兄妹なのだろう。

 次いで、母親、父親が男の部屋にやって来る。

 

「うっさいよお兄ちゃん!」

「八幡どうしたの?」

「どうした八幡?」

 

 家族が来た事で男.....八幡は少し落ち着くも、未だにパニック状態は続いている。

 

「ヤバいんだよ!!腕の中に蛇がっ!!蛇が!!」

「蛇~!ちょっと見せてみそ」

 

 妹が八幡に近づき、コードで絞めている腕を見るが普通の健康的な腕だった。

 

「寝ぼけてんじゃないの?ゴミいちゃん」

「ちょ、小町!!本当だって!!マジ蛇なんだよ!!」

「いいから八幡。ずっとコードで絞めていたら血の流れが止まっちゃうわよ」

「ん?イヤホンで何を聞いていたんだ?」

 

 父親はイヤホンを耳に指す。すると流れていたのは....

 

 

「おい、めちゃめちゃなデスメタじゃねぇかよ」

「いや~そのあれだ」

「そんなの聞いているから変な夢みるんでしょ。心配して損したよお兄ちゃん」

「はぁ~、何事もなくて良かったけど、変な寝方は止めなさいよ。それと大丈夫?冷汗凄いわよ」

 

 そう言った母親は八幡の髪を優しく手で撫でた。高校生ともなった八幡からしたら恥ずかしいと思うのだが、先程までパニックになっていた影響か、今は羞恥心よりも安堵の方が勝っていた。

 

「はぁ、はぁ、大丈夫だ」

 

 

 八幡は何度か手を振ったり見たりしたが、そこには食い破られた痕なんて無かった。

 

 

 その日はこれで終わり、各々就寝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、八幡は起床して簡単に着替える。鏡で見れば寝顔からは想像できない濁った眼がそこにあった。着替える際何度か右手を開いては閉じてを繰り返す。

 

「(.....右手が痺れる。まさか、あれか俺には隠された力があったとか!何、いまさら中二病に嵌りそうな事が起きるの?)」

 

 割とどうでもいい事を考えながら八幡はリビングに降りる。リビングに入ると制服の上にエプロンを着た小町がいた。どうやら朝飯を作っていたらしい。

 

「おはよう小町」

「おはようお兄ちゃん」

 

 妹の小町はある程度は食い終わっていてのか、食器を片付けている。八幡は遅れて朝飯を食べ始めるも、右手の中指が不自然に動く。それを自覚し、また手の開閉を繰り返す。

 

「どしたの?しきりに右手なんかを見て?それよか寝ぐせ凄いよ」

「うっせ。.............なぁ何か右手が痺れるんだけど」

「そりゃ、そうだよ。あんなにキツくコードで腕縛ったんだから」

 

 小町は八幡の寝ぐせを手で直しながら応える。寝ぐせが直らないと思った小町は「はぁ~」と溜息を吐きながらエプロンを脱ぎ鞄を持つ。

 

「私、今日は生徒会の関係で早く行かないとだから出るね」

「おう、いってら」

「いってきま~す」

 

 小町が学校に行き、家で独りになっても八幡は何度か右手を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わって、昨夜`何か`に耳から侵入された男は鏡で自身の顔を触っていた。ただ、それだけなら、まだまともだ。その男が異常だった。左右の目は別々に動き、唇もピクピクしている。

 男は、何かの確認が終わったのかリビングに向かう。そこにいたのは妻だけ。妻は呆れた表情をしている。

 

「何やってんですか。子供達は皆学校に行きましたよ」

 

 男はその言葉には返事をせず、妻に近づく。やがて肩を優しく掴み......

 

 

 

 

 男の顔が突如、割れた(・・・)。それもヒトデの形に近い。中からは複数の管やら何やらで繋がれた目玉に、鋸状の突起。

 

「あ....あな.......」

 

 瞬間、割れていた男の顔は閉じる。妻の頭を呑み込む......否、食べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日の激しい痛みが嘘のようだ。俺はそう考えながら学校に向かう。今日は自転車での登校はしない。流石に昨日の今日では事故りそうだったからな。俺が事故ったら小町にも心配かけるし。妹の事を気遣う兄。ポイント高い!

 どうでもいい事を考えるも、昨日の事が頭から離れない。あれは確かに現実だった。夢じゃない。現に今でも痛みは覚えている。いや、まぁ俺が幻覚とか幻聴を見ていても不思議ではないけど。

 

 確かに俺の右手は食い破られた。そして蛇?っぽい何かが俺の右腕に入って来た。

 

 

 俺がそんな事を集中して考えていると...

 

「ヒッキー!!」

「うひゃ!!」

「うあっビックリした!」

 

 俺の背中を叩いた張本人を見る。つか、ビックリして変な声が出た。

 

「なんだよ...由比ヶ浜じゃねぇか」

「やっはろ-。それにしても凄い驚きようだったね」

 

 この天真爛漫な美少女は由比ヶ浜結衣だ。彼女の笑顔はまさしく向日葵と評されるものだ。その笑顔に何人の男が勘違いした事やら。ま、俺ほどのプロのぼっちになると、そんな勘違いはしないがな。薄い茶髪に学校のブレザー越しでも分かる圧倒的質量の果実。何処かの氷の女王にも見習って欲しいものだ。

 

「うっせ、いきなり背中を叩かれたら誰でも驚くわ!」

「ヒッキーの驚いた時の声はおもしかったよ!」

「さいですか」

 

 気さくに俺に接してくれている姿は、とても裏を感じれず俺は戸惑う事がしばしば。まぁアホの子だから仕方ないか。

 

 

 

 

「ひひひひ...ヒッキー?」

「なんだよ...ひを連呼し......え?」

 

 

 何が起こったのか分からない。気づいたら俺の右手は由比ヶ浜の顔を触っていた。え、何を言っているのか分からないって?安心しろ俺もだ。

 

「いきなりどうしたの?」

「いや......」

「あの......人も沢山いるし..」

 

 

 次第に俺の右手は、俺の意識とは違った動きをする。最初は額を触っていたのに頬を撫で両頬をもみもみしている。え、俺ってプロぼっち卒業していたの?つか、マジ視線が。でも、無抵抗に両頬をもみもみされていたる由比ヶ浜を見てると、なんだか子犬みたいな可愛さを感じてしまう。こいつ、前世犬だったのだろうか。

 やがて、俺の右手は由比ヶ浜の唇に触れる。

 

「え....あの、ヒッキー?人がいるしね。別に私は嫌って訳じゃないよ!!ただ心の準備というか、視線というかその...えっと......ほら...二人k.....」

「.......あっ」

 

 俺も驚き、自身の右手を見る。しばらく俺は放心していた。何故って。あの、たわわな由比ヶ浜の胸を揉んでいたからだ。つか、これがオッパイなのか。まじ柔らかい。

 

「.あわわわ、ヒッキーの馬鹿!!!変態!!八幡!!ありえない!!」

「ちょ!!俺の名前は悪口じゃねぇ!」

「フンっ!」

 

 てっきりビンタとかが来ると思っていたが由比ヶ浜は鼻息荒くして早歩きで学校に向かっていた。周りからの視線に軽蔑の視線があるのは俺の自意識過剰と思いたいが、こればかしは現実逃避できないな。

 俺は、柄にもなく走って学校に向かう。

 

 

 

 授業中も由比ヶ浜は俺に一切視線を合わせようとはしなかった。何度か謝りに行こうかと思ったが、その都度由比ヶ浜は躱す。俺嫌われちゃった!?まぁカースト底辺の俺が今まで仲良く出来ていたのが不思議か。それに戸塚からは微妙な目で見られるし。九分九厘、朝の事が噂になっているよ!八幡わかる。

 

 

「――――――――――の様にして問題を解いていきます」

 

 英語の授業。俺は眠気と戦いながらノートを取っている。俺にはノートを貸してくれる様な友達がいないからな。全部自分でしないといけない。

 眠気のせいか、消しゴムを落としてしまう。椅子から立ち上がると目立つので座った状態で取る。幸い消しゴムはそこまで離れている訳でもない。俺は消しゴムに手を伸ばす。

 

「(あと....ちょっと!)」

 

 俺が必死で右手(・・)を伸ばしていると、唐突に腕が伸びた。その伸びた手は消しゴムを掴む元に戻る。見間違かと思いたい。けれど、手の中にある消しゴムは本物だ。俺は今の場面が他の人に見られていないかキョロキョロと挙動不審になってします。

 

「(なんなんだよ...一体!!)」

 

 

 四時間目は体育の時間。一学期はテニスのお陰で戸塚と一緒になれたが12月の現在はバスケとなっている。テニスは一学期したからという理由で選択に入っていなかった。バスケと、サッカーの選択だったが俺はバスケを選んだ。何故なら戸塚がいるから。ああ~戸塚。戸塚は何故男なんだ!!絶対にラブコメの神様戸塚の性別間違えているだろ。

 

「へいっ!!」

「パス!!」

「決めろ!」

 

 体育の時間、俺は見事なステルスで空気になっている。まさしく幻の六人目だな。まぁ味方からも認識されないが。

 俺がボケっと空気になっていると、「八幡!!」と戸塚がパスをくれたではないか!!

 

 

 俺は見事、パスを受け取るもすかさずディフェンスが入る。しかもよりによっての葉山だ。

 

「君がこうして目立つのは珍しいね」

「うっせ。戸塚からのパスだ。何としてでも戸塚に良い所を見せる」

「はは......」

 

 葉山は苦笑しているが、それでも中々抜けない。俺がもたついていると、またしても右手が無意識に動く。俺の右手はボールを持ち、一気にリングまで投げ入れる。しかもコートの半分以上から距離があるにも関わらず。周りの皆もリバウンド待ちしている。

 が、結果は見事なシュートが決まってしまう。

 

「..........」

「へぇ凄いや。流石はヒキタニ君かな」

 

 何時もなら内心比企谷だと反論していたが、今の俺には余裕がない。俺は右手を改めて見るも無反応。その現状に恐怖すら覚えた。

 

 

 放課後、何時もなら奉仕部に向かう所だが右手の原因を調べない事には平穏な生活を送れない。俺は気まずい雰囲気の中、由比ヶ浜に「今日はいけない」事を伝える。

 由比ヶ浜は元来、場の空気を読むことには長けていた。だから俺の変化も分かったのだろう。由比ヶ浜は雪ノ下に伝えると言っていた。

 

「ヒッキー、私、あの事気にしていないから!」

 

 その言葉は額面通りに受け取ればいいのだろうか?あと、由比ヶ浜の隣にいる女王さんが怖かったです。なにあれ、マジ怖い!!流石はトップカースト。俺がスライムだとしたら、あれは魔王の幹部だろ。勿論、魔王は雪ノ下の姉だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰り着いた俺は家族共同のパソコンで調べものする。

 

 

《右手 無意識 病気》

 

 検索したものの、俺が今患っている症状については書かれていない。俺が他のワードで検索をしようとした時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 右手から目が生えてきた。正確には皮が瞼のように開き目玉が現れた。それも直ぐに元通りになったが。俺は怖くなり、また勘違いと思いたくて近くにあったハサミを手に取る。刃先を自身の右手に向け、少し刺そうと思った瞬間...........

 

 

 

 

「ギャアああ!!!!!!」

 

 俺の右手が化け物みたな形になった。俺の頭を喰らわんとす勢いで口が現れ大きく開く。

 

 

「ああああああっ!!!なんッ!だよ!!ぁあああ」

 

 やがて、その勢いも無くなり右手の形状が戻るも、不自然な形になっていた。指先はフニャフニャになり人差し指からは目玉がギョロリと俺を見ていた。掌には口らしきもの。

 

「........ぱい......し......ぱい」

 

 やがて、俺の右手が喋りだした。

 

「あた.....ま......食べれない..ぱい......しっぱいしっぱい」

「ひぐっ!ぁぁぁ」

 

 幾つもの黒歴史を持つ俺でさえ、この時は恐怖のあまり泣いてしまう。腕は不自然に伸び近くの椅子に`何か`は座る。

 

「誰だよ!!お前!!

「だれだよ、おまえ」

「俺の右手!!?」

「おれのみぎて........たべたー」

 

 唐突に聞かされた驚きの発言に俺はようやく少し冷静になる。

 

「た....食べた!?」

「ことば、おし....えろ。.....はちまん」

「はぁ!?」

 

 

 




おもしかったたら、感想、評価お願いします!!




感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。