ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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世界中CONTROL!!(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

千歌「最近様子がおかしかった功海お兄ちゃん。だけどウルトラマンさんたちが怪獣をやっつけた頃には、すっかり元気になってた! 安心した私たちAqoursは、スクールアイドルのイベントに出場するために、はるばる東京へと出発! ……だけど……」

 

 

 

 ――綾香市の一画の十字路。何の変哲もない土地なのだが、ここに突然異変が起こった。交差点の中心がいきなり陥没し、砂が広がっていって大きな蟻地獄のようなありさまに変貌していったのだ。

 そして蟻地獄の中央から、虫型の巨大生物が這い出てきた!

 

「キィ―――キキキッ!」

 

 巨大生物は二本の腕から火炎を放ち、己の周囲を無差別に燃やしていく。巨大生物から一目散に逃げる自動車の群れの一部が炎上するほどに広範囲が火の海に変えられていく。

 

「きゃあぁぁぁ―――――!」

「怪獣だぁ―――――!」

 

 綾香の街の人々が、悲鳴を発して我先にと逃げていく。――その光景を見下ろす飛行船からの映像をながめ、愛染がひと言つぶやいた。

 

「怪獣じゃなぁい。アリブンタは、超獣だ」

 

 綾香を我が物顔で蹂躙する超獣アリブンタ。だがその時、空の彼方から猛スピードで駆けてくる赤と青の流星が。

 

「キィ―――キキキッ!」

『『はぁッ!』』

 

 暴虐の限りを尽くすアリブンタの正面に颯爽と着地したのは、綾香の平和を守るために駆けつけたウルトラマン兄弟。ロッソウインドとブルフレイムだ。

 

『行くぞ、梨子ちゃん!』

『やっちゃおうぜ、曜!』

『「はいっ!」』

『「ヨーソロー!」』

 

 ロッソとブルの呼びかけに、彼らのインナースペース内の梨子と曜が威勢よく返事をした。

 

 

 

『世界中CONTROL!!』

 

 

 

「キィ―――キキキッ!」

 

 アリブンタはロッソとブルの登場で街の破壊の手を止め、そちらに意識を集中した。対するロッソたちは角からスラッガーを引き抜いて武装する。

 

「『ルーブスラッガーロッソ!!」』

「『ルーブスラッガーブル!!」』

 

 突進してくるアリブンタを前蹴りで止めたロッソたちは、ひるんだ相手にスラッガーの斬撃を浴びせる。

 

『はぁーッ!』

 

 ブルの後ろ手の刺突がアリブンタに決まった。初めはろくな戦い方を知らなかった兄弟であるが、実戦をいくつも経験することにより、今ではすっかりと戦う姿が様になるようになった。

 が、

 

「きゃー! ウルトラマンさん、かっこいー!」

「がんばってー!」

 

 綾香から浦の星女学院に通っている生徒が三人、ロッソとブルに向かって応援を送った。それに気がついたブルの手が止まる。

 

『「あっ、ウチの子たちだ」』

『ほんとだな。ちょっと克兄ぃそこどいて』

『え?』

 

 ブルは生徒たちの方に数歩近づくと、しゃがみ込んで手を振った。

 

『どうもー』

『「応援ありがとー!」』

「きゃあっ!? こっちに手ぇ振ってる!」

『「えぇーっ!? ちょっとぉ!?」』

 

 敵に背を向けて生徒たちの相手をし出したブル。ロッソは慌ててアリブンタの攻撃を受け止めた。

 

 

 

 ブルの行動を見た愛染が、わなわなと震えて立ち上がった。

 

「おいコラぁッ! 何やっとんだお前はぁッ! 今戦闘中だぞ分かっとんのか!?」

 

 

 

「キィ―――キキキッ!」

『うわッ!』

 

 一人でアリブンタを抑えていたロッソだが、アリブンタのパンチを食らってふらふらしながらブルの元まで退く。

 

『功海、あいつ結構強いぞ……!』

『「もう、よそ見してないでよね!」』

『「ごめんごめん」』

 

 笑ってごまかす曜。ブルはロッソを自分の前に立たせる。

 

『克兄ぃ、考案したあの連携技、試してみようぜ』

『よぉし……!』

 

 ロッソが右手に風を溜め、投球の要領で勢いよく放った。

 

「『ロッソサイクロン!!」』

 

 解き放たれた風は横向きの竜巻となってアリブンタにぶち当たり、アリブンタは身動きが取れなくなる。

 

「キィ―――キキキッ!」

 

 しかしこれで終わりではない。ロッソが横にどくと、前に出たブルが竜巻に向かって発火能力を発動。

 

「『パイロアタック!!」』

 

 空気中の酸素に引火して竜巻はたちまち炎の渦に変わり、アリブンタを襲った!

 

「キィ―――キキキッ!!」

 

 炎の竜巻がアリブンタの巨体を空高くに持ち上げていき、空中で爆散させた!

 

『見たか! ファイヤートルネードだ!』

『「大成功っ!」』

『「やりましたね!」』

 

 見事アリブンタを撃破したロッソとブルに向かって、浦女の生徒たちが黄色い声を送る。

 

「ありがとー! ウルトラマンさーん!」

「一緒に写真撮って下さーい!」

『写真だって! いいよー!』

 

 ぐっとサムズアップで了解の意を示すブルにロッソが突っ込む。

 

『いや写真はまずいだろ……!』

『「えーいいじゃん克兄ぃ~。ファンサービスだよ!」』

『「曜ちゃん、克海さんたちの正体バレにつながったりしたらまずいって!」』

「はい、チーズ!」

 

 ノリノリな曜に梨子が渋ったりしていたが、生徒たちがスマホを向けてシャッターを切ると、結局ロッソもVサインしたのであった。

 

 

 

 女子高生と一緒に写真を撮ってからようやく帰っていくロッソとブルに、愛染が憤懣やるせない様子になっていた。

 

「戦いが終わっていつまでもその辺にいるな! 時間切れになったらどうするつもりだよ! 全くあいつらどうしようもないなほんと……!」

 

 不満をこぼしながら、社長室より隠し部屋へと移っていく愛染。――そこには『特待生』と称して様々な場所、社内からも集めた少女たちが、怪しい装置につながれた状態で並べられている。

 

「やはり私がウルトラマンの何たるかを、奴らに知らしめてやらなければならんな。人数もそろったことだし、いよいよ始めるとしようか……! 皆さん準備はオッケー?」

 

 虚ろな目をしている少女たちに反応がないことを知りながら、愛染は装置を起動させるレバーハンドルに手を添えた。

 

「それじゃあみんなの願いを、レッツUNION!!」

 

 愛染がレバーを動かしてスイッチを入れると同時に、少女たちが口をそろえてある唄を歌い出す。

 

「アァー……アアアーアアアー……アーアーアアアーアァー……」

 

 ゆったりとした、優しいながらもどこか物悲しい旋律の唄――それとともに、少女たちに被せられている赤い輪から中央の装置にエネルギーが送られ、四枚のクリスタルに囲まれた「剣」のクリスタルに反応が起こる。

 剣のクリスタルから光の粒子が出され、リング状の物体に形成されていくのを目にして、愛染が鼻息を荒くしていく。

 

「おお……! 遂にこの時が来たか……!」

 

 ――しかし、途中で粒子が崩れて物体は完成せずに消滅した。

 

「あれ? おおい駄目だ駄目だッ! ウッチェリーナ君、もっと機械のパワーを上げるんだ!」

 

 完成間近での失敗に怒った愛染がピンマイクを通してウッチェリーナに命令する。

 

[これ以上彼女たちに負担を掛けるのは危険です!]

「構わんッ! やれ!!」

[了解しました!]

 

 一度は反対しながらすぐに従うウッチェリーナ。

 だが、虚ろな顔の少女たちの中にありながら、瞳に光がある二人の少女が止めた。

 

「待って! やめてっ!」

「足りない分は、私たちが補います!」

 

 身長に差のある二人の少女の申し出に、愛染はにんまりと笑顔になる。

 

「何と気高き精神! 私が見込んだだけのことはある。じゃあお願いね~」

 

 褒めたたえながらあっさりと負担を強いた愛染が、装置のスイッチを入れ直した。

 

「アァー……アアアーアアアー……!」

 

 二人の少女は脳からエネルギーを吸い上げられ、余分な苦痛に苛まれながらも、懸命に歌い続ける。

 その結果、再び放出された光の粒子は途中で崩れることなく、一つの形になっていく。

 

「今度こそ間違いないぞぉ……! とうとう出来上がる……!」

 

 剣のクリスタルの錆が消え去り、光の粒子が小ぶりのリングに取っ手がついたような、奇妙な形状のアイテムに変わった――。

 

「私だけの変身アイテム! オーブリングNEO!!」

 

 

 

 克海と功海は『四つ角』で、東京より帰ってきた千歌たちAqoursと、イベントの結果について話をしていた。

 

「東京では、残念だったみたいだな、みんな……」

「まさか、ほんとにけちょんけちょんにされるなんて……」

 

 克海たちは自分のことのように気を落とす。功海は、あんなこと言わなきゃよかったと内心悔やんでいた。

 Aqoursのイベントでの結果は――得票数0。何も失敗した訳ではない、今の自分たちがやれる全力を出し切ったというのに、観客の誰一人もAqoursのパフォーマンスを評価しなかったという惨い結末となった。ダイヤが克海たちに話した通り、上位のスクールアイドルの世界にはAqoursの力は全く通用しなかったのだ。

 あんまりな結末に、一時はAqours全員が心の奥底まで打ちのめされたのだが――今は、活力を取り戻していた。

 

「だけど、私たちはスクールアイドルをあきらめないよ! このまんまじゃ、悔しすぎるもん! 今は0かもしれないけど……これから1にしていくんだっ!」

 

 千歌が以前にも増して気合いの入った表情で、そう宣言した。他の五人も、一様に引き締まった凛々しい顔つきとなっていた。

 徹底的な敗北を経験したことが、却って彼女たちにとって良い結果となったようだ。そう感じて、克海と功海は表情を綻ばせた。

 

「いい顔になったな、千歌。大丈夫、本気でやることなら誰だって一度や二度は大きな壁にぶち当たるもんだ。みんなが特別駄目な訳じゃあない」

「今が0なら、もう這い上がるだけだぜ! 同じ人間なんだ。他の奴に出来て、お前たちに出来ないなんてことなんかねぇさ!」

「ああ! これからもっともっと腕を磨いて、いつか今回の観客たちも振り向かせるようになれ!!」

「うんっ!!」

 

 克海たちからの熱いエールに、Aqoursは力を込めた顔でうなずいた。

 その時に、千歌たちがスクールアイドル活動で使用しているノートパソコンがメールの着信を報せた。

 

「あっ、メールだ。今度は誰からだろ?」

 

 曜たちがパソコンの前に集まってメールを確認し、そして驚きの声を発した。

 

「えぇー!?」

「何だ? どうしたんだ?」

 

 克海と功海が何事かと振り返ると、梨子が息を荒げながら画面を二人にも見せた。

 

「これ! 見て下さい! 愛染さんからなんですけど!」

「愛染さんから!?」

 

 克海たちがメールの内容に目を通すと、次のように書かれてあった。

 

『Aqoursの皆さんへ。この度のスクールアイドルワールドの結果は誠に残念でした。つきまして、皆さんに私からの特別レッスンを施したいと考えております。是非とも後日、下記の場所にご足労下さい。愛と正義の伝道師 愛染正義』

 

 これに克海たちに驚く。

 

「愛染さんが、みんなのためにわざわざ!?」

「何でそこまでしてくれんだ? 千歌たち、愛染さんの学校の生徒でもないのに」

「愛染さんはやっぱり私たちの味方なんだよ! 私たちのステップアップのために、貴重な時間を割いてくれるなんて! ありがとう愛染さんっ! アイゼンテックに向けて礼っ!」

 

 興奮して変なテンションになった千歌が、部屋の壁に向かって頭を下げたことにルビィが苦笑いした。

 

「千歌ちゃん、そっち反対……」

「それにこれ、よく見たら……曜と梨子、ヨハネの三人だけになってんぞ」

「えぇー!? 何でぇ!?」

 

 指名があることにショックを受ける千歌。

 

「さる事情につき、なんて書いてあるけど」

「愛染さんの特別レッスン、マルは受けられないなんて……善子ちゃんずるいずら!」

「善子じゃなくてヨハネよ! そんなこと言ったってしょうがないじゃない。先方がそう言うんじゃ」

「でも、マルだって腕を上げて、みんなの役に立ちたいずら……」

「花丸ちゃん、落ち着いて。ルビィたちは大人しく待ってよ?」

 

 納得がいかずにむくれる花丸をルビィがなだめた。

 一方で、指名された曜たち三人は互いに顔を見合わせる。

 

「それにしても、この三人って……まさか……」

「……まさかねぇ」

「だよね。偶然だよね、きっと」

「何が?」

「あっ、ううん。何でもないの」

 

 聞き返してきた千歌に、梨子が手を振ってごまかした。

 

 

 

 翌日の早朝、克海と功海はダイビングショップで果南と話をしていた。

 

「聞いたよ。果南ちゃん、遂に復学するんだってね」

「うん。もう夏休み近いけれど、大分休学続いちゃったからね。一日でもクラスに顔を出そうと思って」

 

 克海にそう答えた果南が、今度はこちらから二人に問いかける。

 

「ところで千歌から聞いたんだけど……曜たちが、あの愛染さんから特別レッスンってのを受けるんだって?」

 

 それに功海が首肯する。

 

「ああ。それで千歌たち、今日は直帰さ。千歌の奴、自分は行けないのすごい残念がってたぜ」

「……それに、克兄ぃたちも呼ばれてるんだって?」

 

 果南が聞き返すと、克海が認めた。

 

「何か、俺たちにも話があるからってさ。何だろうな、話って」

「母さんが出世するんじゃね?」

「それだったら母さんに言うだろ。だけど、それがどうしたんだ?」

「……ううん。ちょっと、気になっただけ」

 

 と果南は返したが――以前の盗聴器、そしてルビィの入院時に一瞬だけ目にした愛染の並々ならぬ表情のことが、内心では渦巻いていた。

 

 

 

 その日の学校が終わると、梨子、曜、善子の三人は克海たちの車に乗って、愛染が指定した場所へと向かっていった。

 その場所とは――周りを野山に囲まれた、採石場跡地。

 

「何でこんな場所でやるんだろ? 特別レッスン」

 

 梨子が疑問に思うと、功海と曜が冗談めかして言う。

 

「スタントみたいな激しいアクションの練習でもあるんじゃね?」

「ほんとにそれかもね。東京で会ったSaint Snowってスクールアイドルの子、新体操ばりに飛び跳ねてたし!」

 

 どんなすごいレッスンなのかと多少浮つきながら、車は採石場跡地に到着。その中央では、愛染が野点と屏風を用意して彼らを待っていた。

 

「ご苦労だったねぇ。迷わず来れたかな? 愛染正義です」

「大丈夫です。位置情報頂いてたので」

 

 車から降りた一同に、いやににこやかな表情の愛染が話しかけ、克海が返答した。

 

「いやいや、世の中には位置情報あっても道に迷っちゃう、困ったけどかわいい人もいるからねぇ~。油断はならないよ」

「ハハ、そんな人いるんですか」

「愛染さん、今日はよろしくお願いしまーす!」

 

 克海は冗談と思って相槌を打つ。曜は皆を代表して愛染に元気よく挨拶した。

 

 

 

 その様子を、林の木陰に隠れながら、密かに見張っている者がいた。

 

「ふっふっふっ……ほんとはいけないことだけど、どんなことやるのか、見せてもらうずら」

 

 花丸だ。どうしても特別レッスンの内容が知りたい彼女は、先んじて自転車で出発して待ち伏せていたのだ。

 しかし、その背後から誰かに声を掛けられる。

 

「あれ? あなたは、一年生の……」

「ずら!?」

 

 驚いて振り返る花丸。そこに立っていたのは、

 

「松浦果南さん!? 何でここに……」

「それはこっちの台詞なんだけど……」

 

 果南だ。彼女は花丸の隣に並んで、樹の影から愛染と話をしている克海たちの方に目をやった。

 

「まぁいいや。ちょっと一緒にいさせて」

「いいですけど……果南さん、スクールアイドルだったんですよね? だから興味があるんですか?」

「……そういうことじゃないんだけどね……」

 

 果南は、特に愛染の挙動を注意深く監視する。

 

(もしもの時は、警察に通報しよう……)

 

 

 

 特別レッスンの始まりを今か今かと緊張しながら待っている曜たちに、愛染がニコニコしながらあるものを差し出した。

 

「まずはこれを渡そう。自分の名前が書いてあるのを取ってねー」

「これ何ですか?」

「終業式にはまだ早いけどねぇ~」

 

 差し出されたのは大きめの封筒。中身を取り出すと、「アイドル通信簿」なるものが三部、それぞれ曜たちの名前が印刷されたものが出てきた。

 

「アイドル通信簿……?」

「はい、これは君たち兄弟の分」

「え? 俺たちも?」

 

 愛染は更にもう一枚、封筒を克海と功海の方に差し出した。疑問を感じながらも受け取る兄弟。

 梨子たちの方は通信簿を開き――その内容に愕然とした。

 

「な、何これ!?」

「こ、酷評の嵐……」

 

 通信簿には「ボーカル」「ダンス」「ビジュアル」、他にも「キュート」「クール」「パッション」「エンジェル」「フェアリー」「プリンセス」などよく分からないようなものも含めて様々な項目があるが……三人とも、そのほとんどが「だめ」「0」などの低評価であった。特記事項には、曜は「意識が高海千歌さんに向く傾向があります。もう少し観客に向けるよう注意しましょう」、梨子は「表現に照れが残ってこぢんまりとしがちです。大胆さを身に着けましょう」、善子は「キャラがネタに走りすぎです。もっと自分を抑えることを覚えましょう」などと書かれてあった。

 

「他の三人の分もあるから、帰ったら渡しといてねー」

 

 しかしもっと大きな問題が、すぐ横にあった。

 

「な、何だこれ!?」

「どういうことだ!?」

「ど、どうしたんですか? えっ……!?」

 

 克海と功海が声を上ずらせたので、梨子たちが二人に渡されたものに目を向け――絶句した。

 克海たちの封筒の中身は「ウルトラ通信簿」というもので――二人のウルトラマンとしての能力や行動を、梨子たちをも下回る評価で示し出していたのだ。

 

「あ、愛染さん! これはどういうことですか!?」

「んー? 言わなきゃ分かんない?」

 

 曜が泡を食って尋ねると、それまでずっとニコニコしていた愛染が――憤怒の形相に豹変した。

 

「お前らはぁッ! アイドルもッ! ウルトラマンもッ! 全部ッ!! 落第点だということだよッ!!」

 

 突然怒鳴られ、克海たちはそろって面食らう。

 

「い、いつから僕たちのことを……!?」

「特にお前らだこのぼんくら兄弟ッ!!」

「ぶッ!?」

 

 話が呑み込めない克海だが、愛染はいきなり彼と功海の頬を手でつまんで押し潰した。

 

「せっかくこの私が立派なウルトラマンにプロデュースしてやろうと思ったというのにッ! お前らは毎度毎度ぉ~ッ! 最早愛想が尽きたわッ!」

「何するんですか!? やめて下さいっ!」

 

 慌てて愛染を克海たちから引き離す梨子たち。だが愛染は手を放しても兄弟を罵倒し続ける。

 

「お前らはぁ! 何の熱意もなくッ! 何の使命感もなくッ!! ただ何となーくウルトラマンやってるだけ!! 中身がない……形だけの、空っぽのウルトラマンなんだよッ!!」

「か、空っぽ……!?」

「俺たちが……!?」

 

 真っ向から否定されてショックを受ける克海と功海。

 

 

 

 果南と花丸は、克海たちと愛染の様子がおかしいことに眉をひそめた。

 

「何か揉めてるみたい……。なに話してるんだろう?」

「ここからじゃ聞こえないずら……」

 

 

 

 愛染は呆然としている克海たちを置いて、話を続ける。

 

「そう、形……。折しも、この私も愛染正義というちっぽけな地球人の形を着ている。ある意味では、十五年もこの中に囚われていると言えるだろう」

 

 そう唱えながら振り向いた愛染の瞳孔が――不気味に赤く光った。

 

「きゃあああっ!?」

「目っ! 目が光った!!」

 

 悲鳴を上げる梨子たちを、功海が咄嗟に後ろにかばう。

 

「みんな離れろッ! こいつ……人間じゃねぇッ!!」

 

 功海の言葉を、ごまかすこともなく肯定する愛染。

 

「如何にもッ! 私は人間ではない……。だがッ! お前らよりも高い市民税をッ! いっぱい払ってるぞぉーッ!!」

 

 両腕を振り上げて叫んだ愛染に、克海たちは唖然。

 

「そうッ! 私は十五年前、妖奇星に乗ってこの土地に散らばったウルトラマンの力を求めてやって来た宇宙人ッ! 名前はサルモーネ・グリルド!! そして小さな町工場の社長の息子だった愛染正義という男の中に入り、アイゼンテックを作って妖奇星の研究を開始した! そしてクリスタルの力を発動する、二つのジャイロを発掘した……。だが、それから三年後の十二年前に、何者かに盗まれてしまったのだ! そう、お前たちが持ってるそれだッ!!」

 

 克海と功海が思わず懐に目を落とした。

 

「お、俺たちじゃねぇぞ!」

「分かっとるわそんなことッ! お前らその時子供だろッ!」

 

 弁明した功海に怒鳴り返す愛染、その身体を乗っ取っているサルモーネ・グリルド。

 

「しかし、それでも私はあきらめなかった! 十二年間、ひたすらに努力を重ね、ついに手にしたのだ! 光の力をッ!!」

 

 とサルモーネが宣言した時――屏風の後ろに隠れていた、二人の少女がサルモーネの背後に出てきた。その顔に梨子たちは驚愕する。

 

「えっ!? 何であなたたちが!?」

 

 その二人とは――鹿角聖良と理亞の、Saint Snowの姉妹であった。

 聖良は梨子の問いに答えず、代わりに言い放った。

 

「皆さん。あなたたちでは、地球を守るヒーローにはなれません」

 

 そしてサルモーネが堂々と宣う。

 

「夢を叶えるにはねぇ、君たち……変化を恐れてはいけないッ! 自分から逃げてはいけないッ! 今こそ宣言しよう!!」

 

 サルモーネが右手に模造したAZジャイロ、左手に剣のクリスタルを取り出した。

 

「私こそが、ウルトラマンだ!!」

 

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